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第一章 メルトヴァル学院での日々
平穏というものは、唐突に崩れ去ります
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ソール様の婚約者、エヴァンガルド侯爵令嬢リリアーナ様が割って入ってくださったおかげで、授業中は先生の話に集中することができ、久しぶりの“学校の授業”の雰囲気を楽しむことができ、私は内面ほくほくでした。
シュドヘル様は婚約者の方が体調を崩されたとかで、お見舞いのために今日はお休みだったんですよね。あの方なら一日休んだくらいで成績が落ちたりはしませんから、大丈夫でしょう。
あ、護衛としての本分も忘れてはいませんよ?学内においては、シルディオ様と護衛任務を分担できるので、いくらか楽ではありますがね。
それでも群がってくる方がいないわけではありませんでしたが、概ね問題はありませんでした。
私に対しては、私が身分的には平民だからか、立場に物をいわせて言うことを聞かせられると思っているのが丸わかりな態度でした。まあ、そんな方々はルティウス様が一ミリも笑っていない微笑みで撃退していましたけどね。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
午前の授業が無事終わり、お昼を食べるために移動することになりました。シャウドとソール様、リリアーナ様も合流予定です。ソール様と食事を一緒にできる、と喜んで了承してくださいました。
学院の空気に慣れるまでは私がお弁当を作ることになったんです。イベントは基本、食堂でも起きますからね。あの自称ヒロインさんを避ける意味でも主たちがそう判断しました。
ちなみにメニューはサンドイッチ(ハムと卵、レタス・トマト・ベーコン、タレを絡めた鶏肉の3種類)、唐揚げ、卵焼き、ほうれん草とベーコンのグラタン、サラダなど種類を豊富にいれてみました。この世界にも前世と同じ食材があってよかったです。
主は私の手料理は食べ慣れていますから、いいとして………ルティウス様たちのお口に合うといいのですが。
この学院には、新米の庭師さんが手入れを任されているそれは見事な広場があるのです。広場といってもそんなに広くはなく、中心に噴水があって、それを生け垣で囲まれている小ぢんまりとした場所なのです。この学院は、魔法だけではなく、あらゆる分野の方が活躍できるよう、特別なカリキュラムが組まれているんです。さすがに、魔法科とは学舎が別ではありますけどね。
かつて主が中等部に在籍していた頃、時間を潰すため、この広場をよく利用していました。貴族の子息や令嬢方は、貧相とか見るに耐えないとか文句をいって近寄りませんでしたから、静かに過ごすにはうってつけの所でした。
お昼を食べる場所はその広場にしましょうと提案したところ、みなさん快く頷いてくださいました。
「あ……リリィ、ここにタレがついてしまってるよ?」
「え?あ………!綺麗に食べていたつもりだったのですが……って、何をなさってるんです、ソール様!」
「ん?口元の汚れをとってあげたんだよ?」
「ゆ、指ですくったものを、ご、ご自分の口に………!」
「ふふ。さしもの貴女でも慣れない食べ物は苦労してるようだね?」
「もう……!ソール様、意地悪言わないでくださいませ!」
という、桃色空間を作り出す二人があっという間に誕生しました。ソール様とリリアーナ様は政略的なものだそうですが、これを見ていると信じられませんね。
「これは予想外でした。ソールは諜報員という立場柄、恋愛ごとには興味がないかと勘違いしてしまっていましたね」
「オレも予想外だったな。リリアーナ嬢は、『社交界の薔薇』と呼ばれているくらい、隙一つなくて、所作が完璧だからな。今の姿からはそれが想像できない」
“華”ではなく“薔薇”なあたり、普段の彼女がどうなのかはご理解ください。
「まぁ、親しい間柄の人たちの前でまで取り繕う必要はないんだし、いいんじゃないですか?あの空気に当てられはしますが」
とシャウド。
「そういえば、この中で特定の相手がいるのはソール様とシュドヘル様だけですね」
「僕たちもそんな仲になりましょうか、リュミエル」
「はい?」
私の言葉をルティウス様が強烈な口説き文句で返され、硬直しながらも用意したお弁当は消費されていきました。ルティウス様、食事中も私の側でこんな調子だったのですよね……………
ただまぁ、何事も順調にはいかないものですよね。
食事が終わり、あとは次の授業の時間になるまでゆっくりしていた、のですが……………
「あーーーーっ‼いたぁ‼」
そんな叫び声が聞こえ、そちらに視線を向けるといつぞやの方が髪を振り乱して疾走してくる姿が見えました。あ、ソール様あからさまに顔をしかめましたね。リリアーナ様も同じ女性としてあり得ない、と驚きに目を見開いていますね。
彼女、もしかして学院中探し回っていたのでしょうか。
この間はソール様に媚売って、シュドヘル様に馴れ馴れしくしてましたからね………今日は誰に言い寄るつもりなのでしょう。
まさかこの広場でイベントが起きるとは思いませんでしたね。
といいますか、平民とはいえスカートはいた女性が全力疾走しないほうがいいと思うのですが。
そんなことを考えているうちに、彼女は私たちの側までやってきて、ぜぇぜぇ言いながら、こう言ってきました。
「はぁ………はぁ………、ねぇ!なんで食堂にいなかったの⁉」
彼女がそう言った相手は攻略対象とされている皆様ではなく。
面と向かって「あなたに遭遇する確率を減らしたかったからですよ」とは言いづらかったので、とりあえず無言を貫きました。こちらの返答を聞く気がなかったのか、彼女の文句はなおも続いてましたしね。
「そもそも、なんであたしと同じ一年じゃないの?シナリオ通りならあたしと一緒のクラスだったはずなのに‼」
と喚く相手は。
「ねぇ‼聞いてるの?リュミエル‼」
そうです。何故か私なんですよね……………
シュドヘル様は婚約者の方が体調を崩されたとかで、お見舞いのために今日はお休みだったんですよね。あの方なら一日休んだくらいで成績が落ちたりはしませんから、大丈夫でしょう。
あ、護衛としての本分も忘れてはいませんよ?学内においては、シルディオ様と護衛任務を分担できるので、いくらか楽ではありますがね。
それでも群がってくる方がいないわけではありませんでしたが、概ね問題はありませんでした。
私に対しては、私が身分的には平民だからか、立場に物をいわせて言うことを聞かせられると思っているのが丸わかりな態度でした。まあ、そんな方々はルティウス様が一ミリも笑っていない微笑みで撃退していましたけどね。
◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈
午前の授業が無事終わり、お昼を食べるために移動することになりました。シャウドとソール様、リリアーナ様も合流予定です。ソール様と食事を一緒にできる、と喜んで了承してくださいました。
学院の空気に慣れるまでは私がお弁当を作ることになったんです。イベントは基本、食堂でも起きますからね。あの自称ヒロインさんを避ける意味でも主たちがそう判断しました。
ちなみにメニューはサンドイッチ(ハムと卵、レタス・トマト・ベーコン、タレを絡めた鶏肉の3種類)、唐揚げ、卵焼き、ほうれん草とベーコンのグラタン、サラダなど種類を豊富にいれてみました。この世界にも前世と同じ食材があってよかったです。
主は私の手料理は食べ慣れていますから、いいとして………ルティウス様たちのお口に合うといいのですが。
この学院には、新米の庭師さんが手入れを任されているそれは見事な広場があるのです。広場といってもそんなに広くはなく、中心に噴水があって、それを生け垣で囲まれている小ぢんまりとした場所なのです。この学院は、魔法だけではなく、あらゆる分野の方が活躍できるよう、特別なカリキュラムが組まれているんです。さすがに、魔法科とは学舎が別ではありますけどね。
かつて主が中等部に在籍していた頃、時間を潰すため、この広場をよく利用していました。貴族の子息や令嬢方は、貧相とか見るに耐えないとか文句をいって近寄りませんでしたから、静かに過ごすにはうってつけの所でした。
お昼を食べる場所はその広場にしましょうと提案したところ、みなさん快く頷いてくださいました。
「あ……リリィ、ここにタレがついてしまってるよ?」
「え?あ………!綺麗に食べていたつもりだったのですが……って、何をなさってるんです、ソール様!」
「ん?口元の汚れをとってあげたんだよ?」
「ゆ、指ですくったものを、ご、ご自分の口に………!」
「ふふ。さしもの貴女でも慣れない食べ物は苦労してるようだね?」
「もう……!ソール様、意地悪言わないでくださいませ!」
という、桃色空間を作り出す二人があっという間に誕生しました。ソール様とリリアーナ様は政略的なものだそうですが、これを見ていると信じられませんね。
「これは予想外でした。ソールは諜報員という立場柄、恋愛ごとには興味がないかと勘違いしてしまっていましたね」
「オレも予想外だったな。リリアーナ嬢は、『社交界の薔薇』と呼ばれているくらい、隙一つなくて、所作が完璧だからな。今の姿からはそれが想像できない」
“華”ではなく“薔薇”なあたり、普段の彼女がどうなのかはご理解ください。
「まぁ、親しい間柄の人たちの前でまで取り繕う必要はないんだし、いいんじゃないですか?あの空気に当てられはしますが」
とシャウド。
「そういえば、この中で特定の相手がいるのはソール様とシュドヘル様だけですね」
「僕たちもそんな仲になりましょうか、リュミエル」
「はい?」
私の言葉をルティウス様が強烈な口説き文句で返され、硬直しながらも用意したお弁当は消費されていきました。ルティウス様、食事中も私の側でこんな調子だったのですよね……………
ただまぁ、何事も順調にはいかないものですよね。
食事が終わり、あとは次の授業の時間になるまでゆっくりしていた、のですが……………
「あーーーーっ‼いたぁ‼」
そんな叫び声が聞こえ、そちらに視線を向けるといつぞやの方が髪を振り乱して疾走してくる姿が見えました。あ、ソール様あからさまに顔をしかめましたね。リリアーナ様も同じ女性としてあり得ない、と驚きに目を見開いていますね。
彼女、もしかして学院中探し回っていたのでしょうか。
この間はソール様に媚売って、シュドヘル様に馴れ馴れしくしてましたからね………今日は誰に言い寄るつもりなのでしょう。
まさかこの広場でイベントが起きるとは思いませんでしたね。
といいますか、平民とはいえスカートはいた女性が全力疾走しないほうがいいと思うのですが。
そんなことを考えているうちに、彼女は私たちの側までやってきて、ぜぇぜぇ言いながら、こう言ってきました。
「はぁ………はぁ………、ねぇ!なんで食堂にいなかったの⁉」
彼女がそう言った相手は攻略対象とされている皆様ではなく。
面と向かって「あなたに遭遇する確率を減らしたかったからですよ」とは言いづらかったので、とりあえず無言を貫きました。こちらの返答を聞く気がなかったのか、彼女の文句はなおも続いてましたしね。
「そもそも、なんであたしと同じ一年じゃないの?シナリオ通りならあたしと一緒のクラスだったはずなのに‼」
と喚く相手は。
「ねぇ‼聞いてるの?リュミエル‼」
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