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第一章 メルトヴァル学院での日々
売られた喧嘩は買います、私ではなくてルティウス殿下が
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「……………」
「どうしました、リュミエル?………あ、これなんかどうですか?口当たりがさっぱりしていて美味しいですよ。ほら………」
「いえ……殿下にそんなことをさせられませんので、せめて自分で───むぐ」
「どうです?」
「もぐもぐ……………美味しい……です………。で、ですね、でん───むぐ」
「僕のことは呼び捨てでで呼んでくださいませんか………?」
「もぐもぐ……………いえ、ですから私は一介の騎士でしかありませんので、そのような無礼な振る舞いは───むぐ」
「ふふっ………口元が汚れていますよ………?拭いてあげますね」
「もぐもぐ……………それくらい自分で───あ」
「──うん。この学院の料理人もなかなかの腕ですよね」
皆さんお分かりでしょうか。ここはメルトヴァル魔法学院の学生が利用する食堂で、私は今、ルティウス殿下に給仕のような真似をさせてしまっています。(心なしかルティウス殿下が楽しそうなのは気のせいではないでしょう)
そして、私の口元を自分の指で拭い、拭ったそれを舌で──恋人関係にある二人が相手にやることもあるアレです──舐めとっています。周りに見せ付けるようにやっているのもあって、なんとも艶かしいです。無表情が板についている私でさえ、その様をみてぞくっときました。
そしてそれを遠巻きに見ているであろうご令嬢方の射殺さんばかりの嫉妬の視線が鬱陶しい──ごほんっ、失礼、視線が突き刺さってきて痛いです。
私は目立ちたくないのに。モブ(いわゆる脇役です、その他大勢いいんです……!)でいいのに………何故こうなったのでしょう?
事の発端はあの一件が原因でしょうね……………私としてはいつものことだったのですが。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
ルティウス殿下の(私にとっては)謎の決意を聞かされてから数日後。
編入前に構内を見学した方がいいだろうなり。ちょうどソール様の編入試験が近くあるそうなので、その日に合わせてルティウス殿下とシルディオ様を案内することになりました。私が。ルティウス殿下たっての希望で。あの言葉を実行に移した、と言えますよね。
私、メルトヴァル魔法学院に通ったことないのですよね………。主が中等部まで通っていた──メルトヴァル魔法学院は初等部から高等部までの一貫校です──ので、たしかに校舎と寮の登下校の道程は護衛していましたけど………正直それだけしか知らないんですが。それなら主に案内をしてもらったほうがいいと申し上げたのですが、ルティウス殿下が「僕は貴女にお願いしたいんです」と私の手を握りつつ妖艶な笑みを向けられ、何故だか断りきれませんでした。あれ?なんで頷いちゃったんだろう。
結果学院の構内図を頭に叩き込む羽目になりました。客人に不自由させるわけにはいかないと必死でしたとも。
主、「なんだか嫌な予感がする。公務が一段落つき次第合流する」、と言っていましたが………後々になってその勘は正しかったんだな、と言っていました。案外馬鹿にできないものですよね、そういう勘は。
ソール様の試験日当日。
彼が試験を受けている間、私はルティウス殿下とシルディオ様に校内の案内をしていました。学院長には予め話を通してあるため、門番の方にも問題なく通してもらえました。ただ、その時何やら近くで喚いている人がいたんですよね。なんだったんでしょう、あの子。
そして校舎や特別棟、運動場など時間の許す限り学院内を歩いて回りました。お昼時になったので特別に許可をもらい、昼食をとるため、食堂まできました。
こういう時、“乙女ゲーム”なんかだと攻略対象との出会いシーンがあったりするんですよね。言いがかりをつけられ困っているヒロインを攻略対象のヒーローが颯爽と助けるやつです。まぁ、この世界であった“ゲーム”は終わりましたし、ここにヒロインはいませんが。
