36 / 105
何か思いついた時に思わず「あっ」と言ってしまうけど外国の人は何て言うのだろう
しおりを挟む
「つーかいいのか? そんな事俺に話して」
「よくは無いだろうが、これ以上一人で抱えきれなかった。お前だから話したんだ。くれぐれも他言無用で頼む」
隅の席で、声を潜める俺とアラン。
もっとも、午前8時を回り、多くの基地関係者で賑わい始めた食堂では、俺達の会話に聞き耳を立てられる心配もないだろうが。
「そりゃわかってるけど……ありえないだろ、あのリナルド団長に限って、不貞とか」
俺とアランが騎士になったのは、既に父が亡くなった後だったが……リナルド・レノックス元騎士団長の人格者ぶりは、訓練学校の教官や、先輩騎士達からこれでもかという程聞かされていた為、父の人となりについて、奴は十分に知っていた。
「俺だって信じたくない。でも、そういう関係でもなければ、揃いのネックレスなんて持たないだろう?」
もしかしたら陛下は、暗にそれを伝えるつもりで、これを俺に……?
「だとしたら、ええと? 団長は奥方と結婚してお前を授かって……その後、前女王と密通して、二年後にローラ様が生まれたって事だろ? 腹違いの二人を“お友達”にするなんて、そんな悪趣味なマネ、あの人がするとは思えねえけど」
「とにかく一度、陛下と直接話をしたい。チャンスを作れないか? あいにく、俺は式典のギャラリーになる町民の誘導を任せられていて……陛下に近付く名目が立てられないんだ」
「いや俺は陛下の護衛騎士の周りに控える騎士達……を、更に遠巻きから援護する係だからなあ。下っ端風情にはチャンスなんて作りようが……あ、待てよ?」
何かを閃いた様子のアランは、もぐもぐと頬を膨らませる子供のような咀嚼を、一時中断した。
「なんだ!? 何かいい案が!?」
「案というか……俺達のタイムスケジュールのうち、式典終了後の明日午後3時からの1時間が、空白になってるんだ。遅い昼休憩を取るよう言われてるんだけど、その交代要員が配置されている気配も無い。陛下につくのは、側近の護衛騎士だけだ。もしかしたら陛下は、お忍びで、どこかに行こうとしてるんじゃねえか? 護衛が手薄になったその時なら、話くらい出来るかも……」
「どこかって……どこへ?」
「俺が知るか。でもお前ならわかるんじゃねえの? 10年来のストーカーである、お前なら」
陛下が行こうとしている場所……。
ソレリ様のお屋敷……は、人目を気にせず公式訪問すればいい話だ。あの方は勲章の受領者であり、この土地の領主なのだから。
しかし、ノースリーフには他に、女王が訪ねる程の大きい家は無いし……陛下が騎士のように復興支援で農作業にあたるとも思えない……
「…………あっ」
「え! もうわかったの? お前ホントすげぇな! つーか怖いな! 」
褒めているのかけなしているのかわからないアランが引きつり笑顔を浮かべるが、そんな事はどうでもいい。
俺は、口からチョロリとパスタを覗かせる親友の手を、力強く握った。
「ありがとう、アラン! 感謝する!」
「よくは無いだろうが、これ以上一人で抱えきれなかった。お前だから話したんだ。くれぐれも他言無用で頼む」
隅の席で、声を潜める俺とアラン。
もっとも、午前8時を回り、多くの基地関係者で賑わい始めた食堂では、俺達の会話に聞き耳を立てられる心配もないだろうが。
「そりゃわかってるけど……ありえないだろ、あのリナルド団長に限って、不貞とか」
俺とアランが騎士になったのは、既に父が亡くなった後だったが……リナルド・レノックス元騎士団長の人格者ぶりは、訓練学校の教官や、先輩騎士達からこれでもかという程聞かされていた為、父の人となりについて、奴は十分に知っていた。
「俺だって信じたくない。でも、そういう関係でもなければ、揃いのネックレスなんて持たないだろう?」
もしかしたら陛下は、暗にそれを伝えるつもりで、これを俺に……?
「だとしたら、ええと? 団長は奥方と結婚してお前を授かって……その後、前女王と密通して、二年後にローラ様が生まれたって事だろ? 腹違いの二人を“お友達”にするなんて、そんな悪趣味なマネ、あの人がするとは思えねえけど」
「とにかく一度、陛下と直接話をしたい。チャンスを作れないか? あいにく、俺は式典のギャラリーになる町民の誘導を任せられていて……陛下に近付く名目が立てられないんだ」
「いや俺は陛下の護衛騎士の周りに控える騎士達……を、更に遠巻きから援護する係だからなあ。下っ端風情にはチャンスなんて作りようが……あ、待てよ?」
何かを閃いた様子のアランは、もぐもぐと頬を膨らませる子供のような咀嚼を、一時中断した。
「なんだ!? 何かいい案が!?」
「案というか……俺達のタイムスケジュールのうち、式典終了後の明日午後3時からの1時間が、空白になってるんだ。遅い昼休憩を取るよう言われてるんだけど、その交代要員が配置されている気配も無い。陛下につくのは、側近の護衛騎士だけだ。もしかしたら陛下は、お忍びで、どこかに行こうとしてるんじゃねえか? 護衛が手薄になったその時なら、話くらい出来るかも……」
「どこかって……どこへ?」
「俺が知るか。でもお前ならわかるんじゃねえの? 10年来のストーカーである、お前なら」
陛下が行こうとしている場所……。
ソレリ様のお屋敷……は、人目を気にせず公式訪問すればいい話だ。あの方は勲章の受領者であり、この土地の領主なのだから。
しかし、ノースリーフには他に、女王が訪ねる程の大きい家は無いし……陛下が騎士のように復興支援で農作業にあたるとも思えない……
「…………あっ」
「え! もうわかったの? お前ホントすげぇな! つーか怖いな! 」
褒めているのかけなしているのかわからないアランが引きつり笑顔を浮かべるが、そんな事はどうでもいい。
俺は、口からチョロリとパスタを覗かせる親友の手を、力強く握った。
「ありがとう、アラン! 感謝する!」
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる