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第122話 リシリア

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話し合いが終わり、バウルトリアと王太子が部屋を出ていく
「イールス殿、リシリアを頼むぞ…リシリアは元からアルゼデンスに虐められていた…庶子でも孫娘は孫娘だ… 普段から令嬢として育てられて無いから、冒険者も出来るだろう…後は頼んだぞ…」
公爵が詳しく生い立ちを説明してくれ、ブライドルとセーレンもリシリアを見ている
「公爵令嬢の噂を聞かなかったのは、事情が有ったのですね」
セーレンが頷いている
「ヘルクドール様申し訳ありません…予想外でしたので返し手を考えられませんでした。 御迷惑を御掛けしない様に致します」
イールスがヘルクドールに頭を下げている
「隷属なら側室や正妻と意味は違う…子供が出来ても家は継がせられない上、隷属も変更も解除も出来ない…イールスなら養えるだろう」
ヘルクドールが隷属の事についても説明してくれる

王宮を出て馬車に乗ろうとする
「イールス様、何でもしますのでよろしくお願いします」
リシリアが深々と頭を下げている
「リシリアさん、どうなるか解りませんが…好きな人が出来たら幸せになる事を考えて下さい」
イールスが笑顔で言うと、リシリアが驚いている
「何故ですか? 私はあなたの所有物です…幸せなど…」
リシリアが戸惑いながらイールスを見ている
「隷属しても、許したら別の人と結婚も出来ますよね? 」
イールスが笑顔で言う
「イールス、常識外の事を…イールスが認めれば可能でしょう…貴族でないなら関係は無いですから…」
セーレンが考えながら言う
「イールスの好きにすれば良いぞ…帰ったらメサリアが何て言うか…今から頭が痛くなる」
ヘルクドールが頭を押さえながら言う
「専属の侍女兼助手にします」
イールスが笑顔で言う
「イールスの助手なら…公爵家の血筋なら魔力も有るでしょう…魔力確認をして、もし魔力が有るなら、イールスに教えられない分家庭教師をしてあげましょう」
セーレンが微笑みながらリシリアを見ている
「セーレン様感謝申し上げます」
イールスが丁寧に頭を下げている

屋敷に到着すると、リビングに向かい、アーセリオドールとアーメリアとメサリアが待っている
「御父様、どうなりましたか? それにその子は?」
アーセリオドールがイールスの後ろのリシリアを見ている
「アーセリオドール様、メサリア様、アーメリア様、大変申し訳ありません、実は反撃をされてしまいました。予想外過ぎてどうにも出来ませんでした。御迷惑を御掛けしないように、細心の注意を致します」
イールスが頭を下げている
「え? イールスが反撃を…御父様何故ですか? 」
メサリアがヘルクドールを睨んでいると、ヘルクドールが詳しく説明をする

「イールスに隷属…どうしましょう…令嬢達に何て説明を…許しませんわ!!」
メサリアがヘルクドールを睨んでいる
「公爵様の捨て身の反撃ですか…」
アーメリアが考えている
「あの場でこの作戦…誰も思い付きません…仕方ないと思いますわ」
セーレンが諦めた様に言う
「セーレン様、何か仕返しを考えますわ」
メサリアがセーレンと相談をしようとしている
「メサリア様セーレン様、公爵様は最後の望みでこの策を使ったと思います。 最後の言葉を思い出して下さい…後は頼んだぞ…孫娘の命を救う為に誰かに預ける必要が有ったと思います。 公爵家の血筋としてでは無く、一人の人として養育をして欲しいと言う事です。 それにワザワザ金貨3000枚を下げ渡したのは、冒険者になっても、困らない事を考えての事です」
イールスが考えた内容を伝える
「え! そんな事を?何故?」
メサリアが驚いている
「イールス、そこまで考えていたのですか? それで…幸せになる事を選んでと…あれだけの事で見抜くとは…誰も考えませんよ」
セーレンが頭を押さえている
「公爵め! あの場で全員を欺くとは…あれでこそ公爵だな…国家機密だからこそ、イールスの素性を暴けないと言う事は、リシリアに対しても素性は詮索出来ないと言う事か…リシリアが上手くイールスの子を作れれば公爵家としてイールスを取り込むつもりか…」
ヘルクドールが頭を抱えている
「貴族は面倒なので、早く冒険者になりたいと思います」
イールスが頭を下げている
「はぁ………イールス、あの公爵とやり取りでこんな事まで考えているのか? 恐ろしいな…」
アーセリオドールが頭を抱えている
「公爵様が真実を語る時が来ると思いますが、まずはリシリアさんの部屋と服などを用意したいと思います」
「服等はすぐに用意させます。 侍女長にイールス専属の侍女として扱う様に言いますわ」
メサリアが微笑みながらリシリアを見ている
「メサリア様、侍女ではなく、友達として住まわせて貰えませんか? 」
「イールスが言うなら、好きにしなさい…下着や服は、後で選ばせます…良く見たら可愛いですね」
メサリアが微笑みながら言うと、リシリアが驚きの余り、立ち尽くしている

イールスが部屋に戻り、リシリアが考えながら大事そうに何かを持って近付く
「この手紙をイールス様に渡すように預かっています。イールス様だけに見て貰う様に言われてました…」
リシリアが大事そうに差し出す
「え? 手紙をやはり公爵様は何か考えての事だったのかな?」
イールスがリシリアから手紙を受け取り、イールスが考えながら手紙を読み始める

イールス殿、この手紙を読んでいると言う事は、リシリアが思っていた待遇と違うと思ったという事だろ。 複雑な事情は有るが、母親の名前で理解して欲しい。リシリアの母親の本当の名は、フレイレシリア・アーゼリアストリア、王家から秘密裏に預かっていた王女である。既にこの事を知る者は国王陛下しか居ないが、このような事で死なせる訳にいかない、イールス殿リシリアの幸せにして欲しい…決めたら何が有っても約束は守る性格をしている。
孫娘が平穏な日々を暮らせる事が唯一の希望だ…

イールスが手紙を読み終わると、イールスが考え込んでいる
「リシリアさん、手紙の内容は知ってますか?」
「知りません…普通に侍女として、奴隷として扱って欲しいと思います…温情は酷です」
リシリアが希望も無い目でイールスを見ている
「母親は伯爵家の屋敷で侍女をしていました。身籠った時に身を引いて、酒場で働きながら育ててくれました。 8歳の時に酒場を手伝い等をしていました…」
イールスが子供の頃の話をしていると、リシリアが驚きながら聞いている

「違いはほとんど無いですから…リシリアさんも幸せになる事を選んでも良いのですよ!ここでは庶子だから迫害する人も居ません」
イールスが微笑みながらリシリアを見ている
「何故? どうして? どうしたら良いのですか? イールス様…」
リシリアが泣きそうになっている
「普通に勉強して、普通にご飯を食べて、普通に遊んで、仕事もして暮らせば良いだけです」
イールスが笑顔でいうと、リシリアが涙を流して泣き始める
「うっ…うぇ…………」
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