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第2章『ガイ-過去編-』
第53障『最後の休息』
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【12月8日、夜、障坂邸、ガイの部屋にて…】
ガイは膝上のヤブ助を撫でながら、机に座り、宿題をしていた。
「最近、習い事サボりまくりだな…」
ガイはそう呟いた。それに対して、ヤブ助は言う。
「たまには良いんじゃないか?」
その言葉を聞き、ガイは微笑んだ。
「そうだな。」
ガイはヤブ助の顎を摩った。ヤブ助は気持ちよさそうだ。
数秒の間の後、ガイはヤブ助に話しかけた。
「なぁ、ヤブ助…」
「何だ。」
「俺が死んだら、後の事は頼む…」
それを聞いたヤブ助は困惑した。
「何を言っている、ガイ…?」
すると、ガイは再びヤブ助に微笑みかけ、こう言った。
「なんでもない。」
近い未来、ヤブ助はこの言葉の意味を知る事となる。
その時、ガイの部屋へ村上が入ってきた。
「ガイ様~。夜食持ってきましたよ~。」
村上は机の上に持ってきた夜食を置いた。
「ありがと。」
ガイは村上に笑顔で礼を言った。
「いえいえ。頑張ってるガイ様の為なら何でもしますよ!」
そんな二人の会話の様子を、ヤブ助はガイの膝の上から見ていた。
「(よく笑うようになったな…)」
ヤブ助はガイを見て、そう思った。
ヤブ助が出会った頃のガイは、感情を表に出すような素振りは全くしなかった。しかし、ここ最近、ガイは人前で笑ったり泣いたり、感情を出すようになってきた。
ヤブ助はそれが嬉しい反面、不安だった。何故なら、ヤブ助にはその笑顔が、儚く散ってしまいそうなぐらいに脆く見えたからだ。そして、コレは村上や十谷も同様に感じていたガイの変化であった。
【12月9日、昼休み、学校、中庭にて…】
ガイ,広瀬,堺,山口は会話しながら昼食をとっている。
「文化祭の打ち上げ?」
「おうよ!打ち上げしよーぜ!」
山口はガイに文化祭の打ち上げに誘っていた。
ガイは首を傾げ、山口に尋ねた。
「文化祭の打ち上げは日曜日にやったんじゃないのか?」
「ガイ来なかっただろ。可哀想だからもっかいやんだよ!このメンツで!」
それを聞き、堺と広瀬は賛同した。
「いいな!やろう!」
「いつにする?土曜日とか?」
広瀬,山口,堺は打ち上げについて話し合っている。ガイの承諾なく、どんどん事が決まっていった。
そこへ、有野と友田がやってきた。
「アンタら、いっつもここでご飯食べてるわよね。そんなに良い所なの?ここ。」
友田の問いかけに山口は答える。
「おうよ。オメェらも一緒に食うか?」
「あいにく、もう食べちゃったわ。」
その時、広瀬は友田と有野に話しかけた。
「そうだ。今週の土曜日、ココの四人で文化祭の打ち上げ行くんだけど、二人も一緒にどう?」
「今さら文化祭の?」
理由を聞く友田に、堺がその説明を始める。
「障坂くん、クラスの打ち上げに来られなくてさ。だから、その代わりみたいな感じで。」
すると、それを聞いた有野が即答した。
「私、行く…」
迷いの無い参加宣言。山口はそれをよく思ったのか、有野に肩を組んだ。
「おうおう!そうこなくっちゃな!」
「…」
有野は山口の腕を振り払い、距離を取った。そんな有野に山口は言う。
「でも珍しいじゃねーか。オメェそういうの嫌いじゃなかったか?クラスの打ち上げにも来なかったしよぉ。」
「別に…」
そう。有野はガイ同様、クラスの打ち上げには行かなかった。そういった集いがあまり得意ではないからだ。
その時、広瀬は友田に話しかけた。
「友田はどうする?」
「まぁ…京香が行くなら…」
すると、山口は話を取りまとめた。
「よっしゃ!んじゃあ、土曜は昼からカラオケって事で!」
「「「うぇーい。」」」
皆は了承の返事をした。
【放課後、帰り道にて…】
ガイと広瀬は家へと向かって歩いていた。山口と堺とは既に別れているようだ。
その時、ガイは唐突に広瀬に礼を言った。
「ありがとな、広瀬。」
「え…?」
広瀬は首を傾げた。何のありがとうか、咄嗟に理解できなかったようだ。
「俺の為に打ち上げとかやってくれて。」
広瀬はガイの感謝の理由に納得した。
「お礼なんていいよ。それに提案したのは山口だし。」
「そう…だな…」
今日のガイは何かおかしい。広瀬はそう思っていた。そして、それを何より感じていたのはガイ自身だった。
【12月11日、昼、カラオケボックスにて…】
ガイ,広瀬,堺,山口,有野,友田は文化祭の打ち上げを行なっている。
「No sushi no life~♪ No sushi no life~♪」
山口は熱唱している。しかし、曲のせいか、山口以外あまり盛り上がっていない。
山口は歌い終えた。それと同時に、広瀬は山口に言う。
「もっと盛り上がる曲歌えよ。」
「うるせぇなぁ。俺の一発目はコレって決まってんだよ。」
その時、有野がマイクを手に取った。
「お、次有野か。」
「有野さんってどんな歌、歌うんだろう…?」
「私も知らないわ。」
「なんか俺、ワクワクしてきたよ!」
皆、有野の選曲に興味津々だ。
すると、聞き覚えのある曲が流れてきた。
「え、コレって…」
有野は歌い始めた。
「寿司食べたい~♪」
次の瞬間、一同は有野にツッコんだ。
「「「お前もかい!!!」」」
カラオケボックス故、皆のツッコミにはエコーがかかった。
【数時間後…】
山口と堺はデュエットしている。
「…夏なのに?」
「夏なのに♡」
「「のどが渇きますね~♪」」
堺が男性パート、山口が女性パートだ。めちゃくちゃ楽しそうだ。
数分後、歌い終えた二人に、友田と有野は言った。
「男二人でサマーセッションってどうよ…しかも今、冬だし。」
「マジいまそかり…」
それに対し、山口はやや怒り気味で言った。
「楽しけりゃいいんだよこんなもん!なぁ堺!」
すると、堺は断言した。
「クラス委員長として断言する!楽しけりゃいい!!!」
「ほら!クラス委員長が断言してんだぞ!」
面倒臭くなった友田は、二人に対してテキトーに謝った。
「はいはい、私が悪かったわよー。」
その時、次の曲が流れ始めた。それに気づいた友田は言った。
「あ、次、私と京香だ。」
友田はマイクを二本取り、一本を有野に渡した。
「はい、京香。」
そして、二人は歌い始めた。
「あー、恋の定理がわかんなーい♪」
「まずスキって基準もわかんなーい♪」
友田が女性パート、有野が男性パートだ。山口と堺同様、めちゃくちゃ楽しそうだ。
「オメェらも恋愛デュエットじゃねぇかよ。」
文句を言う山口。一方、堺は頬を赤らめながらニヤニヤしている。
「でもなんだろう…女の子同士って…良いよね…♡」
新たな扉を開き、新しい世界へ旅立とうとする堺に、山口は言った。
「おーい、戻ってこーい、さかーい。」
時すでに遅し。堺は百合に目覚めた。
そんな皆の様子を、ガイと広瀬は傍観しながら会話していた。
「面白い奴らだね。」
「あぁ…」
その時、ガイは呟いた。
「俺、今…すごく楽しい…」
広瀬は首を傾げた。カラオケボックスという事もあり、ガイの発言が聞き取れなかったのだ。
「今、なんて…?」
聞き返す広瀬に、ガイは言った。
「お前らに会えてよかった…」
穏やかな表情でそうつぶやくガイ。それを見た広瀬は、その発言がまるでガイの遺言であるかのように錯覚してしまった。
ちょうどその時、友田と有野のデュエットが終わり、次の曲へと移行した。
「あ、次俺か…」
ガイはマイクを手に取った。その様子を、広瀬は不安そうな様子で見つめている。
「(最近のガイ君は何かおかしい…少し感傷的過ぎるというか…)」
広瀬の言う通り。ガイは何かを危惧しているような。まるでこの場が最後の休息であるかのような。そんな雰囲気を醸し出していた。
「(どうしたんだよ、ガイ君…)」
するとその時、ガイは歌い始めた。
「ねぇ~女の子になりたーい!!!お願いいいですか~♪」
「どうしたんだよガイ君ッ!!!」
ツッコミと共に、広瀬の不安は消し飛んでしまった。
