【R18あり】推しに溺愛されるのが私とか!

湖霧どどめ

文字の大きさ
上 下
39 / 43

39.案外全員勘悪いね、うちのグループ。

しおりを挟む
「では、本日のゲストは久々の『SIX RED』の皆さんですー!」

 とある歌番組にて、『SIX RED』はゲスト出演していた。女子アナウンサーは主にNaokiに話を振り、その目はどこか熱っぽいものを感じた。ひじりはそれを見ながら、かつて玲雅に向けていた目があれに近しかったのか……などと考えてしまったりしていた。
 パフォーマンスを終え、スタジオの中のパフォーマンス用の座席に座る。入れ替わりで、共演の『IC Guys』がスタンバイに入った。今回は別に、玲雅はキャスティングに噛んでいるわけではないらしかった。

「あのアナウンサー、絶対Naokiくん狙ってるよね」

 『IC Guys』のスタンバイを見守る中で、Izumiが耳打ちしてくる。ひじりも頷いた。そこに、Souも乗っかってくる。

「多分Hijiriの影響あると思うよ。あんな大々的に表に出したから、メンバー狙ってもイケるって思われたんじゃない?」
「でもそれ言ったらIzumiちゃんもそうじゃん」
「私の時はあまり歓迎ムードじゃなかったからじゃない?」

 ひそひそ話す3人に、前列に座っていたTakaが振り返って耳打ちしてきた。

「おい、もう始まるぞ。というか雪斗くんのビジュマジで今回やばくね?やばくね?」
「あんた本当にガチになってきてるじゃん……」

 そうこう言っている内に、キューが発される。急いで姿勢を正した。
 照明が落ちる。そして、華やかなレーザー。スタジオを一気に揺らす音。出だしから分かる、これは前回出した新曲だ。
 音の激しさとは裏腹に、やはり玲雅の歌声は甘い。『IC Guys』は全員が作詞作曲を行うため、ボーカルの玲雅はとくに誰にでも乗りこなす必要がある。しかし彼は、毎回その情熱で喰っていく。
 その激しさ、熱さ。いつも、ひじりの胸を打ってならない。

「何か……知り合ってから改めて聞くと、やっぱすげえな」

 Reoの呆然とした呟きに、Takaは「だろ」と得意げに返す。ひじりはただ、見入っていた。
 彼には、表情はない。ただ、熱を込めて、吐き出すその必死さが映っているだけだ。
 ……ああ、何てかっこいいんだろう。
 曲が、止んだ。盛大な拍手が包む。しかし、曲の尺からして恐らく次の曲があるはずだ。その予想通り、玲雅はカメラに目線を向けた。

「……続いては、新曲です」

 さっきとは打って変わって、柔らかなドラムの音。バラードの始まり方だ。
 さっきよりも静かな歌い出し。そのメロディには、聞き覚えがあった。しかし、今回は……完成している。

「……玲雅様」

 彼の目は、カメラに向いていた。分かっている、パフォーマンスなのだから。彼は、ファンに向けて歌っている。ファンだけでなく、あらゆる人に歌を届けようとしている。
 そうだ、それで……当たり前なのだ。なのに、なんで胸が痛いのだろう。
 すべての収録を終えた。『SIX RED』は馴れ合いを苦手にする性格のメンバーが多いせいか、打算のない打ち上げにはだいたい参加しない。行くとすればReoくらいだ。

「ひじり」

 控室に入ろうとしていたひじりを、玲雅が呼び止めた。

「今日、行かないの?打ち上げ。Reoくんは来るって言ってたけど」
「あ……さ、先帰ってますね」
「……分かった、気をつけてね。俺もすぐ帰るようにはするし」

 意外と玲雅は付き合いがいい。『IC Guys』というグループとしての付き合いがいい、というべきだろうか。実際他のメンバーも打ち上げには参加するようだった。
 ひじりは身支度を終えると、Reo以外のメンバーと合流した。Naokiがげんなりした顔をこちらに向けてくる。

