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33.場を荒らす人、場を収める人、両方必要
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どうして、こんな事になってしまったのか……。シーズン2。
「……お、大園さん……大丈夫……ですか?」
「……大丈夫よ」
「大丈夫よ? もっと他に、言うべき事があるのでは? 飛鳥さんと奥様に多大なご迷惑をお掛けしておいて」
「よせ、斎藤」
私達……私と仁ちゃんと、大園さんと斎藤さんの4人は今、病院近くのファミレスにいる。
「だって……っ、医師の態度が気にくわなかったからって、病院で大暴れするなんて! 飛鳥さんが院長に口をきいて下さらなければ、間違いなく警察沙汰になっていました! なのにこの態度……人として看過できかねます!」
「いやお前だって看過できねぇ事色々やらかしてっから。今はちょっと黙ってろよ……」
そう。
どうやら大園さんは、スーパーで私と別れた後、体調を崩し……斎藤さんが運ばれたのと同じ病院の、救急外来にいたらしく。
そこで、主治医の先生と色々あったようで……簡単に言うと、キレてしまったという事だった。
「そ、それにしても驚きました! 大園さんも、血統種だったなんて……」
「……そうよ、血統種よ。超エリートな飛鳥さんのご主人と違って、キレると力のコントロールも出来なくなる、三流血統種!」
そっぽを向いたまま、怒鳴るように吐き捨てる大園さん。
「お世話様でございましたね! 天下のアスカグループの御曹司様が話をつけてくれたお陰で、大事にならずに済んだわ! 不良品の機械が自然発火して、爆発したっていうお粗末な嘘で事態を収拾して下さって! ほんとーにありがとうございました!」
とてもお礼を言っている人のそれとは思えない態度に、仁ちゃんの反応が気になる所だけど。
「いえ……」
……怒っては……いない、かな?
無表情不愛想キープな感じから、そんな風に察する。
そうだよね。優しい仁ちゃんがこんな所で、こんな事で、キレたりするわけないよね。初対面のように、御曹司いじりをされたわけじゃないし。
「あ、で、でも、奇遇ですよねっ。血統種は全人類の0.01%しかいないのに……同じマンション内にいるなんて!」
「驚く程の事? 血統種は裕福な世帯が多いんだから。あのバカ高いマンションになら、何人いたって不思議じゃないわよっ」
ああ、困った。
私の力不足すぎて、大園さんの心が中々整わない。
これじゃあ、とりあえず落ち着きましょうと、ファミレスに駆け込んだ意味がないよね。
『唯だけじゃ心配だ』って、仁ちゃんや斎藤さんまでついて来てくれたのに。
そう頭を抱えていると……大園さんの隣に座る斎藤さんが、容赦なく彼女を睨みつけて。
「あなた、いい加減にその態度を改めたらいかがですか? というか……飛鳥さん達を巻き込んだからには、ああなった経緯を、きちんと説明するべきでは?」
「はぁ? てゆーかあなた誰?」
「斎藤清香です。飛鳥さんのアシスタントをしています」
「そう、じゃあアシスタントの斎藤さん、さっさと帰って下さる? 私がお世話になったのは飛鳥さん。あなたは、私のワンピースを台無しにした、ただの無礼者。経緯を説明する義理なんか無いわよね?」
「私はアシスタントとして、飛鳥さんをお守りする義務があります。公共の場で感情を爆発させるような下等血統種の元にご夫妻を残して立ち去る事など、出来る筈がありません」
「なんですって……!?」
齋藤さん……アシスタントって、そんなボディーガードみたいなお仕事もするんですか?
