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しおりを挟む≪おまたせ、異世界のお嬢さん≫
近くで見るととても整った顔立ちをしていた。
髪は春の日差しを彷彿させるような柔らかい黄色で
長い髪はさらさらと風になびかせていた。
しかしどこか違和感が…
≪いや、君の前のクズがなかなか
いうこと利かなくて時間かかっちゃった。
ごめんねぇ?≫
神はクスクス楽しそうに笑うが 目は一切動かず
不気味な笑みを浮かべた。
(…クズ?神がこんな汚い言葉使うのか?
しかも凶悪犯の様な笑い方…なにか変だ。)
≪お詫びと言っては何だけど
特別サービスしちゃうよ?
これから異世界にトリップする餞別に1つだけ願いを叶えてあげよう
さあ、君が僕たちの奴隷になる前の最後の自由だ!遠慮なく願いを言うがいい。≫
願いと言われても、急なことで思考が追い付かない。
…ただわかるのは、私はとてつもないヤバいサイコパスに捕まったってことは理解した。
ここは慎重に話を進めないとあっけなく私の命は散るだろう
それぐらい神との力の差を感じる。
「あの、大変失礼ですか今、私のおかれている状況を
教えていただきたいのですか?何分頭が弱いもので
ご慈悲をお願いしたします。」
特に、こういうプライドの高そうなやつは注意が必要だ
だが自分をたてる奴にはめっぽう甘かったりもする
さて、私の餌は食らいつくか?
一瞬神はポカンと口を開けると面白そうにニヤリと笑った。
≪これは面白い!今までにない反応だ!
泣き叫ぶでもなく、崇めるでもなく、バカにするわけもない。
いいだろう 私は賢い奴は嫌いじゃない。≫
神は上機嫌で面白い物語を語るかのように
最悪な私のおかれた状況を話し始めた。
≪まず、君たちはアースの神から引き離され
このグリジアの最高神すなわち私の管理下になった。
生かすも、殺すも私の自由というわけだ。≫
そんな簡単に世界の平均が崩れることを
してもよいのかと内心驚く。
≪これはお互いの利害の一致があってできたことなのだよ
アースは犯罪者が増えすぎて犯罪者の管理が出来なくなっていた。
そこで、人不足のグリジアで引き取らせてもらうことにしたのだよ
今までグリジアは馬鹿正直な善人の神のせいでこの計画はなかなか進まなかった
のだが、今回ようやく実行できたわけだ!≫
≪よその世界の犯罪者の首に縄を付け、グリジアの民の為に働かせる
世界をよくするのに自分たちは苦労せずに済むのだ。
こんな素晴らしいこと他にないとはおもわないか?
実際君たち犯罪者達だって僕達の命令に背かなければ
グリジアでの豊かな暮らしが保証されているわけだしね≫
≪君だっていつバレるかわからない罪を隠しながらビクビク過ごすより
幸せなはずだろ なぁ、親殺しの寺岡・アザミさん?
アースの神も細かいよなぁ?本人しか分からない罪までも取り上げるなんてさ。
しかも、殺した親は死んでも当然の言わばクズやろうだ。暴行・万引き・レイプ
薬物よくもまぁこんなに罪を重ねられるものだ。君はうまく殺したとおもうよ
薬にキマッてる時に家の階段から突き落とすなんてさ、誰が見たって大人しそうで
儚げな君がやったなんて思わない。皆君の言うことを信じただろう?≫
そう、私は毎日父親にビクビクと怯えて暮らす日々に嫌気がさしていた
機嫌がいい日なんてない。毎日サンドバックの様に殴られ時には犯されもした。
もう限界だった 私はあの日いつものように薬でキマッてわけも分からない状態の父を
階段の一番上から思いっきり突き飛ばした…。
一瞬だった。長く長く続いた地獄がたった数秒で解き放たれたのだ。
私が父を殺したなんて誰が思うのか、誰もが不慮の事故だと思うだろう。
私は従順で父親に逆らえない可哀そうな女の子。そんな女の子が父を殺すことなんてできない。周りの同情を逆手に取り詐欺も淡々とこなし、平然と日常を暮らしていたのだ。
「…ええ、周りの人は本当に騙されやすい人ばかりでしたから。」
しかし、やったことにたいして後悔なんて微塵もない。
あんなクズ死んで当然だった。
≪あははははっ!!いいねぇ!
君は実にちょうど良く歪んでいる!実に私の好みだ
さぁ、私の気が変わらないうちに早く願いを言うがいい≫
神は上機嫌だ。
さて、これから行くグリジアはファンタジー要素満載の
世界だと予想される。
ファンタジーな世界。オンラインゲームをベースに考えると
レベ上げが重要となる。死なないかぎり、知識も経験もどんどん上げることが出来る。
しかし、ゲームと違って現実は一回でも死んだら終わりだ。
「…私からの願いは、私が自ら死を望まないかぎり死なない体にしてほしい。」
神は私の願いに ニヤリと笑う。
≪半 不老不死を望むか!…お前の考えは少し甘いな?
自ら死を望ませる方法などいくらでもある。…それでも望むか?≫
脳裏に西洋の拷問記録が
浮かび、冷や汗がでる。
「…覚悟はできています。」
≪いいだろう!…君とはこれからも縁がありそうだ。
…では、武運を祈る≫
神が空気を払うようにして腕を振ると
私は白い光に包まれた。
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