障王

泉出康一

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第2章『ガイ-過去編-』

第12障『何故食べる?』

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とある部屋にて…

薄暗い部屋の中、有野は椅子に縛り付けられていた。

「ココは…」

有野は目を覚まし、自身が縄で椅子に縛り付けられている事に気がついた

「な、何これ…⁈」

そして、有野の前には30代前半のメガネをかけた小太りの男が立っていた。

「起きちゃあ?」
「誰…」
「デュフデュフ!き、君の王子様だ、だよ。デュフデュフ! 」

有野は恐怖していた。

「ほどいて…」
「い、いいよ。で、でもその代わり、ぼボクチンのお嫁さんになってくれないかな?ドゥホホ!」

有野は男の言っている意味がわからなかった。

「ボクチンね、洗濯物を取り込む時に、偶然君の姿を見たんだよ。するとね…ドゥフドゥフ!もうボクチンのお嫁さんになるしかないって思ったんだよ。デュフフ!」

有野は辺りを見渡した。部屋の中には、小さな冷蔵庫がたくさん置いてあった。

「冷蔵庫いっぱいあるでょ~。こここれね、ぜーんぶボクチンのおぅお嫁さん候補だったんだぉ。デュブッフデュブッフ!君だけに中、見せてあげふ♡」

男は冷蔵庫を開けた。

「ッ⁈」

有野はその中身を見て驚愕した。
なんと、その中には切断された人間の腕や足、顔などが入っていた。

「ぼ、ぼぼ、ボクチンのお嫁さんになりたくないって言ったんだよネ。で、でも、ぼく、ボクチン諦めきれなかったんだ。だ、だからね…ビュブレビュレル!この娘達を食べて僕の一部にしてあげるんだよ…オウフオウフ!!!」

有野には男の言っている意味が全くわからなかった。

「君に問おう!ボクチンのお嫁さんになってくれるかな?」
「嫌ッ…!」

有野は男を拒否した。

「なぁ~んで無理なんだよぉ~!また、ボクチン立ち直れなくなるよぉ~…」

男は失禁した。

「おわぁぁぁぁあ~んッ!!!ヒドイよ~!!!昔っからいつもこうだ!ボクチンだけ除け者扱い!幼稚園の時も、小学校の時も、中学の時も、高校の時も、大学の時も…今ではネットでまで叩かれてるし…」

男は泣き崩れた。

「(なんとかして逃げないと…!)」

有野はPSIを身に纏い、縄を引き千切ろうとした。しかし、有野はPSIをほとんど使い果たしていた為、PSIを身に纏う事ができなかった。

「君までボクチンをいじめるんだね…悲しいよ…」

有野は力ずくで縄を解こうとしている。

「だからボクチンが、君を食べて、ボクチンの一部にしてあげるよぉお~ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオ!!!!!!!!」

男は包丁を持って有野に近づいてきた。

「い、いやッ!!!」

男は有野の肩に包丁を振り下ろした。

「痛ッ!!!」

包丁は骨まで達した。有野の左肩からは血が溢れ出る。
人間の腕を包丁一太刀で切り落とす事など不可能に近い。関節ならともかく、男は有野の肩に包丁を降ろした。つまり、鎖骨や肩甲骨を断たなければならない。一太刀では到底不可能。
男は有野の左肩に何度も何度も包丁を振り下ろした。

「あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」

有野は痛みで叫びを上げている。

「痛いよね!ごめんね!すぐ終わらせるからね!ごめんね!」

恐怖と痛みにより、有野の目には涙が浮かんでいた。
有野の骨に包丁が当たる度にコツコツと音が聞こえる。そして、次第に骨にヒビが入っていった。

「(痛い…誰か…助けて……)」

その時、インターフォンが鳴った。

「ぬゆぁッ…⁈」

それに驚き、男の手が止まった。
インターフォンは鳴り止む事なく、何度も何度も音は響いた。

廃ビル前のマンション内、705号室前にて…

そこにはガイ,堺,友田,美由がいた。

「何でお前いるんだよ?」

ガイは美由に尋ねた。

「面白そうだから。」

堺がインターフォンを鳴らしている。

「留守かな。」

その時、部屋の中から声が聞こえた。

〈助けて!!!〉

「「「⁈」」」

部屋の中にて…

男は急いで有野の口をガムテープで塞いだ。

「(まずいまずいまずいよ~!)」

705号室前にて…

「今の、有野さんの声じゃ…!」

友田は玄関の扉を叩いている。

「京香いるの!京香!」

ガイは走って階段を上がっていった。

「障坂くん⁈どこに⁈」

マンション内、12階にて…

ガイは封鎖されいる屋上へのドアの前に来た。そして、ガイは脚にPSIを纏い、ドアについていた錠前をかかと落としで破壊し、屋上へ向かった。

マンション内、屋上にて…

ガイは屋上に現れた。

「こっちか…」

ガイは例の廃ビルの場所を確認した。そして、ガイは助走をつけて廃ビルの屋上まで飛んだ。
マンションは12階。廃ビルの高さはマンションの9階分。マンションから廃ビルまでの距離は約25メートル。ビルとマンションの高低差と、PSIの身体能力強化の影響、それらを考慮すれば届かない事はない。
次の瞬間、ガイは飛んだ。いくら届かない距離ではないとはいえ、普通は躊躇う。しかし、ガイは躊躇する事なく飛んだのだ。それを可能にしたのは、自身への過剰な信頼。圧倒的なまでの自信である。

