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第2章『ガイ-過去編-』
第59障『サラダ油ってホンマに燃えへんのかな?』
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【12月13日、密林の労働部屋、拠点にて…】
林の中から、巨大な火柱がガイ達に向かって放たれた。
「「ッ!!!」」
ガイと角野は同時に『角箱』を使い、前方に一辺2mの鉄箱を創造し、火炎を防いだ。
しかし、火炎の威力は高く、みるみるうちに鉄箱は溶解を始めた。
「ど、どうしよう…このままじゃ…!」
動揺する角野。一方、ガイは落ち着いた様子で新たに鉄箱を創造した。
「大丈夫。PSIの気配的に敵は一人。この炎も十中八九そいつのタレント。奴のPSIが切れるまで、俺とアンタ交代で盾を作る。」
「う、うん…!」
角野はガイの策に従った。しかし、ガイはそれが愚策である事に気づいていた。
「(コレは相手も承知のはず。無駄に炎を撃ち続ける訳がない。それに俺達が追い詰められている事も事実。何か仕掛けてくる事は間違いない。)」
すると突然、火炎放射は止んだ。ガイの予想通り、何か仕掛ける気だ。
「来るぞ…!」
ガイは角野に注意喚起した。
すると次の瞬間、激しく燃え上がる炎が拠点を覆い囲んだ。
それと同時に、前方から声が聞こえてきた。
「そのタレント、やっぱ裏切り者は葉湖ちゃんだったんだぁ~。そうかそうかぁ~。」
ガイと角野はタレントを解除し、箱を消して前方を見渡した。
林の中には赤髪の可憐な少女が立っていた。
ガイは角野に尋ねる。
「奴は…?」
「不知火萌。大学一年生。秋の仲間よ。」
その時、角野は不知火に弁明した。
「違うの!萌!私は秋にこんな事して欲しくなくて、それで…!」
すると、それを聞いた不知火の表情が強張った。
「気安く秋様の名を呼ぶなッ!このアバズレがァァァァァァアッ!!!」
次の瞬間、不知火が豹変した。
「何故お前はそのガキを連れ出したッ!何故お前は秋様の邪魔をするッ!答えろッ!この尻軽ッ!!!」
不知火の豹変ぶりに恐怖しながらも、角野は答えた。
「そ、それは…こんな事、間違ってる。だから…」
それを聞いた不知火は目をかっ開き、角野に言った。
「間違ってる?秋様が間違ってる?きもっ。どの口が言ってんだオイ。ゴミ。アバズレ。無能。」
不知火は罵詈雑言を角野に浴びせる。一方、角野は負けじと不知火に質問した。
「アナタこそ、どうして地下へ来たの?私たち、地下へ行く事は止められたはずよね?それってつまり、秋の命令に歯向かったって事になるけど。」
「馬鹿。バカ女。ゴミ女。そんな訳ねーだろ。わかんねーのか?頭悪すぎ。喋んなクソ。」
すると、不知火は先程とは打って変わって、頬を染めて楽しそうに話し始めた。
「私はね、秋様の為に、秋様の命令に背いたの!秋様が居ない間、そのガキを拷問してタレントを発現させれば、きっと秋様は私を誉めて下さるわ!きゃっ♡」
その時、拠点を囲っていた炎がじわじわと狭まり、中央へ近づいてきた。
「そのガキは生かす。けど、角野。お前は殺す。裏切り者。秋様にとっての害悪。」
火はガイ達のすぐ近くまで迫ってきた。
「ど、どうすれば…そうだ!箱を作ってその中に…」
「いや、ダメだ。どうせ溶かされる。」
ガイは辺りを見渡した。何か、使えるものはないか、と。そして、ガイは見つけた。
「…」
それを見て、不知火は笑っている。
「アハハハハハハ!!!死ね!死ね角野!焼け死ねッ!!!」
次の瞬間、拠点の中心から謎の泡が噴き出し、不知火の炎が消され始めた。
「な、なんで…⁈」
この時、不知火はこの泡はガイのタレントだと思っていた。ガイがタレントで消火したのだと。しかし、皆わかっているように、ガイのタレントは『模倣』。つまり、コレはガイのタレントではない。
次の瞬間、中央の大量の泡の中から、不知火に向けて何かが投げつけられた。
「うわっ!」
それはプラスチック製の容器。そして、その容器からこぼれた液体が不知火の体にかかった。
不知火はその液体を匂った。
「コレ…油…?」
その時、泡の中からガイと、消火器を手に持った角野が現れた。
その姿を見て、不知火は驚いた。
「な、なんで…何で消火器なんか持ってんだよ⁈」
その疑問に対し、ガイは説明を始めた。
「ココは拠点だ。そして、幸いな事に拠点中央に俺たちは追い込まれた。この意味がわかるよな。」
そして、ガイは右腕を不知火に見せた。そこには、ガイの所持金額と支払い義務金額が表示されていた。
それを見て、不知火は理解した。
「まさか、転送装置を使ったのか…!」
そう。ガイは転送機で消火器を購入して、火を消していたのだ。実際、ガイは今、指が無い為、使用したのは角野である。
ガイと角野は不知火に近づいた。
「く、来るなッ!!!」
不知火はPSIを纏い、ガイ達に向けて手をかざした。
それに対し、ガイは言う。
「やめとけ。それはお前が一番よくわかってるだろ。」
「ッ…」
そう。今、不知火の体には油が付着している。そんな状態で火炎系のタレントを使えば、自身すら黒焦げになってしまうだろう。
ガイは不知火のタレントを封じる為、転送機で消火器だけではなく、油を購入して、不知火に投げつけていたのだ。
「タレントを使えば、お前もタダでは済まない。降伏しろ。そうすれば、お前に危害を加えるつもりは…」
ガイが不知火に負けを認めさせようとしたその時、不知火は呟いた。
「構わない…」
「え…」
その時、ガイは嫌な予感がした。
「秋様の為なら…この体がどうなろうと…俺は一向に構わないッ!!!」
そして、不知火はガイ達に手をかざし、叫んだ。
「『火炎PSI』!!!」
次の瞬間、不知火の手の平から火炎が放たれた。
「ッ!!!」
ガイは角野を突き飛ばし、彼女を火炎から守った。しかし、ガイはその火炎に飲み込まれてしまった。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
そして、不知火自身も体についた油で着火してしまう。はずだった。
「えっ…」
しかし、不知火は何故か燃えなかった。
「なんで…」
その時、角野は大急ぎで消火器を使い、ガイの体についた火を消した。
「ガイ君!しっかりして!ガイ君!」
不知火の火力は思いのほか高く、肌が露出していた腕や足、顔はひどい火傷を負った。その火傷のダメージ故、ガイは気絶している。
「…」
不知火は投げつけられたプラスチック製の容器を見た。
「サラダ油…」
そう。ガイが投げつけたのは着火しにくいサラダ油だったのだ。
それを見た不知火は安堵により、笑みが溢れた。
「は…ははは!バカな奴!ガソリンすればよかったものを…」
その時、不知火は気づいた。
「(何故、ガソリンを使わなかった…)」
先ほど見たガイの右腕には、まだ十分に所持金は残っていた。ガソリンを買えなかった訳がない。そもそも、ガイがあの場で爆弾を購入し、不知火に投げつけていれば、話は早かったはずだ。
「なんで…このガキはこんな事…」
何故、ガイはそうしなかったのか。何故、サラダ油を使ったのか。爆弾を使わなかったのか。その理由を角野は泣きながら語った。
「この子が優しいからに決まってるでしょ!!!」
それを聞き、不知火は理解した。ガイは不知火を傷つけるつもりなどなかったのだ。だから、万一、不知火が自己犠牲を厭わずに火炎を放ったとしても、不知火は助かるように仕向けた。その上で、ガイはタレント封じの為のハッタリを言ったのだ。『お前もタダでは済まない』と。
「俺…は…」
不知火はかつてない後悔と罪悪感に苛まれた。自分を助ける為に命懸けで嘘をついた少年を、丸焼きにした事に。それは、桜田の為と割り切る事が出来ないほどに。
一見すると、ガイは善人に見える。しかし、コレにはガイの策略が組み込まれていた。
直前で角野を助けたのは、角野が消火器を持っていた為。不知火をハッタリで誤魔化したのは、不知火に罪悪感を植え付ける為。そして何より、金額の消費を抑える為。
ガイは彼女達の事など、微塵も考えてはいなかった。そのはずだった。しかし、ガイ自身、合理性とはかけ離れた部位で、そうしたい、そうしなければならない、という道徳的観念に囚われてしまっていた。それは、ここ最近のガイの変化によるものか。それとも、コレこそがガイの本質なのか。
林の中から、巨大な火柱がガイ達に向かって放たれた。
「「ッ!!!」」
ガイと角野は同時に『角箱』を使い、前方に一辺2mの鉄箱を創造し、火炎を防いだ。
しかし、火炎の威力は高く、みるみるうちに鉄箱は溶解を始めた。
「ど、どうしよう…このままじゃ…!」
動揺する角野。一方、ガイは落ち着いた様子で新たに鉄箱を創造した。
「大丈夫。PSIの気配的に敵は一人。この炎も十中八九そいつのタレント。奴のPSIが切れるまで、俺とアンタ交代で盾を作る。」
「う、うん…!」
角野はガイの策に従った。しかし、ガイはそれが愚策である事に気づいていた。
「(コレは相手も承知のはず。無駄に炎を撃ち続ける訳がない。それに俺達が追い詰められている事も事実。何か仕掛けてくる事は間違いない。)」
すると突然、火炎放射は止んだ。ガイの予想通り、何か仕掛ける気だ。
「来るぞ…!」
ガイは角野に注意喚起した。
すると次の瞬間、激しく燃え上がる炎が拠点を覆い囲んだ。
それと同時に、前方から声が聞こえてきた。
「そのタレント、やっぱ裏切り者は葉湖ちゃんだったんだぁ~。そうかそうかぁ~。」
ガイと角野はタレントを解除し、箱を消して前方を見渡した。
林の中には赤髪の可憐な少女が立っていた。
ガイは角野に尋ねる。
「奴は…?」
「不知火萌。大学一年生。秋の仲間よ。」
その時、角野は不知火に弁明した。
「違うの!萌!私は秋にこんな事して欲しくなくて、それで…!」
すると、それを聞いた不知火の表情が強張った。
「気安く秋様の名を呼ぶなッ!このアバズレがァァァァァァアッ!!!」
次の瞬間、不知火が豹変した。
「何故お前はそのガキを連れ出したッ!何故お前は秋様の邪魔をするッ!答えろッ!この尻軽ッ!!!」
不知火の豹変ぶりに恐怖しながらも、角野は答えた。
「そ、それは…こんな事、間違ってる。だから…」
それを聞いた不知火は目をかっ開き、角野に言った。
「間違ってる?秋様が間違ってる?きもっ。どの口が言ってんだオイ。ゴミ。アバズレ。無能。」
不知火は罵詈雑言を角野に浴びせる。一方、角野は負けじと不知火に質問した。
「アナタこそ、どうして地下へ来たの?私たち、地下へ行く事は止められたはずよね?それってつまり、秋の命令に歯向かったって事になるけど。」
「馬鹿。バカ女。ゴミ女。そんな訳ねーだろ。わかんねーのか?頭悪すぎ。喋んなクソ。」
すると、不知火は先程とは打って変わって、頬を染めて楽しそうに話し始めた。
「私はね、秋様の為に、秋様の命令に背いたの!秋様が居ない間、そのガキを拷問してタレントを発現させれば、きっと秋様は私を誉めて下さるわ!きゃっ♡」
その時、拠点を囲っていた炎がじわじわと狭まり、中央へ近づいてきた。
「そのガキは生かす。けど、角野。お前は殺す。裏切り者。秋様にとっての害悪。」
火はガイ達のすぐ近くまで迫ってきた。
「ど、どうすれば…そうだ!箱を作ってその中に…」
「いや、ダメだ。どうせ溶かされる。」
ガイは辺りを見渡した。何か、使えるものはないか、と。そして、ガイは見つけた。
「…」
それを見て、不知火は笑っている。
「アハハハハハハ!!!死ね!死ね角野!焼け死ねッ!!!」
次の瞬間、拠点の中心から謎の泡が噴き出し、不知火の炎が消され始めた。
「な、なんで…⁈」
この時、不知火はこの泡はガイのタレントだと思っていた。ガイがタレントで消火したのだと。しかし、皆わかっているように、ガイのタレントは『模倣』。つまり、コレはガイのタレントではない。
次の瞬間、中央の大量の泡の中から、不知火に向けて何かが投げつけられた。
「うわっ!」
それはプラスチック製の容器。そして、その容器からこぼれた液体が不知火の体にかかった。
不知火はその液体を匂った。
「コレ…油…?」
その時、泡の中からガイと、消火器を手に持った角野が現れた。
その姿を見て、不知火は驚いた。
「な、なんで…何で消火器なんか持ってんだよ⁈」
その疑問に対し、ガイは説明を始めた。