「ちょっと待ちなさい、そこの平民!!」
さて、何を選ぼう。ルティウス殿下方の好みがあればいいのですが。主はいつ合流できるか分からないですし、先に食事をすませてしまいましょう。
「この学院はお前のような卑しい身分の者が立ち入っていい場所ではありませんのよ!?」
あ。まずは殿下たちにお伺いしなければなりませんでしたね。
「ルティウス殿下、シルディオ様、何をお選びになられますか?王族の方でも満足のいく味だそうで、種類が豊富みたいですよ」
「そうですね………悩みどころですが……もうひとつ悩みができましたね……………」
「え、何かありましたか」
なんということでしょう。案内に集中するあまり、何か不手際があったようです。これはすぐに謝罪しなければ───
「……………リュミエル、聞きたいことがあるのだが」
「はい?なんですか、シルディオ様」
何を失敗しただろうと聞こうとしたところ、逆にシルディオ様から聞かれました。
ちなみにシルディオ様とソール様には敬語をやめてもらいました。私のほうが護衛騎士とはいえ身分的には下ですからね。ルティウス殿下は敬語で話すのが癖らしいので仕方ないのですが。
「いや……先ほどから貴女に用があるらしい令嬢が話しかけているのだが………」
「はい?」
シルディオ様のその台詞に頭に疑問符が浮かびました。この学院に知り合いなんていませんよ?そう思いつつ振り向いた瞬間、怒鳴り声を浴びせられました。
「~~~っ!!いい加減にしなさいよ!!卑しい生まれのくせに!!レアンドロ伯爵令嬢である私を無視するなど、身の程を知りなさい!!ちょっとそこの男、この賎民を捕らえなさい!!お父様に訴えて、私に対する不敬罪で処刑してやるわ!!!」
顔を真っ赤にして私にそう言い放った令嬢が、そう命じてきました。ルティウス殿下に。………まさかこの方、ルティウス殿下だと気づいていない───?
「───申し訳ないのですが………あなたのお言葉を受け入れるわけには参りません。私は主の命でここにいますので。そして、あなたのご身分でこの方に無礼な物言いは控えたほうがよろしいかと」
「はあ!?学院の生徒でもないくせに食事をしようなど、図々しいにもほどがあるわ!!クルシェット様に寄生する害虫ごときが口答えするんじゃないわよ!!」
主の命だと申し上げたのですが………何故ご理解いただけないのでしょうか。それにその程度の言葉なら王城ですれ違う貴族から言われ慣れていますから、別段傷つきはしませんが。
シルディオ様が何やら油を差し忘れた金属部品のように、ぎぎぎ、っとルティウス殿下の方を見て、すぐさま視線を逸らしました。
……………?どうなさったのでしょう?私もそちらへ視線を向けました。そこには───
「何を呆けているの!!はやく──「それ以上その薄汚い口を開かないでくれますか」っ!?」
………そこには微笑んでいるはずなのに一ミリも笑っていない、背後にどす黒いオーラを纏ったルティウス殿下がいらっしゃいました。
もしかしなくても怒っていらっしゃいますよね?そうですよね、他国とはいえ、王族に命令をするなど、かのご令嬢のほうが余程不敬罪ですものね。と、シルディオ様にお尋ねしたのですが。
「リュミエル、貴女が考えているだろう理由とは異なると思うぞ、あの方がお怒りになっているのは」
「はい?」
引き攣った笑い顔でシルディオ様にそう返されました。
「な……私にそのような口の聞き方───っ!」
「他国の者ならば王族にも命令してもよいと教わったのですか、あなたは」
「え?」
「ルティウス様、さすがに伯爵家程度では貴方の顔を知らないのも無理はないかと」
「な!?そこの、無礼な──」
「そういう問題ではありませんよ、シルディオ。パルヴァンの第二王子、クルシェットの護衛騎士がわざわざ案内人を命じられる者の身分を察せないなど、いくら政治に関わる機会のない女性であっても、無能だと言わざるを得ませんね」
「は?」
先ほどからご令嬢──たしかレアンドロ伯爵令嬢と名乗られていましたね──の言葉をひっ被せて会話をされていますね、お二方。
「レアンドロ伯爵令嬢様」
「平民如きが馴れ馴れしく話しかけないで!!」
「ご無礼は承知の上で申し上げています。今となっては手遅れとしか申せませんが、謝罪はなさるべきかと」
