ゴールデンクラッカー☆大介

泉出康一

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6Chance 『案内役』

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ブラジル、サンパウロ、とある高層ビルにて…

異質な雰囲気を醸し出している男達、『Zoo』の殺し屋だ。その殺し屋達とスーツを着た男が部屋で話をしている。

「スメルを倒すとは、噂以上だな、『ゴールデンクラッカー』は。」

糸目の男が長岡を賞賛している。

「全員で始末しに行った方が良いのでは?」
「いや…ふふっ…いや、ふふふっ…恥ずいわそんなん。」

スーツの男の提案を半ズボンの男が笑いながら拒否する。

「その通りや。俺ら『Zoo』の殺し屋やで。何人もで殺しに行くとか…こっちにもプライドってもんがああんねん!」

眼鏡の男は半ズボン男の意見に賛同した。

「…ですが…」

その時、スーツ男の話をコートの男が遮る。

「安心しろ。仕事はちゃんとやる。」
「…わかりました。それでは。」

スーツの男は部屋を出た。

「え…いやふふっ…ふっ…じゃあ次…いや…ふふふっ…次、だれが行く?」
「じゃんけんで決めよや。」

朝、アマゾン川周辺の小さな町にて…

瀕死の長岡を背負ったペドロとイザベラ、そして謎の半裸の男が町を歩いている。

「町ニ来タノ久シブリ過ギテ興奮ガ止マラナイネ!だいやもんどハ砕ケナイネ!ワオッ!」

半裸の男ははしゃぎまくっていた。
それを周りの人間は白い目で見ている。

「…眠い…(何でこの人こんな元気なんだ )」

半日前…

スメルを倒した長岡とペッテイングの元へ、ペドロとイザベラがやってきた。

「兄ちゃん!」
「キミ達…どうして…」

動かない長岡に変わってペッテイングが対応する。

「大介さんが心配で…」
「ピラニアに噛まれながら川を渡ったんだ!」
「や、やるねぇ…」
「それより、大介さんは⁈無事なんですか⁈」

ペッテイングは何も言わない。

「そんな…!」

その時、辺りから何人もの足音が聞こえてきた。

「だ、誰⁈」
「(まずい…敵の増援だとすれば…もう…)」

次の瞬間、ペドロ達の前にほぼ全裸の男達が現れた。

「キャーーー!!!」
「変態だぁぁあ!!!」

一人の男がペドロ達に近づいた。

「ソイツ、怪我シテルカ?」
「…え?」

数時間後、とある村、民家にて…

長岡は草のベットに寝かされ、ほぼ全裸の女性の看病を受けていた。まだ意識はない。
イザベラが村人達に感謝の意を述べている。

「ありがとうございます。」
「全然ダイジョーブヨ!困ッタ時ハオ互イ様ネ!ワオッ!」
「ユー達、迷子カ?」
「はい。丸2日間ぐらい、ずっと迷ってて…」
「ソレハ苦労シタネー。」
「兄ちゃんは…助かるのか…?」

ペドロは恐る恐る村人に長岡の安否について聞いた。

「ノー。死ヌヨ。」
「えぇ⁈そんなハッキリと…」
「ダッテ村ニ病院無イネ。」 
「それじゃあ、病院がある近くの町に。」
「無理ネ。コリャ今夜死ヌヨ。」
「一番近クノ町マデ半日カカル。ソレマデ保タナイ。絶対。」
「そんな…」

ペドロもイザベラも肩を落とし落ち込んでいる。

〈いや、保たせる。〉

次の瞬間、ペッテイングが姿を現した。

「「「ワオッ!ナンジャコレ!」」」

村人達は驚いた。

「お前、何とかできるのか⁈」
「僕の身体、縮小できるの知ってるよね。」
「えぇ…普段はそれで大介さんの胸ポケットに隠れてるって…」
「その力を使う。」
「でも、それで一体どうやって…?」
「今から大介の身体の中に入って、病気の進行を遅らせる。」

ペドロもイザベラも目を丸くした。

「僕が大介の身体に入って、体内の寄生虫や病原菌を殺す。初めてやるから、あまり自信はないけど。」
「出来るんですか…?」
「…分からない…でも、やるしかない。でないと、大介も僕も死ぬ。だから頼む。僕が病気の進行を遅らせている間、大介を町の病院まで運んでくれ。」

現在…

「ワオッ!マブイちゃん姉発見ネ!」
「おい!あんましウロウロすんなよ!変な目で見られてるだろ!恥ずいんだよ!」
「黙レガキンチョ!ココマデ案内シタノハ誰ダト思ッテルカ!」

彼の名はセバスジョバンヌ・シゲル。町までの案内役として、一緒について来てくれた。

「(コイツ、町に来たかっただけだろ…)」

その様子を陰から監視している眼鏡の男がいた。

「アイツか、ゴールデンクラッカー…死にかけやんけ。」

その時、シゲルはその眼鏡の男の視線に気づいた。

眼鏡の男は隠れた。

「俺の尾行に気づくか…エグいなアイツ…」

病院、エントランスにて…

ペドロとイザベラは椅子に座っている。

「ミーノ仕事ハココマデヨ!観光シテクルネ!ワオッ!」

シゲルは病院を出た。

「アイツ、絶対観光目的だぜ。案内役とか何とか言っといてよぉ。」
「まぁいいじゃない。町まで案内してくれたんだし。」
「…兄ちゃん、大丈夫かな。」
「大丈夫よ。きっと。」
「…ちょっとトイレ行ってくる。」

ペドロはトイレへと向かった。

「…大介さん…」

イザベラは頬を染めた。

「あらヤダ私ったら…」

その時、ペドロが戻ってきた。

「姉ちゃん!」
「ぺ、ペドロ⁈いつの間に…って、アレ?トイレは?」
「そんな事よりさ、大介兄ちゃんの様子見に行こう!やっぱり、心配でトイレどころじゃ無いよ!」
「でも今、治療中だから会えないわよ?」
「少しでも…近くに居たいんだ。」

イザベラは何か違和感を感じた。

「貴方…ペドロ、よね…?」
「え、そうだけど…姉ちゃん、どうかしたの?」

イザベラはペドロの発言に疑問を抱いた。

「(姉ちゃん…?)」

その時、もう一人ペドロがやって来た。

「えっ…⁈」

イザベラはそれを見て驚いた。

「姉さん!聞いてよ!トイレめっちゃ混んでてさ!あり得なくない⁈」

今来たペドロがもう一人のペドロの存在に気づいた。

「お…俺…え…えぇぇぇえ⁈俺オレ俺オレ!俺が居るゥゥゥゥゥゥ⁈」
「んな⁈な、何だこれ!コレどういう事だぁ⁈」

二人とももう一人の自分を見て驚いている。

「え…ど、どっちが本物なの…⁈」
「俺だよ!信じてよ!」
「違う!アイツは偽者だ!騙されちゃダメだよ!」

次の瞬間、イザベラは先に帰ってきたペドロを指差した。

「ほら見ろ!俺が本物の…」

その時、イザベラは言い放った。

「偽者は貴方です!」

指差しされたペドロは黙り込んだ。
イザベラはそのペドロを問いただす。

「誰ですか、貴方…」

次の瞬間、指をさされたペドロはナイフを取り出し、イザベラに襲いかかった。

「姉さん!!!」

次の瞬間、何者かがナイフを持ったペドロを殴り飛ばした。

「貴方は…!」

イザベラを助けたのは案内役のセバスジョバンヌ・シゲルだった。

「チッ。」

偽者のペドロは逃げ出した。

「あ、ありがとうございます…おかげで助かりました。」
「礼ハ要ラン。」

シゲルはイザベラをじっと見つめている。

「…あの…何か…?」

その時、シゲルはイザベラの肩を掴んだ。

「ヤラセロ!!!」
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