【その頃、伊従村、森の中、館林の地下研究所にて…】
二人の黒スーツの男が地下研究所の廊下を歩いている。
「いつになったら目覚めるんすかね~、先輩の友達。」
「さぁな。」
それは白鳥組幹部の一善と、その部下の前田だった。
二人はしばらく歩くと、とある部屋にたどり着いた。その部屋には巨大なカプセルが幾つも並んでおり、カプセル内には奇妙な液体が入っていた。
「何番だ?」
「えーっと、確か、16です。」
カプセルには番号が振られており、二人は16番の元へと足を運んだ。
そして、16番のカプセルを見た二人は驚愕した。
「居ない…⁈」
16番カプセルの中身は空っぽだった。それどころか、カプセルは破壊されていたのだ。
「起きたんすかね…?」
「にしても、素手で破壊するなんて不可能だ。一体、どうやって…」
おそらく、二人の会話から察するに、中に入っていたのは人間。それも一善の友達だと言うのだから、十中八九、カプセル内にいたのは館林だろう。
実は、館林はクマ高田に胸を刺された時、この医療用カプセルに入って命を繋いでいた。一善たち白鳥組はそれを知っていて、定期的にその様子を見に来ていたのだ。
だが、館林は今いない。おそらく、カプセルを内から破壊して脱出したのだ。しかし、カプセルはハンマーで叩いても壊れないぐらい頑丈に作られている。一方、館林はどうやってカプセルを破壊したのか。
その時、二人の背後から足音が聞こえてきた。
「「…⁈」」
二人が振り返ったそこには、白衣姿の館林の姿があった。
「館林!お前どうやってこのカプセルを…!」
すると、館林はあくびをしながら答えた。
「あぁん?なんだお前ら?館林(コイツ)の知り合いかぁ?」
雰囲気が違う。一善と前田は直感的にそれを感じ取り、PSIを身に纏って構えた。
「そう構えんじゃねぇ。怖ぇだろ。」
「館林は今どこにいる…?」
「あいにく、館林はまだ熟睡中だ。俺も今さっき起きたばっかでよぉ。戦いはよしてくれや。」
その時、一善は尋ねた。
「貴様、一体何者だ…?」
すると、館林の姿をしたそいつはキシキシと笑い始めた。
「世界一妹想いな殺人鬼だ。」
ガイは膝上のヤブ助を撫でながら、机に座り、宿題をしていた。
「最近、習い事サボりまくりだな…」
ガイはそう呟いた。それに対して、ヤブ助は言う。
「たまには良いんじゃないか?」
その言葉を聞き、ガイは微笑んだ。
「そうだな。」
ガイはヤブ助の顎を摩った。ヤブ助は気持ちよさそうだ。
数秒の間の後、ガイはヤブ助に話しかけた。
「なぁ、ヤブ助…」
「何だ。」
「俺が死んだら、後の事は頼む…」
それを聞いたヤブ助は困惑した。
「何を言っている、ガイ…?」
すると、ガイは再びヤブ助に微笑みかけ、こう言った。
「なんでもない。」
近い未来、ヤブ助はこの言葉の意味を知る事となる。
その時、ガイの部屋へ村上が入ってきた。
「ガイ様~。夜食持ってきましたよ~。」
村上は机の上に持ってきた夜食を置いた。
「ありがと。」
ガイは村上に笑顔で礼を言った。
「いえいえ。頑張ってるガイ様の為なら何でもしますよ!」
そんな二人の会話の様子を、ヤブ助はガイの膝の上から見ていた。
「(よく笑うようになったな…)」
ヤブ助はガイを見て、そう思った。
ヤブ助が出会った頃のガイは、感情を表に出すような素振りは全くしなかった。しかし、ここ最近、ガイは人前で笑ったり泣いたり、感情を出すようになってきた。
ヤブ助はそれが嬉しい反面、不安だった。何故なら、ヤブ助にはその笑顔が、儚く散ってしまいそうなぐらいに脆く見えたからだ。そして、コレは村上や十谷も同様に感じていたガイの変化であった。
【12月9日、昼休み、学校、中庭にて…】
ガイ,広瀬,堺,山口は会話しながら昼食をとっている。
「文化祭の打ち上げ?」
「おうよ!打ち上げしよーぜ!」
山口はガイに文化祭の打ち上げに誘っていた。
ガイは首を傾げ、山口に尋ねた。
「文化祭の打ち上げは日曜日にやったんじゃないのか?」