「ココは拠点だ。そして、幸いな事に拠点中央に俺たちは追い込まれた。この意味がわかるよな。」
そして、ガイは右腕を不知火に見せた。そこには、ガイの所持金額と支払い義務金額が表示されていた。
それを見て、不知火は理解した。
「まさか、転送装置を使ったのか…!」
そう。ガイは転送機で消火器を購入して、火を消していたのだ。実際、ガイは今、指が無い為、使用したのは角野である。
ガイと角野は不知火に近づいた。
「く、来るなッ!!!」
不知火はPSIを纏い、ガイ達に向けて手をかざした。
それに対し、ガイは言う。
「やめとけ。それはお前が一番よくわかってるだろ。」
「ッ…」
そう。今、不知火の体には油が付着している。そんな状態で火炎系のタレントを使えば、自身すら黒焦げになってしまうだろう。
ガイは不知火のタレントを封じる為、転送機で消火器だけではなく、油を購入して、不知火に投げつけていたのだ。
「タレントを使えば、お前もタダでは済まない。降伏しろ。そうすれば、お前に危害を加えるつもりは…」
ガイが不知火に負けを認めさせようとしたその時、不知火は呟いた。
「構わない…」
「え…」
その時、ガイは嫌な予感がした。
「秋様の為なら…この体がどうなろうと…俺は一向に構わないッ!!!」
そして、不知火はガイ達に手をかざし、叫んだ。
「『火炎PSI』!!!」
次の瞬間、不知火の手の平から火炎が放たれた。
「ッ!!!」
ガイは角野を突き飛ばし、彼女を火炎から守った。しかし、ガイはその火炎に飲み込まれてしまった。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
そして、不知火自身も体についた油で着火してしまう。はずだった。
「えっ…」
しかし、不知火は何故か燃えなかった。
「なんで…」
その時、角野は大急ぎで消火器を使い、ガイの体についた火を消した。
「ガイ君!しっかりして!ガイ君!」
不知火の火力は思いのほか高く、肌が露出していた腕や足、顔はひどい火傷を負った。その火傷のダメージ故、ガイは気絶している。
「…」
不知火は投げつけられたプラスチック製の容器を見た。
「サラダ油…」
そう。ガイが投げつけたのは着火しにくいサラダ油だったのだ。
それを見た不知火は安堵により、笑みが溢れた。
「は…ははは!バカな奴!ガソリンすればよかったものを…」
その時、不知火は気づいた。
「(何故、ガソリンを使わなかった…)」
先ほど見たガイの右腕には、まだ十分に所持金は残っていた。ガソリンを買えなかった訳がない。そもそも、ガイがあの場で爆弾を購入し、不知火に投げつけていれば、話は早かったはずだ。
「なんで…このガキはこんな事…」
何故、ガイはそうしなかったのか。何故、サラダ油を使ったのか。爆弾を使わなかったのか。その理由を角野は泣きながら語った。
「この子が優しいからに決まってるでしょ!!!」
それを聞き、不知火は理解した。ガイは不知火を傷つけるつもりなどなかったのだ。だから、万一、不知火が自己犠牲を厭わずに火炎を放ったとしても、不知火は助かるように仕向けた。その上で、ガイはタレント封じの為のハッタリを言ったのだ。『お前もタダでは済まない』と。
「俺…は…」
不知火はかつてない後悔と罪悪感に苛まれた。自分を助ける為に命懸けで嘘をついた少年を、丸焼きにした事に。それは、桜田の為と割り切る事が出来ないほどに。
一見すると、ガイは善人に見える。しかし、コレにはガイの策略が組み込まれていた。
直前で角野を助けたのは、角野が消火器を持っていた為。不知火をハッタリで誤魔化したのは、不知火に罪悪感を植え付ける為。そして何より、金額の消費を抑える為。
ガイは彼女達の事など、微塵も考えてはいなかった。そのはずだった。しかし、ガイ自身、合理性とはかけ離れた部位で、そうしたい、そうしなければならない、という道徳的観念に囚われてしまっていた。それは、ここ最近のガイの変化によるものか。それとも、コレこそがガイの本質なのか。
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