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136.Nシステムの概要を説明できる人は多分刑事ドラマ好き
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「ケルベロスは!?」
『出てない! でも、相手が蓮さんだから……危険が及んでも封じ込められてる可能性もある! つーか、ケルベロスが出た所で、蓮さんクラスの血統種にゃ何の抑止力にもならんし!』
「ああ~っ! そうか! あの人俺が胸ぐら掴んだ時も、ぴくりとも動かなかったもんなー! 体幹強すぎて、ケルベロスが飛びつこうが噛みつこうが、どうにもなんねー……つーか、動物好きだからわしゃわしゃ可愛がられて終わりかもー!」
『てゆーか箱根に行く、としか聞いてないんでしょ? 箱根のどこにいるのかわかんの? うちの親父に頼んで、警察のNシステム使わせて貰う!? あぁでも箱根じゃ都心ほど設置されてないから……っ』
「万一の為にスマホの位置情報共有してっから、居場所はわかるんだ! だから現場に着きさえすれば……あぁ~! 誰かいねえか!? 移動に特化した能力を持つ血統種!」
『う~ん、孫悟空の血統種の小牧さんに筋斗雲を貸してもらうか、防衛課オーディンの大河内さんに、八本足の愛馬を出してもらうか……』
「ダメだー! 二人とも騎馬戦で俺が失格にしたから、めっちゃ恨まれてるー!」
『ちょっと落ち着いてよ仁! それ以前に、他部署のさして親しくも無い血統種を頼る程、ヤバイ状況なのかな!? 蓮さんが唯ちゃんを無理矢理……とか、俺達の憶測でしかないわけでしょ!?』
「その憶測の言い出しっぺが何言ってんだ! もし唯に何かあったら――」
「あの~お客さん……?」
タクシーの運転手から突然声をかけられ、ハッとする。
「あ……、すいません、大きな声で……」
「トラブルとか、勘弁してね?」
露骨に迷惑そうな顔するんじゃねえよ、こっちは客だぞ。という気持ちが無いわけでは無いけれど。堪える。
会話だけを聞くと、確かに不信感を煽る内容だったろうし。
「いえ、大丈夫です。このまま箱根まで、お願いします……」
憶測……そうだよな。まだ憶測の域を出ていない。
そもそも……冷静になってみれば、蓮さんが保身の為に唯を利用するなんて、考えにくいよな?
蓮さんは超絶善人だし。
昔の事とはいえ、真剣に唯を想っていたわけだし。
つーか多分、今だって特別な存在……だよな? 家族愛なのかそれ以外なのかはわからないけれど。
いやしかし……勘当寸前だってのが本当なら、かなり追い詰められていた筈だ。
うちとは非にならない程の圧力の中、後継者になるべく英才教育を受けて来て……もう英才教育っつーか教育虐待っていうレベルだったかもしれない。
なのに、一族から追い出され、アスカの頂点に立つと言う絶対的目標まで奪われたら……おかしくなっても、おかしくない。
うん? おかしいのかおかしくないのか? どっち? ああダメだ。俺もまだまだ、冷静になり切れていない。
スマホで、唯の位置情報を確認する。
唯はもう……箱根に着いただろうか。
『……ごめん仁ちゃん。仁ちゃんには……来て欲しくないの』
あの言葉の意味が……『蓮ちゃんとしっぽり温泉旅行を楽しみたいから、邪魔しないで』って意味ならいいんだけど……いやよくはないけど。
地味な柄なのに、なぜか色気が5倍増しする温泉宿の浴衣に身を包む唯の姿を想像するだけで……そして、露天風呂付客室で、あれやこれやしている二人を想像するだけで……俺の毛穴という毛穴から源泉が吹き出しそうな程に、色んな感情が沸き立ってしまう。
兎にも角にも、普段から俺が困ってしまう位遠慮がちな唯が、ああもはっきり俺を拒むなんて。のっぴきならない事情があるに違いない。
「んん?」
