19 / 50
大猫時代
静脈瘤の手術 怖いアメリカの病院と優しいナース
しおりを挟む2017年5月10日、静脈瘤の手術をした。
乳がん関係の大きな手術を含めると10回目の手術だ。14年前の手術の記録は(乳がんサバイバーと呼ばれて)と言うエッセイに詳しく書いた。命にかかわることでなければ、もう手術はしたくないと思っていた。
「もう手術嫌なんです。大変な手術だったら、もうしたくないんです」と言った私に
「イージーイージー」と言うドクター。そりゃあ、手術するほうはイージーかもしれないが。
「切ったり縫ったりしないから、血管の中だけだから前日の準備もないよ、全身麻酔じゃないしね」
「え!切らない?全身麻酔ではない?部分麻酔ですか?」
「うん、そう。血管をレーザーで焼くのとスーパーグルーで埋めちゃうの」
「え~~グルー?」
「そう呼んでるだけ、医療用だよ、もちろん」
てな会話をした。そして広範囲なので2回にわけてしてもいいよと言うドクターに「1回で!」と答えた。私は女だけど男らしいのだ。
「じゃあ、当日は腿の方からで気持ち悪くなったら、やめよう。出血が多いからねー」
うう、聞いてないよ、そんなこと。でもまあ「何回もの大手術に耐えたんだもん、だいじょうぶ」と舐めてかかっていた。
そして手術当日。
舐めてかかっていたけれど、手術台や並んでいる器具を見るとやはりドキドキしてきた。
手術が始まる直前「今日は医学生の見学が入るんだけど良いですか?」と聞かれた。インターンや生徒の見学に良い思い出がない。出産時に見学が入り、股間を覗き込んで「うわあ~」と吐きそうな顔をされた。
気持ちはわかるが大変失礼だ。
それでも、どんな名医もきっと「初めての日」があったはずで、やはり練習が必要だよねと優しい私は快く了解した。
そしてすぐに後悔した。
3人ぞろぞろ入ってきて、関係ない話を延々してる。 ベッドに寝かされてる私。手術着と片足はむき出しだ。ドクターは「さ、始めるよ~」とお気楽な感じで手を洗っている。助手も一緒に長い間手を洗う。そして手袋をしてマスクを付ける。
左足の腿の上から足首までの広範囲なので、かなり(つけね)のところから消毒が始まった。掛けてある布をぐいっと引き上げ、太もももあらわに。そして下着も上にずらされる。足元にいた生徒全員におパンツを見られた。そこはまだ見なくて良いのに。術式が始まると流石におとなしくなり注目している。
しかし、よく見ると音楽に合わせて体揺らしてる!のりのりだ。 もしかしてずっと踊ってるのかと思ったが、途中から決められた仕事をやりだした。
何かの器具を取り出そうとしてドガシャーンと落とす。手術でナーバスになっている私は飛び上がりそうになった。そして音楽が気に入らないのか勝手に曲を変えてる。
手術台の真ん中で半ケツ出してる姿で「あ~もうまた落としたあ」「また踊ってるう~」「手袋してるのにラジカセのボタンいじってる」とずっと心配だった。気の強いアメリカ女性ならきっと「出ていけえ」と叫ぶだろう。
手術台の上でまな板の上の鯉状態な私。麻酔注射も結構痛く、細かい作業中で真剣なドクターと助手の前で何も言えなかった。一度真上の大きなランプを見るとミラーが真っ赤に染まっていて「アレはワタシの血?」と思うと意識もすうっと遠のきそう(全然男らしくなかった)
手術は1時間半ほどで終わり、包帯で足をきつく巻かれて家に帰り、その日は延々と寝た。手術そのものよりも生徒のトレーニングの方に疲れてしまった。
ベッドには猫が当然のように乗ってきた。コタローは普段ベッドで寝ないのだが、具合が悪い日は必ず2匹で飛び乗ってくれる。 さすがに足の上に乗ってフミフミはしなかった。 どちらも顔を覗き込み、そして添い寝をしてくれた。もちろん猫は何も言わない。 ゴロゴロと言いながらそばにいる。
痛みもイライラもすーっと消えていく。熟睡して目が覚めると、チャチャがまた顔を覗き込んでいた。「だいぶ良くなった?」というように。
にゃんずはあの日の生徒よりも何倍も素晴らしい看護師なのであった。目が覚めると2匹がそばに居てくれる。気がつくと顔を覗きにやってきてくれる。何度も何度もくりかえし。
ただし、食いしん坊のコタローさんはドーンと患者の胸の上に乗って「ごはん」と言ってきた。お腹が空いている時は容赦なしのナースなのだった。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

英語どころか標準語さえちょうろくじゃない私が異国に住んでしまった件
凛江
エッセイ・ノンフィクション
表題通りの話。全部実話です。
脚色は一切ありません(笑)。
こんな話需要が無いと思いますが、似たような経験してる人が目を止めてくれるといいなぁと思って書いてみました(笑)。
それから、今は疎遠になってしまった、『向こうで出会った人たち』の誰かも気づいてくれると嬉しいです。
因みに、『ちょうろく』は『満足に』みたいな意味です。
私は標準語だと思っていたのですが方言みたいですね。
追記:時を経てマレーシアに住むことになったので、そちらでの生活も書いてみたいと思います。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
創作の役に立つかも知れないし役に立たないかも知れないメモ的なようなものかも知れない物
神光寺かをり
エッセイ・ノンフィクション
何かの役に立つかも知れないし、役立たずかも知れないテキストデータです。
この記事は過去にTwitterアカウント(@syufutosousaku)のツイートや、個人ブログの記事を再編集したものです。
※随時更新するかも知れません。
※当方の間違い、スペルミス、取り違えなど御座いましたら、こっそりご指摘ください。
※この作品は、ノベルアップ+にも掲載しています。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる