上 下
88 / 208

第88話 クロバルゼス商会 前編

しおりを挟む
2日後、レズムード伯爵家の屋敷に、ビーレルバウム男爵家が、借金をしている商会代表と、別の商会の代表がやって来る
「これはレズムード伯爵様、本日の御用は、ビーレルバウム男爵家の借金の件ですか?」
商会代表が笑みを浮かべて言う
「我がクロバルゼス商会には何の用ですかな?」
クロバルゼス商会の代表が笑みを浮かべて聞く
「ゆっくり話そうか? 」
ヘルクドールが笑顔で言うと、アーセリオドールと執事服のイールスが入ってくる
「御子息ですか?」
商会代表が笑みを浮かべてアーセリオドールとイールスを見ている
「まずは、ビーレルバウム男爵家の借用書と借金総額を伺います」
イールスが笑顔で言うと、アーセリオドールが頷いている

「これです。何か文句でも」
商会代表が笑みを浮かべていると、イールスが読み始めて、溜め息をする
「総額は、これだけですか?」
イールスが読んでから、商会代表を睨み付ける
「年利2割ですから、既に金貨500枚です」
「これだけかと聞いているのです」
「え! その通りですが…」
商会代表が驚いている
「クロバルゼス商会代表も、これ以外に無いですね」
イールスが睨みながら言うと、アーセリオドールとヘルクドールが顔を見合わせている
「我がクロバルゼス商会は知らないですが」
「クロバルゼス商会とその関係商会からは、借金は無いですね」
「無いと思いますが…」
クロバルゼス商会代表が苦笑いしている
「騎士爵家の借用書も確認させて下さい」
イールスが笑顔で言うと、同じように確認している

「合わせて金貨900枚程になりますが、伯爵家が保証してくれるのでしょうか?」
商会代表が笑みを浮かべて言う
「その前に、この書類を確認の上、サインと捺印をお願いします」
イールスが笑顔で2通の書類を差し出すと、商会代表とクロバルゼス商会代表が読んでいる
「このような書類必要ない」
商会代表が大声で言う
「そうですか? 信用が出来ません、国王陛下にとある書類を出して、調査を依頼しましょうか?」
イールスが紙の束をテーブルに置く
「え! 何故ここに」
商会代表が青ざめている
「騎士団と癒着の証拠ですからね。このような事をする人なら、このぐらいの厳しい内容の証拠は必要ですから、それに言われの無い借金を押し付けても困りますからね」
イールスが睨みながら言う
「クロバルゼス商会には関係ない」
クロバルゼス商会代表が大声で言う
「先程借金は無いと言ってましたね、嘘なのですか?」
「執事ごときが!!」
「黙れ! この者が代理で言っているだけだ! それとも何か有るのか? 調査させようか?」
ヘルクドールが睨みながら言う
「それは…伯爵様が言われるなら…」
クロバルゼス商会代表が考えながら書類にサインをすると、商会代表がサインをして捺印を押している
(くそーー、これではこれを払われたら、乗っ取り計画は頓挫だ…公爵家から圧力で止めるしか無いか…それに伯爵家にこの金額を即金で支払いも不可能だろう)

「確か、パーティーで何度か見かけていますが、男爵家のパーティーでは、公爵家の御子息と仲良さそうにしていましたね」
イールスが微笑みながら、商会代表を見ている
「え! あのパーティー…公爵家の…パーティーでお会いして、挨拶をしただけです」
商会代表が苦笑いしていると、クロバルゼス商会代表が考えている
(こやつ何を…公爵家との繋がりを…どうする?)
「そうそう、クロバルゼス商会代表も、公爵家の子息とお会いしてましたね」
イールスが微笑みながら言う
「なんの事でしょう? 執事がパーティー会場内の事まで知ってますか?」
クロバルゼス商会代表が笑みを浮かべながら言う
「そうですか?メサリア様も確認済みです。他の令嬢や子息にも証言が必要なら、手を回しますが…このようにね」
イールスが書類をテーブルに置くと、クロバルゼス商会代表が見て苦笑いしている
(否定しても面倒な事になるな…何を考えている?)

