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第4章
2.もはや灰田先生の世界だよ!
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「やっ」
井内が風を煽り、目の前にある木を一本打つ。揺れる気配もなく、まるで煙が立ち消えるかのようにその木は消えた。
「大ちゃん、中庭はこれで終わり?」
「そだね。でもどれも分かりやすいよね、なんか。この木もこの中で一本だけどう見ても色違ったし」
周囲の木を眺めながら、大本は呟く。そのままスマートフォンをのぞき込みながら、校内地図をタップして印をつける。この内容はメンバーのグループで一瞬にして共有される事になっていた。
攻撃能力を持つメンバーを一人ずつ入れグループを組み、手分けして幻覚駆除。この調子なら、あと一時間もかからずに終わるだろう。
「何か、呆気ないよね」
大本の言葉に、井内も頷く。
「でもよく考えたら一年経ってるんだよね。私たちがこうなってから」
「うん。でもまさかこんな……ね」
そこでふと、大本が振り返った。心配そうな顔をして、口を開く。
「安生くん、大丈夫?」
安生は辛うじて頷く。
悪寒が、止まらない。息もし辛くなってきた。手足の震えを見て、井内も顔をしかめる。
「保健室行く? それか先生に話して、早退するか」
「早退……」
ふと、気付く。
「俺……どこに、帰ったらいいんだろう……?」
「何言って」
全員の、スマートフォンが反応する。また一つ、印がついた。安生の膝が、崩れる。
「安生くんっ!?」
井内が駆け寄って、支えようとする。しかし、その手は。
「……え?」
安生の体を、くぐり抜けた。何度触れようとしても、安生の体を掴めない。井内の手は、貫通し続ける。
「なに、これ」
呆然とした井内の呟きに、大本は何も言わなかった。ただ、悲しそうな顔をするだけで。それを見た井内は、大本に「何か、知ってるの」と問いかける。大本は首を振ると、安生の目の前で膝をついた。
「能力は、能力でしか破れない」
その言葉は、最初の任務の時に灰田から教わったルールだった。
「でもそれって、要は『能力じゃないものに使った時とは違う反応を示す』って事でもあるんだよね」
「大ちゃん……?」
「安生くん」
安生は、何も言わずに大本を見る。ただ、不安を目にたたえて。
「……ずっと、疑問に思ってた。文化祭の日、安生くんの中に入れなかった事。そして、今回のこのタイミング。さっきからの情報交換で言ってた事」
ひとつ幻覚を消す度に、全員が気付いていた反応があった。それは、残った幻覚が脆くなっていくという事。道すがら全員で出した結論は、『きっと共鳴しているんだろう』という事だった。
しかと、見据えて。けれど、逃げずに。大本は言った。
「安生くん、幻覚なんだよね?」
その言葉と同時に、スマートフォンが鳴った。計算上……校内で最後の幻覚が消された合図だった。
「……そういう事だったのか」
高田が、ぼそりと呟く。その顔はとても悔しそうだった。
幻覚がすべて消されたという事でひとまず全員で集合しようという事になったが、安生は完全に気を失ってしまった。もはや感触だけでなく、見るからに向こう側が透けている。絶句した全員に、大本が事情を話すと高田と棚橋だけがぴんときたようだった。
「でも何で、こんな……」
浜野は明らかに狼狽していた。実際、全員が同じ気持ちだった。
全然気付かなかった。彼は普段から学校でも溶け込んでいたし、城崎と違い経歴もちゃんとあった。それは、全員が知っている。いや、それも……これから、消されてしまうのか。
安生は、辛うじて息をしているように見えた。しかし苦しそうで、気を抜けば消えてしまいそうな。
