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第一章 メルトヴァル学院での日々
攻略情報 その3
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⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫
攻略対象3人目・シュドヘル様。
『シュドヘル・カルディア・ヴィッテンバーグ』が正式な名前。氷の高位精霊カルセルテの加護を持つ。
ヴィッテンバーグ公爵家の次男で、魔力属性は氷。
年齢は18歳。
兄はパルヴァンの王太子レシェウス様の側近。自身は第二王子クルシェット様の側近候補。
身体を動かすよりは頭で考えるほうが得意。
ストランディスタ王国のクレイシス侯爵家とは親戚。
シーラとの出会いは、シュドヘル様の婚約者リンジー様が、他の令嬢たちから責め立てられているのをシーラが助けるイベントを起こすことで発生する。その際、シュドヘル様から『後日改めて礼をしたい』と公爵家へ招かれる。彼のイベントは、連続して起きやすいそうです。
行動パターンは、学院では魔法研究室、図書室、生徒会室など。学院外はヴィッテンバーグ公爵家、クラウド伯爵家など。
エンディングは、リンジー様が魔物との戦闘で瀕死の重傷を負い、邪気に侵されてしまいます。それをシーラがリュミエルの力を借りて、最高難度の治癒術を使い癒す。リンジー様は一命を取り留め、それを喜ぶシュドヘル様とリンジー様は、それが恋愛感情ではなく、兄妹のような親愛のものであったと気付き、お互いのためだと婚約を解消する。そしてシュドヘル様はシーラに『君といる時はリンジーとは違う感情を感じていた』と、結婚を前提とした付き合いを申し込む。その3年後、学院を卒業したシーラと第二王子の正式な側近となったシュドヘル様は結婚。後に5人もの子宝に恵まれた、というのがシュドヘル様ルートの個別エンドだそうす。
⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫
「幼馴染みとはいえ、政略結婚ではあるからな。ゲームとやらならともかく、両家の関係を乱すようなことなど出来るわけないだろう」
「まあ……お互い、『家のため』と割り切っていますからね。それでも、私なりに貴方に好意はありますのよ?」
「そんなことは解っている。そもそもお前を妻にしたいと思っていなければ、お前の素を知った時点で婚約など解消している」
「そ、そうですか………」
おぉ……リンジー様が演技ではなく純粋に頬を紅潮させていますね。シュドヘル様にしても、本当に嫌ならとうに縁を切っている、と取れる意味合いの台詞が出てくる辺り、彼もリンジー様に対して恋愛的な感情がある、と断言しているようなものですよね。
「こうして見ると、ソールの行動範囲が広いのではなく、シルディオの行動範囲が狭いだけなのですね。身体を動かすだけでなく、勉学も疎かにしてはいけませんよ?」
「いえ、ルティウス様……!あくまでゲームの話ですから……………‼私は脳筋ではありませんから‼」
妙に納得してしまっているルティウス様に、シルディオ様が必死です。
「ゲームシナリオを聞いて気付いたけど、現実のシュドヘル殿の“妹ポジション”はリュミエルだよね?」
「たしかに、そうですね。(まあ僕的にはライバルが増えなくてよかったです)」
「?ルティウス様、何か仰いましたか?」
「いえ?気のせいだと思いますよ、リュミエル」
『………………』
「クーシェ、何か僕に言いたいことがあるんですか?」
『ウウン、ナンデモナイヨ』
シャウドの言葉に同意を示したあとの最後にボソッと何かを呟かれたような気がしたのですが。そしてクレイシェス、貴方は何故片言なのですか。
「そういえば出会いイベントって、やっぱり潰れてるんだよね?」
「ええ。ゲーム通りに動いてあげる義理などありませんでしたので、切っ掛けとなる事件そのものを潰させて頂きましたからね」
「お前の本性には手を焼かされるが……その一点だけは感謝している」
「あら、お誉めに与り光栄ですわ、クルシェット殿下」
「気にするな。別に誉めてはいない」
ゲームの『リンジー』様と現実のリンジー様の差を認識して「現実もゲームのようにもう少し淑やかならよかったのに……」とも呟いていた主に、即座に切り返すリンジー様………再び火花を散らし始めただけ、とも言いますが。
「そういえば、カルセルテとはどういった精霊なんですか?」
『ああ、あの子。一言で言えば無口で物静かな子だよ』
「しばらく姿を見ないと思ってたんだけど。パルヴァンの何処かにはいるみたいなんだよね」
「そうなんですか………」
クレイシェスだけでなく、シャウドも会ったことがあるらしく、それぞれ氷の精霊の人物像を教えてくれました。
この国にいるというなら一度会ってみたいですね、その精霊。
⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫
攻略対象4人目・クルシェット様。
『クルシェット・レリシオン・パルヴァン』が正式な名前。地の高位精霊クレイシェスの加護を持つ。
年齢は17歳。
パルヴァンの第二王子。魔力属性は地。
側室である母親が彼を産んで間もなく亡くなっており、彼自身は病弱だったのもあり、甘やかされて育つが、基本は兄想いで陰では努力家。周囲には我が儘王子として振る舞い、兄の王位継承の妨げにならないようにしている。
シーラとの出会いは、『聖なる乙女』の噂を聞いて会ってみたくなった彼が教室に現れることで発生する。なお、このイベントは、シュドヘル様の出会いイベントを起こしておかないと発生しないそうです。
行動パターンは、学院内は生徒会室、図書室、修練場、音楽室。学院外は王城、商店街。
エンディングは、シーラと共に国を救った功績に対して、彼はシーラとの婚姻を褒賞として望みます。その際、クルシェット様は戸惑う彼女に、『お前に命を助けてもらったことがあるんだ。だから、俺がお前を幸せにしたい。そのために努力をしてきたんだ』と告げます。それを聞いたシーラは『あの時死にかけてた子が殿下だったなんて………』と泣き笑いの表情を浮かべて彼の求婚を受け入れ、二人は無事結ばれる。というのが、クルシェット様ルートの個別エンドだそうです。
⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫
「誰が我が儘だ!」
「私がそう言った訳ではありませんわ。ゲームではそうだと申し上げただけではないですか、ゲームでは」
「何故2回言う必要があるんだ……!」
「あまりリュミエルを振り回すようならゲームのようになるのでは?と思っただけですわ」
「その言葉そっくりそのままお前に返してやる」
収まったかに見えた火元が再び燃え上がりました。『喧嘩するほど仲がいい』とはよく言ったものですが……この二人の場合、反りが合わないといいますか………犬猿の仲ではないはずですが。
あまりに不毛なやり取りを繰り返す二人を止めるべきか悩んでいると、彼らの頭上を紙の束がふわふわと浮かんでいるのに気がつきました。そして次の瞬間、スパンっという音が聞こえました。
「痛っ!」
「あうっ⁉」
小気味いい音がしましたね。魔法によるものだと思うのですが。
「全く………お前たちは相変わらずだな」
そこにいたのはレシェウス様でした。ああ、やはりあれはレシェウス様でしたか。見事な魔力制御による風の魔術でしたね。
残念な点はその見事な魔術制御が目下ツッコミにしか使われていないことですが。
「……!あ、兄上⁉」
「レシェウス殿下、何をなさいますの……⁉」
いつの間にやら合流していた王太子殿下に突然頭を叩かれれば驚きますよね。
「お前たちはいつまでしょうもないやり取りをしているんだ。というか、攻略情報とやらに対する考察は述べなくていいのか」
「と言いましても……ソールが言った台詞とほぼ同じことしか言えませんよ……」
『ああ、キャラ設定の方くらいしか合ってないって言ったやつだよね』
たしかに、合っているのはそちらだけですね。そもそも私と契約している時点で主の攻略ルートは潰れたようなものですし。
「というか、主、クレイシェスの加護受けてたんですね……」
『あれ、自分が扱える魔力属性から精霊の名の一部をもらって名付けるものだしね。相性がいいと感じると、ボクら側が意識しなくても、自然と加護が宿るものだしね』
「『共鳴者』程ではなくても、その精霊の護りがあるんだよ」
私の呟きに、クレイシェスとシャウドが説明してくれました。やはり、ゲームを知っているのと、現実を知るのでは全く違いますね。
「そういえば、オレのルートとやらには『ライバル令嬢』は出ないのか?」
「『どちらが王位を継ぐのに相応しいのか』とか他の貴族が争っているせいで、レシェウス殿下とクルシェット殿下のルートでは決まった人物は出てきませんわ」
「ああ………そこは現実と一緒なのか……………」
「主、心中お察しします」
「お前も立派に“被害者”だしな」
本当に勝手なもので、彼らはこちらの了承を得ずに派閥を作り、さも自分達が忠臣のように振る舞い、やりたい放題しているのです。あまりに度が過ぎてきたので、『そろそろ粛清に乗り出すか……』とレシェウス様が物騒な台詞を呟くくらいには事態が深刻なものになってはいるのです。主が『王位に興味はない。私は兄上を補佐する道を選ぶ』と方々で宣言なさっているにも関わらず。
私も『うっかり手が滑って暗器を投げてしまっても許されるでしょうか』と主に言ったところ、普段は一も二もなく止める主が、『それはまだやるな。言い逃れの出来ない証拠を掴んでからだ』と黒い笑み付きで言うくらいにはストレスが溜まっているという訳です。
閑話休題。
「私が最初に言った通り、シーラはクルシェット殿下に関しては攻略する気が無くなったと見ていいと思いますわ」
「その分より面倒な絡まれ方をされるという話だしな……」
さすがに王族相手に危害を加える真似はしないと思いたいですが………
微妙な空気が漂ったところで、場を切り替えるようにリンジー様が言いました。
「ちょうどいいタイミングでレシェウス殿下が来てくださいましたわね。次は殿下ですから」
「………気は進まないが……聞くしかないんだろうな。どう考えても設定とやらしか合ってない気がするんだが」
「兄上、お気持ちはお察ししますが、私たちはそれを身を以て体験しました」
「そうか」
レシェウス様は疲れたように溜め息を吐いていました。
攻略対象3人目・シュドヘル様。
『シュドヘル・カルディア・ヴィッテンバーグ』が正式な名前。氷の高位精霊カルセルテの加護を持つ。
ヴィッテンバーグ公爵家の次男で、魔力属性は氷。
年齢は18歳。
兄はパルヴァンの王太子レシェウス様の側近。自身は第二王子クルシェット様の側近候補。
身体を動かすよりは頭で考えるほうが得意。
ストランディスタ王国のクレイシス侯爵家とは親戚。
シーラとの出会いは、シュドヘル様の婚約者リンジー様が、他の令嬢たちから責め立てられているのをシーラが助けるイベントを起こすことで発生する。その際、シュドヘル様から『後日改めて礼をしたい』と公爵家へ招かれる。彼のイベントは、連続して起きやすいそうです。
行動パターンは、学院では魔法研究室、図書室、生徒会室など。学院外はヴィッテンバーグ公爵家、クラウド伯爵家など。
エンディングは、リンジー様が魔物との戦闘で瀕死の重傷を負い、邪気に侵されてしまいます。それをシーラがリュミエルの力を借りて、最高難度の治癒術を使い癒す。リンジー様は一命を取り留め、それを喜ぶシュドヘル様とリンジー様は、それが恋愛感情ではなく、兄妹のような親愛のものであったと気付き、お互いのためだと婚約を解消する。そしてシュドヘル様はシーラに『君といる時はリンジーとは違う感情を感じていた』と、結婚を前提とした付き合いを申し込む。その3年後、学院を卒業したシーラと第二王子の正式な側近となったシュドヘル様は結婚。後に5人もの子宝に恵まれた、というのがシュドヘル様ルートの個別エンドだそうす。
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「幼馴染みとはいえ、政略結婚ではあるからな。ゲームとやらならともかく、両家の関係を乱すようなことなど出来るわけないだろう」
「まあ……お互い、『家のため』と割り切っていますからね。それでも、私なりに貴方に好意はありますのよ?」
