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32.フットワーク軽過ぎで賞あげる。
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「ちょ、あれ『SIX RED』じゃん!」
「えっ何かの収録かな?」
飛行機はやはり最終便だった。しかしそれでもそこそこ乗客が居て、もう開き直ったメンバー達はあえてファンサービスに従事していた。
「Souくん可愛い~女の子みたい~!」
「Izumiさん美人過ぎない?ナマで見ると肌えぐいって!」
時折手を振ったりしたら、黄色い歓声が沸いた。それでも下手に注意されないように、最小限には留めていたが。
「で、問題はこれだよ。Naokiくんのプレゼントどうすっかだよ」
「Naokiの時間が空くのは13時頃か。くっそ、意外と時間ねえな」
「せっかくだし何人かに分かれてそれぞれ探す?撮れ高いけんじゃない?」
「サブリーダーちょっと口を慎んで。でも名案」
そういった会話の中、約2時間のフライトを終えた。ホテルはIzumi達が確保しており、すぐさま中に入る事がで来た。ちなみに、女性陣と男性陣でホテルは分かれている。ギリギリの予約だったため仕方なかったのだが。
シャワーを終え、ひと段落ついた頃。
「あれ、Hijiri何やってんの?」
同室のIzumiが、スキンケアをしながらひじりを見た。ひじりはずっと、スマートフォンを操作している。
「今日『IC Guys』の生配信がこの後あるんだけどね。それに合わせて曲を聴いて高めてる」
「何を?」
そう言いつつも、興味を引かれたのかIzumiがベッドにのぼってきた。そんなIzumiに、ひじりがイヤホンの片方を渡す。
「これ2年前に出た曲なんだけど、本当に良くてさ……2分12秒のところの玲雅様の吐息部分とんでもないよ。トぶよ」
「えっ、結局まだ様付けなの?もう彼女になって長くない?」
「本人いないところではまだ抜けないんだよね……」
以前出演したバラエティでも、そこはいじられた。
玲雅の恋人になった、とはいえ玲雅を崇拝する気持ちが減ったわけではない。何なら、『IC Guys』の番組観覧にまで応募している。それを聴いた、未だに荒れていたファン達も「それでこそHijiri」と少し鎮静化していたようだった。
そもそも『IC Guys』は、音楽的なファンの方が圧倒的に多い。そしてひじりからすれば不思議なのだが、玲雅に対して恋愛感情まで陥っているファンは案外少ない。その面はどちらかといえば雪斗が担っているようだった。そのためか、玲雅との熱愛発覚に関してはそこまで大ごとにはならなかった。
「っかー……本当にいい……声がいい……メロい……」
「毎日聴いてるんじゃないの……?」
時計は、23時30分を差そうとしていた。慌てて、画面をファンクラブサイトに切り替える。すると、少し混み合っているようだった。なので間に合った。
イントロと共に、映像が始まる。最初は、タクヤの自撮りからだった。
『こーんばーんみー!「IC Guys」でーす!』
「声でっか」
『タクヤ、もう日付回りそうなんだから。声落として。あ、今玲雅ちょっと席外してるけどすぐ戻ってきますー』
確かに、玲雅の姿は無かった。しかし、どうも服装がタクヤも雪斗もラフだ。休日仕様なのだろうか。
「えっこれまさか玲雅様も私服くるんじゃ!?」
「落ち着きなよ、あんたしょっちゅう見てるでしょ」
やはりこうなると、反応がヲタクに戻ってしまう。玲雅はやや呆れ気味というか、いつもそんなひじりに「今はプライベート」と説き伏せてくるのだが。ただ、この推し活こそがプライベートでもあるのだが。
やがて、扉が開いた。どうやら、どこかの室内のようだった。
『ただいま』
「私服!!!!!」
「はい隣に迷惑だからね!」
恍惚とした表情で画面に見入ってしまうひじりの頭に、Izumiの手刀が落ちる。それなりの威力だったが、それどころではなかった。
「あわわぁ……かっこよ……あまりにもかっこよ……」
『遅かったね。で、いたの?』
『うん。今皆急いでヘアメとかするって』
『まあアイドルだもんなー。俺達なんかこんなTシャツ姿なのになー』
「……ん?」
3人はベッドに並んで座っていた。しかし、備え付けの椅子も3つある。そして部屋の風貌からして、どこかホテルの一室のようだった。
「……まって、この部屋」
Izumiのつぶやきなど、今一切ひじりには聞こえていない。ただ、カメラに無表情を向ける玲雅に集中している。
『で、今日なんだけど。このクソわがままボーカルの要望でとある場所に来てまーす』
