アメリカで猫と暮らす 大騒ぎだけどHappy life!

真白タミイ

文字の大きさ
上 下
22 / 50
大猫時代

大きい猫用のキャットタワー

しおりを挟む
 夜明け前、ルークはリーンを抱き抱え、魔女の城から出て、『魔女の森』の外に向かった。
 あの後、魔女王ソフィアによって『移植転移』をされたリーンの体調が悪くなり、熱を出して動けなくなったからだ。
 ソフィアいわく、体内の調整が出来ておらず、身体に馴染むまでしばらくかかるそうだ。
 だが、リーンをこのまま『魔女の森』に置いておくわけにいかず、森が閉じてしまう前に、軽量魔法を使ってリーンを抱き上げ、ソフィアが『魔女の抜け道』を作ってくれて、出入口付近まで連れてきてくれた。
「…よろしくね」
 ソフィアがルークに声をかけてきた。
 ルークは眠るリーンを抱えたまま、足を止め、ソフィアの方に振り向いた。
「…貴女は、ソレでいいのか?」
 気になっていたことを聞く。
「…うん?…子供の事?」
 ソフィアは微笑んで言う。
「リーンの事、信用してるから…。それに、私が育てるより、リーンの元で自由に選ばせてあげたいの」
 子供の未来を…か…。
 彼女にも何か思うことが有るのだろう。
 リーンと同じ様に長寿で、いつから魔女王として君臨しているのか分からないが、彼女には選ぶ事が出来なかったのかもしれない…。
「…俺の元に来ても、王族として逃れられない事も有るぞ」
「…それでも…」
 ソフィアは苦笑いしている。
 それでも、彼女の体内から外に出れず、命が消えるより…リーンの子供として、産まれてくることを望んでいる…か…。
 ルークはため息を付き、リーンを抱え直すとソフィアに背を向けて『魔女の森』を抜け、バラのアーチをくぐり、小川に掛かる橋を渡った。
 背中に視線を感じたが、ルークは振り向かず真っ直ぐに、アオとカズキが待つ馬車へと急いだ。


 森を抜け街道に近付くと、見慣れた馬車が道を塞ぐように停まっていた。
 見慣れた、ルークの屋敷の馬車だ。
 ルークが馬車に近付くと、こちらに気がついたガズキが馬車から降りてきた。
「…ルーク様!…リーンさん…」
「ルーク様!」
 アオも馬車から顔を覗かせ、降りてくる。
「リーンさんはどうしたんですか?」
「詳しい話は移動しながらだ」
 アオはすぐさま馬車内の座席に、毛布を何枚も敷いて横たわる場所を作り、丸めた毛布を枕代わりにすると、そこへルークが、眠るリーンをそっと横たえる。
 ガズキは準備しかけた朝食の食材を一旦終い、移動の準備を始め、日が昇り、辺りが明るくなって来る頃には、街道から馬車を動かし、少し先にある馬車の休憩所へむかった。


 休憩所には小さな小川が有り、馬車を並んで停車することができ、誰でも使用できるので、馬に水や食事を与えたり、自分達の食事も出きる場所だ。
 そこへ馬車を停車させ、ガズキは馬に水と食事を与え、アオが馬車の外でお湯を沸かして、朝食の準備を始めた。
 リーンは横たわったまま…。
 ルークはそんなリーンの髪を撫でる。
 朝食の準備が出きると、馬車の中に三人顔を見合わせて、朝食を食べながら、ルークが『魔女の森』であったことを話し始めた。
 アオもガズキも神妙な顔をして、頭を抱えながら、取りあえず口に食事を運んでいた。
「ルーク様はそれで良いんですか?」
 『魔女の森』での事が話し終わると、アオが聞いてくる。
 まあ、言われると思った。
「…リーンの子供だろ。俺にはソレだけで良い…」
 誰が何て言おうと、リーンの全てを守ると決めたのだ。
 例えソレが、魔女王との子供だとしても…。
「…ルーク様がそれで良いのなら、俺たちは全力で見守りますよ」
 アオとガズキは顔を見合せ頷いて、そう言って微笑んだ。
 良い仲間を持って俺は幸せだな…。
 ルークは眠るリーンをチラリと見て、残りの朝食を食べ始めた。




しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

沢田くんはおしゃべり

ゆづ
青春
第13回ドリーム大賞奨励賞受賞✨ありがとうございました!! 【あらすじ】 空気を読む力が高まりすぎて、他人の心の声が聞こえるようになってしまった普通の女の子、佐藤景子。 友達から地味だのモブだの心の中で言いたい放題言われているのに言い返せない悔しさの日々の中、景子の唯一の癒しは隣の席の男子、沢田空の心の声だった。 【佐藤さん、マジ天使】(心の声) 無口でほとんどしゃべらない沢田くんの心の声が、まさかの愛と笑いを巻き起こす! めちゃコミ女性向け漫画原作賞の優秀作品にノミネートされました✨ エブリスタでコメディートレンドランキング年間1位(ただし完結作品に限るッ!) エブリスタ→https://estar.jp/novels/25774848

霜月は頭のネジが外れている

霜月@サブタイ改稿中
エッセイ・ノンフィクション
普段ゆるーくポイ活をしている私(作者:霜月)が、あるポイ活サイトで『ごろごろしながら小説書くだけで二万稼げる』という投稿をみて、アルファポリスへやってきた。アルファポリスに来て感じたこと、執筆のこと、日常のことをただ書き殴るエッセイです。この人バカだなぁ(笑)って読む人が微笑めるエッセイを目指す。霜月の成長日記でもある。

雑記 城のある町にて

犬束
エッセイ・ノンフィクション
 お城のある町に住んでいます。  徒然なるまま日々のこと、なんとなく考えたり思い浮かべたりしたことを、雑多に綴ります。

日本経済とサラリーマンの人生サバイバル戦略

坂崎文明
エッセイ・ノンフィクション
日本経済中心ですが、世界経済の予測からサラリーマンのサバイバル戦略を考察してみます。 日本経済とサラリーマンの人生サバイバル戦略 作者:坂崎文明(小説家になろう)からの転載になります。https://ncode.syosetu.com/n1979cm/  作品の画像は更新が滞ってる幻の人気作のものです。そろそろ書けそう。 安倍晴明と安東総理のやり直し転生譚 坂崎文明 https://www.alphapolis.co.jp/novel/771049446/809038308

50歳の独り言

たくやす
エッセイ・ノンフィクション
自己啓発とか自分への言い聞かせ自分の感想思った事を書いてる。 専門家や医学的な事でなく経験と思った事を書いてみる。

処理中です...