151 / 273
151.ファミ〇キサンド、美味しすぎる
しおりを挟む
「こんなお天気の日くらい、蓮ちゃんは、お店で食べてくれてよかったのに」
「雨の日のピクニックも、楽しそうだから」
夏夏ランドを後にした私達は、お昼休憩を取っていた。
雨の中の公園……屋根付きのベンチに座って。
仕事の日は、お弁当を持参している私。
外回り中に昼食をとらなきゃな時は、公園で頂いているんだけど。蓮ちゃんは、いつもそれに付き合ってくれる。
コンビニとか、レストランのテイクアウトメニューを利用して。
ちなみに今日の蓮ちゃんのチョイスは……ファミ〇キだ。今週3回目。つまり、私が出勤している日は、皆勤賞。
「蓮ちゃん……ファミチ〇がすごく美味しいのは重々承知の上で、言わせてもらうんだけど」
「うん。本当に美味しいな。一輝にすすめられてから、ハマっちゃって。知ってる? 今これをサンドする用のバンズも売ってて」
「そ、そうだね。あれも美味しいよね……でもお昼ご飯として頻繁に食べるのは……」
「大丈夫。朝と晩はバランス考えた食生活を心掛けてるから。お昼は好きな物を食べる事にしてるんだよ」
そう言いながら、もぐもぐと食べ進める蓮ちゃん。
ああ、なんだか、可愛らしい。
仁ちゃんもそうだけれど、逞しくて頼もしい大人の男性が……もくもくと食べている姿……駄菓子をむさぼる少年を見ているようで、キュンキュンする。
が、しかし。油分や塩分を考えると、やっぱり心配。
「あの……一度断られちゃったのに、しつこくてごめんなんだけど……迷惑じゃなければ、私お弁当作るよ?」
「気を遣わなくていいから。社の人間に見られたら、変な誤解が生まれるって言っただろ?」
「お弁当の中身を私や仁ちゃんとは全くの別物にして、朝オフィスでコソっと渡せば、大丈夫じゃないかな」
「全く別物のお弁当を作る大変さ、想像するだけで申し訳ないよ」
ああそうか。蓮ちゃん自炊してるって言ってたもんね。
「う~ん……だったらせめて、雨の日位はお店とかで食べて欲しいな。私に付き合わせて仁ちゃんまで濡れちゃうの、悪いもん」
「散々ずぶ濡れになった後だから、今更だよ」
「……スーツと水着じゃ……違うじゃない」
そんなツッコミを入れながらも。頭に浮かんでしまうのは、あの傷跡。
あれは……怪我? の跡?
お付き合いしている時、あんなのは無かった。
どうしたんだろう? 離れている間、蓮ちゃんに何があったの? 気になる。訊きたい。でも、訊いていいのかもわからない。
「それにしても……水原さん、少し困った事になった」
「うん?」
「俺、帰りに施設長の所に挨拶に行っただろ? そうしたら、施設長も水原さんがまだ不安を抱えてる事を知ってて……当日になってやっぱり出来ないなんて言われたら目も当てられないから、他の血統種を探してくれないかって」
「そんな……施設長さんの気持ちは分かるけど。水原さんがその事を知ったら……」
「うん。やっぱり自分には無理なんだって、ますます自信を失くしてしまうと思う。嫌な言い方をすると……それは俺達の仕事には直接関係の無い事なんだけど。ご縁で繋がった人を無駄に傷付けたくは無い」
ファミ〇キを完食し、口元をハンカチで拭く蓮ちゃんの顔は、真剣だ。
「でも……じゃあどうすればいいんだろう? 水原さんに自信を持って貰う為には……どうすれば……」
「校学にも求人を出してみようと思う。水原さんは、失敗を恐れているんだろうから。一人じゃなく、同じ水系の血統種がいれば……たとえ学生でも、サポート役として付いてくれれば心強いかもしれない。校学なら、成人を雇うよりも報酬は抑えられるから、施設長が提示した予算内にも収まるし」
「そっか……うん。わかった。オフィスに戻ったら、準備するね」
「よろしく」
失敗を、恐れている……か。
自作のミートボールをお箸でつまみながら、水原さんの事を考える。
失敗が怖い。その気持ち、私にはすごく分かる。
基本的に、人よりも何もかもの能力が劣っていて、弱くて、無力。
実の母親さえ、幸せにしてあげられない……それが私という人間だから。
でも……じゃあどうしてそんな私は、お仕事を出来ているんだろう。
ママの入院費を返す為とか、少しでも仁ちゃんや蓮ちゃんの役に立ちたいとか、勿論理由はあるんだけれど。
未知の事に挑戦する勇気を、どうして私は持てたのか……?
