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大猫時代
もて女テクのコタローさんと引退後のおとうたん。
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夫はどちらかと言うとコタローの方が好きかもしれない。
チャチャは夫の涙目のおかげで我が家の子になったのに、毎日のように「シャ~ッ」と威嚇する。
恩を仇で返しまくっているのだ。
しかしコタロウは夫を見かけると、にゃ~んと鳴きながらトットットと走り寄ってくる。
夫の顔がぱっと輝く。目はハート型になっている。
「ああ~~こたちゃ~~ん、かわいいねえ~~」
どこからそんな声が出るのかというような甘い声で言うと頭を撫でる。本当は抱っこしたいのだが、残念なことにコタロウは抱っこが大嫌いなのだ。
小首をかしげて、かわいい声で「にゃああん」と鳴く。そして足元にすりよる。そっと可愛い顔で夫を見上げる。
もう我慢できない夫。鼻息荒くなったおっさん、いや、おとうたんは
「Come here」と抱っこすると、コタロウは腕をつっぱり足をつっぱり大暴れして、スルリと腕から抜けて飛び降りる。
心は奪っておいて、決して抱かせない。
手の届かないところまで走っていく。それからおもむろに振り返って、ひときわかわいい声で「にゃああん」そして、うふっという感じに首を傾げる。
「あああ~かわいい~待ってええ」
夫の心を完全に奪っている。
モテ女のテクを全部身につけている」とコタローさん。そしてチャチャは今日もとりあえず威嚇しとくか。と言う感じに「ハーッ」とやっている。
・・・
しかし、軍を引退してから事態は一変した。
ほとんど家にいなかった変なおじさんが毎日家にいる。 そしてにゃんずにご飯をあげる係になった。
おとうたんの猛烈なモテキがやってきた。
コタローもチャチャさえもが「にゃあ~ん」と甘い声で足元にまとわりつく。
目尻を下げて「な~に~ごはん~?」とすごく嬉しそうだ。ソファーに座ってテレビを見ていると横にぴょーんと乗ってくるようにもなった。
「うわあ~見てえ~」頬がピンクに染まり乙女のようだ。こんな嬉しそうな顔見たことない。
近いうちにきっと泣く。そう信じている。
軍曹で救命士だった夫。 毎日ストレスとの戦いだった。 引退してしばらく腑抜けになってしまっていた。
どうしていいかわからないように、ボーッとしていたこともあり、鬱になったらどうしようと心配したけれどニャンズに癒やされ、引退ライフをエンジョイしている。
そして、その後。猫たちは毎日家にいるおとうたんにすっかり慣れてしまった。その頃大学を卒業して息子が家に帰ってきた。
猫たちはお兄ちゃんが大好きなのだ。
おとうたんのモテモテ黄金時代はあっという間に終わりを迎えたのだった。
ごめんね、おとうたん。
チャチャは夫の涙目のおかげで我が家の子になったのに、毎日のように「シャ~ッ」と威嚇する。
恩を仇で返しまくっているのだ。
しかしコタロウは夫を見かけると、にゃ~んと鳴きながらトットットと走り寄ってくる。
夫の顔がぱっと輝く。目はハート型になっている。
「ああ~~こたちゃ~~ん、かわいいねえ~~」
どこからそんな声が出るのかというような甘い声で言うと頭を撫でる。本当は抱っこしたいのだが、残念なことにコタロウは抱っこが大嫌いなのだ。
小首をかしげて、かわいい声で「にゃああん」と鳴く。そして足元にすりよる。そっと可愛い顔で夫を見上げる。
もう我慢できない夫。鼻息荒くなったおっさん、いや、おとうたんは
「Come here」と抱っこすると、コタロウは腕をつっぱり足をつっぱり大暴れして、スルリと腕から抜けて飛び降りる。
心は奪っておいて、決して抱かせない。
手の届かないところまで走っていく。それからおもむろに振り返って、ひときわかわいい声で「にゃああん」そして、うふっという感じに首を傾げる。
「あああ~かわいい~待ってええ」
夫の心を完全に奪っている。
モテ女のテクを全部身につけている」とコタローさん。そしてチャチャは今日もとりあえず威嚇しとくか。と言う感じに「ハーッ」とやっている。
・・・
しかし、軍を引退してから事態は一変した。
ほとんど家にいなかった変なおじさんが毎日家にいる。 そしてにゃんずにご飯をあげる係になった。
おとうたんの猛烈なモテキがやってきた。
コタローもチャチャさえもが「にゃあ~ん」と甘い声で足元にまとわりつく。
目尻を下げて「な~に~ごはん~?」とすごく嬉しそうだ。ソファーに座ってテレビを見ていると横にぴょーんと乗ってくるようにもなった。
「うわあ~見てえ~」頬がピンクに染まり乙女のようだ。こんな嬉しそうな顔見たことない。
近いうちにきっと泣く。そう信じている。
軍曹で救命士だった夫。 毎日ストレスとの戦いだった。 引退してしばらく腑抜けになってしまっていた。
どうしていいかわからないように、ボーッとしていたこともあり、鬱になったらどうしようと心配したけれどニャンズに癒やされ、引退ライフをエンジョイしている。
そして、その後。猫たちは毎日家にいるおとうたんにすっかり慣れてしまった。その頃大学を卒業して息子が家に帰ってきた。
猫たちはお兄ちゃんが大好きなのだ。
おとうたんのモテモテ黄金時代はあっという間に終わりを迎えたのだった。
ごめんね、おとうたん。
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