「そんなことは解っている。そもそもお前を妻にしたいと思っていなければ、お前の素を知った時点で婚約など解消している」
「そ、そうですか………」
おぉ……リンジー様が演技ではなく純粋に頬を紅潮させていますね。シュドヘル様にしても、本当に嫌ならとうに縁を切っている、と取れる意味合いの台詞が出てくる辺り、彼もリンジー様に対して恋愛的な感情がある、と断言しているようなものですよね。
「こうして見ると、ソールの行動範囲が広いのではなく、シルディオの行動範囲が狭いだけなのですね。身体を動かすだけでなく、勉学も疎かにしてはいけませんよ?」
「いえ、ルティウス様……!あくまでゲームの話ですから……………‼私は脳筋ではありませんから‼」
妙に納得してしまっているルティウス様に、シルディオ様が必死です。
「ゲームシナリオを聞いて気付いたけど、現実のシュドヘル殿の“妹ポジション”はリュミエルだよね?」
「たしかに、そうですね。(まあ僕的にはライバルが増えなくてよかったです)」
「?ルティウス様、何か仰いましたか?」
「いえ?気のせいだと思いますよ、リュミエル」
『………………』
「クーシェ、何か僕に言いたいことがあるんですか?」
『ウウン、ナンデモナイヨ』
シャウドの言葉に同意を示したあとの最後にボソッと何かを呟かれたような気がしたのですが。そしてクレイシェス、貴方は何故片言なのですか。
「そういえば出会いイベントって、やっぱり潰れてるんだよね?」
「ええ。ゲーム通りに動いてあげる義理などありませんでしたので、切っ掛けとなる事件そのものを潰させて頂きましたからね」
「お前の本性には手を焼かされるが……その一点だけは感謝している」
「あら、お誉めに与り光栄ですわ、クルシェット殿下」
「気にするな。別に誉めてはいない」
ゲームの『リンジー』様と現実のリンジー様の差を認識して「現実もゲームのようにもう少し淑やかならよかったのに……」とも呟いていた主に、即座に切り返すリンジー様………再び火花を散らし始めただけ、とも言いますが。
「そういえば、カルセルテとはどういった精霊なんですか?」
『ああ、あの子。一言で言えば無口で物静かな子だよ』
「しばらく姿を見ないと思ってたんだけど。パルヴァンの何処かにはいるみたいなんだよね」
「そうなんですか………」
クレイシェスだけでなく、シャウドも会ったことがあるらしく、それぞれ氷の精霊の人物像を教えてくれました。
この国にいるというなら一度会ってみたいですね、その精霊。
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攻略対象4人目・クルシェット様。
『クルシェット・レリシオン・パルヴァン』が正式な名前。地の高位精霊クレイシェスの加護を持つ。
年齢は17歳。
パルヴァンの第二王子。魔力属性は地。
側室である母親が彼を産んで間もなく亡くなっており、彼自身は病弱だったのもあり、甘やかされて育つが、基本は兄想いで陰では努力家。周囲には我が儘王子として振る舞い、兄の王位継承の妨げにならないようにしている。
シーラとの出会いは、『聖なる乙女』の噂を聞いて会ってみたくなった彼が教室に現れることで発生する。なお、このイベントは、シュドヘル様の出会いイベントを起こしておかないと発生しないそうです。
行動パターンは、学院内は生徒会室、図書室、修練場、音楽室。学院外は王城、商店街。
エンディングは、シーラと共に国を救った功績に対して、彼はシーラとの婚姻を褒賞として望みます。その際、クルシェット様は戸惑う彼女に、『お前に命を助けてもらったことがあるんだ。だから、俺がお前を幸せにしたい。そのために努力をしてきたんだ』と告げます。それを聞いたシーラは『あの時死にかけてた子が殿下だったなんて………』と泣き笑いの表情を浮かべて彼の求婚を受け入れ、二人は無事結ばれる。というのが、クルシェット様ルートの個別エンドだそうです。
⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫⚫
「誰が我が儘だ!」