「はぁ!?何でお前のような者に───!!」
「私に、ではありません、こちらにいるルティウス殿下に、です」
「は?殿下?お前なにを言って──」
「あなた様はストランディスタに喧嘩を売ったようなものなのですよ」
彼らが話を纏めている間に私が謝罪を勧めていたら、ルティウス殿下がこちらの会話に戻ってきました。
「本来ならあなた如きに名乗るものではありませんが………リュミエルを聞くに耐えない言葉で侮辱したあなたには特別にお教えしましょうか。私はストランディスタ王国第二王子ルティウス・フォルト・ストランディスタと言います。ああ、覚えてくださらなくても結構です。謝罪も必要ありません。もう会うこともないでしょうから」
「私はストランディスタ王国より所領を賜っているフェルヴィティール公爵家が三男、シルディオ・フィア・フェルヴィティールだ」
「王……子………?公爵……?───!!!………もうしわけ───」
「謝罪は必要ない、と言いましたよ?その残念な頭には入らなかったのですか?」
「ひっ───」
まあ、つまりは『許す気はないから謝罪など必要ない』ということですね。
そして、間もなくレアンドロ伯爵令嬢は青を通り越して白い顔してやってきた学院の教師と合流してきて早々再び王城にとんぼ返りする羽目になった主に引き摺られて行きました。その後、友好国であるストランディスタの王族を侮辱した罪で王家から厳しい処分が下ったとのこと。
シャウドいわく「そりゃ、君がそんな風に侮辱されたら不愉快にもなるよね」と言われました。なんのことでしょう?いつも通りのことだったので、自分に関してはそこまで気にしてもいなかったのですが………
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
そして、無事試験に合格したソール様が──まあ、落ちるな欠片も思ってませんでしたが──我が国の学院、メルトヴァル魔法学院に編入される日が来ました。
ルティウス殿下とシルディオ様も一応学院生徒たちの前でスピーチをすることになっているそうです。
スピーチをされているルティウス殿下は凛々しく、数日前のあの黒いオーラはなんだったんだ、と言いそうになったくらい爽やかな笑顔でした。
そして、(ソール様の)学院生活が始まりました。そして冒頭の会話になります。
さすがに皆さん、レアンドロ伯爵令嬢の末路を知っているからか、ルティウス殿下がいる前で私を貶す言葉をかけて来なくなりました。
編入生のソール様まで側にいるので声をかけてあわよくば良い仲になりたいご令嬢の嫉妬の視線を浴びる羽目にはなっていますがね。
「どうしました、リュミエル?………あ、これなんかどうですか?口当たりがさっぱりしていて美味しいですよ。ほら………」
「いえ……殿下にそんなことをさせられませんので、せめて自分で───むぐ」
「どうです?」
「もぐもぐ……………美味しい……です………。で、ですね、でん───むぐ」
「僕のことは呼び捨てでで呼んでくださいませんか………?」
「もぐもぐ……………いえ、ですから私は一介の騎士でしかありませんので、そのような無礼な振る舞いは───むぐ」
「ふふっ………口元が汚れていますよ………?拭いてあげますね」
「もぐもぐ……………それくらい自分で───あ」
「──うん。この学院の料理人もなかなかの腕ですよね」
皆さんお分かりでしょうか。ここはメルトヴァル魔法学院の学生が利用する食堂で、私は今、ルティウス殿下に給仕のような真似をさせてしまっています。(心なしかルティウス殿下が楽しそうなのは気のせいではないでしょう)
そして、私の口元を自分の指で拭い、拭ったそれを舌で──恋人関係にある二人が相手にやることもあるアレです──舐めとっています。周りに見せ付けるようにやっているのもあって、なんとも艶かしいです。無表情が板についている私でさえ、その様をみてぞくっときました。
そしてそれを遠巻きに見ているであろうご令嬢方の射殺さんばかりの嫉妬の視線が鬱陶しい──ごほんっ、失礼、視線が突き刺さってきて痛いです。
私は目立ちたくないのに。モブ(いわゆる脇役です、その他大勢いいんです……!)でいいのに………何故こうなったのでしょう?
