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第2章『ガイ-過去編-』
第121障『恥の多い人生』
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【4月1日、19:25、フリージア王国、城下町、とある酒場にて…】
柱に縛り付けられ、地べたに座らされる裏日戸、股間を矢で貫かれた陣野、土狛江の死体。そんな彼らの正面の椅子に座るは白鳥組幹部補佐の前田。そして背後には、彼のタレントによって操作されたフリージア市民たち。
「ぐあぁあぁぁぁぁぁぁッ…‼︎」
陣野は涙を流し、悶えている。当然だ。彼の股間に放たれた矢は、彼の陰茎と睾丸を切断し、肛門付近に突き刺さった状態なのだから。
「土狛江……おい…ッ……」
その隣で、裏日戸はまだ土狛江の死を受け入れられずにいる。
「おい…起きろよ…‼︎」
あまりに唐突過ぎた。数秒前まで、彼は呼吸を発していた。にも関わらず、今は何も聞き取れない。生命を感じさせない見慣れた肉塊が、裏日戸の脳を矛盾に引きずりこむ。
裏日戸の目から涙が溢れた。脳よりも先に、経験が意識してしまったのだ。
「嫌だ……」
白鳥組との戦いで、嫌というほど感じてきた他者の死。涙が流れ落ちた事で、土狛江の死の実感が裏日戸を襲う。
「死ぬなよ…ッ‼︎」
仲間を失った後悔と悲しみ。それらが逃げ場所を求め、裏日戸の目から涙として溢れ出る。
「起きろ土狛江!死ぬなッ!死んじゃ嫌だッ!土狛江!」
彼はもう死んだ。裏日戸もわかっている。しかし、諦めきれない。裏日戸は何度も土狛江だったものに『死ぬな』と叫んだ。
「いやいや、もう死んでるってww」
それをさらっと否定する前田。前田にとっては軽いツッコミ。しかし、今の裏日戸にとってその言葉は、彼女の人生史上、この上ない侮辱として感じられた。
「殺すぞてめぇッ!!!」
裏日戸は怒りと殺意を込めた瞳で前田を睨みつけ、言葉を放った。しかし、前田は全く動じる事なくこう言った。
「殺すぞ、かぁ。違うんすよねぇキミ。」
次の瞬間、前田は背後のフリージア市民を操作し、矢を放った。
「殺すのは前提なんすよ。」
矢は再び陣野の股間に刺さった。
「ぎぃぁぁぁぁぁあぁあああああああああああああああああああッ!!!!!!!」
痛みに慣れてきたところでの追い討ち。陣野は激痛により気を失った。
「く…ぅッ……‼︎」
敵意剥き出しで脅しの言葉を発した裏日戸だったが、先の前田の言動により、彼女は思い出すように恐怖した。改めて思い知らされたのだ。白鳥組らは本当の悪魔だったと。
「黙れクズがッ‼︎」
それでも裏日戸は叫んだ。ココで恐怖を認めてしまえば、きっと白鳥組らには勝てない。気持ちで負けたらダメだ。裏日戸はそう思った。
瞬間、パシッという音が辺りに響く。そのレイコンマ数秒後、裏日戸は自身の身に何が起こったか理解した。理解すると同時に、裏日戸は叫んだ。いや、叫ばざるを得なかったのだ。その激痛に。
「ぐあ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!」
パシッという音は矢を放った際の弦の音。そう。裏日戸は撃たれたのだ。的になった箇所はもちろん、陣野と同じ。
「はーい、ガチ穴確定~ww」
矢は裏日戸の膣口から侵入し、膣と腸を隔てる肉壁を貫いた後、矢先は直腸辺りで止まった。
「うッ…ぐ…はッ……ハァ…ハァ…ハァ…うくッ…‼︎」
裏日戸は必死で痛みを抑え、慣れようとしている。そうでもしないと激痛で気が触れてしまいそうだったからだ。しかし、一向に痛みは和らぐ事、慣れる事はなかった。
「俺さぁ、結構不器用でさぁ、美術とか家庭科とかの実技?の成績めっちゃ悪かったんすよ。」
前田は激痛に悶える裏日戸を他所に、自分語りを始めた。
「だから拷問とかも下手で。すぐ殺しちゃうんす。」
前田は裏日戸に近づき、しゃがみ込んだ。
「だからさぁ…ね?早く吐いてくれないっすかぁ?俺がうっかり殺しちゃう前に。」
前田は裏日戸の股に刺さった矢を掴む。そして、その矢をグリグリと動かし、裏日戸の体内で矢先を踊らせた。
「あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!」
