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24.だって可愛いんだもん、ともちゃん。

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 若干の残業があったらしく、凛が到着したのはそれから2時間後だった。しかしそれを想定していたのか、光希はそのタイミングで料理を仕上げていた。

「みっちゃんの料理久々。いいなあともちゃん、これ毎日食えるんでしょ」
「さすがにここまで手の込んだものは毎日は無理だよ」

 配膳はさすがに手伝わせてもらいながら、燈は「でもいつも美味しいです」と光希に返した。光希は「それはどうも」と柔らかく受け止める。
 光希が選りすぐったというワインも開けてもらい、用意は整った。

「じゃ、乾杯」

 燈と凛はワインを、光希は水の入ったグラスを鳴らした。口をつけると、熱に似た何かが口の中に広がる。

「うわ、これ結構強くない?ともちゃん何でそんなあっさり飲めんの?」
「え、そんなにきつい?」

 アルコールは感じるものの、そこまで体調がぐらつくほどには思えなかった。燈のグラスに追加のワインを注ぎながら、光希が口を開く。

「燈、アルコールと麻痺性の毒には耐性があるんだよ。これはこないだ葉月がやらせた血液検査で分かったんだけど」

 ふと、湊と葉月と行った取引現場を思い出す。
 葉月はあの時、燈が舐めたヤスリも回収していた。あのヤスリからは燈の唾液だけでなく、仕込まれた麻痺性の毒も検出されたらしい。
 そして幸い、麻痺性の毒は何度も豚小屋で摂取させられていたのもあり味を覚えていた。だからこそ、「かかった」フリができた。

「へえ、それも豚小屋の時にやられてた投薬のせい?」
「おそらくそうだろう、って葉月は言ってた」
「そういや葉月くん呼ばなかったの?」
「あいつ根菜嫌いなんだよ、にんじんなんて見ただけで怯える」

 そのあとはずっと、凛のホストでの客の話や光希の湊との幼少期の話などで静かに盛り上がった。穏やかな時間だった。
 しかしやがて凛の目が虚ろになり始めてきた。その時にはすでに、空き瓶が4本にまでのぼっていた。

「凛くん、大丈夫?」

 さすがに燈が声をかけると、いつも以上にぼーっとした様子で頷いていた。
 後片付けを始めていた光希にかわり、燈が隣で凛の背中を撫でさする。

「んぅ……」

 凛はそのまま、とろんとした顔で燈を見ていた。そして。

「ともちゃん……」

 唇が、重ねられた。

「んっ!?」

 酒の混じった唾液を注ぐように、キスが続く。さすがに驚いて何度も押し除けようとして、やっと彼は離れた。
 燈のことをとろんとした目で見つめながら、凛は……今までに見たことのないくらいとろけた顔で、笑った。

「えへぇ、ちゅーしちゃったぁ。葉月くんが知ったら怒っちゃうかなぁ」
「なんで葉月さん……」
「凛、そこまで」

 はっとして振り返ると、手をハンカチで拭いている光希が立っていた。その表情は、読めなかった。

「今日はうち泊まりな、燈も帰る準備して」
「は、はい」
「んー、みっちゃんありがと……」

 まるで甘えるようにして光希にしがみつく凛を、光希はやれやれと言わんばかりの表情で見ながら抱えあげる。その姿を見て、胸の奥がずきりとすると同時に「多分湊の方が怒るんじゃ」と思ってしまった。





「ぶえっくしょぉい!」
「汚……」
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