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19.傷口に消毒液かけた時泡が立つのはバイキンをやっつけた結果ではない
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「なんだよ、めっちゃ声ひっくり返して」
突然変な声を出した私に、首を傾げる仁ちゃん。
「あっ、あの、仁ちゃん! 指をチュー! とか、してくれなくていいからね!?」
「は?」
「あの、ほら。消毒だよ。とか言ってさ、漫画とかドラマとかで男の子が女の子の指をさ……!」
「いや、しねーよ。あんなん不衛生が過ぎるだろ」
「た、確かに……」
大慌ての私に反し、ごくごく落ち着いた様子の仁ちゃんは、私の手を引いてシンクの蛇口の所まで持って行った。
センサーが反応して流れだした水が傷に注いで、ほんのりしみる。
「つーかあんなん、女に好かれてるって確信がなきゃ絶対出来ねえだろ。合意の上じゃ無きゃ明らかにセクハラっていうか、不潔ハラつーか。んな言葉があるのか知らんけど」
「そうだよね……好きでも無い人にされたら……結構ゾワッ! な、行為だよね。私は仁ちゃんになら、全然いいけど」
「は?」
っと――!!
最後の言葉は余計だった。丸のみごっくんするべきだった。
「あ、えっと、だって仁ちゃんは家族だもん! ほら、同じお風呂のお湯につかるとかさ! 赤の他人だと嫌な事も、家族なら許容範囲って事あるじゃない!?」
「いや、家族でも指チューはしねえわ」
私の言い訳をばっさり切り捨てて、テキパキと救急箱を取り出す仁ちゃん。
「あ……そ、そうだよね……」
指チューされる側の事ばかり考えていたけど。
する側からしたら、される側以上に拒否感の強い行為かもしれない。
他人の傷を、ひいては血を吸うとか。歯ブラシを使いまわす並に気持ちの悪い事かも。
よっぽど特別な相手じゃないと出来ない。
あ……って事は、あれかな?
指チューは、する側が相手の事を大好き。かつ、相手にも好かれているという自信がある。
っていう前提があって初めて成立する行為なのかな?
うん、思い返してみれば……あのシーンが出てきたドラマって必ず、指チューする側とされる側の二人がハッピーエンドな感じで終わってる気がする。
「私達じゃそうはならない……か」
救急箱から、マキロ〇とガーゼと絆創膏を取り出す仁ちゃんをよそに、そんな事を呟いてしまう。
「ん?」
「なんでもない。ありがとうね仁ちゃん、後は自分で出来るから」
「やりにくいだろ、自分じゃ」
私の申し出をスルーして、血がにじむ手を再び取る仁ちゃん。
温かくて大きな手に、私の手がチョコンとのせられて……細かな傷が目立つ骨太の指が、私の指先に絡む。
温室育ちの御曹司というより、苦労の末SSSを獲得した、血統種の手。
私の大好きな仁ちゃんの手。
スリムサイズの絆創膏を扱う仁ちゃんの、真剣な顔。
人形のように彫りの深い綺麗な目鼻立ち。
かっこよい……。こんなにかっこよい仁ちゃんを、至近距離で拝める幸せ。
でもきっと、この幸せには限りがある。
「ありがとう、じんちゃん」
仁ちゃんが望む場所にたどり着いたら……ううん、もしかしたら、それよりずっと早い段階で、私は不要になるかもしれない。
その時は潔く、身を引くんだ。
仁ちゃんを不幸にする位なら、死んだ方がマシだもん。
それが私の生きる道。
私と仁ちゃんには……ドラマの中の指チューの二人のような、ハッピーエンドは待っていないから。
でも、だからこそ……その時が来るまでは。
このまま仁ちゃんの隣で……上腕二頭筋の盛り上がりを至近距離で見られる場所に、いさせて欲しいんだ。
突然変な声を出した私に、首を傾げる仁ちゃん。
「あっ、あの、仁ちゃん! 指をチュー! とか、してくれなくていいからね!?」
「は?」
「あの、ほら。消毒だよ。とか言ってさ、漫画とかドラマとかで男の子が女の子の指をさ……!」
「いや、しねーよ。あんなん不衛生が過ぎるだろ」
「た、確かに……」
大慌ての私に反し、ごくごく落ち着いた様子の仁ちゃんは、私の手を引いてシンクの蛇口の所まで持って行った。
センサーが反応して流れだした水が傷に注いで、ほんのりしみる。
「つーかあんなん、女に好かれてるって確信がなきゃ絶対出来ねえだろ。合意の上じゃ無きゃ明らかにセクハラっていうか、不潔ハラつーか。んな言葉があるのか知らんけど」
「そうだよね……好きでも無い人にされたら……結構ゾワッ! な、行為だよね。私は仁ちゃんになら、全然いいけど」
「は?」
っと――!!
最後の言葉は余計だった。丸のみごっくんするべきだった。
「あ、えっと、だって仁ちゃんは家族だもん! ほら、同じお風呂のお湯につかるとかさ! 赤の他人だと嫌な事も、家族なら許容範囲って事あるじゃない!?」
「いや、家族でも指チューはしねえわ」
私の言い訳をばっさり切り捨てて、テキパキと救急箱を取り出す仁ちゃん。
「あ……そ、そうだよね……」
指チューされる側の事ばかり考えていたけど。
する側からしたら、される側以上に拒否感の強い行為かもしれない。
他人の傷を、ひいては血を吸うとか。歯ブラシを使いまわす並に気持ちの悪い事かも。
よっぽど特別な相手じゃないと出来ない。
あ……って事は、あれかな?
指チューは、する側が相手の事を大好き。かつ、相手にも好かれているという自信がある。
っていう前提があって初めて成立する行為なのかな?
うん、思い返してみれば……あのシーンが出てきたドラマって必ず、指チューする側とされる側の二人がハッピーエンドな感じで終わってる気がする。
「私達じゃそうはならない……か」
救急箱から、マキロ〇とガーゼと絆創膏を取り出す仁ちゃんをよそに、そんな事を呟いてしまう。
「ん?」
「なんでもない。ありがとうね仁ちゃん、後は自分で出来るから」
「やりにくいだろ、自分じゃ」
私の申し出をスルーして、血がにじむ手を再び取る仁ちゃん。
温かくて大きな手に、私の手がチョコンとのせられて……細かな傷が目立つ骨太の指が、私の指先に絡む。
温室育ちの御曹司というより、苦労の末SSSを獲得した、血統種の手。
私の大好きな仁ちゃんの手。
スリムサイズの絆創膏を扱う仁ちゃんの、真剣な顔。
人形のように彫りの深い綺麗な目鼻立ち。
かっこよい……。こんなにかっこよい仁ちゃんを、至近距離で拝める幸せ。
でもきっと、この幸せには限りがある。
「ありがとう、じんちゃん」
仁ちゃんが望む場所にたどり着いたら……ううん、もしかしたら、それよりずっと早い段階で、私は不要になるかもしれない。
その時は潔く、身を引くんだ。
仁ちゃんを不幸にする位なら、死んだ方がマシだもん。
それが私の生きる道。
私と仁ちゃんには……ドラマの中の指チューの二人のような、ハッピーエンドは待っていないから。
でも、だからこそ……その時が来るまでは。
このまま仁ちゃんの隣で……上腕二頭筋の盛り上がりを至近距離で見られる場所に、いさせて欲しいんだ。
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