悪役令嬢らしく嫌がらせをしているのですが、王太子殿下にリカバリーされてる件

さーちゃん

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第五章 これまでの決着をつけます

人はそれを因果応報と言います

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 各地の魔物の大繁殖も、みんなの活躍──みんな、私が連れ去られたことによるストレス発散の場に使ったのは言うまでもない──によって、かなり落ち着いたとか。
 私は、戻ってきたみんなとの再会に喜んだ。みんな特訓の甲斐あってか、危なげなく討伐できたのだとか。協力してくれたリュミィさんたちに、改めて感謝していた。
 特にシルディオ兄様やルティウスは、リュミィさんにひどく感謝していた。きちんとしたお礼の品を用意する、と言っていた。私も後でお礼を考えなくちゃ。
 私がケルニオによって連れ去られてから、たった数時間ほどしか経過していなかったことには驚いた。どうやら私が閉じ込められていたあの亜空間は特殊なもので、わざと時間が早く経つようにされていたみたい。道理で、時間の感覚がおかしくなっていたわけだ。

 で、学院祭なのだけど。魔物討伐のために教職員やすでに騎士として叙任されている生徒にも出動要請をしたらしく、終了時間を切り上げたのだとか。私がいなくなった件も、私が光の魔術を得意としているのは知られていたから、いち早く現場に向かったのだろう、と認識されたらしい。実は魔王に拐われてました、なんて公表出来るはずもないから、誤解させたままの方がいいだろう、となった。
 ただ後夜祭だけは翌日に持ち越したらしい。さすがに今日は討伐に参加した人たちは疲れているだろうとの配慮からだ。
 そのため、明日は夜まではしっかり休養にあてるつもりだ。

 夜。休もうとしたところ、エルフィンが私から離れてくれなかったため、一緒に寝ることになった。
 エルフィンの名誉のために言うけど、何もなかったですよ?
 私を助け出すまで気を張っていたのだろう、ベッドに潜り込むなり即夢の世界に旅立ったからね、エルフィン。しかも私をしっかり抱き締めたままで。……………まあ、私も彼が側にいてくれたからか、安心して眠れたけど。
 あ、ちなみに場所は学院ではない。クルシェット殿下の計らいで、部屋を用意してくれたので、そこでお世話になった。留学している間、いちいち帰国せずに済むようにと別邸として屋敷を購入していたそうで、お言葉に甘えさせてもらった。空間を繋げるのに学院では不味かったから、という理由もあったそうだ。リュミィさんに関する謎がまた増えた気がした。

 そして、一夜明けた今日。兼ねてからの疑問の数々を携え、事の経緯を聞くことになった。
 カツラが取れたことで半狂乱になりコンテストを棄権──あのクナイはリュミィさんが犯人だったらしい──した後、何処に行ったのかと思っていたのだけど。リュミィさんがクルシェット殿下の元へ戻ろうとしていた道すがら、出会い頭に捕らえたそうだ。
 え?ぶつかったんじゃなくて?あえて蹴る方向にいったの?
 リュミィさん曰く、“こいつは絶対に何かを知っている”と思ったとか。本当に何者なの、リュミィさん!?それ、平凡の域を軽く越えてるから!そんな技量を持つ人を凡人とか言わないから!

 閑話休題。

 とにかく、私がケルニオに連れ去られた部屋のすぐ側にいたということは、彼女は確実に何かを知っているはずだ、という結論に達したらしい。
 今ウィアナさんは、この屋敷の地下牢に入れられている。隣に尋問室が併設されているそうで、そこで話を聞くことになった。
 地下牢へと降りる階段を降っていたところで、何やら喚き声が響いてきた。地下だから、余計に反響する。騒ぎの元凶はウィアナさん以外あり得ないから、みんな不愉快そうに顔を歪めた。

「あたしを誰だと思ってんのよ!!あたしは、光の精霊ラピスフィアなのよ!?こんな汚ならしい所に押し込めて………っ!みてなさい、今にエルフィンが助け出してくれるんだから!!そうしたら、あんたらなんか一発で処刑よ、しょ・け・い!!あぁ………エルフィン~、みんなぁ……早く助けてよぉ~!!」

……………えー……………まだ盲信してたの?むしろ魔族との共謀を疑われてるのに……………好感度なんて、最早マイナスの底辺なのに。
 彼女から話を聞くなら自分たちでなければならないだろう、と向かっている間、みんな一様に憂鬱な顔をしていた。今の彼女の台詞を聞いて、エルフィンを含めたみんなの機嫌が更に下がったのが分かる。私もイラっとしたもの。

「──冷静に話が聞けるか、今更ながら自信がなくなってきたな………。何故私があの電波を助けると思うのか理解に苦しむんだが」
「兄上。そもそも最初からの妄言を理解できたことなどありません」
「そうですよ、殿下。はとうの昔からイカれてるんです、尋問することに何の躊躇いもありませんし、、気にすることはないかと」
「デュオやユフィリア、ミラの場合、前世からの因縁だしね………ちょっ………、ミラ?落ち着いて。殺っちゃ駄目だから!あっさり終わらせたら駄目でしょ!?」
『グルルルルル………!!』
「主を拐かした魔王に与する奴に加減など必要ないだろう、なんだ、あの気色悪い声は。怖気が走る………!」

