桑田少年の品定め

泉出康一

文字の大きさ
上 下
10 / 16

第10品 『ワンチャン』

しおりを挟む
TL高校、一階、下足箱置き場にて…

アンゼンビを倒した桑田達は、下足箱置き場へとやって来た。

「女王の気配を感じるわ…」
「場所は?」
「この階じゃない。おそらく、もっと上の階…」

その時、近くから足音が聞こえて来た。

「よぉ、桑田。」
「…大介…?」

それは桑田の親友、長岡大介だった。

「なんか久しぶりな感じやな。毎日学校で会ってるはずやのに。」

その時、パキナは桑田に問いかけた。

「この子、確か宮崎って娘に去勢された子よね?」

その時、桑田は長岡の様子を見て確信した。

「お前、ヒニン族やな!」

しかし、長岡は何も反応しない。

「待ってろ大介。今助けたるからな。」

桑田が長岡に近づいたその時、長岡は桑田の顔面を殴った。

「痛ッ!!!おおお、おまおまおままままお前、何すぅんねん!!!」

長岡は親友を殴ったにも関わらず、落ち着いた様子で話し始めた。

「お前の言う通り、俺はヒニン族に取り憑かれてる…でも、俺の意思で、や。」
「はぁ⁈何言ってんねん…?」

その時、辺りから声が聞こえた。

「言葉通りですよ。」

次の瞬間、長岡の頭上に青髪のヒニン族が現れた。

「僕はヒニン族四天王の一人、ペッテイング。先程も言ったように、取り憑いて欲しいと言ってきたのは彼の方からです。」
「は?嘘つけ!そんな訳…」

その時、長岡は桑田の発言を遮った。

「嘘やない。」

桑田は聞き返す。

「じゃ、じゃあ、嘘じゃないなら、何でか理由言えよ…」

その時、長岡は下半身を露わにした。

「見ろよ桑田…」

長岡の股間は、宮崎に去勢され、大事なモノが無くなっていた。

「もう俺…ワンチャンやれへんねん…俺がワンチャンやれへんこんな世界なんか…全部、壊れてしまえばええねん…!!!」
「大介…」

ペッテイングがゆっくりと長岡の肩に降りた。

「そこで、利害が一致した彼に取り憑かせてもらったという訳です。」
「そんで俺は、コイツから特別な力を貰った。」

長岡は手を前に出し桑田にかざして、手の平を閉じ始めた。それと同時に桑田は股間を抑え、苦しみ始めた。

「ぐぅがぁ……ッ!!!」
「ど、どうしたの⁈」
「うッ…き、キン○マが…痛い…!!!」

ペッテイングは余裕そうに長岡の周りを飛び回っている。

「僕の特別は『高痴漢技術サワレヤ』。離れた場所の物体を掴んだり、動かしたり出来る。まぁ、サイコキネシスみたいなものです。」

長岡は覚悟の表情を浮かべた。

「この『高痴漢技術サワレヤ』で、全人類去勢したる…みんな、俺の苦しみを味わえばええねん…」

長岡は握る力を強くした。

「ぐあぁ…ッ!!!」

その時、長岡は少し桑田に近づいた。

「桑田~、お前さぁ~…俺がこんな状態やのに、ヤりまくってたらしいやん。俺の入院中、見舞いにも来てくれへんし…」
「ち、ちがっ…それには……理由…がッ…!!!」
「ヒニン族撲滅の為、か?」
「うッ…うん……くッ!」
「でもさ桑田、お前、正直楽しんでたやろ?ヒニン族撲滅の為、世界を救う為、そんな大層な事考えながら、お前はヤってたんか?ちゃうやろ。本能のまま、女の体を楽しんでた。ちゃうんか?」
「…」
「なんか言えやッ!!!」

長岡の握る力がさらに強まると同時に、桑田はより一層もがき苦しみだした。

「ずるいやんけ!お前ばっかさ!親友やと思ってたのに!何でお前やねん!クソが!」

その時、桑田はか細い声で長岡に言った。

「ハァ…ハァ…知るかボケ…」
「は?」
「性欲が強いからって…だけで、俺が選ばれて…うッ……いきなり女子口説けとか…言われ…て……」
「…」
「確かに…最初は結構…良い…な…って思ってたよ…でも…コレのせいで…友達も、大勢死んで……母さんと父さんも……ッ!」

桑田は涙を流した。

「こんな事なら…こんなんなるんやったら!ヤりたいなんか思わんかったわ!!!」
「…お前…」

その時、洗脳された学生達が数名、上の階からぞろぞろやって来た。
次の瞬間、長岡は『高痴漢技術サワレヤ』を解除した。

「ハァ…ハァ…ハァ…」

桑田のキン○マの痛みは和らいだもののまだ少し苦しそうな表情をしている。
ペッテイングは長岡の方を向いた。

「何故やめた?」
「…分からん。」
「…そうか。」

長岡は『高痴漢技術サワレヤ』を使い、洗脳されている生徒達を一掃した。

「行けよ。」
「大介…何で。」
「…タマ潰される痛みは、俺が1番よく知ってる。」

次の瞬間、長岡は桑田に微笑みかけた。

「友達のタマは、潰されへんわ…」

長岡は桑田に背を向け出口へと歩き出した。

「桑田。お前なら、ワンチャンやれる…頑張れ…」

長岡は外へ出て行った。

桑田はこの時、長岡にはもう2度と会えない。そんな気がしていた。
事実、2人が出会う事は、もう二度となかった。

学校前にて…

長岡とペッテイングが学校から出てきた。

「これからどうする気だ?」
「決まってるやろ。全人類去勢する。」
「…彼は例外かい?」
「いや…次、会った時は…必ず…」
「…会えないと良いね。」
「…お前、変わってんな。他のヒニン族ならブチギレやろ?」
「僕はね、君が気に入ったんだよ。ヒニン族は、取り憑いた相手から一生離れることが出来ない。君が言う所の、ワンチャンだよ。だからね、こちらとしても、品定めはしたいんだ。」
「…変わってるわ。お前。」

長岡は歩き始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...