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ミネストローネの具は小さい方が好き

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 「残してなどいない。食事の途中に絡まれたから、対応していただけだ」

 突然現れた赤毛の女性に、反論する。

 この食堂の料理人だろうか。赤いおさげ髪に、チェックのバンダナ。白襟の質素な茶系ワンピースに、白いエプロンを付けている。

 「じゃあ、こいつらは私がどうにかするから、あんたは食べてよ」

 雑な口調でそう言うと、彼女は俺に絡んでいた男達をギロリと睨んだ。

 「あんたたち、ここは食堂よ。食事をする所。誰とモメようと自由だけど、人の仕事場を荒らすのはやめて」

 赤毛女性に鋭い視線で突き刺され、ばつが悪そうな顔で食堂を後にする男達。
 こちらを見ながらコソコソと話していた他の騎士達も、彼女が一瞥すると、黙って食事を再開し始めた。

 それを確認した彼女は俺の正面の席に座り、悲しげな笑顔を浮かべる。

 「許してやってね、新入りさん。あいつら、この前の台風で、家族を亡くしてるのよ。それで女王を逆恨みしちゃってね。護衛騎士だったあんたに、つっかからずにはいられなかったんだと思う」

 「そうか……それは、愚かな連中だな」

 椅子に座りながらそう吐き捨てる俺に、苦笑いで応じる推定料理人。

 「ええ~? ここ、普通は同情する所じゃない?」

 「大切な者を亡くしたら、よく知りもしない誰かを侮辱してもいいのか? その侮辱された人間も、誰かの大切な人かもしれないのに? そんな事を故人が望んでいるとは思えない。残された者は、故人に恥ずかしくない生き方をするべきだ。愛していたのなら、尚更」

 「あんたも……大切な人を亡くした事があるんだ?」

 「父を、な。天災ではなく事故だったが。以来、俺は、父が誇れる息子であろうと、懸命に努めてきた」

 ミネストローネスープを口に運びながら、亡き父の言葉を思い起こす。

 『レオナルド。ローラ王女は、何があってもお前がお守りするのだ。殿下への忠義を尽くす事こそ、己の使命と心得ろ』

 勿論、陛下への愛や忠誠心は命じられて生まれ、育まれたものではない。けれど、父の教えを守りたいという想いは、常に心の核となっていて。

 だから、エレナ嬢に恩赦を与えたいという陛下のご意思を尊重した事は、後悔していない。たとえ節操なしと罵られ、出世街道から大きく外れた道を進む事になろうとも。

 正直、陛下が女性だと知っていたら……今後もお傍でお仕え出来るような、もーちょいうまい手を考えられたかもしれないとは、思っているが。

 「ふ……女とモメて左遷とばされた奴の言葉とは思えないね」

 事情を知る由もない初対面の赤毛女性は、俺の言葉を鼻で笑う。

 けれど、ムキになって弁解する気はなかった。
 自分の身の潔白を主張する以上の関心事を、たった今発見してしまったから。

 「なんだこのスープは……!」

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