事の発端はあの一件が原因でしょうね……………私としてはいつものことだったのですが。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
ルティウス殿下の(私にとっては)謎の決意を聞かされてから数日後。
編入前に構内を見学した方がいいだろうなり。ちょうどソール様の編入試験が近くあるそうなので、その日に合わせてルティウス殿下とシルディオ様を案内することになりました。私が。ルティウス殿下たっての希望で。あの言葉を実行に移した、と言えますよね。
私、メルトヴァル魔法学院に通ったことないのですよね………。主が中等部まで通っていた──メルトヴァル魔法学院は初等部から高等部までの一貫校です──ので、たしかに校舎と寮の登下校の道程は護衛していましたけど………正直それだけしか知らないんですが。それなら主に案内をしてもらったほうがいいと申し上げたのですが、ルティウス殿下が「僕は貴女にお願いしたいんです」と私の手を握りつつ妖艶な笑みを向けられ、何故だか断りきれませんでした。あれ?なんで頷いちゃったんだろう。
結果学院の構内図を頭に叩き込む羽目になりました。客人に不自由させるわけにはいかないと必死でしたとも。
主、「なんだか嫌な予感がする。公務が一段落つき次第合流する」、と言っていましたが………後々になってその勘は正しかったんだな、と言っていました。案外馬鹿にできないものですよね、そういう勘は。
ソール様の試験日当日。
彼が試験を受けている間、私はルティウス殿下とシルディオ様に校内の案内をしていました。学院長には予め話を通してあるため、門番の方にも問題なく通してもらえました。ただ、その時何やら近くで喚いている人がいたんですよね。なんだったんでしょう、あの子。
そして校舎や特別棟、運動場など時間の許す限り学院内を歩いて回りました。お昼時になったので特別に許可をもらい、昼食をとるため、食堂まできました。
こういう時、“乙女ゲーム”なんかだと攻略対象との出会いシーンがあったりするんですよね。言いがかりをつけられ困っているヒロインを攻略対象のヒーローが颯爽と助けるやつです。まぁ、この世界であった“ゲーム”は終わりましたし、ここにヒロインはいませんが。
「ちょっと待ちなさい、そこの平民!!」
さて、何を選ぼう。ルティウス殿下方の好みがあればいいのですが。主はいつ合流できるか分からないですし、先に食事をすませてしまいましょう。
「この学院はお前のような卑しい身分の者が立ち入っていい場所ではありませんのよ!?」
あ。まずは殿下たちにお伺いしなければなりませんでしたね。
「ルティウス殿下、シルディオ様、何をお選びになられますか?王族の方でも満足のいく味だそうで、種類が豊富みたいですよ」
「そうですね………悩みどころですが……もうひとつ悩みができましたね……………」
「え、何かありましたか」
なんということでしょう。案内に集中するあまり、何か不手際があったようです。これはすぐに謝罪しなければ───
「……………リュミエル、聞きたいことがあるのだが」
「はい?なんですか、シルディオ様」
何を失敗しただろうと聞こうとしたところ、逆にシルディオ様から聞かれました。
ちなみにシルディオ様とソール様には敬語をやめてもらいました。私のほうが護衛騎士とはいえ身分的には下ですからね。ルティウス殿下は敬語で話すのが癖らしいので仕方ないのですが。
「いや……先ほどから貴女に用があるらしい令嬢が話しかけているのだが………」
「はい?」
シルディオ様のその台詞に頭に疑問符が浮かびました。この学院に知り合いなんていませんよ?そう思いつつ振り向いた瞬間、怒鳴り声を浴びせられました。
「~~~っ!!いい加減にしなさいよ!!卑しい生まれのくせに!!レアンドロ伯爵令嬢である私を無視するなど、身の程を知りなさい!!ちょっとそこの男、この賎民を捕らえなさい!!お父様に訴えて、私に対する不敬罪で処刑してやるわ!!!」
顔を真っ赤にして私にそう言い放った令嬢が、そう命じてきました。ルティウス殿下に。………まさかこの方、ルティウス殿下だと気づいていない───?
