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第87話 ビーレルバウム男爵と情報屋

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翌日、ヘルクドールが使者を送り、ビーレルバウム男爵夫妻と騎士爵家の人達が揃って、レズムード伯爵家の屋敷に集まる
「ヘルクドール伯爵様、本日はお目通りありがとうございます」
ビーレルバウム男爵が深々と頭を下げている
「状況は、今朝の手紙で確認したが、相当な借金もしているみたいだな」
「・・・その通りです。役職を解任された、その日に期日までに返済を求められ、娘の婚約も破棄され、商人から側室にと求められています」
ビーレルバウム男爵が深々と頭を下げて説明している
「貴公は、どうするつもりだ?」
ヘルクドールが睨みながら聞く
「この後始末、不可能です・・・爵位は、誰かに譲り、隠居します・・・もう何も残ってません」
ビーレルバウム男爵が悔しそうに言う
「分家も、この事態に誰も爵位を受け継ぎたい者は居ません・・・」
ビーレルバウム男爵夫人が涙目で言う
「騎士爵家は?」
ヘルクドールが考えながら聞く
「もう、どうにもなりません・・・借金はギリギリ返せるかも知れませんが、後ろ楯が無いと、領地運営は不可能です。 公爵家からは、縁を切られました・・・息子も騎士団内で左遷されて、分家の者達も左遷されました」
騎士爵家の当主達もそれぞれ説明をしている
「借金の実態はどのぐらいか?」
アーセリオドールが考えながら聞く
「金貨500枚ぐらいですが・・・強欲な商人相手ですから・・・」
「我々も200枚ぐらいです」
ビーレルバウム男爵と、騎士爵家の人達がそれぞれ、商人からの手紙を見せている。アーセリオドールが書類を見て考え込んでいる
「大金だな・・・即答は控えるが・・・少し調査する時間が欲しい」
ヘルクドールが考えながら言う
「よろしくお願いします」
ビーレルバウム男爵が深々と頭を下げている

「自業自得だが、余り公爵家の名前を勝手に使わない事だな」
ヘルクドールが苦笑いして言う
「それは・・・大変申し訳ありません・・・」
ビーレルバウム男爵が深々と頭を下げている
「メサリアも相当怒っていたからな、気を付けるように・・・王立学院まで乗り込むなんて、愚かだからな」
アーセリオドールが苦笑いして言う
「何故そこまで知っているのですか?」
「噂は広がるものだ!」
ヘルクドールがビーレルバウム男爵を睨んで言う

ビーレルバウム男爵達が帰っていくと、イールスとメサリアが資料を確認に入ってくる
「どう思う?」
アーセリオドールがイールスが真剣に資料を見ているのを見ている
「相当な罠です。 何か対策をしないと、公爵家の攻撃でも有ります」
イールスが苦笑いして言う
「どう言う事だ!」
ヘルクドールが驚いている
「借金が本当にどのぐらいか、解りませんが、かなり、利息が高いと思ってます。 後から後から事実無根の借金を出してくるつもりでしょう・・・最初から乗っ取りが目的です」
イールスが考えながら言う
「対策が…不可能か?」
アーセリオドールが考えながらイールスを見ている
「一つ一つ潰すしか無いですが、後は情報次第です」
イールスが考えながらヘルクドールを見ている
「何を企んでいる?」
「まだ、情報が足りません」
イールスが笑みを浮かべていると、ヘルクドールとアーセリオドールとメサリアがイールスを見て考え込んでいる

イールスは、護衛の元に向かう
「イールス様、情報屋と交渉しましたが、情報料が高額になっています。相当な証拠を持ってきたようです」
護衛が真剣に説明を始める
「直接会うしか無いか?」
苦笑いしながら護衛達を見ている
「金貨50枚なんて、法外過ぎます」
「それだけの情報なのか? 吟味も必要だな…トドメを討てるなら…」
「裏帳簿と他の乗っ取り計画との事です」
護衛が聞いた内容を、詳しく説明する

こちらの欲しい情報とよんで、吹っ掛けたか…優秀なら、今後の事も考えて出しても良いが…

イールスは考えてから、執事服に着替えて、外套で顔を隠して護衛達と出掛けていく

護衛の案内で情報屋に会いに向かい、酒場に入ると、護衛が奥のテーブルに座り待っている。イールスは、口元をマフラーで隠している
「約束の物は?」
フードで顔を隠した男がやってくると、護衛を見て聞く
「情報をある程度確認したらな」
イールスが金貨の袋を見せて言う
「ここでは人目がある…上の部屋に来い」
フードで顔を隠した男が笑みを浮かべて言うと、店の主人に話して、2階に上がり、奥の部屋に入ると、護衛とイールスが入り、男が警戒したように廊下を見てから、外を見ている

男が椅子に座り、持っている鞄から、紙の束をテーブルに置く
「少し確認してみろ」
男が言うと、護衛がイールスを見てから、イールスが適当に紙を見てから、本を開けて中を1ページ読んでいる

「騎士団と癒着か? それとこっちは、ビーレルバウム男爵家と数家の乗っ取り程度か」
イールスが呟くと、男がイールスを睨み付ける
「それだけで判断か…良い証拠だろ」
男がイールスを睨みながら言う
「残念な証拠だな…これみたいに、決定的な証拠なら良かったがな」
イールスが鞄からビーレルバウム男爵からの借金の取り立ての証拠を見せて、商会と公爵家の取引の記録を見せる。男が紙を見て考え込んでいる

「なる程な…既にここまで調べて、この先が欲しいのか…他にも持っているのか?」
男が紙を見ながら言う
「商会同士の繋がりと、もう一つの商会とある準男爵家との繋がりの証拠なら既に準備している」
イールスが笑みを浮かべて言う
「ちっ! この程度では、買わないか…」
「切り札を先に出してくれれば…持っているのだろ?」
イールスが男の表情を見て聞くと、男が考えながらため息をする
「全部出そう…」
男が鞄から帳簿と公爵家と取り決めをした、書類を出して、イールスが軽く読み始める
「公爵の息子か…少し裕福な子爵家に金貨で売る約束か…この商会を脅しても、無意味だから残したのか? 裏帳簿自体盗まれたのを知らないなら、愚かだな」
イールスが苦笑いしている
「凄い理解だな…同業にならないか?」
男が苦笑いしながら、イールスを見ている
「まだまだ、トドメを討つには足りないか… 持っていますね、ジュジェンタル準男爵と別の商会と公爵家の繋がりがね」
「欲張りめ! これだ」
男が紙を出して、テーブルに置くと、イールスが金貨の袋をテーブルに置き、紙の束を見て笑みを浮かべる
「確かに…次はこいつからの依頼か先に言え! 面倒な奴は、後が面倒だ」
男が護衛を睨み付ける
「高額になったら、出てくるだろう…」
護衛が情報屋を見ていると、男が出ていき、イールス達も資料を持って帰っていく

これをそのまま出したら、盗賊と疑われるが、他の危険な家に売れば、面白い事になりそうだな…どう攻めるかな?  
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