「早く出るぞ」
「どしたのNaokiくん、ご機嫌ななめ?」
「さっきあの女子アナさんに捕まってたんだよ。俺が助けたけど、結構あの人しつこかったね」

 Souの言葉に、Naokiは力無く「俺ああいうタイプの女苦手」と返した。しかし、メンバーは知っている。Naokiのファンには、そういう女が多いことに。

「そういやHijiri、打ち上げ行かないの?ReoがHijiriくると思って探してたよ、『IC Guys』来るからって」
「あー……うん、家の事やらなきゃだし」
「そっか、もう一緒に住んでるもんね」

 そう呟いて、Souは何かを考え込む素振りを見せた。そして、口を開く。

「そういえば、あの女子アナさんも行くみたいだよ。打ち上げ」
「え?そりゃそうでしょ、自分の番組だし」
「いいの?Hijiri」
「なにが?」

 Souの言いたい事が分かったのか、Izumiもこちらを向いてきた。そして、何度も頷く。

「あんたはそれどころじゃなかっただろうけど、私には分かったよ。あの女子アナ、玲雅くんの事も狙ってるぽい」
「え」
「Izumiも思った?うん、俺も思った」
「え、え」
「だよね?目線の掛け方、Naokiくんの時と同じだったもんね」
「えっえっ」
「……やばいんじゃない?」

 二人の目線をじかに浴び、脳内がぐるぐると回り出す。しかし、何とか絞り出した。

「……でも、し、仕事だし。打ち上げも、あの人たちからしたら営業もかかってるし」
「それにかこつけてくるような狼がいるって話してんの」
「でも、あの人Naokiくん狙いなんじゃ」
「いーや私には分かる。あの女1グループに一人目星つけてる」
「そ、そんな性悪扱いは失礼なんじゃ……」

 そう言いつつNaokiを見ると、彼はしつこい程に頷いていた。

「いや、そうだ。そうに違いない。俺はあの手の女の考えてる事はよくわかる、だから苦手なんだよ」
「Naokiくん過去に何かあったの……?」
「とにかく!どうすんの、酒の席でうまいことされてたら!あんたの推しが、女子アナの毒牙にかけられたら!」

 Izumiのその言葉で、はっとする。そして、想像する。一瞬にして、血の気がひいた。

「無理無理無理無理無理無理無理無理!」
「Reo!今どの辺!?」
『あー?今タクシー待ってるけど。地下駐車場』
「Hijiri向かうから回収してあげて」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

隠れ御曹司の手加減なしの独占溺愛

冬野まゆ
恋愛
老舗ホテルのブライダル部門で、チーフとして働く二十七歳の香奈恵。ある日、仕事でピンチに陥った彼女は、一日だけ恋人のフリをするという条件で、有能な年上の部下・雅之に助けてもらう。ところが約束の日、香奈恵の前に現れたのは普段の冴えない彼とは似ても似つかない、甘く色気のある極上イケメン! 突如本性を露わにした彼は、なんと自分の両親の前で香奈恵にプロポーズした挙句、あれよあれよと結婚前提の恋人になってしまい――!? 「誰よりも大事にするから、俺と結婚してくれ」恋に不慣れな不器用OLと身分を隠したハイスペック御曹司の、問答無用な下克上ラブ!

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

契約結婚のはずが、幼馴染の御曹司は溺愛婚をお望みです

紬 祥子(まつやちかこ)
恋愛
旧題:幼なじみと契約結婚しましたが、いつの間にか溺愛婚になっています。 夢破れて帰ってきた故郷で、再会した彼との契約婚の日々。 ★第17回恋愛小説大賞(2024年)にて、奨励賞を受賞いたしました!★ ☆改題&加筆修正ののち、単行本として刊行されることになりました!☆ ※作品のレンタル開始に伴い、旧題で掲載していた本文は2025年2月13日に非公開となりました。  お楽しみくださっていた方々には申し訳ありませんが、何卒ご了承くださいませ。

お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜

Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。 渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!? 合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡―― だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。 「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき…… 《エブリスタ、ムーン、ベリカフェにも投稿しています》

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。

恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。 パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

処理中です...