そんな中、スマートフォンの通知が鳴った。全員だ。おもむろに、確認する。灰田からだ。
『最後ひとつを消す前に、グラウンドに集合』
「最後、って」
全員の視線が安生に向かう。彼は苦しそうに、荒い息のまま目を覚まさない。一番傍にいる大本が、泣きそうな顔で彼を見つめていた。
浜野が頭を抱える。しかしすぐに、顔を上げた。
「グラウンドへ行こう」
「安生をこのままにしてか?」
多田の言葉に、浜野は頷く。
「もし安生が最後の幻覚なら、俺達の手で消さない限り消える事はないはずだ。行って、安生をどうにかする手がないか……聞こう」
全員、頷いた。まず浜野が立ち上がり、歩き出す。それに、皆が続いていく。大本は、一度だけ安生を見た。
「待っててね」
聞こえたかどうかは分からない。それでも、立ち上がった。
グラウンドの中央に、ひとつの影。それは、あまりにも目立っていた。夕日を浴びる灰田の顔は、逆光で見えない。
「やあ、お疲れさま」
声はあくまで穏やかだった。近づいてようやく見えた顔も、同じく。しかし全員、顔を張りつめたままにしか出来なかった。
灰田はため息を吐く。
「あと一つで、すべてが完了する。その所在は、もう知ったんだろう」
「安生を、どうすれば助けられますか」
浜野の堅い声に、灰田は首を振った。
「無理だね。彼は試作品の内のひとつだ。そもそもここまで生き長らえる予定ではなかったんだよ。むしろあの子は奇跡の存在だ」
言っている意味を、全員必死に汲み取ろうとする。しかし、彼は言葉を止めない。
「異の場から他人に付与出来る能力を拾った時、私は最初に隈野先生に能力を与えた。そして色々試した。その中で、人間の幻覚を作らせた」
何故だろう。表情は、変わっていないはずなのに。どこか心臓の奥、嫌なものを感じる。
「一体目は正直失敗だった。悪くはなかったが未熟だった。だから二体目を作った。そっちはある程度自立させる事が出来たから、能力を与えてみたんだよ。それがうまい具合に噛み合った。相性がよかったんだね」
「相性……?」
「不安定な幻覚を、強固で確実なものにする。即ち、『維持』の能力だ」
全員の背筋を、確信が走り抜けた。ああ、そういう事だったのか。
「だから彼は……安生は、一個体の人間としての生を始める事が出来た。そのために色々用意したよ、周囲の人間の記憶だったり経歴だったり。でも一体目の分も見てみたいと思って……っと、これは今はいらないな」
どくり、と。脈打つ。それは体なのか、それとも地表なのか。その判断は、もはやつかなかった。
安生の正体は……人間ではなかった。作られた、幻覚。その事実に、全員が硬直していた。
「ああ、動揺しているね。君たち」
「当たり前でしょう」
呆然と、大本が呟く。
「……ずっと、一緒に戦ってきた安生くんが。そんな、先生達の気まぐれで生まれて……そして、消えようとしてる、って……そんなの、そんなのっ……」
最後はもはや、嗚咽だった。しかし灰田は、何も動じない。ただ、穏やかに。
「それはあくまで結果だよ」
その囁きと、同時に感じる蠢き。これは、地表だ。そして、棚橋には覚えがあった。この感覚は。
「さあ、時間だ。君たちの能力を、異の場にかえす時がきた」
「っ皆!」
棚橋の太い叫びに、全員の体がびくつく。しかし、もう遅かった。
熱・悪寒・圧・痛み。何もかもが、襲いかかってくる。
「君たちの能力は実に成長してくれた。ああ、本当に喜ばしい」
声が聞こえる。自分たちの、泣き叫ぶ声の隙間を縫うように。
「異の場に戻れば、膨れ上がった能力にきっとアレルギー反応が生じる。それも、膨大なエネルギーとなる」
止まらない。苦痛が。骨がきしみ、肉が裂けていく。
「異の場はきっと耐えきれない、確実に崩壊する。さあ、その隙に帰ってくるといい」
誰もいない。手をのばしても自分しかいない。自分の体に巣食った能力が……自分から、弾け出そうとしている。
もう死んでしまうのかもしれない。いっそ殺してくれ。楽にしてくれ。痛覚なんて最初に壊れてしまえばいいのに。
そんな、祈りを。全員で捧げた。
それなのに、ひとつだけ。ひとつだけ、抵抗する能力があった。
「……ん?」
外側から異の場を眺めていた灰田が、疑問符を漏らした。
異の場の強制召喚。それは灰田の能力……ある日突然開花した『干渉』の能力を以てしても、彼への負担は尋常ではなかった。実際手足はもう動かない。異の場で、彼らが生命ごと能力を吸われ枯れていくのを見守る他なかった。そして、十分だった。
能力はすべて、異の場から生まれたエネルギーだ。『干渉』の能力で丹念に練り上げ、彼らにも使えるようにした。成長させるために、試練として異形やあの蛇、そして最初の味方まで駒にした。
「なんだ……?」
異の場は順調に彼らの能力を吸っていた。それなのに、一カ所だけ……抵抗している。能力を、吸えていない。
「棚橋……!?」
ひときわ大きい影だった。彼だけは、暴れている。彼に付与した能力は。
「『開閉』……まさか!」
きっと彼だけ気付いていた。異の場を開いたことのある彼だけが。
もう視覚は潰されているはずだ。それでも彼は、異の場を力強くさまよった。そして、ひとりの手を掴んだ。あれは、鳥西か。気付いた彼女は痛みに悶えながら暴れたが、棚橋は離さない。
ああ、もう終わりだ。灰田には何も出来ない。
長い時間をかけて、棚橋は全員の体を集めた。最後に腕を掴まれた大本は、もう動いていなかった。死んでいても、おかしくはない。
それでも、彼らは。絶叫した。
「っ……!!」
最後の悪足掻きで、能力を強める。しかし、棚橋の能力……そして、彼らの気力が、勝った。
「あああああああああっ!!!!!!」
ばちん、と大きな音が鳴った。空間が弾け、裂ける。そこから溢れるように、全員の体が飛び出した。そのまま、地表に擲たれる。全員が息を荒げながら、体をびくびくと脈打たせた。
井内が風を煽り、目の前にある木を一本打つ。揺れる気配もなく、まるで煙が立ち消えるかのようにその木は消えた。
「大ちゃん、中庭はこれで終わり?」
「そだね。でもどれも分かりやすいよね、なんか。この木もこの中で一本だけどう見ても色違ったし」
周囲の木を眺めながら、大本は呟く。そのままスマートフォンをのぞき込みながら、校内地図をタップして印をつける。この内容はメンバーのグループで一瞬にして共有される事になっていた。
攻撃能力を持つメンバーを一人ずつ入れグループを組み、手分けして幻覚駆除。この調子なら、あと一時間もかからずに終わるだろう。
「何か、呆気ないよね」
大本の言葉に、井内も頷く。
「でもよく考えたら一年経ってるんだよね。私たちがこうなってから」
「うん。でもまさかこんな……ね」
そこでふと、大本が振り返った。心配そうな顔をして、口を開く。
「安生くん、大丈夫?」
安生は辛うじて頷く。
悪寒が、止まらない。息もし辛くなってきた。手足の震えを見て、井内も顔をしかめる。
「保健室行く? それか先生に話して、早退するか」
「早退……」
ふと、気付く。
「俺……どこに、帰ったらいいんだろう……?」
「何言って」
全員の、スマートフォンが反応する。また一つ、印がついた。安生の膝が、崩れる。
「安生くんっ!?」
井内が駆け寄って、支えようとする。しかし、その手は。
「……え?」
安生の体を、くぐり抜けた。何度触れようとしても、安生の体を掴めない。井内の手は、貫通し続ける。
「なに、これ」
呆然とした井内の呟きに、大本は何も言わなかった。ただ、悲しそうな顔をするだけで。それを見た井内は、大本に「何か、知ってるの」と問いかける。大本は首を振ると、安生の目の前で膝をついた。
「能力は、能力でしか破れない」