「面倒な…これで何か有るのですかな? 取引先と話しはするでしょう」
クロバルゼス商会代表がイールスを睨んでいる
「近々騎士団が調査に乗り出すでしょう、そろそろ始末をしたいですからね」
イールスが笑顔で言う
「は? 何故騎士団が…」
「あーーそうそう、この帳簿もある人から引き取りましたね」
イールスが帳簿をテーブルに置く
「何故ここに!! 何故だ」
商会代表が慌てて叫ぶ
「これが何か解っているようですね…内容は既に書き写して、有りますが…良い事が沢山有りますね、クロバルゼス商会と繋がりもね」
イールスが睨みながら言うと、クロバルゼス商会代表と商会代表が見合わせてから、イールスを睨んでいる
「全て解っていて呼び出したのか…その裏帳簿ごときで、騎士団は動かないぞ!!」
クロバルゼス商会代表が怒鳴る
「裏帳簿でしたか? 中身を知っているのですね」
イールスが笑みを浮かべて言うと、クロバルゼス商会代表がイールスを睨んでいる
(このーーー何を考えている!! どうにもならないぞ…公爵家を見放すか?…油断が出来ない)

「商会代表を捕まえても、男爵家の乗っ取り計画は終わらないですから…公爵家子息が絡んでいたら、どうしようも無いですね…今回は公爵家も手出しは出来ないです。今回は公爵家が孤立してますから」
「仕方ない…その裏帳簿いくらで買えと言うのか?」
クロバルゼス商会代表が考えながら言うと、ヘルクドールとアーセリオドールが驚いている
「裏帳簿とは言ってませんよ…嘘か本当かどっちでしょう」
イールスが笑みを浮かべて言うと、ヘルクドールとアーセリオドールが苦笑いしている
(怖すぎる…どこから持ってきた…)

「ふっ…金貨900枚で買い取ろう」
クロバルゼス商会代表が考えてから、諦めたように言うと、商会代表が驚いている
「中身を確認してからにしないのですか? 偽物かも知れないですね」
イールスが笑みを浮かべている
「この証拠なら、分が悪い…」
クロバルゼス商会代表が苦笑いしている
「申し訳ありません…まさか、裏帳簿まで…」
商会代表が頭を下げている
「あっさり認めましたね、これでクロバルゼス商会がダミーの商会で乗っ取り計画の進めていたとは…公爵家もボロが出ましたね…こんな物でバラすなんて」
「貴様、何者だ!! どこまで知っている!!」
クロバルゼス商会代表がイールスを睨んでいる
「こっちの証拠は別の家に譲るかな?」
イールスが溜め息をして言うと、クロバルゼス商会代表が苦笑いしている

イールスがクロバルゼス商会代表宛の金貨900枚の借用書を作成すると、クロバルゼス商会代表が確認をしてから、ヘルクドールが確認している
「これにもサインをお願いします」
イールスが笑顔で言うと、内容を読んだクロバルゼス商会代表が苦笑いしている
(後で文句を言わせないつもりだな! それも連名で…何を企んでいる!それも後で無効に出来ないなんて、どうする?)

「その書類の内容は見てなくても、知っている!! 何故こんな物をサインさせる」
クロバルゼス商会代表がイールスを睨んでいる
「言いましたよね? 偽物かどうか知らないと…保証してないのに、後で偽物だと騒がれても面倒ですから、それとも後で無効と言うつもりでしたか?」
イールスが笑顔で言うと、クロバルゼス商会代表が考えてから、本を手に取って青ざめている
「何だこれは!! 騙したな!!」
クロバルゼス商会代表が怒鳴り、本を叩き付けている
「何度も言いましたよ、どうしますか? もう関係もバレていますから」
「きさまーーーー 何処に裏帳簿が有る!!」
クロバルゼス商会代表が怒鳴り、イールスを睨んでいる
「情報の出所に預けてあります。レズムード伯爵家と関係が無いところですから」
「このーーーー ちっ!! 貴様の目的は、金貨900枚は必要ないのだな!! さっさと出せ」
「これでクロバルゼス商会代表と商会代表が一緒で、男爵家乗っ取り計画をしていたのも、公爵家子息が後ろにいるのも、これで明らかになりましたから、次の段階に進めますね」
イールスが笑みを浮かべて言う
「貴様ーーー」
クロバルゼス商会代表がイールスに殴り掛かり、イールスが軽く避けている

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

その花の名前は

恋愛 / 完結 24h.ポイント:667pt お気に入り:4,164

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:908

承認欲求

恋愛 / 完結 24h.ポイント:497pt お気に入り:13

えーと、モンスターを倒したんだけど……、どうしたんすか

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:0

器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:682

処理中です...