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8.フラッシュバックきついよね、分かる。

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 シャワーを浴びる前よりも断然に強い脈打ちを見せる肉棒に、さすがに少し狼狽えてしまう。
 しかしあの豚小屋でのことを思い出せば、歪な加工もされていない……むしろ清潔なくらいのものだ。

『おら!咥えろ!ケツの方から先にやってやろうか、ああ!?』

 記憶が不安定なはずなのに、何故かそういった怒号だけが先に蘇る。それを塗りつぶすため、と本能が勇んだのか……燈は一息で先走りの垂れそうなそれを咥え込んだ。

「っはは、いきなりっ……?」

 葉月の息を飲む気配と同時に、口の中の肉棒もまたびくり、と脈打った。
 口の中にあるのに、不快な味はしない。あそこで燈を苛んだ、まるで鬼畜生たちのものなどよりは余程「人間」の匂いがする。
 づぷ、ぢゅぷ、と音を立てながら、ゆっくりと顔を前後させる。するとその度、葉月が「う、あ」と上擦った声を上げた。

「はあ、あっ、燈ちゃん、一旦、一旦待って」

 やんわりと押しのけるように、手を頭に乗せられる。その瞬間、だった。

『おら、もっとやれ!自分でやらねえと俺が動かすぞ!』
『ぎゃは、喉破れんじゃねえの」

「あああっ、う、あっ!」

 記憶なのに、一気に全身に冷や汗をかくほどの威力だった。防衛本能から、必死に燈は顔を動かす。
 口の中で亀頭を絞りながら、舌先で棒そのものをこするようにして。そのまま、ちゅうううっと吸い上げる。

「う、ああっ」

 一瞬にして、頭を抱え込まれた。同時に注がれる、熱。
 どぐっ、どっ、と粘った音を出すようにしながら喉奥へと精液を注がれる感触。科学的な味の一切しない、苦味だった。

「はあ、はあっ。あー……おかしくなるかと思った」

 葉月の声を聞き、我を取り戻す。慌てて口を離すと「ごめんなさい、私」と言い訳がましい言葉を連ねそうになったが、すぐに降ってきた唇に閉じ込められた。
 しかし口封じ、の意味だけだったのか燈が黙ると彼はすぐに唇を離すと。

「ごめんね、無理やり飲ませちゃった。あとで追加料金払っておかないと……嫌なんだよなあ、やったことの報告するの恥ずかしいや」

 本当に照れくさそうにしながらシャワーを浴び直すと、葉月は燈に「あっち行こうか」と囁いた。その甘さに、燈は頷くしかない。
 体を拭きベッドに寝そべると、「さっき俺何かしちゃった?」と葉月が口を開く。その手はさりげなく、燈を抱きしめてきていた。その熱に戸惑いしかなくて、何も言えなくなる。
 しかしそれで恐らく察したのか、葉月の手は優しく燈を撫でた。

「これからはこれからのこと、覚えていけばいいよ」
「これから……」
「燈ちゃん、今までの記憶が穴ぼこだからこの先のことって言っても想像つかないでしょ」

 図星、だった。しかしそれはきっと想像力のせいなのだと思うしかなかったのに、葉月の手は止まない。

「大丈夫、俺たちが作ってあげるよ。この先を」

 その声は光希のものの響きと、よく似ていた。だからこそ、気になった。

「……なんで、みんなそんなによくしてくれるんですか?私が、『S』だから?」

 燈の言葉にも、葉月は手を止めなかった。

「他の奴のことは他の奴にしか分からないよ」
「あなたは……」
「ふふ、一目惚れしちゃったから。なんてね」

 そう囁いてくる言葉そのものは、確かに甘かった。
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