そして大園さん……『三流』だと自称するのはいいのに、『下等』だと他称されるのは嫌なんですね。わかるけれど。自覚していても、ううん、自覚しているからこそ、人から指摘されるとムっとしちゃう事ってあると思うし。
なんて心の声には、今は蓋をしておいて。
とにかく今は、この場を収めなければ。
「大園さん、初対面の人の前では、話しにくい事もありますよね? 仁ちゃん、斎藤さん、付き添って下さってありがとうございました。あとは私と大園さんで……」
「ダメだ。唯だけを残しては、いけない」
「へ?」
突然、左手手の甲を覆う、温もり。
驚いて膝の上に置いた自分の手に目をやると、仁ちゃんの右手がそこに重ねられていて。
「俺も部分的に、斎藤と同意見だ。……唯に何かあったら……俺は……」
「仁ちゃん……」
真剣な顔で見つめられ……心臓が射抜かれる。
『俺は……?』どうするの? どうなるの?
ううん、わかってる。
『唯に何かあったら、俺は……社長になれなくて困る』って事なんだよね。
わかってるんだよ、わかってるんだけど……勘違いドキドキが、止まらない。
『唯に何かあったら、俺は……生きていけない……』と言っている仁ちゃんを妄想して、興奮してしまう。
ついでに言うと、さっき病院で抱きしめられた事まで思い出しちゃって。
今にも泣き出しそうな……母性をくすぐりたおされる程の、不安気な顔。
あの逞しい二の腕で体をホールドされる、心地の良い圧迫感。
シャツのボタンを外し、ネクタイを緩めていた為にあらわになっていた鎖骨に、鼻が押し当てられる事で堪能出来た、仁ちゃんのオリジナルフレグランス。
ああ……っ。あの瞬間に、五感全てで感じた仁ちゃんが蘇って来て……鼻血がでそう……っ!
「あ~もう! わかったわよ! 説明すればいいんでしょ!?」
私が鼻腔内の毛細血管拡張に備え、口鼻あたりに手を当てたのと同時に……何かを振り切った様子でテーブルを叩く大園さん。
いけない。こんな状況だというのに、すっかり別の世界にトリップしてしまっていた。
「あ、あの大園さん、無理に話す必要は」
「うち、セッ〇〇・○○なのよ」
「「「は……?」」」
私が一切の免疫を有してない方向へと……話を展開し始めた、大園さん。
私は体温が急上昇するのを感じながら、目を泳がせまくる事しか、出来なかった。
「……お、大園さん……大丈夫……ですか?」
「……大丈夫よ」
「大丈夫よ? もっと他に、言うべき事があるのでは? 飛鳥さんと奥様に多大なご迷惑をお掛けしておいて」
「よせ、斎藤」
私達……私と仁ちゃんと、大園さんと斎藤さんの4人は今、病院近くのファミレスにいる。
「だって……っ、医師の態度が気にくわなかったからって、病院で大暴れするなんて! 飛鳥さんが院長に口をきいて下さらなければ、間違いなく警察沙汰になっていました! なのにこの態度……人として看過できかねます!」
「いやお前だって看過できねぇ事色々やらかしてっから。今はちょっと黙ってろよ……」
そう。
どうやら大園さんは、スーパーで私と別れた後、体調を崩し……斎藤さんが運ばれたのと同じ病院の、救急外来にいたらしく。
そこで、主治医の先生と色々あったようで……簡単に言うと、キレてしまったという事だった。
「そ、それにしても驚きました! 大園さんも、血統種だったなんて……」
「……そうよ、血統種よ。超エリートな飛鳥さんのご主人と違って、キレると力のコントロールも出来なくなる、三流血統種!」
そっぽを向いたまま、怒鳴るように吐き捨てる大園さん。
「お世話様でございましたね! 天下のアスカグループの御曹司様が話をつけてくれたお陰で、大事にならずに済んだわ! 不良品の機械が自然発火して、爆発したっていうお粗末な嘘で事態を収拾して下さって! ほんとーにありがとうございました!」
とてもお礼を言っている人のそれとは思えない態度に、仁ちゃんの反応が気になる所だけど。
「いえ……」
……怒っては……いない、かな?
無表情不愛想キープな感じから、そんな風に察する。
そうだよね。優しい仁ちゃんがこんな所で、こんな事で、キレたりするわけないよね。初対面のように、御曹司いじりをされたわけじゃないし。
「あ、で、でも、奇遇ですよねっ。血統種は全人類の0.01%しかいないのに……同じマンション内にいるなんて!」
「驚く程の事? 血統種は裕福な世帯が多いんだから。あのバカ高いマンションになら、何人いたって不思議じゃないわよっ」
ああ、困った。
私の力不足すぎて、大園さんの心が中々整わない。
これじゃあ、とりあえず落ち着きましょうと、ファミレスに駆け込んだ意味がないよね。
『唯だけじゃ心配だ』って、仁ちゃんや斎藤さんまでついて来てくれたのに。
そう頭を抱えていると……大園さんの隣に座る斎藤さんが、容赦なく彼女を睨みつけて。
「あなた、いい加減にその態度を改めたらいかがですか? というか……飛鳥さん達を巻き込んだからには、ああなった経緯を、きちんと説明するべきでは?」
「はぁ? てゆーかあなた誰?」
「斎藤清香です。飛鳥さんのアシスタントをしています」
「そう、じゃあアシスタントの斎藤さん、さっさと帰って下さる? 私がお世話になったのは飛鳥さん。あなたは、私のワンピースを台無しにした、ただの無礼者。経緯を説明する義理なんか無いわよね?」
「私はアシスタントとして、飛鳥さんをお守りする義務があります。公共の場で感情を爆発させるような下等血統種の元にご夫妻を残して立ち去る事など、出来る筈がありません」
「なんですって……!?」
齋藤さん……アシスタントって、そんなボディーガードみたいなお仕事もするんですか?
そして大園さん……『三流』だと自称するのはいいのに、『下等』だと他称されるのは嫌なんですね。わかるけれど。自覚していても、ううん、自覚しているからこそ、人から指摘されるとムっとしちゃう事ってあると思うし。
なんて心の声には、今は蓋をしておいて。
とにかく今は、この場を収めなければ。
「大園さん、初対面の人の前では、話しにくい事もありますよね? 仁ちゃん、斎藤さん、付き添って下さってありがとうございました。あとは私と大園さんで……」
「ダメだ。唯だけを残しては、いけない」
「へ?」
突然、左手手の甲を覆う、温もり。
驚いて膝の上に置いた自分の手に目をやると、仁ちゃんの右手がそこに重ねられていて。
「俺も部分的に、斎藤と同意見だ。……唯に何かあったら……俺は……」
「仁ちゃん……」
真剣な顔で見つめられ……心臓が射抜かれる。
『俺は……?』どうするの? どうなるの?
ううん、わかってる。
『唯に何かあったら、俺は……社長になれなくて困る』って事なんだよね。
わかってるんだよ、わかってるんだけど……勘違いドキドキが、止まらない。
『唯に何かあったら、俺は……生きていけない……』と言っている仁ちゃんを妄想して、興奮してしまう。
ついでに言うと、さっき病院で抱きしめられた事まで思い出しちゃって。
今にも泣き出しそうな……母性をくすぐりたおされる程の、不安気な顔。
あの逞しい二の腕で体をホールドされる、心地の良い圧迫感。
シャツのボタンを外し、ネクタイを緩めていた為にあらわになっていた鎖骨に、鼻が押し当てられる事で堪能出来た、仁ちゃんのオリジナルフレグランス。
ああ……っ。あの瞬間に、五感全てで感じた仁ちゃんが蘇って来て……鼻血がでそう……っ!
「あ~もう! わかったわよ! 説明すればいいんでしょ!?」
私が鼻腔内の毛細血管拡張に備え、口鼻あたりに手を当てたのと同時に……何かを振り切った様子でテーブルを叩く大園さん。
いけない。こんな状況だというのに、すっかり別の世界にトリップしてしまっていた。
「あ、あの大園さん、無理に話す必要は」
「うち、セッ〇〇・○○なのよ」
「「「は……?」」」
私が一切の免疫を有してない方向へと……話を展開し始めた、大園さん。
私は体温が急上昇するのを感じながら、目を泳がせまくる事しか、出来なかった。
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