更なる激痛が裏日戸を襲う。裏日戸は叫んだ。叫ばずにはいられなかったのだ。叫びを上げる事で少しでも正気を保つ為に。
「あ、やべww勃起してきたww なんかエロい事してるみたいだわ、コレ。」
前田はヘラヘラと笑いながら、裏日戸に刺さった矢をグリグリと動かす。悪魔、いや、言葉が見つからない。前田の残虐な所業を例えるには、悪魔程度の比喩じゃ足りなかった。
「人間じゃ…ない……」
その時、意識を取り戻した陣野がポツリと呟いた。
「白鳥組らに…人の心は無いのか……」
陣野の呟きにより、手を止める前田。
「話す気になったっすか?」
前田はしゃがんだ状態から立ち上がった。
「障坂ガイ、生きてんでしょ?今どこに居るんっす?」
「障坂ガイは…死んだ…」
その陣野の発言を聞いた前田は肩を落とし、少々不機嫌な表情をした。
「そういうの要らねーって。」
前田は陣野の顔を靴底で柱に押し付けた。
「死んでねぇんだろ?わかってるんすから。」
「いや…ガイは死んだ……死して尚…お前らに一矢報いようとしてるんだ……」
その言葉を聞き、前田は陣野の顔から足を退かす。
「どーゆーことっすか?もっと詳しくお願いしますよ?」
「あぁ…全部…話す……だから…命だけは……」
「無理。」
前田は笑顔でそう答えた。
「俺言いましたよね?殺すのは前提って。アンタら殺すのは確定してんすよ。俺が言いたいのは過程っす。苦しんで殺されるより、全部吐いて楽に殺される方がマシじゃないかって話っすよ。ほら。死んだ後の事なんて、ゆーてどうでも良いじゃん。」
それを聞き、陣野は笑った。聞いた自分が馬鹿だったと言わんばかりに、諦めを込めた笑み。
「そうか…そうだったな……白鳥組らは…人間じゃなかったな…」
陣野は涙を流し、泣くように笑った。その様子を見て、前田は陣野が気が触れる寸前だと理解した。
「はぁ。めんど。」
前田はそう呟く。完全に気が触れてしまっては尋問どころでは無いからだ。しかし、陣野はまだ正気を保てている。
「裏日戸くん…」
その時、陣野は裏日戸の方を向き、こう言った。
「頼りない大人でごめんな…」
陣野の顔は涙と鼻水でクシャクシャになっており、とても31歳とは思えぬ老顔だった。全てを諦めた情け無い男の顔。
しかし、裏日戸はその表情の本当の意味を知った。
「キミは生きなさい…」
そう発言した陣野の表情は優しかった。それはまるで、本当の家族のような。
「陣野……おまえ………」
裏日戸は激痛と絶望の最中、陣野にその言葉の意味を問おうとした。しかし次の瞬間、裏日戸は石化した。
「なッ⁈」
前田は裏日戸が石化した事に驚嘆した。と同時に、陣野が『青面石化談話』を使った事を理解した。
「陣さん…アンタ、これ…何のつもりっすか…?」
陣野から数歩下り、前田は警戒を強める。一方、陣野は泣きながら笑い続ける。
「何で今タレントを使いやがったッ!」
陣野は何か企んでいる。そう思い、焦りを表に出す前田。彼の操るフリージア市民達は猟銃や弓を陣野に構えている。
「答えろッ!!!」
前田のその問いに、陣野は絶えず涙を流し、笑みを浮かべながら、こう答えた。
「どうせ死ぬんだろ…?」
「ッ…‼︎」
その発言で全てを悟った前田は、操作するフリージア市民たち全員に、陣野に向けて矢と弾丸を放たせ、自身は酒場の出口へと走り出した。
無数の矢と弾丸が陣野に襲いかかる。しかし、陣野は恐れない。何故なら、もう覚悟はできているからだ。
「(あぁ…本当…俺の人生、つまらん人生だったなぁ……)」
陣野は思い切り歯を食いしばる。すると、一番右下奥の歯が欠けて、歯に仕込んだ起爆スイッチが現れた。
「(そういや、そんなこと言ってる奴どっかに居たなぁ…小説家か…?昔読んだ本だったな…)」
陣野は自身の体内に小型の爆弾を仕込ませていた。財閥当主というもの、いつ他人に捕えられ、利用されるかわからない。いざという時は自ら命を絶て、そう父親に教え込まれてきた。大切なのは個人ではなく、財閥の存続。しかし、それも今となっては無いも同然。この自爆は一生使わないと陣野自身も思っていた。というより、陣野の性格上、死を覚悟する事などできないはずだったのだ。
「(生涯…?人生…?あぁ、もう…なんだっていいや…)」
自分の利益の為だけに他人を利用し、傷つけ、陥れ、自らの良心に気付きながらも、それを誤魔化し続けてきた男。それが陣野財閥当主、陣野智高。しかし、最後の最後で陣野は変わった。