「ガイ来なかっただろ。可哀想だからもっかいやんだよ!このメンツで!」
それを聞き、堺と広瀬は賛同した。
「いいな!やろう!」
「いつにする?土曜日とか?」
広瀬,山口,堺は打ち上げについて話し合っている。ガイの承諾なく、どんどん事が決まっていった。
そこへ、有野と友田がやってきた。
「アンタら、いっつもここでご飯食べてるわよね。そんなに良い所なの?ここ。」
友田の問いかけに山口は答える。
「おうよ。オメェらも一緒に食うか?」
「あいにく、もう食べちゃったわ。」
その時、広瀬は友田と有野に話しかけた。
「そうだ。今週の土曜日、ココの四人で文化祭の打ち上げ行くんだけど、二人も一緒にどう?」
「今さら文化祭の?」
理由を聞く友田に、堺がその説明を始める。
「障坂くん、クラスの打ち上げに来られなくてさ。だから、その代わりみたいな感じで。」
すると、それを聞いた有野が即答した。
「私、行く…」
迷いの無い参加宣言。山口はそれをよく思ったのか、有野に肩を組んだ。
「おうおう!そうこなくっちゃな!」
「…」
有野は山口の腕を振り払い、距離を取った。そんな有野に山口は言う。
「でも珍しいじゃねーか。オメェそういうの嫌いじゃなかったか?クラスの打ち上げにも来なかったしよぉ。」
「別に…」
そう。有野はガイ同様、クラスの打ち上げには行かなかった。そういった集いがあまり得意ではないからだ。
その時、広瀬は友田に話しかけた。
「友田はどうする?」
「まぁ…京香が行くなら…」
すると、山口は話を取りまとめた。
「よっしゃ!んじゃあ、土曜は昼からカラオケって事で!」
「「「うぇーい。」」」
皆は了承の返事をした。
【放課後、帰り道にて…】
ガイと広瀬は家へと向かって歩いていた。山口と堺とは既に別れているようだ。
その時、ガイは唐突に広瀬に礼を言った。
「ありがとな、広瀬。」
「え…?」
広瀬は首を傾げた。何のありがとうか、咄嗟に理解できなかったようだ。
「俺の為に打ち上げとかやってくれて。」
広瀬はガイの感謝の理由に納得した。
「お礼なんていいよ。それに提案したのは山口だし。」
「そう…だな…」
今日のガイは何かおかしい。広瀬はそう思っていた。そして、それを何より感じていたのはガイ自身だった。
【12月11日、昼、カラオケボックスにて…】
ガイ,広瀬,堺,山口,有野,友田は文化祭の打ち上げを行なっている。
「No sushi no life~♪ No sushi no life~♪」
山口は熱唱している。しかし、曲のせいか、山口以外あまり盛り上がっていない。
山口は歌い終えた。それと同時に、広瀬は山口に言う。
「もっと盛り上がる曲歌えよ。」
「うるせぇなぁ。俺の一発目はコレって決まってんだよ。」
その時、有野がマイクを手に取った。
「お、次有野か。」
「有野さんってどんな歌、歌うんだろう…?」
「私も知らないわ。」
「なんか俺、ワクワクしてきたよ!」
皆、有野の選曲に興味津々だ。
すると、聞き覚えのある曲が流れてきた。
「え、コレって…」
有野は歌い始めた。
「寿司食べたい~♪」
次の瞬間、一同は有野にツッコんだ。
「「「お前もかい!!!」」」
カラオケボックス故、皆のツッコミにはエコーがかかった。
【数時間後…】
山口と堺はデュエットしている。
「…夏なのに?」
「夏なのに♡」
「「のどが渇きますね~♪」」
堺が男性パート、山口が女性パートだ。めちゃくちゃ楽しそうだ。
数分後、歌い終えた二人に、友田と有野は言った。
「男二人でサマーセッションってどうよ…しかも今、冬だし。」
「マジいまそかり…」
それに対し、山口はやや怒り気味で言った。
「楽しけりゃいいんだよこんなもん!なぁ堺!」
すると、堺は断言した。
「クラス委員長として断言する!楽しけりゃいい!!!」
「ほら!クラス委員長が断言してんだぞ!」
面倒臭くなった友田は、二人に対してテキトーに謝った。
「はいはい、私が悪かったわよー。」
その時、次の曲が流れ始めた。それに気づいた友田は言った。
「あ、次、私と京香だ。」
友田はマイクを二本取り、一本を有野に渡した。
「はい、京香。」
そして、二人は歌い始めた。
「あー、恋の定理がわかんなーい♪」
「まずスキって基準もわかんなーい♪」
友田が女性パート、有野が男性パートだ。山口と堺同様、めちゃくちゃ楽しそうだ。
「オメェらも恋愛デュエットじゃねぇかよ。」
文句を言う山口。一方、堺は頬を赤らめながらニヤニヤしている。
「でもなんだろう…女の子同士って…良いよね…♡」
新たな扉を開き、新しい世界へ旅立とうとする堺に、山口は言った。
「おーい、戻ってこーい、さかーい。」
時すでに遅し。堺は百合に目覚めた。
そんな皆の様子を、ガイと広瀬は傍観しながら会話していた。
「面白い奴らだね。」
「あぁ…」
その時、ガイは呟いた。
「俺、今…すごく楽しい…」
広瀬は首を傾げた。カラオケボックスという事もあり、ガイの発言が聞き取れなかったのだ。
「今、なんて…?」
聞き返す広瀬に、ガイは言った。
「お前らに会えてよかった…」
穏やかな表情でそうつぶやくガイ。それを見た広瀬は、その発言がまるでガイの遺言であるかのように錯覚してしまった。
ちょうどその時、友田と有野のデュエットが終わり、次の曲へと移行した。
「あ、次俺か…」
ガイはマイクを手に取った。その様子を、広瀬は不安そうな様子で見つめている。
「(最近のガイ君は何かおかしい…少し感傷的過ぎるというか…)」
広瀬の言う通り。ガイは何かを危惧しているような。まるでこの場が最後の休息であるかのような。そんな雰囲気を醸し出していた。
「(どうしたんだよ、ガイ君…)」
するとその時、ガイは歌い始めた。
「ねぇ~女の子になりたーい!!!お願いいいですか~♪」
「どうしたんだよガイ君ッ!!!」
ツッコミと共に、広瀬の不安は消し飛んでしまった。
【その頃、伊従村、森の中、館林の地下研究所にて…】
二人の黒スーツの男が地下研究所の廊下を歩いている。
「いつになったら目覚めるんすかね~、先輩の友達。」
「さぁな。」
それは白鳥組幹部の一善と、その部下の前田だった。
二人はしばらく歩くと、とある部屋にたどり着いた。その部屋には巨大なカプセルが幾つも並んでおり、カプセル内には奇妙な液体が入っていた。
「何番だ?」
「えーっと、確か、16です。」
カプセルには番号が振られており、二人は16番の元へと足を運んだ。
そして、16番のカプセルを見た二人は驚愕した。
「居ない…⁈」
16番カプセルの中身は空っぽだった。それどころか、カプセルは破壊されていたのだ。
「起きたんすかね…?」
「にしても、素手で破壊するなんて不可能だ。一体、どうやって…」
おそらく、二人の会話から察するに、中に入っていたのは人間。それも一善の友達だと言うのだから、十中八九、カプセル内にいたのは館林だろう。
実は、館林はクマ高田に胸を刺された時、この医療用カプセルに入って命を繋いでいた。一善たち白鳥組はそれを知っていて、定期的にその様子を見に来ていたのだ。
だが、館林は今いない。おそらく、カプセルを内から破壊して脱出したのだ。しかし、カプセルはハンマーで叩いても壊れないぐらい頑丈に作られている。一方、館林はどうやってカプセルを破壊したのか。
その時、二人の背後から足音が聞こえてきた。
「「…⁈」」
二人が振り返ったそこには、白衣姿の館林の姿があった。
「館林!お前どうやってこのカプセルを…!」
すると、館林はあくびをしながら答えた。
「あぁん?なんだお前ら?館林(コイツ)の知り合いかぁ?」
雰囲気が違う。一善と前田は直感的にそれを感じ取り、PSIを身に纏って構えた。
「そう構えんじゃねぇ。怖ぇだろ。」
「館林は今どこにいる…?」
「あいにく、館林はまだ熟睡中だ。俺も今さっき起きたばっかでよぉ。戦いはよしてくれや。」
その時、一善は尋ねた。
「貴様、一体何者だ…?」
すると、館林の姿をしたそいつはキシキシと笑い始めた。
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