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第八話
花と再会
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ああ、温い。世界を焼いたはずなのに、この心地よさは何なのだろう。
そもそも自分は何度意識を失えば気が済むのか。そう思いながら、目を開ける。
「……ここは」
青空が見えた。秋に入ろうか、という時期ならではの高い空。
半身を起こそうとするも、筋肉にとんでもない激痛を感じ断念する。仰向けになったままぼんやりとしていると、何か繊維のようなものが髪にかかった。煤けた匂いだが、これは。
「お目覚めね」
いつものような、冷たい声。それでも、どこか感じる親愛。それを聞いた瞬間、目頭が熱くなった。
「アキラさん……」
アキラもまた、微笑む。その目は、潤んでいた。彼女の体が、総吾郎へと倒れこんでくる。その細い腕が背中へと回り、強く抱きしめられた。
「ア、アキ」
「よかった。本当に、よかった」
彼女の声は、悲痛だった。恐る恐る、背中に手を回す。そのまま、強く力を込めた。彼女の温もりが、心地いい。
ああ、生きている。お互いに。
「『革命』は……」
総吾郎の問いに、アキラは頷く。
「止まったわ。私もさっき目を覚ましたから、よくわからないけれど。見る?」
何を、と問う前に彼女の体は離れた。抱き起される形で、半身を立てる。
周囲には、何も無かった。岩肌しか。自分達が居た『neo-J』の建物も、あの樹木も。一切、無かった。完全に焼野原といった様子だ。やはり、あの『革命』が。
「……私の力では、申し訳ないけれどそこまでは復元出来なかった。精一杯だったの、彼らだけで」
「彼ら……?」
再び、アキラに体を動かされる。今度は背後に目を向けさせられた。そこには。
「……みんな……」
杏介。そして、マトキとアレクセイ。その胸元は、全員上下していた。それを見て、涙がこぼれ落ちる。
「兄さんから聞いていたの、元々。私達はいのちの巫女の末裔だと」
「いのち?」
「兄さんの力で、ソウくんは肉体を蘇生出来たんでしょう」
頷く。そうか、彼女はすべて知っているのか。それでも、悲痛な顔は見せなかった。
「私にも同じ力があるって、聞いていた。だから、使ったの。オリジナルと違ってやっぱり力が弱い上に分散させてしまったから、本当に命だけは吹き返したって感じ」
それでも。それでも、生きているのならば。
アキラを見ると、彼女は穏やかな顔をしていた。そのまま、続ける。
「……これも私の、運命なのね。兄さん」
彼女の顔が、伏せられる。さらり、とその髪は地へと垂れた。その時、気付く。
「アキラさん、頭。花が」
「え?」
体を引きずり、アキラの頭部へと手を伸ばす。そこには、小さな紫色の花があった。摘まんでも、取れない。仕方ないので、力を込めて引っ張る。すると、一瞬何かに引っかかるようにして抜けた。
「痛いわ」
「す、すみません」
改めて、花を見る。小さな、爪程の大きさの花だ。葉も二枚ついており、少し巻いたような形。そして細い蔦と、その先には白く輝く石が付いていた。
アキラの掌に載せてみる。彼女はまじまじとその植物を眺め、ぽそりと呟いた。
「……懐かしい。これ、あの『種』だわ」
「え?」
まさか。
アキラは腕を伸ばした。しかし、あの蔦は伸びてこない。
「……まさか、こんな形で摘出されるなんて」
呆れたように、彼女は笑う。その姿がどこか少女のようで、心の奥が温かくなった。
アキラは地を掘り、そこに『種』を埋めた。紫色の花が、かすかに風に吹かれて揺れる。
「これから、どうしましょうか」
総吾郎の問いに、アキラはこちらを向いて応える。
「ここまで綺麗さっぱり無くなってしまった以上、新しく色々作り出すしかなくなったわね」
「ですよね……」
「でも、前回の『革命』と違って今回は生き延びた人間が居る。それも、『革命』を強制終了させたからか記憶は温存出来ている。ええ、どうにでも出来そうね」
あくまで前向きな彼女に、笑みがこぼれる。そうだ、彼女の強さはそこだ。彼女といれば、何でも出来そうな気すらしてくる。
「……まずはこの人達が目を覚ますのを待ちましょう。人数が多い程案は出るでしょう」
「そう、ですね」
真っ新な世界を、踏みしだく。
それは蹂躙ではなく、前進として。新たなる世界の、はじまり。
そもそも自分は何度意識を失えば気が済むのか。そう思いながら、目を開ける。
