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249.見守るといいつつ見張りがち

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 「それでつい、言っちゃったんだ。明が羨ましいって……そしたら唯、本気で怒ったみたいで」

 「ああ~……それ、俺でも言っちゃうと思います」

 俺が額に手をやってそう答えると、普段は穏やかな蓮さんにしては珍しく『だよなぁ?』と声を上げて。

 「だって明はいつも唯や仁を邪険にして……なのにあそこまで愛して貰えるなんて……っ」

 「母の愛は無償ですもんね」

 「わかってはいるんだ、大人げないというか、父親げないというか。本当は俺だって、父として子供最優先で物事を考えなきゃいけないんだろうけど」

 「仕方ないですよ。唯は可愛すぎるんで……二の次には出来ないっす」

 「そうなんだよっ。でも困った事に、唯本人はそれを全く理解してくれなくて……唯の目に俺は、いつまでも父親になり切れないどうしようもない男に映ってるんだろうな。と思うとまた、切なくて」

 「明が娘だったらまた違ったかもしれないですよね。父と息子は同性だから、やっぱり男同士の対抗心が生まれちゃうっつーか」

 実際に、蓮さんは夢には甘々なわけだし。
 なんて思いながら、蓮さんが淹れてくれた甘々じゃないカフェオレに、砂糖を足す。

 「それもあるのかもしれない。……はぁ、ダメだな俺は。こんなんじゃ、そのうち本当に唯に愛想をつかされる」

 「家族って難しいっすね」

 大切な人達の中でも優先順位をつけなきゃいけない。しかも、自分の意志以外のものを考慮して。

 「でも俺……応援してるんで。明にとって俺の存在が悪影響なら、なるべく鉢合わせ無いよう努力しますから。遠慮なく言って下さい」

 「ありがとう。……仁はすごいな。俺が逆の立場なら、そうは出来なかったと思う。本当なら唯の夫として、我が子の事で悩むのは自分だったのに……とか、思わないのか?」

 「そういうのはもう通り過ぎましたね。唯が幸せであればオールOKです」

 ちょうどよい甘さになったカフェオレを飲みながら、正直な気持ちを伝える。
 すると蓮さんは、苦笑いを浮かべながらブラックコーヒーを口に運んだ。

 「仁と一緒の方が、唯は幸せになれたかもしれないな……」

 何でも出来るナイスガイのものとは思えない、弱気な台詞。

 「ダメですよ。人の宝物盗んだんだから、責任持って唯を幸せにしてもらわないと」

 「そうだな。ふふ……俺は仁に見守られてるんじゃなく、見張られてるのかも、な」

 そう言われると、そうなのかも。
 それなら、明に気味が悪いと言われても仕方ないのか?

 デスクの上に置いてある、まだ袋に入ったままの綿棒を見つめる。

 「でも……やめられねーんだよな……」

 唯の傍にいる事。唯の幸せを守る事。
 それが、今の俺の生きがいだから。
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