『ワガママかなあ、俺』
「そんなところも可愛いからいいです!!」
『僕は嬉しいけどね。せっかくだし楽しもうよ』
『雪斗ここ好きだもんね、先月も撮影来てなかったっけ』
「……先月?」
必死に、脳内を漁る。玲雅だけでなく、ひじりは『IC Guys』全員の公表スケジュールは把握している。雪斗は最近の件があったため余計にだ。
画面の向こうの、扉が開いた。
『どうもこんばんはー!「SIX RED」のReoぴでーす!』
『Souぴでーす』
『た、Takaぴでーす!』
「……。……。……はあああ!!!?」
Izumiの叫びより先に、ひじりの目が見開かれる。そして、Izumiの肩を掴んだ。
「どどどどどどどういう事!?なんであいつらいんの!?えっちょっIzumiちゃんがホテルとったんだよね!?」
「う、うん。3人部屋取れるのがあのホテルしかなくて。私たちの部屋も取ろうとしたんだけど、こっちの方が2人部屋が安かったから……」
「うわーーーーあいつらマジ●×▲▪️※!!!!」
「ちょっアイドルとして言ってはいけない事言うの禁止!」
画面の向こうで椅子をすすめられた3人は、早速腰かけていた。そうか、玲雅が席を外していた理由はこれか。というか、玲雅は今日から3日間オフだったはずなのに。そして、本当はひじりと明日会う予定にするつもりだった。
……まさか。
『いやーでもびっくりした!まさか「IC Guys」まで沖縄来てるなんてさ!もしかして飛行機一緒だった?』
『いや、多分俺達が一本分前の飛行機じゃないすかね?』
『うん。でもホテルまで一緒ってさすがに偶然がすごいよね。玲雅が予約したんだっけ?』
『そう。でも俺もびっくりしてる』
びっくりなど全然していなさそうで頷く玲雅に、Reoがへらへら笑ってこづく。その様子に「玲雅様に気安く触れるなヤリ●ン!」と声を荒げた。そんなひじりの頭に、もう一度Izumiの手刀が落ちる。玲雅自身はまんざらでもなさそうだった。
『僕達もそろってオフだったから、玲雅の沖縄行きに乗っかったんだよね』
『うん。というか俺が誘った』
Izumiの目線が、ひじりに向く。ひじりも頷いた。
「……追っかけてきちゃったねえ……?」
「きちゃったねえじゃないのよ」
玲雅の目が、カメラに再び向いた。そして、彼の口が動く。
『せっかくオフが被ったのに、自分だけどこか行こうなんてさ。ひどいね、俺の恋人サンは』
「声がいい!!!!!」
「なんかどっちもどっちな気がしてきた……」
「えっ何かの収録かな?」
飛行機はやはり最終便だった。しかしそれでもそこそこ乗客が居て、もう開き直ったメンバー達はあえてファンサービスに従事していた。
「Souくん可愛い~女の子みたい~!」
「Izumiさん美人過ぎない?ナマで見ると肌えぐいって!」
時折手を振ったりしたら、黄色い歓声が沸いた。それでも下手に注意されないように、最小限には留めていたが。
「で、問題はこれだよ。Naokiくんのプレゼントどうすっかだよ」
「Naokiの時間が空くのは13時頃か。くっそ、意外と時間ねえな」
「せっかくだし何人かに分かれてそれぞれ探す?撮れ高いけんじゃない?」
「サブリーダーちょっと口を慎んで。でも名案」
そういった会話の中、約2時間のフライトを終えた。ホテルはIzumi達が確保しており、すぐさま中に入る事がで来た。ちなみに、女性陣と男性陣でホテルは分かれている。ギリギリの予約だったため仕方なかったのだが。
シャワーを終え、ひと段落ついた頃。
「あれ、Hijiri何やってんの?」
同室のIzumiが、スキンケアをしながらひじりを見た。ひじりはずっと、スマートフォンを操作している。
「今日『IC Guys』の生配信がこの後あるんだけどね。それに合わせて曲を聴いて高めてる」
「何を?」
そう言いつつも、興味を引かれたのかIzumiがベッドにのぼってきた。そんなIzumiに、ひじりがイヤホンの片方を渡す。
「これ2年前に出た曲なんだけど、本当に良くてさ……2分12秒のところの玲雅様の吐息部分とんでもないよ。トぶよ」
「えっ、結局まだ様付けなの?もう彼女になって長くない?」
「本人いないところではまだ抜けないんだよね……」
以前出演したバラエティでも、そこはいじられた。
玲雅の恋人になった、とはいえ玲雅を崇拝する気持ちが減ったわけではない。何なら、『IC Guys』の番組観覧にまで応募している。それを聴いた、未だに荒れていたファン達も「それでこそHijiri」と少し鎮静化していたようだった。
そもそも『IC Guys』は、音楽的なファンの方が圧倒的に多い。そしてひじりからすれば不思議なのだが、玲雅に対して恋愛感情まで陥っているファンは案外少ない。その面はどちらかといえば雪斗が担っているようだった。そのためか、玲雅との熱愛発覚に関してはそこまで大ごとにはならなかった。
「っかー……本当にいい……声がいい……メロい……」
「毎日聴いてるんじゃないの……?」
時計は、23時30分を差そうとしていた。慌てて、画面をファンクラブサイトに切り替える。すると、少し混み合っているようだった。なので間に合った。
イントロと共に、映像が始まる。最初は、タクヤの自撮りからだった。
『こーんばーんみー!「IC Guys」でーす!』
「声でっか」
『タクヤ、もう日付回りそうなんだから。声落として。あ、今玲雅ちょっと席外してるけどすぐ戻ってきますー』
確かに、玲雅の姿は無かった。しかし、どうも服装がタクヤも雪斗もラフだ。休日仕様なのだろうか。
「えっこれまさか玲雅様も私服くるんじゃ!?」
「落ち着きなよ、あんたしょっちゅう見てるでしょ」
やはりこうなると、反応がヲタクに戻ってしまう。玲雅はやや呆れ気味というか、いつもそんなひじりに「今はプライベート」と説き伏せてくるのだが。ただ、この推し活こそがプライベートでもあるのだが。
やがて、扉が開いた。どうやら、どこかの室内のようだった。
『ただいま』
「私服!!!!!」
「はい隣に迷惑だからね!」
恍惚とした表情で画面に見入ってしまうひじりの頭に、Izumiの手刀が落ちる。それなりの威力だったが、それどころではなかった。
「あわわぁ……かっこよ……あまりにもかっこよ……」
『遅かったね。で、いたの?』
『うん。今皆急いでヘアメとかするって』
『まあアイドルだもんなー。俺達なんかこんなTシャツ姿なのになー』
「……ん?」
3人はベッドに並んで座っていた。しかし、備え付けの椅子も3つある。そして部屋の風貌からして、どこかホテルの一室のようだった。
「……まって、この部屋」
Izumiのつぶやきなど、今一切ひじりには聞こえていない。ただ、カメラに無表情を向ける玲雅に集中している。
『で、今日なんだけど。このクソわがままボーカルの要望でとある場所に来てまーす』
『ワガママかなあ、俺』
「そんなところも可愛いからいいです!!」
『僕は嬉しいけどね。せっかくだし楽しもうよ』
『雪斗ここ好きだもんね、先月も撮影来てなかったっけ』
「……先月?」
必死に、脳内を漁る。玲雅だけでなく、ひじりは『IC Guys』全員の公表スケジュールは把握している。雪斗は最近の件があったため余計にだ。
画面の向こうの、扉が開いた。
『どうもこんばんはー!「SIX RED」のReoぴでーす!』
『Souぴでーす』
『た、Takaぴでーす!』
「……。……。……はあああ!!!?」
Izumiの叫びより先に、ひじりの目が見開かれる。そして、Izumiの肩を掴んだ。
「どどどどどどどういう事!?なんであいつらいんの!?えっちょっIzumiちゃんがホテルとったんだよね!?」
「う、うん。3人部屋取れるのがあのホテルしかなくて。私たちの部屋も取ろうとしたんだけど、こっちの方が2人部屋が安かったから……」
「うわーーーーあいつらマジ●×▲▪️※!!!!」
「ちょっアイドルとして言ってはいけない事言うの禁止!」
画面の向こうで椅子をすすめられた3人は、早速腰かけていた。そうか、玲雅が席を外していた理由はこれか。というか、玲雅は今日から3日間オフだったはずなのに。そして、本当はひじりと明日会う予定にするつもりだった。
……まさか。
『いやーでもびっくりした!まさか「IC Guys」まで沖縄来てるなんてさ!もしかして飛行機一緒だった?』
『いや、多分俺達が一本分前の飛行機じゃないすかね?』
『うん。でもホテルまで一緒ってさすがに偶然がすごいよね。玲雅が予約したんだっけ?』
『そう。でも俺もびっくりしてる』
びっくりなど全然していなさそうで頷く玲雅に、Reoがへらへら笑ってこづく。その様子に「玲雅様に気安く触れるなヤリ●ン!」と声を荒げた。そんなひじりの頭に、もう一度Izumiの手刀が落ちる。玲雅自身はまんざらでもなさそうだった。
『僕達もそろってオフだったから、玲雅の沖縄行きに乗っかったんだよね』
『うん。というか俺が誘った』
Izumiの目線が、ひじりに向く。ひじりも頷いた。
「……追っかけてきちゃったねえ……?」
「きちゃったねえじゃないのよ」
玲雅の目が、カメラに再び向いた。そして、彼の口が動く。
『せっかくオフが被ったのに、自分だけどこか行こうなんてさ。ひどいね、俺の恋人サンは』
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