 エルフィン、ルティウス、デュオ、クーシェ、シグルドの順でそれぞれの感想を口にした。特にデュオとミラの纏う空気がヤバい。あと台詞も。みんなの様子に、私はむしろ冷静になったわ。前世では私は半分しか血の繋がりがなかったけど、二人はまんま同じ親だったしね。生まれ変わってさえ、またに振り回されている現状に、いい加減我慢の限界なのでしょうね。
 ミラを止めてるはずのクーシェも、本音が漏れてるし……
 そして、シグルド。本能で悟る分、台詞に容赦がないわね。別に優しくしてあげる必要なんて、もうないけど。
 ちなみに、この屋敷の主であるクルシェット殿下とその護衛騎士、リュミィさんも同行している。

「なんというか………本当にろくでもない娘だな、あの者。彼女をよく知らない私でさえ、庇おうとも思えんぞ」
「私たち、彼女がやらかすトラブルにほぼ関わってませんでしたからね。それでも、まともな噂一つ聞いたことなかったですから、逆に凄いですよ……」
「そうだな。ルティウスが食堂であの娘を追い払った時、『そこまでやるか』なんて言ってしまったが………あれでもまだ生温かったようだな」
「どちらにせよ、彼女、もう終わりでしょう。もうこれ以上、処断出来る者を釣れないようですしね」
「だな。あくまで泳がせていたのであって、見逃していたのではなかったのだから、処分が軽くなる訳もないからな。通常なら処刑、よくても国外追放が妥当だろうしな。だがまぁ……追放はないだろうな………」
を野放しにすれば、似たようなことを他国でもやらかすでしょうからね。我が国とて、災厄にしかならない者を受け入れたくはありませんしね」
「全くだ」

 さすが王族ですね、クルシェット殿下も。ストランディスタ王家の対応策を的確に読み取っていますね。それについていけてるリュミィさんもさすがとしか言いようがないですが。
 そんなやり取りをしている内に降りきったようで、尋問室の前に到着した。

 扉を開けると、手を後ろ手に固定され、椅子に拘束されているウィアナさんがいました。こちらに意識が向いたからか、私たちが扉を開けるまで喚いていた口が止まりました。
 そして、エルフィンを見るなり──

「あっ!エルフィンさまぁ~!待ってたんですよぉ。やっぱり助けに来てくれたんですねっ!!さぁ、早くぅ!!あたしを解放して下さい!そして、あの性悪悪役令嬢を一緒に断罪しましょう!!」

 ぷちっという何かが切れた音がした気がした。私ではない。呆れてものも言えない心境にはなっていたけど。……………うん。逃避はよくないね。その音の発生源は─────すぅっと息を吸い込んだ。

「助けるわけが無いだろうが!!ユフィは危うく奴の術中に堕ちるところだったんだぞ!!──もうユフィに会えないんじゃないかと恐怖でどうにかなりそうだった………!学院とて、お前のおかげでめちゃくちゃになるところだった。そんなことを仕出かした輩を何故私が助けなければならない?何処まで我々を侮辱すれば気がすむんだ、貴様は!!!」

 室内に響くエルフィンの本気の怒りを目の当たりにした彼女は震え始めた。さすがにエルフィンがここまでキレたことなかったからね。
 今この場はエルフィンの感情が爆発した影響で魔力が溢れ、猛吹雪が吹き荒れている。みんな隅っこに一塊に寄っているから、光の結界で防いでいるけど………必要なかったかもしれない。吹雪はウィアナさんの側にしか発生していなかったし。エルフィン、我を忘れているわけではないようで、制御コントロールはできているのよね。意図的に怯えさせているのでしょう、話を聞きやすくするために。まあ、拘束されて身動きできないから、恐怖は倍増してるでしょうけどね。
 それにしても………何を勘違いしていたのでしょうね、この人ウィアナさんは。
 これまで何のお咎めもなかったのは、『このくらいなんてことはないし、そこまでの実害じゃない』、と私が彼らを止めていたのと、彼女を敢えて泳がせることで、王家を貶めようとする者たちを炙り出すための餌扱いをしていただけ。
 それをゲームと混同して、好き勝手やって周囲から嫌われ、敬遠されたのは彼女の自業自得でしかない。
 平民であっても、学院内であっても、王族や高位貴族に対してあんな態度を取り続ければ、不味いと分からないはずはない。少し考えれば何の処分もされないのはおかしい、と気付けたはずなのに。

 ウィアナさんは──ううん、ウィアナの処罰が重くなるのは因果応報としか言えない。前世であんな最期を迎えたなら、今世では真面目に生きようと思えなかったのかな。
……………あ、ダメだ。あの人が真っ当に生きるとか、全然これっぽっちも想像出来ない。

 私がそんな事を考え、あり得ないな、と首を横に振って思考を中断すると、ちょうどエルフィンが吹雪を止めたところだった。ウィアナに向ける眼は氷点下よりも冷たかったけど。

「───洗いざらい話してもらうぞ。言っておくが、虚言や捏造をすれば、さらに罪が重くなると思え」
「ひぃ……っ!!は、はははいぃ!!わわわ、分かりました、嘘は言いません!!」

 すっかり怯えきったウィアナは、つっかえながら話始めた。学院が始まってから彼女の行動の真意が明らかになる。
 私たち視点では分からなかった、裏側の話は果たしてどんなものなのか。








 
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