陣野は爆弾のスイッチを歯で押した。
「恥の多い人生でした……」
陣野智高。31歳。死亡。
柱に縛り付けられ、地べたに座らされる裏日戸、股間を矢で貫かれた陣野、土狛江の死体。そんな彼らの正面の椅子に座るは白鳥組幹部補佐の前田。そして背後には、彼のタレントによって操作されたフリージア市民たち。
「ぐあぁあぁぁぁぁぁぁッ…‼︎」
陣野は涙を流し、悶えている。当然だ。彼の股間に放たれた矢は、彼の陰茎と睾丸を切断し、肛門付近に突き刺さった状態なのだから。
「土狛江……おい…ッ……」
その隣で、裏日戸はまだ土狛江の死を受け入れられずにいる。
「おい…起きろよ…‼︎」
あまりに唐突過ぎた。数秒前まで、彼は呼吸を発していた。にも関わらず、今は何も聞き取れない。生命を感じさせない見慣れた肉塊が、裏日戸の脳を矛盾に引きずりこむ。
裏日戸の目から涙が溢れた。脳よりも先に、経験が意識してしまったのだ。
「嫌だ……」
白鳥組との戦いで、嫌というほど感じてきた他者の死。涙が流れ落ちた事で、土狛江の死の実感が裏日戸を襲う。
「死ぬなよ…ッ‼︎」
仲間を失った後悔と悲しみ。それらが逃げ場所を求め、裏日戸の目から涙として溢れ出る。
「起きろ土狛江!死ぬなッ!死んじゃ嫌だッ!土狛江!」
彼はもう死んだ。裏日戸もわかっている。しかし、諦めきれない。裏日戸は何度も土狛江だったものに『死ぬな』と叫んだ。
「いやいや、もう死んでるってww」
それをさらっと否定する前田。前田にとっては軽いツッコミ。しかし、今の裏日戸にとってその言葉は、彼女の人生史上、この上ない侮辱として感じられた。
「殺すぞてめぇッ!!!」
裏日戸は怒りと殺意を込めた瞳で前田を睨みつけ、言葉を放った。しかし、前田は全く動じる事なくこう言った。
「殺すぞ、かぁ。違うんすよねぇキミ。」
次の瞬間、前田は背後のフリージア市民を操作し、矢を放った。
「殺すのは前提なんすよ。」
矢は再び陣野の股間に刺さった。
「ぎぃぁぁぁぁぁあぁあああああああああああああああああああッ!!!!!!!」
痛みに慣れてきたところでの追い討ち。陣野は激痛により気を失った。
「く…ぅッ……‼︎」
敵意剥き出しで脅しの言葉を発した裏日戸だったが、先の前田の言動により、彼女は思い出すように恐怖した。改めて思い知らされたのだ。白鳥組らは本当の悪魔だったと。
「黙れクズがッ‼︎」
それでも裏日戸は叫んだ。ココで恐怖を認めてしまえば、きっと白鳥組らには勝てない。気持ちで負けたらダメだ。裏日戸はそう思った。
瞬間、パシッという音が辺りに響く。そのレイコンマ数秒後、裏日戸は自身の身に何が起こったか理解した。理解すると同時に、裏日戸は叫んだ。いや、叫ばざるを得なかったのだ。その激痛に。
「ぐあ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!」
パシッという音は矢を放った際の弦の音。そう。裏日戸は撃たれたのだ。的になった箇所はもちろん、陣野と同じ。
「はーい、ガチ穴確定~ww」
矢は裏日戸の膣口から侵入し、膣と腸を隔てる肉壁を貫いた後、矢先は直腸辺りで止まった。
「うッ…ぐ…はッ……ハァ…ハァ…ハァ…うくッ…‼︎」
裏日戸は必死で痛みを抑え、慣れようとしている。そうでもしないと激痛で気が触れてしまいそうだったからだ。しかし、一向に痛みは和らぐ事、慣れる事はなかった。
「俺さぁ、結構不器用でさぁ、美術とか家庭科とかの実技?の成績めっちゃ悪かったんすよ。」
前田は激痛に悶える裏日戸を他所に、自分語りを始めた。
「だから拷問とかも下手で。すぐ殺しちゃうんす。」
前田は裏日戸に近づき、しゃがみ込んだ。
「だからさぁ…ね?早く吐いてくれないっすかぁ?俺がうっかり殺しちゃう前に。」
前田は裏日戸の股に刺さった矢を掴む。そして、その矢をグリグリと動かし、裏日戸の体内で矢先を踊らせた。
「あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!」
更なる激痛が裏日戸を襲う。裏日戸は叫んだ。叫ばずにはいられなかったのだ。叫びを上げる事で少しでも正気を保つ為に。
「あ、やべww勃起してきたww なんかエロい事してるみたいだわ、コレ。」
