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第97話 シスラーザ

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イールスは、屋敷内を探し回っている
「イールス様、御用ですか?」
侍女の部屋を覗くと、侍女がイールスの見て聞く
「シスラーザ様は、見掛けませんでしたか?」
「探していますが、見付かりません」
侍女が少し驚きながら答えると、何処を探したか聞いている
「探す範囲は…」
イールスが呟いて歩いていくと、侍女がイールスの後を着いてくる

裏門に近くまで探している。侍女が落ちているリボンを見付ける
「イールス様、シスラーザ様のリボンです」
侍女が真っ青になってリボンを持ってくる
「裏門から出たのか? 鍵は?」
「それが…門の内鍵が開いています」
侍女が真っ青になって門について説明をしている

外に出たのか? 一人かな? それとも…

「ヘルクドール様に報告してきて下さい、外を探してきます」
門を出て侍女に言うと、イールスは走っていく

イールスは、走りながら通る馬車や路地を見て回っている
「イールス様、こんな所で何をしていますの?」
馬車が止まると、女性が降りてくる
「このような所でお会い出来て光栄に思います。迷子の女の子を探しています」
イールスが丁寧に挨拶をしながら言う
「人探しですか? どのような方を?」
女性が微笑みながら言う
「少女で背格好は…」
イールスが丁寧に説明をしている
「先程、馬車の前に出てきた子供ですか?」
令嬢が思い出しながら言うと、従者が道順を教えてくれる
「見付けましたら、後程御礼に伺います」
イールスが考えながら言い走っていく。令嬢はイールスの後ろ姿を見ながら笑みを浮かべている
(これはもしかしたら、アルデゼンス様に貸しを作れます)

イールスが走っていくと、路地で泣いているシスラーザを見付ける
「シスラーザ様、御無事で良かったです」
イールスがシスラーザに近付きながら言う
「え! イールス!! うぁーーーーーーー」
シスラーザが大粒の涙を流しながら大泣きを始める。イールスが近付き抱き寄せている

シスラーザが泣き止むと、イールスがおんぶして、屋敷に向かって歩いていく
「イールス様!! 見付かったのですか?」
セバスが門から入ってくる、イールスを見て慌てた様に走ってくる
「探している最中、令嬢にお会いしてシスラーザ様が馬車に引かれそうになった事を教えて貰い、見付けられました」
イールスが笑顔で説明していると、シスラーザは、イールスの背中で寝ている
「外に出ていたとは…大変申し訳有りません」
セバスが頭を下げている。シスラーザは侍女達に任せて、ヘルクドールとアーセリオドールの元に報告に向かう

ヘルクドールとアーセリオドールに経緯を説明して、セバスが謝っている
「見付かって良かったが…何故外に出たと思うか?」
ヘルクドールがイールスを見て聞くと、アーセリオドールもイールスを見ている
「おそらく寂しかったと思います。 母親も侍女も居なくなったので…」
「侍女の件か…急に辞めてしまったから事情が掴めてないが…今後を考えると信頼出来る侍女も必要だろう…」
ヘルクドールが考え込んでいる
「侍女長は何か知らないのですか?」
「辞めると言われて、早々に出て行ったと聞いています。彼女を見送りましたが、特に問題は無かったと思いますが…」
セバスが苦笑いしている
「御歓談中大変申し訳ありません、護衛がイールス様に至急伝えたい事が有るそうです」
侍女が入って来て申し訳なさそうにヘルクドールに頭を下げている
「もしかして、もう調べ終わったの? ヘルクドール様、アーセリオドール様、少し席を外します」
イールスが呟くと、部屋を出て護衛に会いに向かう

イールスが護衛を連れて戻ってくる
「ヘルクドール様、侍女の辞めた理由は、シスラーザ様付きの侍女の予算の問題と解りました。シスラーザ様の装飾品などの予算がほとんど貰えず、侍女が立て替えていたみたいですが、見放した様です。 まだ王都に居ましたので、護衛が話を聞いてこれました」
イールスが説明をすると、護衛がどのぐらいの立て替えか説明をしている

「こんな事に…セバス予算は渡してないのか?」
ヘルクドールが苦笑いして、セバスを見ている
「え! 侍女長に聞き取りをしますが…」
セバスが驚いて頭を下げてから出て行く。イールスは、金貨の袋から金貨を出している
「ありがとう、これは立て替えてくれた分です」
イールスが金貨を差し出す
「イールス様が支払うのですか?」
護衛が苦笑いして、アーセリオドールを見ている
「イールス、それは後で支払うから、出さないように…」
ヘルクドールが護衛を見ていると、アーセリオドールがため息をしている

メサリアと侍女長とセバスが部屋に入ってくる
「御父様、侍女長から聞きましたの…イールスとロイホールとシスラーザの小遣い渡してませんでしたの」
メサリアが苦笑いしている
「申し訳ありません…資金の使い方を侍女に伝えてなかったと解りました。本来なら王都の侍女が付いてますので説明不足でした…イールス様とロイホール様の分の資金も用意してますが、侍女経由で服装等を用意してますので、イールス様とロイホール様に1度も資金を渡してません」
侍女長が詳しく説明をしていると、ヘルクドールとアーセリオドールが頭を抱えている
(まさか…そんな事になっていたのか… イールスが持っている金貨は全部自分で稼いだ物だったのか?)

「イールス、ごめんなさいね」
メサリアがイールスを見ている
「稼げますので、特に問題は有りません…お祝品等はメサリア様が用意してくれていました」
「当たり前ですの!! 御祝品は絶対に必要ですの!! イールスとロイホールの洋服も必需品です!! それもイールスの武器防具全部、自分で買っていた何て知りませんでしたの」
メサリアが慌てて言う
「え! 武器防具? そう言えば魔法薬の代金で譲って貰いました」
イールスが笑顔で説明していると、ヘルクドールが苦笑いしている
(完全に一人立ちしているような…それも金貨1000枚越えている資金を持っているからな…)
「侍女の件は、どうするつもりだ?」
アーセリオドールが苦笑いして侍女長を見ている
「すぐに手配します…この度は申し訳ありませんでした」
侍女長が頭を下げている
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