「私がそう言った訳ではありませんわ。ゲームではそうだと申し上げただけではないですか、ゲームでは」
「何故2回言う必要があるんだ……!」
「あまりリュミエルを振り回すようならゲームのようになるのでは?と思っただけですわ」
「その言葉そっくりそのままお前に返してやる」
収まったかに見えた火元が再び燃え上がりました。『喧嘩するほど仲がいい』とはよく言ったものですが……この二人の場合、反りが合わないといいますか………犬猿の仲ではないはずですが。
あまりに不毛なやり取りを繰り返す二人を止めるべきか悩んでいると、彼らの頭上を紙の束がふわふわと浮かんでいるのに気がつきました。そして次の瞬間、スパンっという音が聞こえました。
「痛っ!」
「あうっ⁉」
小気味いい音がしましたね。魔法によるものだと思うのですが。
「全く………お前たちは相変わらずだな」
そこにいたのはレシェウス様でした。ああ、やはりあれはレシェウス様でしたか。見事な魔力制御による風の魔術でしたね。
残念な点はその見事な魔術制御が目下ツッコミにしか使われていないことですが。
「……!あ、兄上⁉」
「レシェウス殿下、何をなさいますの……⁉」
いつの間にやら合流していた王太子殿下に突然頭を叩かれれば驚きますよね。
「お前たちはいつまでしょうもないやり取りをしているんだ。というか、攻略情報とやらに対する考察は述べなくていいのか」
「と言いましても……ソールが言った台詞とほぼ同じことしか言えませんよ……」
『ああ、キャラ設定の方くらいしか合ってないって言ったやつだよね』
たしかに、合っているのはそちらだけですね。そもそも私と契約している時点で主の攻略ルートは潰れたようなものですし。
「というか、主、クレイシェスの加護受けてたんですね……」
『あれ、自分が扱える魔力属性から精霊の名の一部をもらって名付けるものだしね。相性がいいと感じると、ボクら側が意識しなくても、自然と加護が宿るものだしね』
「『共鳴者』程ではなくても、その精霊の護りがあるんだよ」
私の呟きに、クレイシェスとシャウドが説明してくれました。やはり、ゲームを知っているのと、現実を知るのでは全く違いますね。
「そういえば、オレのルートとやらには『ライバル令嬢』は出ないのか?」
「『どちらが王位を継ぐのに相応しいのか』とか他の貴族が争っているせいで、レシェウス殿下とクルシェット殿下のルートでは決まった人物は出てきませんわ」
「ああ………そこは現実と一緒なのか……………」
「主、心中お察しします」
「お前も立派に“被害者”だしな」
本当に勝手なもので、彼らはこちらの了承を得ずに派閥を作り、さも自分達が忠臣のように振る舞い、やりたい放題しているのです。あまりに度が過ぎてきたので、『そろそろ粛清に乗り出すか……』とレシェウス様が物騒な台詞を呟くくらいには事態が深刻なものになってはいるのです。主が『王位に興味はない。私は兄上を補佐する道を選ぶ』と方々で宣言なさっているにも関わらず。
私も『うっかり手が滑って暗器を投げてしまっても許されるでしょうか』と主に言ったところ、普段は一も二もなく止める主が、『それはまだやるな。言い逃れの出来ない証拠を掴んでからだ』と黒い笑み付きで言うくらいにはストレスが溜まっているという訳です。
閑話休題。
「私が最初に言った通り、シーラはクルシェット殿下に関しては攻略する気が無くなったと見ていいと思いますわ」
「その分より面倒な絡まれ方をされるという話だしな……」
さすがに王族相手に危害を加える真似はしないと思いたいですが………
微妙な空気が漂ったところで、場を切り替えるようにリンジー様が言いました。
「ちょうどいいタイミングでレシェウス殿下が来てくださいましたわね。次は殿下ですから」
「………気は進まないが……聞くしかないんだろうな。どう考えても設定とやらしか合ってない気がするんだが」
「兄上、お気持ちはお察ししますが、私たちはそれを身を以て体験しました」
「そうか」
レシェウス様は疲れたように溜め息を吐いていました。
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