前田はヘラヘラと笑いながら、裏日戸に刺さった矢をグリグリと動かす。悪魔、いや、言葉が見つからない。前田の残虐な所業を例えるには、悪魔程度の比喩じゃ足りなかった。
「人間じゃ…ない……」
その時、意識を取り戻した陣野がポツリと呟いた。
「白鳥組らに…人の心は無いのか……」
陣野の呟きにより、手を止める前田。
「話す気になったっすか?」
前田はしゃがんだ状態から立ち上がった。
「障坂ガイ、生きてんでしょ?今どこに居るんっす?」
「障坂ガイは…死んだ…」
その陣野の発言を聞いた前田は肩を落とし、少々不機嫌な表情をした。
「そういうの要らねーって。」
前田は陣野の顔を靴底で柱に押し付けた。
「死んでねぇんだろ?わかってるんすから。」
「いや…ガイは死んだ……死して尚…お前らに一矢報いようとしてるんだ……」
その言葉を聞き、前田は陣野の顔から足を退かす。
「どーゆーことっすか?もっと詳しくお願いしますよ?」
「あぁ…全部…話す……だから…命だけは……」
「無理。」
前田は笑顔でそう答えた。
「俺言いましたよね?殺すのは前提って。アンタら殺すのは確定してんすよ。俺が言いたいのは過程っす。苦しんで殺されるより、全部吐いて楽に殺される方がマシじゃないかって話っすよ。ほら。死んだ後の事なんて、ゆーてどうでも良いじゃん。」
それを聞き、陣野は笑った。聞いた自分が馬鹿だったと言わんばかりに、諦めを込めた笑み。
「そうか…そうだったな……白鳥組らは…人間じゃなかったな…」
陣野は涙を流し、泣くように笑った。その様子を見て、前田は陣野が気が触れる寸前だと理解した。
「はぁ。めんど。」
前田はそう呟く。完全に気が触れてしまっては尋問どころでは無いからだ。しかし、陣野はまだ正気を保てている。
「裏日戸くん…」
その時、陣野は裏日戸の方を向き、こう言った。
「頼りない大人でごめんな…」
陣野の顔は涙と鼻水でクシャクシャになっており、とても31歳とは思えぬ老顔だった。全てを諦めた情け無い男の顔。
しかし、裏日戸はその表情の本当の意味を知った。
「キミは生きなさい…」
そう発言した陣野の表情は優しかった。それはまるで、本当の家族のような。
「陣野……おまえ………」
裏日戸は激痛と絶望の最中、陣野にその言葉の意味を問おうとした。しかし次の瞬間、裏日戸は石化した。
「なッ⁈」
前田は裏日戸が石化した事に驚嘆した。と同時に、陣野が『青面石化談話』を使った事を理解した。
「陣さん…アンタ、これ…何のつもりっすか…?」
陣野から数歩下り、前田は警戒を強める。一方、陣野は泣きながら笑い続ける。
「何で今タレントを使いやがったッ!」
陣野は何か企んでいる。そう思い、焦りを表に出す前田。彼の操るフリージア市民達は猟銃や弓を陣野に構えている。
「答えろッ!!!」
前田のその問いに、陣野は絶えず涙を流し、笑みを浮かべながら、こう答えた。
「どうせ死ぬんだろ…?」
「ッ…‼︎」
その発言で全てを悟った前田は、操作するフリージア市民たち全員に、陣野に向けて矢と弾丸を放たせ、自身は酒場の出口へと走り出した。
無数の矢と弾丸が陣野に襲いかかる。しかし、陣野は恐れない。何故なら、もう覚悟はできているからだ。
「(あぁ…本当…俺の人生、つまらん人生だったなぁ……)」
陣野は思い切り歯を食いしばる。すると、一番右下奥の歯が欠けて、歯に仕込んだ起爆スイッチが現れた。
「(そういや、そんなこと言ってる奴どっかに居たなぁ…小説家か…?昔読んだ本だったな…)」
陣野は自身の体内に小型の爆弾を仕込ませていた。財閥当主というもの、いつ他人に捕えられ、利用されるかわからない。いざという時は自ら命を絶て、そう父親に教え込まれてきた。大切なのは個人ではなく、財閥の存続。しかし、それも今となっては無いも同然。この自爆は一生使わないと陣野自身も思っていた。というより、陣野の性格上、死を覚悟する事などできないはずだったのだ。
「(生涯…?人生…?あぁ、もう…なんだっていいや…)」
自分の利益の為だけに他人を利用し、傷つけ、陥れ、自らの良心に気付きながらも、それを誤魔化し続けてきた男。それが陣野財閥当主、陣野智高。しかし、最後の最後で陣野は変わった。
陣野は爆弾のスイッチを歯で押した。
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