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第108話 王太子に報告 前編

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翌日、イールスが王立学院に登校して、教室に向かう
「あ! イールス様!!」
アリシナがイールスを見て嬉しそうに、イールスの元に走ってくると、フレシカもアリシナの後ろから走ってくる
「アリシナ様、フレシカ様、本日もお元気な姿を拝見できて嬉しく思います」
イールスが丁寧に挨拶をしていると、教室内の学生達がイールスとアリシナ達を見ている
「イールス様が休みの間、寂しかったです…用は終わりましたか?」
「アリシナ様、予定通り終わりました。遅れた勉強に集中したいと思ってます」
イールスが笑顔で話している

講師が入ってくる
「イールス、アリシナ、フレシカ席に座りなさい」
講師がイールス達を見て言う
「講師様、申し訳ありません」
イールスが頭を下げながら言ってから、イールスが席に座り、アリシナとフレシカが両脇に座り講義を聞いている

講義が終わり、昼休みになると、上級生の令嬢が五人入ってきて、イールスの元に来る
「イールス様、御相談が有ります…いえ、お願いが有ります…」
令嬢が頭を下げて言うと、令嬢達が頭を下げている。アリシナとフレシカが驚いて、令嬢達を見ている。イールスも驚いて令嬢達を見てから、教室内の生徒達を見て考えている
「申し訳ありませんが、頭をあげて下さい。下錢な身で半人前の未熟者ですので、頭を下げられても困ります…事情を伺いたいと思います」
イールスが慌て気味に頭を下げている
「御茶会の件です…機嫌を損ねてしまい…御父様より早く何とか…」
令嬢が震える声で説明をしている

アルデゼンス様が…相当な面倒な事に…恨みを買ったのか? 令嬢達の家柄からしたら、公爵家の後ろ楯を失えないか…この様子家で相当怒られたのか? アルデゼンス様は面倒だな…何か良い手は無いか?

「イールス様…御茶会に参加したのですか? 御一緒したかったです」
アリシナが残念そうに言う
「訳有りでしたので…セーレン様に同行してもらいました…後で御説明します」
イールスが慌ててアリシナを見ている
「御茶会で何か有ったのですか?何故頭を下げているのですか?」
フレシカが不思議そうに見ている
「それは…機嫌を損ねてしまい……」
令嬢が途中で、言葉を発するのを止めて、イールスを見ている。その目に涙を溜めている
「ここでは話せませんので…」
イールスが考えていると、セーレンが教室に入ってくる
「イールス迎えに来ましたが、何か? 」
セーレンが令嬢達を見てから、イールスを見ている
「セーレン様、本日もお元気なお姿を拝見できて嬉しく思います」
イールスが慌てて丁寧に挨拶をしていると、アリシナ達も挨拶をしている
「応接室に行きましょう…良いですね」
セーレンが令嬢達を見て言うと、令嬢達が頷いて、イールスと共にセーレンの案内で応接室に向かい、令嬢達の事情を全て聞く

「アルデゼンス様も嫌味な事を…注意しても逆効果になりますね」
セーレンが呆れ気味に言う
「家柄からして、どうにも良い手が思い浮かみません…放置するのも後が大変な事になりそうです」
イールスが考え込んでいる
「放置したら公爵家からの圧力で令嬢達の家が潰されると思います…逆に令嬢達の為にイールスが願いを叶えたら、付け上がるでしょう…手は1つだけです」
「本当に貴族は面倒です。早く冒険者になって、旅したい…」
イールスが嫌そうに言うと、セーレンが笑っている
(これでも家柄を言わないのですか? イールスこうなったら、直接対決ですわ)

