異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

第2話 孤独と新たな道

２年間毎日、イールスはお母さんと一緒に酒場で手伝いをしながら、お客から色々な話を聞いて過ごしている

ある日、いつも通り、酒場で手伝いをしている
「ゴホゴホ」
お母さんがうずくまり、苦しそうに咳をしていると、赤い血を吐き出して、急に倒れ込む
「おい！！大丈夫か！！」
周囲のお客が慌てて近寄り、声を掛けている
「え！ お母さんーーーー！！」
慌てて近付き、お母さんの顔を覗き込むと、青白い顔をして力無く、気を失っている

え！ これって…孤児に？ まずい！ まだ未成年…保護者無しだと、生きていけない！！ どうしたら！！

酒場の奥さんがお母さんを家まで送ってくれる。色々考えながら、看病をしていると、お母さんが目を覚ます
「イールスちゃん、ここは…そう…イールスちゃんもう大丈夫だからね」
お母さんは、イールスが心配そうな顔をしているのを見て微笑みかける
「お母さん無理しないで…」
「イールスちゃんお腹すいた？ 何か作るから」
お母さんが起き上がろうとする
「お母さん大丈夫だから、寝ていて」
「イールスちゃん…」
お母さんは、抱きついて
「ごめんね、心配掛けて…」
「無理しないで休んでいて」
「イールスちゃん…」

１ヶ月、毎日イールスは、１人で酒場の手伝いに向かい過ごしているある日
「イールスちゃん、ごめんなさいね」
寝ているお母さんが、力無く涙目で言う
「お母さん、大丈夫？」
「もう、長くないかも知れないから、これを渡しておきます」
お母さんが真剣に言うと、短剣が差し出される
「こんな高そうな物有ったの？」
装飾された短剣を受け取り、見ている

これを売って生活の足しに？ この短剣の意味は？

「イールスちゃん、その短剣は、イールスちゃんのお父さんから貰った物です。大切にしてね…ゴホゴホ」
苦しそうに咳を始めると、横になって悲しそうにイールスを見ている

翌朝、お母さんは、冷たくなって起きなくなり、酒場の奥さんに伝えて、埋葬をして貰い、自分は１人になった

酒場の奥さんの厚意で、イールスは酒場の奥さんに引き取られて、毎日酒場の手伝いをしている

数日後、一台の馬車が酒場の前に止まり、常連のおじさんが下りてくる
「イールス、お母さんの事は、聞いた…実は君のお母さんより、お父さんに連絡を頼まれ、お父さんが会ってくれる」
おじさんが真剣に言うと、お母さんから何を頼まれたか、説明をしている
「どこにも行く所は無いから…おばさんどうしたら？」
酒場の奥さんに聞くと、奥さんが真剣におじさんと話をしている

「イールスちゃん、１度会った方が良いから、行ってきたら？ もしダメなら帰ってきなさい」
酒場の奥さんが真剣に言う
「もしもの時は、必ずここまで送り届ける事を約束します」
おじさんが真剣に言う
「選択出来ない…もう１人だから」
真剣に伝えると、荷物を取りに部屋に向かい、馬車に乗り、町から出て別の町に向かう

大きな屋敷の中に入っていくと、馬車が止まり、執事と侍女の案内で部屋に入り、ソファーで待っている

もしかして、父親って貴族？ 金持ち？ 運が良いのか？ それとも会ってイキナリ牢屋行き？ どうしたら良いのだろ？色々考えながら、座って待っていると、扉が開き１人の男が入ってくる

「大分待たせたな、イールス」
「はじめまして…」
頭を下げて言う
「まさか、イキナリ連絡で引き取って欲しいと言われて驚いたが、まさか、数日前に亡くなっていたとは…イールス何も心配はいらない、この屋敷でゆっくりしなさい」
男性が真剣に言う
「えーと、自分はどうしたら、良いのか解りません…こんな凄い部屋見たことが無いので…それに何も知らないので…」
男性がイールスを見て笑い出す
「そうか…何も知らないか！ イールスお前は、私の息子だ！ これから知れば良い」
男性は、レズムード伯爵ヘルクドール・レズムード、お母さんは、侍女をしていた時に、恋に落ちて、イールスを身籠り侍女を辞めて、町に帰った事や、執事や護衛の兵士を時々送り、成長するイールスの事を心配していた事も色々教えてくれた。