障王

泉出康一

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第2章『ガイ-過去編-』

第14障『道への看板』

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【その日の夜、病院にて…】

ガイは病室のベットの上で目を覚ました。

「ガイ様!」
「おぉ!ガイ様がお気づきになられた!」

ガイの側にはメイドの村上と執事長の十谷がいた。

「良かった…私もう心配で心配で…」
「うぅ…良かった…本当に良かった…!」

2人は涙を流している。

「村上、十谷…」

数分後、ガイは落ち着きを取り戻した村上と十谷から事情を聞いていた。

「有野や堺たちは?あの後、どうなったんだ?」
「警察の話ですと、あの部屋の主、道田親子は殺人容疑で捕まったそうです。」
「お友達の方々も無事ですよ。」
「そうか…よかった。」

ガイは起き上がった。すると、ある事に気が付いた。

「あれ?怪我が治ってる…」

そう。重傷であったガイの傷が全て完治していたのだ。

「実は1時間前、旦那様がいらっしゃったんです。」
「親父が?」
「はい。瀕死のガイ様と2人にさせろっておっしゃっていました。もちろん!医者も我々も大反対ですよ!今すぐ緊急手術だって!それをあの方は無理矢理に全員を追い出したんです!」
「でも、ビックリですよ!旦那様が部屋から出てきた時にはもう、ガイ様の傷はすっかり治ってたんですから!」

ガイは考え込んだ。

「(親父のタレントは治癒能力の類いなのか…)」

その時、ガイは2人に尋ねた。

「村上と十谷はずっとココに居てくれたのか?」
「はい。心配だったので。」
「当然のことですよ。」

ガイは2人の顔を見て、少し微笑んだ。

「優しいな、2人とも。」

ガイはベットから降り、スリッパを履いて、立ち上がった。

「ありがとな。」

【翌週の月曜日(4月20日)、学校にて…】

ガイが教室に入ってきた。

「障坂くん!怪我大丈夫⁈」

すると、堺がガイに駆け寄ってきた。

「うん。全然平気。」
「よかった…」

その時、誰かが背後からガイの袖を引いた。

「ガイ…」

それは金曜日にしか学校に来ないはずの有野だった。

「お前、学校来たのか⁈今日、月曜日だぞ⁈」

ガイは有野がいる事に驚いている。

「お礼、言いたくて…ありがと…」

ガイは有野の肩を見た。

「お前も怪我大丈夫か?」
「うん…ガイは…?」

ガイは両手を見せた。彩乃にカッターで切られた右手や、自分で剥がした爪、潰れた指は完全に治っていた。

「どうして…?」
「ちょっとな。」

有野は不思議がっていた。

「あ!尻フェチが来たぜ!」
「ホントだ!」

すると、他の生徒たちもガイの元へ集まってきた。

「誘拐犯捕まえたんだってな⁈」
「凄いね!」
「マンションの屋上から飛び降りたんでしょ!堺がいってたぞ!」

それを聞き、ガイは堺を睨んだ。

「堺…」
「ゴメン、うっかり…」

堺は口が軽い。

「ニュースでもやってたぜ!中学生男子が友達を助ける為に誘拐犯の家に乗り込んだってな!」
「誘拐されたのって有野さんなんでしょ!大丈夫だった⁈」
「まぁ…」

有野は恥ずかしそうに受け答えをした。有野は人見知りだ。

「なぁ、お前ら付き合ってんのか⁈」
「え?」

1人の男子生徒がガイに尋ねてきた。

「命かけてまで助け出すって、そうとしか思えないだろ。」
「知り合って数日なのに付き合ってる訳ないだろ。」

ガイは否定している。

「うっそだ~!」
「それか、障坂くんは有野の事が好きだったりして~!」
「いや~ん!障坂くん、可愛い~!」

その時、ガイはとある事に気がついた。

「(コレ、もしかして今…俺いじられてるのか…この俺が…)」

ガイはいじられるのが嫌いなようだ。
そんなガイに対して、石川は畳み掛けた。

「どうなんだよ~!尻フェチ~!白状しろよ~!」

ガイは石川を睨みつけている。

「有野さんは?」
「障坂くんの事、どう思ってるの?」

女子生徒達は有野に質問攻めをしている。

「いや…その…私…」

その時、教室に山口が入ってきた。

「みんな!おはよー!!!おたふく風邪治りましたー!」

すると、皆は静かになった。

「おう、ガイ、堺。久しぶりだな!元気してたか⁈」

その時、山口はガイの周りに人が群がっている事に気づいた。

「なんだなんだ?俺がいない間に随分と人気者になったな。まるで俺みたい!」

生徒たちは山口が来たことによりガイから離れた。みんな、こいつに関わりたくないのだ。

「あれ?みんなどこ行くんだよ?お喋りしようぜ~!」

その時、堺は山口に話しかけた。

「そ、それよりさ、山口くん。病み上がりなのに元気だね。大丈夫なの?」
「おうよ!何せドモホルンリンクルは初めての人にはお売りできねーからな!」
「ちょっと何言ってるかわかんない。」

その時、山口は有野の存在に気がついた。

「あ!おめ!有野じゃねーか!お前、今日、月曜日だぞ!カレンダーわかんなくなっちゃったのか⁈」

有野は山口から目を逸らした。

「なんだよ!俺がいない間に何があったんだよ!教えろよ!」

その時、チャイムがなった。

「また、あとで教えるからさ。ほら、先生来るよ。」

【昼休み、中庭にて…】

ガイと山口は、中庭の花壇のレンガの上で弁当を食べている。

「ふーん、そんな事があったのか。で、なんで教室で弁当食わねーんだよ。」
「またアイツらに質問責めされるから…」
「でもよ~…隊長である俺がいない間にそんな事してたなんて、ずりぃーよ!」
「隊長?」

ガイは首を傾げた。

「だって!俺らは『放課後防衛隊』だろ!」
「そんなもん、入った覚えない。」
「入れた!」
「入れんな!」

そこへ、有野と友田がやってきた。

「よ!」
「よ。」

友田とガイは軽い挨拶をした。

「有野と……誰だ、おめー?」

山口は友田の顔を見た。

「さっき話しただろ。有野の友達の…」
「あー、友田……りんごちゃんか!」

すると、友田は山口の間違いを指摘した。

「梨子よ、梨子。」
「なしこ!」
「りこ!!!」

その時、山口は友田に尋ねた。

「おめーらも一緒に弁当食わねーか?」
「いいわよ。まぁ、そのつもりで来たんだけど。」

友田と有野も花壇のレンガの上に座った。

「んでさ、ガイ。さっきの話の続きだけどよ~。そのAV女優のお尻が汚くてさ~…」
「ちょっと待て。」
「待たない!」
「待て!」

ガイは山口に待てした。

「はぁ…これだから男子は…」

そんな2人に対して、友田は呆れ顔をしている。

「おい山口、そんな話してなかっただろ。」
「おう。この前の事件の話だろ。」
「そうそう。なのに何でいきなりAV女優が出てくるんだよ。」
「話のアクセント的な?」
「は?」

友田は山口に聞こえないようにガイに話しかけた。

「何なの、コイツ…」
「俺もよく分からん…」

その時、山口は友田に尋ねた。

「なあ、りんごちゃん。」
「梨子よ。なに?」
「おめー、痴女なんだろ?」
「はぁ⁈アンタいきなり何言ってんのよ!」

友田は声を荒げている。

「だって、ガイが言ってたぞ。」

友田はガイをビンタした。

「あれー?こんな所でご飯食べてる人達がいる~!」

するとその時、美由がガイ達の元へやってきた。

「めっちゃピクニック気分じゃんwwヤバぁ。」

ガイと友田は美由を睨んでいる。

「お前、何で学校いるんだ?」
「そうよ。彩乃と一緒に謹慎処分受けたんじゃなかったの?」

すると、美由はあからさまなぶりっ子ポーズを取った。

「だってぇ~。美由ちゃんなぁんにも悪い事してないもーん。」

その時、近くから美由の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。

「美由ー。何してるのー?」
「早くご飯食べようよー。」

美由は返事をした。

「うん。今行くー。」

美由は新しい友達と一緒に、その場から去っていった。

「アイツ、凄いな。」
「美由はそういう奴よ。」

美由は要領が良かった。

【放課後、教室にて…】

「おっしゃ~!防衛活動だぁ~!」
「クラスメートを守るぞぉ~!」

山口と堺は奮起している。

「(勝手にやってろ。)」

ガイは帰った。

【校門前にて…】

ガイが学校の門を出たその時、友田が学校の方から走ってきた。

「障坂~!!!」

ガイは振り返った。

「どした?」

友田の後ろには有野がいた。

「ちょっと付き合って。」
「嫌だ。」

ガイは即答した。

「アカン!来い!」

ガイは友田達に、半ば強制的に連れて行かれた。

【住宅街にて…】

ガイ,有野,友田が歩いている。

「どこ行くんだよ。」
「ヨシミちゃん家。」

ガイは首を傾げた。

「誰それ?」
「セバスジョバンヌ・ヨシミちゃんよ。」
「あー、アルテマウェポンの奴か。何で?」
「明日からちゃんと学校に来るように言うのよ。」

ガイはヨシミが不登校になる前日を思い出した。

「何て言うんだよ。彩乃はもうお前をいじめないぞってか?」
「そうよ…」
「この前の金曜日、アイツはお前らと一緒になって、有野の事いじめてたじゃねーか。不登校になっても、自業自得って感じもするけどな。」
「それでも、私は助けたい。もう見て見ぬ振りは嫌なの…」

その時、友田はガイに頭を下げた。

「だから、お願い!協力して!」

すると、有野もガイに頭を下げた。

「私からも…お願い…」

それに対し、ガイは渋々了承した。

「…分かったよ。」
「ありがとう!」

友田はガイに感謝を伝えた。

「(めんどくさいなぁ…)」

有野と友田は楽しそうに話をしながら歩いている。ガイはそれを見ていた。

「(でも、まぁ…偶にはいいか。)」

その後、ガイ達はヨシミの家に行き、ヨシミと話をした。学校に来るかどうかは分からない。あくまで、それを決めるのはヨシミ自身だ。
いつだって、最終決断は自分だ。自分の道は自分でしか決められない。しかし、その人にとっての、正しい道への行き方を示す看板を、おいてあげる事はできる。相手への思いやりが大きければ大きいほど、看板はよく目立つから。
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