令嬢達に見送られながら、イールスは王宮に向かう
「メデル様、本日も元気なお姿を拝見できて嬉しく思います」
イールスが深々と頭を下げながら丁寧に挨拶をしている
「イールス、王宮薬師の件は報告を受けましたが、まさか利権を狙っていたとは…」
メデルが呆れ気味に言うと、セーレンも呆れた様に見ている
「どのように対応しようか…非才な身の為、助言を頂きたく思います」
「どうにも出来ません…国王陛下次第です。時間も有りませんから向かいます」
メデルが言うと、騎士の案内で部屋に向かう

部屋に入ると、バウルトリア師達と王宮薬師達が待っている
「バウルトリア様、本日も健やかなお姿を拝見できて光栄に思います。 王宮薬師様、御初に御目にかかります、イールスと申します。お見知りおき頂けたら幸いに思います」
イールスが深々と頭を下げながら丁寧に挨拶をしている。メデルとセーレンが微笑みながらイールスを見ている。王宮薬師達が笑みを浮かべてイールスを見ている

イールス達の挨拶が終わると、王太子が部屋に入ってくると、全員で挨拶をする
「ビーレルバウムの薬草分布の調査報告を頼む」
王太子がイールスを見て言う

先に報告したら、王宮薬師の報告はしないつもりだろうか? 先に王宮薬師の説明をさせよう…初日だけと印象つければ、後々嫌みになるかな?

「王太子殿下、半人前の未熟者ですので、先に王宮薬師様から報告の仕方を拝見したく思います。御無礼が有っては、大変申し訳ないと思っています」
イールスが頭を下げながら言うと、王太子が驚きながら、王宮薬師達を見ている
「若僧が何を!!」
王宮薬師が慌てた様に呟くと、王宮薬師達がイールスを睨んでいる
「そうだの…イールスはこのような場所は初めてだったな…手本も必要だろう! まだまだ王立学院の生徒だから経験の為に調査結果を報告するのだからな…王太子殿下、どうですかな?」
バウルトリアが王太子を見ている
「バウルトリア師!! 何を!!」
王宮薬師達が慌てて、声を上げる
「バウルトリア師の言う事は、確かにその通りだな…本来で有れば今回の報告は同行した王宮薬師が報告するものだからな」
王太子がイールスを見てニヤリとしてから言うと、メデルとセーレンが驚きながら王太子を見ている
「王宮薬師殿、調査の報告を」
バウルトリアが王宮薬師達を睨み言う
「それでは…」
王宮薬師が慌てた様に出来事を説明して、採取した薬草の事を説明している

「なるほど、ほとんど薬草が無いか…調査も不要だな」
王太子が考えながら言い、王宮薬師達を見ている
「あのような場所など、保護の必要も有りません」
王宮薬師が笑顔で言う
「今の報告の内容なら必要ないの…イールス、そう言う事だ! 群生地の調査も不要と思う! 保護の必要も無いと結論になる」
バウルトリアが少し残念そうに言うと、イールスを見て笑みを浮かべる
「初日の調査では、その通りです」
イールスが頭を下げながら言う
「イールス、初日の調査では?」
王太子が驚いた様にイールスを見ている。王宮薬師達が慌てた様にイールスを睨む
「王宮薬師、初日と聞こえたが…2日目以降の調査報告もせよ」
バウルトリアが王宮薬師達を睨み言う
「え! それは…」
王宮薬師達が慌てている
「王宮薬師、報告は? 無いのか?」
王太子が王宮薬師達を不思議そうに見ている。王宮薬師達が慌てて説明をしている

「まさか…1日で結論に至った? 何の為の研究だ!! 何の為に向かった!! 説明を要求する」
バウルトリアが畳み掛ける様に王宮薬師達を睨んでいる
「あの予算でこの程度の調査か…何の為の調査だ!!」
王太子が王宮薬師達を睨んでいると、王宮薬師達が慌てて説明をしている

あれ? 予算? 泊まった場所は、ビーレルバウム男爵家が用意していたような…馬車は魔法研究院の馬車に相乗りしていたよな…メデル様は気が付いているのか?
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