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第79話 セルメリア侯爵家のパーティー

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数日後、イールスがパーティーに向かうと、入口でアリシナが待っている
「イールス様、待っていました」
アリシナが馬車から降りてきた、イールスを見て嬉しそうに言う
「アリシナ様、待たせてしまって、大変申し訳ありません。本日は同行させて貰い、本当に感謝致します」
イールスが丁寧に頭を下げながら言う
「イールス様、嬉しいです。セルメリア侯爵家のパーティーに一緒出来るなんて」
アリシナが嬉しそうに言うと、アリシナが招待状を執事に見せて、執事がイールスを値踏みするように見ている

怪しまれているのかな? 何だか嫌な感じがするな…

「どうぞ、お通りくださいアリシナ・エストリアナ準男爵令嬢様とイールス様」
執事が微笑みながらアリシナを見て言うと、イールスを一瞥している

イールスとアリシナがパーティー会場に入ると、挨拶回りしながら、アリシナと話している。男が近付いてくる
「え! ブライトル・セルメリア様」
アリシナが男を見て挨拶をしている
「アリシナ・エストリアナだったな、クレーシアは一緒で無いのか? その男は?」
ブライトルがイールスを見ている
「イールスと申します。 ブライトル様お会いできて光栄に思います。以後お見知りおきして貰えたら、嬉しく思います」
イールスが丁寧に挨拶をしていると、アリシナが横で微笑んでいる
「イールス? 何処の家の者だったかな?」
「大変申し訳ないのですが、下錢な身の為家柄を名乗るのは、大変恐れ多く申し訳ないと思っています」
イールスが頭を下げながら言うと、ブライトルがイールスを見て考えている
「誠実そうな男だな…アリシナの恋人か?」
「え! えーと」
アリシナが真っ赤になっている
「下錢な身ですので、恋人など言われても、大変恐れ多い事で申し訳無いと思います。アリシナ様に不愉快な思いをさせたくないと思っています」
イールスが慌てて丁寧に言うと、アリシナが少しムッとしている。ブライトルがアリシナとイールスを見て徐々に笑い始める
「そうか、そうか、中々手強い男だな、噂のアリシナの思い人か! グレイスが言っていたな」
ブライトルが笑いながら言う
「グレイス御兄様が?」
アリシナが驚きながらブライトルを見る
「その通りだ! 知っているとは思うが、妻が亡くなり、後妻を早く見付けよと、小言を言われているのは、知っているな…アリシナも候補になっている。 グレイスが忠告してくれている。アリシナは凄い男に恋をしていると…」
「ブライトル様ーーー 」
アリシナが慌てて叫ぶと、ブライトルがイールスを見てから苦笑いしている
「聞こえなかった事にします。この頃物覚えが悪いので」
イールスが頭を下げながら言う
「なるほど、気が回るか…この物腰と機転、イールスだったな」
ブライトルが笑顔で言うと、イールスとブライトルが話を始め、アリシナがイールスの横で微笑んでいる

「ブライトル様」
侍女がブライトルの後ろに来て、耳打ちする
「話しすぎた様だな…イールス話しやすくて、良い男だな! 次の機会にまた話すぞ」
ブライトルが笑顔で言うと、挨拶回りに戻っていく

「ブライトル様、イールス様とばかり話していました…あんなに話しているブライトル様は始めてみました」
アリシナがブライトルの後ろ姿を見て言う
「何だろう? 本当に話しやすい人です。 アリシナ様、話し込んで申し訳ありません」
イールスが頭を下げながら言う
「いえ! ブライトル様は、奥様を亡くされてから、余り外に出てないと言われていましたが、元気になられたのですね…グレイス御兄様には文句を言わないと」
アリシナが考えながら呟く
「向こうの方で、話しましょう」
イールスが微笑みながら言うと、アリシナをエスコートして、飲み物を飲んでいる少女達の方に歩いていく

パーティーが終わると、アリシナを見送り、執事がイールスの元にやってくる
「イールス様、少し時間は有りますか?」
執事が微笑みながら聞く
「少しなら時間は有りますが」
イールスが驚きながら執事を見ている

何か問題でも? どうしよう

執事の案内で歩いていく
「お連れしました」
執事が頭を下げながら言う
「お初にお目にかかります。イールスと申します。以後お見知りおきして貰えたら、嬉しく思います」
イールスが丁寧に頭を下げている
「イールスか? なるほど、噂になっている、男か? ブライトルが話しやすい筈だな、ブライゼルス・セルメリアである」
ブライゼルスが微笑みながらイールスを見ている
「ブライゼルス様、御尊顔を拝見できて、光栄に思います」
イールスが頭を下げている
「そう堅くなるな、イールス、息子と仲良くして欲しい、妻が急逝して、この一年塞いでいたから、こんなに話していたのは、初めてだった…息子が元気になって欲しいと思っている。 後妻も早く見付けたいが、中々野心有る者を省くのは難しい…歳が離れすぎても問題だからな…」
ブライゼルスが少し暗い顔をしながら呟く
「ブライトル様と談話するのは、光栄に思います。もしパーティー会場で再会しましたら、挨拶をさせて貰います」
イールスが頭を下げながら言う
「なるほど、野心が無いのか? 家柄も知りたいが…」
「大変申し訳ありません。下錢な身の為、養って貰っている家の名を名乗るのは、恐れ多く御遠慮したいと思います。身寄りの無い私を引き取り学ばせて貰っている身ですので…」
イールスが身の上話をすると、ブライゼルスがイールスを見ながら微笑んでいる

「時間を取らせたな、家柄は詮索はしないが、息子とは仲良くして欲しい」
ブライゼルスが微笑みながら言うと、イールスは、執事の案内で馬車に向かい、帰っていく

屋敷に戻ると、リビングでメサリアが待っている
「メサリア様、ただいま戻りました」
「イールス、どうでしたか? 新しい令嬢を見付けましたか?」
メサリアが微笑みながら聞く
「ブライトル様とブライゼルス様にお会いしました。 長く話してしまい、ブライトル様に申し訳無いと思います」
イールスが説明をしていると、メサリアが驚いている
「は? ブライトル様? 今度は侯爵家の跡取りと仲良しに?…それもブライゼルス様と言えば、騎士団にも顔が効く、公爵家の目の敵…令嬢なら面白かったのですが…」
メサリアが呟き、少し残念そうにしている
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