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9.胡散臭い人ほど微笑みがち。
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「ともちゃん、どうだった?」
結局あの後はひたすら抱き締めて頭を撫でるだけで終わった。
自分では気付いていなかっただろうが、燈はずっと腕の中で震えていた。そんな彼女に、さらなる奉仕を求める気は……無かったと言えば嘘になるものの、気は進まなかった。
時間を終えた後は燈を最後にもう一度だけ抱き締め、葉月は部屋を出た。そして複雑そうな顔をする燈を凛の指示通りプレイルームに置いて、『S』のメンバーのために作られた個室で会計手続きをする凛に葉月は微笑みかけた。
「うん、やっぱり可愛いままだった」
「ふーん」
凛の表情は読み取りづらい。しかしある程度付き合いを続けると分かってくる。あくまで彼は読み取りづらいだけで、無感情ではないと。
「凛は使わないの?燈ちゃん」
「でも『S』じゃん。近親相姦になるんじゃないの」
「もう俺たちの代は誰も血は繋がってないよ」
葉月の何の気無い言葉に、凛は「それはそう」と返した。
「でもあまり気は進まないかも。みっちゃんのオキニっぽいし」
「まあ光希、手は早いしね。タイミング被ったら……」
「え?みっちゃん、手出してないよ」
凛の言葉に、葉月の動きが一瞬停止した。
「……それ本当?」
「みっちゃんが言ってたから本当」
「いや、そうだろうけど。え、あの光希が?」
「てかみっちゃんも別に自分からは食わないじゃん、仕事の利用価値とかもない限り」
確かに、彼はそういう男だ。腑には落ちる。
しかし同時に、違和感もある。彼の性格からして、それはきっと。
「余程大事にしたがってるってこと、かな」
葉月の言葉に凛は「そうなんじゃない」とだけ呟いた。そして、伝票を差し出してくる。それをろくに確認することなく、葉月はクレジットカードを差し出した。
処理を終えて返してもらうと、品のいい革財布にしまいこむ。そして立ち上がった。
「あ、そうだ。ちょっとトラウマ?発動したみたいだから今日はもう休ませてあげて。光希には俺が言っておくよ」
「え、大丈夫?それ葉月くんがやったってこと?」
「多分前の店の記憶がフラッシュバックしたんだと思うよ。うーん、もっと強めに作っておくべきだったかな」
葉月の言葉の意味を知ってか知らずか、凛は「お願い」とだけ返した。
「そういや葉月くん、またバイトしにきてよ。葉月くんに会いたいって女の子いるよ」
「今の状況でホストのバイトは無理だって。第一俺狙ってるなら、凛がいけばイチコロでしょ」
『四』どころか『S』の中でも屈指の美形相手に苦笑しながら、葉月は立ち上がった。
「それじゃ俺行くね、この後本業の方で会議なの」
「役員さんは大変だ」
「女の子買うために抜けたって言ったら役職落としてくれたりしないかな、激務しんどいんだけど……でもまた燈ちゃんに癒されにくるよ」
そう笑いながら、葉月は部屋を出た。微かに聞こえる足音が、彼がもう地上への階段を登っていってると分からせてくる。
凛はクレジット伝票の整理を終えると、光希に電話をかけ始めたのだった。
結局あの後はひたすら抱き締めて頭を撫でるだけで終わった。
自分では気付いていなかっただろうが、燈はずっと腕の中で震えていた。そんな彼女に、さらなる奉仕を求める気は……無かったと言えば嘘になるものの、気は進まなかった。
時間を終えた後は燈を最後にもう一度だけ抱き締め、葉月は部屋を出た。そして複雑そうな顔をする燈を凛の指示通りプレイルームに置いて、『S』のメンバーのために作られた個室で会計手続きをする凛に葉月は微笑みかけた。
「うん、やっぱり可愛いままだった」
「ふーん」
凛の表情は読み取りづらい。しかしある程度付き合いを続けると分かってくる。あくまで彼は読み取りづらいだけで、無感情ではないと。
「凛は使わないの?燈ちゃん」
「でも『S』じゃん。近親相姦になるんじゃないの」
「もう俺たちの代は誰も血は繋がってないよ」
葉月の何の気無い言葉に、凛は「それはそう」と返した。
「でもあまり気は進まないかも。みっちゃんのオキニっぽいし」
「まあ光希、手は早いしね。タイミング被ったら……」
「え?みっちゃん、手出してないよ」
凛の言葉に、葉月の動きが一瞬停止した。
「……それ本当?」
「みっちゃんが言ってたから本当」
「いや、そうだろうけど。え、あの光希が?」
「てかみっちゃんも別に自分からは食わないじゃん、仕事の利用価値とかもない限り」
確かに、彼はそういう男だ。腑には落ちる。
しかし同時に、違和感もある。彼の性格からして、それはきっと。
「余程大事にしたがってるってこと、かな」
葉月の言葉に凛は「そうなんじゃない」とだけ呟いた。そして、伝票を差し出してくる。それをろくに確認することなく、葉月はクレジットカードを差し出した。
処理を終えて返してもらうと、品のいい革財布にしまいこむ。そして立ち上がった。
「あ、そうだ。ちょっとトラウマ?発動したみたいだから今日はもう休ませてあげて。光希には俺が言っておくよ」
「え、大丈夫?それ葉月くんがやったってこと?」
「多分前の店の記憶がフラッシュバックしたんだと思うよ。うーん、もっと強めに作っておくべきだったかな」
葉月の言葉の意味を知ってか知らずか、凛は「お願い」とだけ返した。
「そういや葉月くん、またバイトしにきてよ。葉月くんに会いたいって女の子いるよ」
「今の状況でホストのバイトは無理だって。第一俺狙ってるなら、凛がいけばイチコロでしょ」
『四』どころか『S』の中でも屈指の美形相手に苦笑しながら、葉月は立ち上がった。
「それじゃ俺行くね、この後本業の方で会議なの」
「役員さんは大変だ」
「女の子買うために抜けたって言ったら役職落としてくれたりしないかな、激務しんどいんだけど……でもまた燈ちゃんに癒されにくるよ」
そう笑いながら、葉月は部屋を出た。微かに聞こえる足音が、彼がもう地上への階段を登っていってると分からせてくる。
凛はクレジット伝票の整理を終えると、光希に電話をかけ始めたのだった。
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