廃ビル内、屋上にて…

ガイは廃ビルの屋上に着地した。

「うッ…!」

ガイは足が痺れた。

「いててて…」

ガイは振り返って、マンションを見た。

「(確か、7階の…あの部屋か。)」

ガイは再び助走をつけて、有野がいる部屋のベランダに飛んだ。しかし、今回は1階分差がない。

マンション内、705号室のベランダにて…

ガイはベランダに着地できなかった。

「やばッ…!」

ガイはなんとかベランダの手すりに掴まった。

「(ほは~、危ねぇ…)」

ガイが何故こんな入り方をしたのか。それは、マンションの管理人に事情を話しても、信じてもらえるかどうか分からなかったからだ。たとえ、信じたとしても、部屋に戻ってくるのに時間がかかる。さらに、マンションのドアは丈夫で、今のガイではPSIを纏っても破壊は困難。よって、ガイはこの方法が1番早いと思ったのだ。

705号室、部屋内にて…

男は慌てふためいている。

「どどどどうしよう…!」

その時、ベランダから音が聞こえた。

「な、なんだろう…」

男は窓のカーテンを勢いよく開けた。

「「うわっ!!!」」

ガイと男は目が合った。

「だ、誰だよチミは⁈」

ガイは男ごと、窓ガラスを蹴り破った。辺りにその音が響き渡る。

「なに⁈」
「何の音だ⁈」

マンションの人達がそれぞれのベランダに出てきた。
部屋へ入ってきたガイは椅子に縛られた有野を見た。

「お前、ホントよく絡まれるな。」
「(ガイ…!)」

ガイは冷蔵庫の中身を見た。

「うっわ…」

ガイは冷蔵庫の中を見て引いている。

「ボクチンの聖域をよくも土足で踏みにじってくれたな!」

男は包丁でガイに切りかかった。

「死ねえい!!!」

ガイはそれを受け流し、男を殴り飛ばした。

「ふぐぇぇえ!!!」

ガイは有野のガムテをはがした。

「どうして…」
「まぁ、それはまた後で。とりあえず、今縄解くから…」

その時、ガイの動きが止まった。

「ガイ…?」

有野は不思議そうにガイを見ている。

「そうだった…お前、ハンディーキャッパーだったな…おそらく、相手を眠らせるタレント…」

男は立ち上がった。

「そう!ボクチンのタレントは『睡魔ファーグ』!相手を眠らせる能力さ!デュフフ!」

ガイは床に倒れこんだ。

「睡眠は人間の三大欲求。ボクチンの『睡魔ファーグ』は睡眠欲を増幅させる能力なのさ!デュフデュフ!」

ガイは自分のほっぺをつねっている。

「無駄無駄ァ!そそ、そんな程度の痛みでボクチンのタレントは…」

次の瞬間、ガイは左手で右手親指の爪を剥がした。

「くぅ…ッ!!!」

ガイは爪を剥がした痛みで眠気を覚ました。
ガイは起き上がり、男に近づいた。

「そ、そそそ、それならもう一度…!『睡魔ファーグ』!!!」

すると、ガイに強烈な眠気が襲ってきた。

「く…そ…ッ!!!」

ガイはさらに、右手の小指と薬指の爪を剥がした。

「いっ…てぇなクソがァァァァア!!!」

ガイは男を壁まで殴り飛ばした。

「のごぉぉお!!!?!?!」

男はベッドの上に倒れた。

「痛ぇ…ッ!」

指の先には神経が集まっている。それ故、爪が剥がれると壮絶な痛みが生じる。その痛みは拷問に使われるほど。そして、拷問で使われる最もな理由は、致命傷にはならない事だ。よって、ガイはこの2つの点を考慮し、爪を剥がす事が『睡魔ファーグ』の攻略法だと考えたのだ。

「このロリコン野郎がッ!!!」

男は気絶している。
ガイが勝ちを確信し、油断した次の瞬間、部屋の扉が開き、何者かが叫んだ。

「『拷問リレーゴーカムトゥワイス』発動!」
「⁈」

ガイの姿は消えた。

「ガイ…?」
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