私はモブ扱いで結構です

さーちゃん

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第一章 メルトヴァル学院での日々

テンプレな展開はここでもあったようです

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 ソール様の編入から一月。彼はだいぶ学院に馴染んだようで、クラスで友人もできてきたそうです。ルティウス殿下に報告しているのを近くで聞きました。

 何故近くかというと、ルティウス殿下の護衛を命じられたからです。シルディオ様も護衛騎士ではあるのですが、さすがにパルヴァンから誰もつけないというのは不味いからと、建前上は監視兼護衛、裏の理由──こちらがむしろ本命です──はルティウス殿下にすり寄る人間を排除するため。のはずなのですが………どちらかというと、護衛されているとしか思えないんですよね。

 何故かといえば、この一月でそう思わざるを得ない状況になったから、ですかね。どうやら周囲──この国の貴族のことです──にとって、私が殿下の護衛騎士を任されたのは納得がいかなかったようで。
 要するに、主の時と同じようなことが起きたのですよね。いちゃもんつけて担当を外させようと何かと口を挟んでくるわけです。そして何故だかその方々をルティウス殿下が私を護るように撃退しています。

 これじゃ護衛失格ですよ………護衛対象に護衛されるとか………!
 主にそう訴えてみたら「ルティウスが諦めるか、お前が受け入れるかの二択しかないな」と言われました。………なんのことだか分からなかったので、現状はルティウス殿下の護衛を続けるしかなさそうです。
 ちなみに現在、主の護衛はシャウドが務めています。むしろ代わりませんか、と聞いたら「ルティウスに睨まれたくないから」と断られました。解せぬ。

 閑話休題それはともかく

 今日は学院の図書室にて読書をされるとのこと。なので、部屋の隅で待機しようとしたのですが失敗。現在ルティウス殿下の隣にて着席中。ルティウス殿下は目の前の本に集中しているはずなのに、さりげなく私の髪の毛先を彼の指がすいてきて、なにやらむずむずしています。警護のために何度か探査サーチをしているのですが、特に問題がないのがまだ救いでした。
 
 読書する振りをして図書室にやってきて、ルティウス殿下に近寄ろうとしていた皆様が忌々しそうに私を睨んでいるのを感じますとも。
 自分に向けられたものではないとはいえ、さすがにそんな視線を感じるのは不愉快になるだろうと、私が注意すべく立ち上がろうとした時でした。

「いい加減にしろ!!」

 突然の怒鳴り声に、私を睨むのに忙しかったご令嬢方も、肩を震わせ、黙りました。なにやら図書室前が騒がしい。言い争いとまではいかないまでも、苛立った男の人の声が聴こえましたよね。───ん?この声……………ソール様?あの方がこうも声を荒げるなんて、珍しいですね。
 あまりに騒がしくなってきて──どうにも扉の前で揉めているようです──、ルティウス殿下も読書をやめて顔をあげました。

「なんの騒ぎです………?」
「少々お待ちを。確認して参ります」
「………ええ、騒ぎが続けば他の利用者も迷惑ですしね。頼みます、リュミエル」

 私は殿下のお言葉に頷き、扉へと近づきました。すると声がまともに聴こえてきました。

「ソール様ぁ、待ってくださいよぉ!あたしとぉ、お茶してくださいって頼んでるだけじゃないですかぁ~」
「断ると何度言わせる気だ」
「うふふ、大丈夫ですよぉ、そんな気の無いフリをしなくても。意地悪な雇い主に逆らえないんですよね、私が助けてあげますっ!」
「……………さっきから何を言っている?」

 本当にどうされたのでしょう?いつもは丁寧な言動をなさるのに、苛立ちのあまり、言葉遣いが乱れておられますね。
 このままでは埒が明かないので、とりあえず扉を開きました。

 そこで見た光景にちょっと……いえ、かなり引きました。
 なんでって、ソール様にしなだれかかるように張り付く少女がいたからですよ。さすがに振り払うのは不味いと思ったのか、ソール様、やんわりと引き剥がそうとなさっていますけどね。
 とりあえずは声をかけますか。

「そこのお二方。図書室ではお静かに。他の方々のご迷惑になりますので」
「っ!!あ、リュミエル………すまない、私としたことが──」
「!……よしっ!のリュミエルがきたぁ!!」

 この時、私は凍りつきました。目の前の少女が叫んだ言葉で。叫ばなかったソール様とルティウス殿下はさすがとしかいいようがありませんね。ただ、盛大に顔を引き攣らせましたが。(ルティウス殿下のお顔は見えませんが、おそらくは同じ心境でしょう)

 といいますか………お助けキャラ?私が?一体なんのことでしょうか。言葉自体は分かるのですが、意味を理解出来なかったのは私だけではなく殿下方も同じだとは思いますが───

 “ゲーム”は終わったはずですよね?まさかの“実は続編がありました”とかそういう展開ですか?この状況は。
 
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