スマホ画面の『唯』と書かれた丸印、マップの上を忙しく動き回り……止まった。
その場所は――
「箱根中央病院……?」
『出てない! でも、相手が蓮さんだから……危険が及んでも封じ込められてる可能性もある! つーか、ケルベロスが出た所で、蓮さんクラスの血統種にゃ何の抑止力にもならんし!』
「ああ~っ! そうか! あの人俺が胸ぐら掴んだ時も、ぴくりとも動かなかったもんなー! 体幹強すぎて、ケルベロスが飛びつこうが噛みつこうが、どうにもなんねー……つーか、動物好きだからわしゃわしゃ可愛がられて終わりかもー!」
『てゆーか箱根に行く、としか聞いてないんでしょ? 箱根のどこにいるのかわかんの? うちの親父に頼んで、警察のNシステム使わせて貰う!? あぁでも箱根じゃ都心ほど設置されてないから……っ』
「万一の為にスマホの位置情報共有してっから、居場所はわかるんだ! だから現場に着きさえすれば……あぁ~! 誰かいねえか!? 移動に特化した能力を持つ血統種!」
『う~ん、孫悟空の血統種の小牧さんに筋斗雲を貸してもらうか、防衛課オーディンの大河内さんに、八本足の愛馬を出してもらうか……』
「ダメだー! 二人とも騎馬戦で俺が失格にしたから、めっちゃ恨まれてるー!」
『ちょっと落ち着いてよ仁! それ以前に、他部署のさして親しくも無い血統種を頼る程、ヤバイ状況なのかな!? 蓮さんが唯ちゃんを無理矢理……とか、俺達の憶測でしかないわけでしょ!?』
「その憶測の言い出しっぺが何言ってんだ! もし唯に何かあったら――」
「あの~お客さん……?」
タクシーの運転手から突然声をかけられ、ハッとする。
「あ……、すいません、大きな声で……」
「トラブルとか、勘弁してね?」
露骨に迷惑そうな顔するんじゃねえよ、こっちは客だぞ。という気持ちが無いわけでは無いけれど。堪える。
会話だけを聞くと、確かに不信感を煽る内容だったろうし。
「いえ、大丈夫です。このまま箱根まで、お願いします……」
憶測……そうだよな。まだ憶測の域を出ていない。
そもそも……冷静になってみれば、蓮さんが保身の為に唯を利用するなんて、考えにくいよな?
蓮さんは超絶善人だし。
昔の事とはいえ、真剣に唯を想っていたわけだし。
つーか多分、今だって特別な存在……だよな? 家族愛なのかそれ以外なのかはわからないけれど。
いやしかし……勘当寸前だってのが本当なら、かなり追い詰められていた筈だ。
うちとは非にならない程の圧力の中、後継者になるべく英才教育を受けて来て……もう英才教育っつーか教育虐待っていうレベルだったかもしれない。
なのに、一族から追い出され、アスカの頂点に立つと言う絶対的目標まで奪われたら……おかしくなっても、おかしくない。
うん? おかしいのかおかしくないのか? どっち? ああダメだ。俺もまだまだ、冷静になり切れていない。
スマホで、唯の位置情報を確認する。
唯はもう……箱根に着いただろうか。
『……ごめん仁ちゃん。仁ちゃんには……来て欲しくないの』
あの言葉の意味が……『蓮ちゃんとしっぽり温泉旅行を楽しみたいから、邪魔しないで』って意味ならいいんだけど……いやよくはないけど。
地味な柄なのに、なぜか色気が5倍増しする温泉宿の浴衣に身を包む唯の姿を想像するだけで……そして、露天風呂付客室で、あれやこれやしている二人を想像するだけで……俺の毛穴という毛穴から源泉が吹き出しそうな程に、色んな感情が沸き立ってしまう。
兎にも角にも、普段から俺が困ってしまう位遠慮がちな唯が、ああもはっきり俺を拒むなんて。のっぴきならない事情があるに違いない。
「んん?」
スマホ画面の『唯』と書かれた丸印、マップの上を忙しく動き回り……止まった。
その場所は――
「箱根中央病院……?」
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