「……ここは」
青空が見えた。秋に入ろうか、という時期ならではの高い空。
半身を起こそうとするも、筋肉にとんでもない激痛を感じ断念する。仰向けになったままぼんやりとしていると、何か繊維のようなものが髪にかかった。煤けた匂いだが、これは。
「お目覚めね」
いつものような、冷たい声。それでも、どこか感じる親愛。それを聞いた瞬間、目頭が熱くなった。
「アキラさん……」
アキラもまた、微笑む。その目は、潤んでいた。彼女の体が、総吾郎へと倒れこんでくる。その細い腕が背中へと回り、強く抱きしめられた。
「ア、アキ」
「よかった。本当に、よかった」
彼女の声は、悲痛だった。恐る恐る、背中に手を回す。そのまま、強く力を込めた。彼女の温もりが、心地いい。
ああ、生きている。お互いに。
「『革命』は……」
総吾郎の問いに、アキラは頷く。
「止まったわ。私もさっき目を覚ましたから、よくわからないけれど。見る?」
何を、と問う前に彼女の体は離れた。抱き起される形で、半身を立てる。
周囲には、何も無かった。岩肌しか。自分達が居た『neo-J』の建物も、あの樹木も。一切、無かった。完全に焼野原といった様子だ。やはり、あの『革命』が。
「……私の力では、申し訳ないけれどそこまでは復元出来なかった。精一杯だったの、彼らだけで」
「彼ら……?」
再び、アキラに体を動かされる。今度は背後に目を向けさせられた。そこには。
「……みんな……」
杏介。そして、マトキとアレクセイ。その胸元は、全員上下していた。それを見て、涙がこぼれ落ちる。
「兄さんから聞いていたの、元々。私達はいのちの巫女の末裔だと」
「いのち?」
「兄さんの力で、ソウくんは肉体を蘇生出来たんでしょう」
頷く。そうか、彼女はすべて知っているのか。それでも、悲痛な顔は見せなかった。
「私にも同じ力があるって、聞いていた。だから、使ったの。オリジナルと違ってやっぱり力が弱い上に分散させてしまったから、本当に命だけは吹き返したって感じ」
それでも。それでも、生きているのならば。
アキラを見ると、彼女は穏やかな顔をしていた。そのまま、続ける。
「……これも私の、運命なのね。兄さん」
彼女の顔が、伏せられる。さらり、とその髪は地へと垂れた。その時、気付く。
「アキラさん、頭。花が」
「え?」
体を引きずり、アキラの頭部へと手を伸ばす。そこには、小さな紫色の花があった。摘まんでも、取れない。仕方ないので、力を込めて引っ張る。すると、一瞬何かに引っかかるようにして抜けた。
「痛いわ」
「す、すみません」
改めて、花を見る。小さな、爪程の大きさの花だ。葉も二枚ついており、少し巻いたような形。そして細い蔦と、その先には白く輝く石が付いていた。
アキラの掌に載せてみる。彼女はまじまじとその植物を眺め、ぽそりと呟いた。
「……懐かしい。これ、あの『種』だわ」
「え?」
まさか。
アキラは腕を伸ばした。しかし、あの蔦は伸びてこない。
「……まさか、こんな形で摘出されるなんて」
呆れたように、彼女は笑う。その姿がどこか少女のようで、心の奥が温かくなった。
アキラは地を掘り、そこに『種』を埋めた。紫色の花が、かすかに風に吹かれて揺れる。
「これから、どうしましょうか」
総吾郎の問いに、アキラはこちらを向いて応える。
「ここまで綺麗さっぱり無くなってしまった以上、新しく色々作り出すしかなくなったわね」
「ですよね……」
「でも、前回の『革命』と違って今回は生き延びた人間が居る。それも、『革命』を強制終了させたからか記憶は温存出来ている。ええ、どうにでも出来そうね」
あくまで前向きな彼女に、笑みがこぼれる。そうだ、彼女の強さはそこだ。彼女といれば、何でも出来そうな気すらしてくる。
「……まずはこの人達が目を覚ますのを待ちましょう。人数が多い程案は出るでしょう」
「そう、ですね」
真っ新な世界を、踏みしだく。
それは蹂躙ではなく、前進として。新たなる世界の、はじまり。
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一話拝見しました。文章が読みやすく、「純血種」という単語からすっと世界に引き込まれました。
孤児院、人身売買、謎の組織…わくわくする出だしですね。
Twitterから来ました。
すごい世界がこの物語にはありますね。
これが現実になったらどうなるだろうって考えてしまいましたよ。