「───申し訳ないのですが………あなたのお言葉を受け入れるわけには参りません。私は主の命でここにいますので。そして、あなたのご身分でこの方に無礼な物言いは控えたほうがよろしいかと」
「はあ!?学院の生徒でもないくせに食事をしようなど、図々しいにもほどがあるわ!!クルシェット様に寄生する害虫ごときが口答えするんじゃないわよ!!」
主の命だと申し上げたのですが………何故ご理解いただけないのでしょうか。それにその程度の言葉なら王城ですれ違う貴族から言われ慣れていますから、別段傷つきはしませんが。
シルディオ様が何やら油を差し忘れた金属部品のように、ぎぎぎ、っとルティウス殿下の方を見て、すぐさま視線を逸らしました。
……………?どうなさったのでしょう?私もそちらへ視線を向けました。そこには───
「何を呆けているの!!はやく──「それ以上その薄汚い口を開かないでくれますか」っ!?」
………そこには微笑んでいるはずなのに一ミリも笑っていない、背後にどす黒いオーラを纏ったルティウス殿下がいらっしゃいました。
もしかしなくても怒っていらっしゃいますよね?そうですよね、他国とはいえ、王族に命令をするなど、かのご令嬢のほうが余程不敬罪ですものね。と、シルディオ様にお尋ねしたのですが。
「リュミエル、貴女が考えているだろう理由とは異なると思うぞ、あの方がお怒りになっているのは」
「はい?」
引き攣った笑い顔でシルディオ様にそう返されました。
「な……私にそのような口の聞き方───っ!」
「他国の者ならば王族にも命令してもよいと教わったのですか、あなたは」
「え?」
「ルティウス様、さすがに伯爵家程度では貴方の顔を知らないのも無理はないかと」
「な!?そこの、無礼な──」
「そういう問題ではありませんよ、シルディオ。パルヴァンの第二王子、クルシェットの護衛騎士がわざわざ案内人を命じられる者の身分を察せないなど、いくら政治に関わる機会のない女性であっても、無能だと言わざるを得ませんね」
「は?」
先ほどからご令嬢──たしかレアンドロ伯爵令嬢と名乗られていましたね──の言葉をひっ被せて会話をされていますね、お二方。
「レアンドロ伯爵令嬢様」
「平民如きが馴れ馴れしく話しかけないで!!」
「ご無礼は承知の上で申し上げています。今となっては手遅れとしか申せませんが、謝罪はなさるべきかと」
「はぁ!?何でお前のような者に───!!」
「私に、ではありません、こちらにいるルティウス殿下に、です」
「は?殿下?お前なにを言って──」
「あなた様はストランディスタに喧嘩を売ったようなものなのですよ」
彼らが話を纏めている間に私が謝罪を勧めていたら、ルティウス殿下がこちらの会話に戻ってきました。
「本来ならあなた如きに名乗るものではありませんが………リュミエルを聞くに耐えない言葉で侮辱したあなたには特別にお教えしましょうか。私はストランディスタ王国第二王子ルティウス・フォルト・ストランディスタと言います。ああ、覚えてくださらなくても結構です。謝罪も必要ありません。もう会うこともないでしょうから」
「私はストランディスタ王国より所領を賜っているフェルヴィティール公爵家が三男、シルディオ・フィア・フェルヴィティールだ」
「王……子………?公爵……?───!!!………もうしわけ───」
「謝罪は必要ない、と言いましたよ?その残念な頭には入らなかったのですか?」
「ひっ───」
まあ、つまりは『許す気はないから謝罪など必要ない』ということですね。
そして、間もなくレアンドロ伯爵令嬢は青を通り越して白い顔してやってきた学院の教師と合流してきて早々再び王城にとんぼ返りする羽目になった主に引き摺られて行きました。その後、友好国であるストランディスタの王族を侮辱した罪で王家から厳しい処分が下ったとのこと。
シャウドいわく「そりゃ、君がそんな風に侮辱されたら不愉快にもなるよね」と言われました。なんのことでしょう?いつも通りのことだったので、自分に関してはそこまで気にしてもいなかったのですが………
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
そして、無事試験に合格したソール様が──まあ、落ちるな欠片も思ってませんでしたが──我が国の学院、メルトヴァル魔法学院に編入される日が来ました。
ルティウス殿下とシルディオ様も一応学院生徒たちの前でスピーチをすることになっているそうです。
スピーチをされているルティウス殿下は凛々しく、数日前のあの黒いオーラはなんだったんだ、と言いそうになったくらい爽やかな笑顔でした。
そして、(ソール様の)学院生活が始まりました。そして冒頭の会話になります。
さすがに皆さん、レアンドロ伯爵令嬢の末路を知っているからか、ルティウス殿下がいる前で私を貶す言葉をかけて来なくなりました。
編入生のソール様まで側にいるので声をかけてあわよくば良い仲になりたいご令嬢の嫉妬の視線を浴びる羽目にはなっていますがね。
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