そんな風に自問自答して、ミートボールをパクリと一口食べた直後――。
「う……!? まっず……!」
何を思い悩んでいたのかを一瞬、忘れてしまうような、衝撃的な味――。
私はすぐに、仁ちゃんにメッセージを送るのだった。
「雨の日のピクニックも、楽しそうだから」
夏夏ランドを後にした私達は、お昼休憩を取っていた。
雨の中の公園……屋根付きのベンチに座って。
仕事の日は、お弁当を持参している私。
外回り中に昼食をとらなきゃな時は、公園で頂いているんだけど。蓮ちゃんは、いつもそれに付き合ってくれる。
コンビニとか、レストランのテイクアウトメニューを利用して。
ちなみに今日の蓮ちゃんのチョイスは……ファミ〇キだ。今週3回目。つまり、私が出勤している日は、皆勤賞。
「蓮ちゃん……ファミチ〇がすごく美味しいのは重々承知の上で、言わせてもらうんだけど」
「うん。本当に美味しいな。一輝にすすめられてから、ハマっちゃって。知ってる? 今これをサンドする用のバンズも売ってて」
「そ、そうだね。あれも美味しいよね……でもお昼ご飯として頻繁に食べるのは……」
「大丈夫。朝と晩はバランス考えた食生活を心掛けてるから。お昼は好きな物を食べる事にしてるんだよ」
そう言いながら、もぐもぐと食べ進める蓮ちゃん。
ああ、なんだか、可愛らしい。
仁ちゃんもそうだけれど、逞しくて頼もしい大人の男性が……もくもくと食べている姿……駄菓子をむさぼる少年を見ているようで、キュンキュンする。
が、しかし。油分や塩分を考えると、やっぱり心配。
「あの……一度断られちゃったのに、しつこくてごめんなんだけど……迷惑じゃなければ、私お弁当作るよ?」
「気を遣わなくていいから。社の人間に見られたら、変な誤解が生まれるって言っただろ?」
「お弁当の中身を私や仁ちゃんとは全くの別物にして、朝オフィスでコソっと渡せば、大丈夫じゃないかな」
「全く別物のお弁当を作る大変さ、想像するだけで申し訳ないよ」
ああそうか。蓮ちゃん自炊してるって言ってたもんね。
「う~ん……だったらせめて、雨の日位はお店とかで食べて欲しいな。私に付き合わせて仁ちゃんまで濡れちゃうの、悪いもん」
「散々ずぶ濡れになった後だから、今更だよ」
「……スーツと水着じゃ……違うじゃない」
そんなツッコミを入れながらも。頭に浮かんでしまうのは、あの傷跡。
あれは……怪我? の跡?
お付き合いしている時、あんなのは無かった。
どうしたんだろう? 離れている間、蓮ちゃんに何があったの? 気になる。訊きたい。でも、訊いていいのかもわからない。
「それにしても……水原さん、少し困った事になった」
「うん?」
「俺、帰りに施設長の所に挨拶に行っただろ? そうしたら、施設長も水原さんがまだ不安を抱えてる事を知ってて……当日になってやっぱり出来ないなんて言われたら目も当てられないから、他の血統種を探してくれないかって」
「そんな……施設長さんの気持ちは分かるけど。水原さんがその事を知ったら……」
「うん。やっぱり自分には無理なんだって、ますます自信を失くしてしまうと思う。嫌な言い方をすると……それは俺達の仕事には直接関係の無い事なんだけど。ご縁で繋がった人を無駄に傷付けたくは無い」
ファミ〇キを完食し、口元をハンカチで拭く蓮ちゃんの顔は、真剣だ。
「でも……じゃあどうすればいいんだろう? 水原さんに自信を持って貰う為には……どうすれば……」
「校学にも求人を出してみようと思う。水原さんは、失敗を恐れているんだろうから。一人じゃなく、同じ水系の血統種がいれば……たとえ学生でも、サポート役として付いてくれれば心強いかもしれない。校学なら、成人を雇うよりも報酬は抑えられるから、施設長が提示した予算内にも収まるし」
「そっか……うん。わかった。オフィスに戻ったら、準備するね」
「よろしく」
失敗を、恐れている……か。
自作のミートボールをお箸でつまみながら、水原さんの事を考える。
失敗が怖い。その気持ち、私にはすごく分かる。
基本的に、人よりも何もかもの能力が劣っていて、弱くて、無力。
実の母親さえ、幸せにしてあげられない……それが私という人間だから。
でも……じゃあどうしてそんな私は、お仕事を出来ているんだろう。
ママの入院費を返す為とか、少しでも仁ちゃんや蓮ちゃんの役に立ちたいとか、勿論理由はあるんだけれど。
未知の事に挑戦する勇気を、どうして私は持てたのか……?
そんな風に自問自答して、ミートボールをパクリと一口食べた直後――。
「う……!? まっず……!」
何を思い悩んでいたのかを一瞬、忘れてしまうような、衝撃的な味――。
私はすぐに、仁ちゃんにメッセージを送るのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
42
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる