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一生懸命な空回りは高感度が上がる場合あり

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 突然声を荒げた新入り騎士に、静まり返る食堂内。

 いやらしく笑っていたリーダー男でさえ、胸の前で両拳を構えたまま、固まった。

 「何も知らないくせに……! あの方が……そうも簡単に落ちる女性ならば……俺はここまで苦労していない!」

 陛下を想い続けてきた十年超の様々な思い出が、頭の中を駆け巡る。

 「陛下がすべての生物の命を尊んでいらっしゃると知ってから、俺は虫一匹殺さずに生きて来た! 蚊が来ようが蜂が来ようが、ひたすら刺され続ける地獄! そうして全身真っ赤に腫れあがった俺を見た陛下は、関心するどころか、“そういう事じゃなくて”と呆れられた!

 薔薇が好きだとおっしゃる陛下の誕生日に、棘で血まみれになって花束を作りプレゼントした時も、“紅薔薇なのか、血で紅いのかわからない”と笑われた!

 自分はいつか国の為に好きでも無い男と結婚させられるのだと泣いていらっしゃったから、ならば俺がその相手になりますと……身分差を乗り越える為に死ぬ程努力をしてきたのに、意味不明な嘘をつかれ、フラれて……!!」

 自分で言ってても悲しくなるほど、空振りばかりのアプローチ遍歴。

 それでも幸せだった。
 あの方の傍で、あの方を想い、あの方の為に何かをする事は――。

 だからこそ、それらがままならない現状が辛い。
 ようやく想いが通じたと思ったのに。正体不明の壁に阻まれ、拒まれて。

 ああ……無礼な騎士達に怒りを向けていた筈なのに。
 今の俺は単に、たまりにたまったフラストレーションを爆発させているだけじゃないか。

 「な……なんだこいつ……」
 「左遷されておかしくなっちまったんじゃねぇ? もう関わるのよそうぜ……」

 突然わけのわからない事を叫び出した俺に、明らかに引いている男共と、食堂にいた騎士達。
 未知の生命体襲来に、ただならぬ空気が漂う。

 そんな雰囲気をものともせず、大股でこちらに近付いて来たのは、エプロンをした赤毛の女性――

 「ちょっとあんた。どうでもいいけど、せっかく作った朝食、残さないでくれる?」
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