その言葉は、最初の任務の時に灰田から教わったルールだった。
「でもそれって、要は『能力じゃないものに使った時とは違う反応を示す』って事でもあるんだよね」
「大ちゃん……?」
「安生くん」
安生は、何も言わずに大本を見る。ただ、不安を目にたたえて。
「……ずっと、疑問に思ってた。文化祭の日、安生くんの中に入れなかった事。そして、今回のこのタイミング。さっきからの情報交換で言ってた事」
ひとつ幻覚を消す度に、全員が気付いていた反応があった。それは、残った幻覚が脆くなっていくという事。道すがら全員で出した結論は、『きっと共鳴しているんだろう』という事だった。
しかと、見据えて。けれど、逃げずに。大本は言った。
「安生くん、幻覚なんだよね?」
その言葉と同時に、スマートフォンが鳴った。計算上……校内で最後の幻覚が消された合図だった。
「……そういう事だったのか」
高田が、ぼそりと呟く。その顔はとても悔しそうだった。
幻覚がすべて消されたという事でひとまず全員で集合しようという事になったが、安生は完全に気を失ってしまった。もはや感触だけでなく、見るからに向こう側が透けている。絶句した全員に、大本が事情を話すと高田と棚橋だけがぴんときたようだった。
「でも何で、こんな……」
浜野は明らかに狼狽していた。実際、全員が同じ気持ちだった。
全然気付かなかった。彼は普段から学校でも溶け込んでいたし、城崎と違い経歴もちゃんとあった。それは、全員が知っている。いや、それも……これから、消されてしまうのか。
安生は、辛うじて息をしているように見えた。しかし苦しそうで、気を抜けば消えてしまいそうな。
そんな中、スマートフォンの通知が鳴った。全員だ。おもむろに、確認する。灰田からだ。
『最後ひとつを消す前に、グラウンドに集合』
「最後、って」
全員の視線が安生に向かう。彼は苦しそうに、荒い息のまま目を覚まさない。一番傍にいる大本が、泣きそうな顔で彼を見つめていた。
浜野が頭を抱える。しかしすぐに、顔を上げた。
「グラウンドへ行こう」
「安生をこのままにしてか?」
多田の言葉に、浜野は頷く。
「もし安生が最後の幻覚なら、俺達の手で消さない限り消える事はないはずだ。行って、安生をどうにかする手がないか……聞こう」
全員、頷いた。まず浜野が立ち上がり、歩き出す。それに、皆が続いていく。大本は、一度だけ安生を見た。
「待っててね」
聞こえたかどうかは分からない。それでも、立ち上がった。
グラウンドの中央に、ひとつの影。それは、あまりにも目立っていた。夕日を浴びる灰田の顔は、逆光で見えない。
「やあ、お疲れさま」
声はあくまで穏やかだった。近づいてようやく見えた顔も、同じく。しかし全員、顔を張りつめたままにしか出来なかった。
灰田はため息を吐く。
「あと一つで、すべてが完了する。その所在は、もう知ったんだろう」
「安生を、どうすれば助けられますか」
浜野の堅い声に、灰田は首を振った。
「無理だね。彼は試作品の内のひとつだ。そもそもここまで生き長らえる予定ではなかったんだよ。むしろあの子は奇跡の存在だ」
言っている意味を、全員必死に汲み取ろうとする。しかし、彼は言葉を止めない。
「異の場から他人に付与出来る能力を拾った時、私は最初に隈野先生に能力を与えた。そして色々試した。その中で、人間の幻覚を作らせた」
何故だろう。表情は、変わっていないはずなのに。どこか心臓の奥、嫌なものを感じる。
「一体目は正直失敗だった。悪くはなかったが未熟だった。だから二体目を作った。そっちはある程度自立させる事が出来たから、能力を与えてみたんだよ。それがうまい具合に噛み合った。相性がよかったんだね」
「相性……?」
「不安定な幻覚を、強固で確実なものにする。即ち、『維持』の能力だ」
全員の背筋を、確信が走り抜けた。ああ、そういう事だったのか。
「だから彼は……安生は、一個体の人間としての生を始める事が出来た。そのために色々用意したよ、周囲の人間の記憶だったり経歴だったり。でも一体目の分も見てみたいと思って……っと、これは今はいらないな」
どくり、と。脈打つ。それは体なのか、それとも地表なのか。その判断は、もはやつかなかった。
安生の正体は……人間ではなかった。作られた、幻覚。その事実に、全員が硬直していた。
「ああ、動揺しているね。君たち」
「当たり前でしょう」
呆然と、大本が呟く。
「……ずっと、一緒に戦ってきた安生くんが。そんな、先生達の気まぐれで生まれて……そして、消えようとしてる、って……そんなの、そんなのっ……」
最後はもはや、嗚咽だった。しかし灰田は、何も動じない。ただ、穏やかに。
「それはあくまで結果だよ」
その囁きと、同時に感じる蠢き。これは、地表だ。そして、棚橋には覚えがあった。この感覚は。
「さあ、時間だ。君たちの能力を、異の場にかえす時がきた」
「っ皆!」
棚橋の太い叫びに、全員の体がびくつく。しかし、もう遅かった。
熱・悪寒・圧・痛み。何もかもが、襲いかかってくる。
「君たちの能力は実に成長してくれた。ああ、本当に喜ばしい」
声が聞こえる。自分たちの、泣き叫ぶ声の隙間を縫うように。
「異の場に戻れば、膨れ上がった能力にきっとアレルギー反応が生じる。それも、膨大なエネルギーとなる」
止まらない。苦痛が。骨がきしみ、肉が裂けていく。
「異の場はきっと耐えきれない、確実に崩壊する。さあ、その隙に帰ってくるといい」
誰もいない。手をのばしても自分しかいない。自分の体に巣食った能力が……自分から、弾け出そうとしている。
もう死んでしまうのかもしれない。いっそ殺してくれ。楽にしてくれ。痛覚なんて最初に壊れてしまえばいいのに。
そんな、祈りを。全員で捧げた。
それなのに、ひとつだけ。ひとつだけ、抵抗する能力があった。
「……ん?」
外側から異の場を眺めていた灰田が、疑問符を漏らした。
異の場の強制召喚。それは灰田の能力……ある日突然開花した『干渉』の能力を以てしても、彼への負担は尋常ではなかった。実際手足はもう動かない。異の場で、彼らが生命ごと能力を吸われ枯れていくのを見守る他なかった。そして、十分だった。
能力はすべて、異の場から生まれたエネルギーだ。『干渉』の能力で丹念に練り上げ、彼らにも使えるようにした。成長させるために、試練として異形やあの蛇、そして最初の味方まで駒にした。
「なんだ……?」
異の場は順調に彼らの能力を吸っていた。それなのに、一カ所だけ……抵抗している。能力を、吸えていない。
「棚橋……!?」
ひときわ大きい影だった。彼だけは、暴れている。彼に付与した能力は。
「『開閉』……まさか!」
きっと彼だけ気付いていた。異の場を開いたことのある彼だけが。
もう視覚は潰されているはずだ。それでも彼は、異の場を力強くさまよった。そして、ひとりの手を掴んだ。あれは、鳥西か。気付いた彼女は痛みに悶えながら暴れたが、棚橋は離さない。
ああ、もう終わりだ。灰田には何も出来ない。
長い時間をかけて、棚橋は全員の体を集めた。最後に腕を掴まれた大本は、もう動いていなかった。死んでいても、おかしくはない。
それでも、彼らは。絶叫した。
「っ……!!」
最後の悪足掻きで、能力を強める。しかし、棚橋の能力……そして、彼らの気力が、勝った。
「あああああああああっ!!!!!!」
ばちん、と大きな音が鳴った。空間が弾け、裂ける。そこから溢れるように、全員の体が飛び出した。そのまま、地表に擲たれる。全員が息を荒げながら、体をびくびくと脈打たせた。
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