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第2章『ガイ-過去編-』
第11 障『有野の居場所』
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放課後、ウサギ小屋にて…
ガイは靴を洗い終えた。
「そうだ。有野は?」
ガイは堺に尋ねた。
「もう30分ぐらい帰ってきてないよ。」
「長過ぎだろ。」
「キミの靴洗いもね。」
その時、友田がウサギ小屋へとやってきた。
「京香いる⁈」
ガイと堺は友田に気づいた。
「あ、俺の手の原因。」
「君は確か1–1の友田梨子さん。」
「お前、よく知ってるな。」
「クラス委員長だからね!」
その時、友田はガイ達に尋ねた。
「それで、京香戻ってきた?」
ガイは首を傾げた。
「キョーカって誰。」
「障坂くん、本気で言ってるの?」
「うん。アルテマウェポンの奴?」
「それは セバスジョバンヌ・ヨシミさんだよ。」
「あー、そうか…なんでお前、アルテマウェポンの件知ってんだよ。」
「クラス委員長だからね!」
友田はガイと堺の会話を止め、話を続けた。
「有野京香よ!」
「へー。有野って京香っていうんだ。」
「ちなみに、名付け親は有野さんの母方の祖母なんだよ。」
「だから、なんで知ってんだよ。」
「クラス委員長だからね!」
すると、友田は再び声を荒げた。
「ちょっといい加減にしてよ!話が進まないじゃない!」
「話って?」
ガイは友田に尋ねた。
「実は…」
友田はエツピの件を話した。
「それで、服はだけてたのか。」
友田の服は不良達に強引に脱がされた際に、所々破けてしまっていたのだ。
「よくここまでツッコまずにいたわね…」
「お前が話するまで気づかなかった。」
「嘘つけ!どうせ私のエツピな姿見たかっただけでしょ!」
堺はギクッとした。
「そそそそそそ、そんなわけ無いじゃないか!僕はクラス委員長だ!性欲のコントロールぐらいお手の物さ!」
「クラス委員長って凄いな。」
ガイは友田に自分の学ランを渡した。
「着ろよ。別に見たくないから。」
「あ、うん。ありがと…」
友田はこの前ガイに言われた事を思い出していた。
「(この前のアレも私のために言ってくれたのかな…コイツ、意外と良いやつなのかも…)」
するとその時、なかなか学ランを着ない友田にガイは言った。
「早く着ろよ。はだけたままのが良かったのか?痴女か?」
友田はガイをビンタした後、学ランを着た。
「一つ聞いて良いかな?」
「何?」
堺は友田に尋ねた。
「有野さんって、その…どうして不登校になったの…?」
すると、友田は少し俯いた。
「ご、ごめん!そうだよね!首突っ込まれちゃ嫌だよね!ごめん!」
「いや、いいの。アンタ達、京香の事良くしてくれてるから…全部、話すわ。」
その時、ガイは小屋を出ようとした。
「ちょっと!何処行くのよ!」
「エサ取ってくる。」
「んなもん後にしなさいよ!空気読め!」
ガイは渋々その場に留まった。
「…私と京香は、幼稚園からの幼馴染なの。幼稚園の時も小学校の時もずっと一緒にいた。でも、小4の時…」
3年前、小学4年生の頃…
ある日の放課後、京香は同じクラスの田中に告白されたの。よくある事だった。京香可愛いから。
「有野、俺と付き合ってくれ!」
「ごめん…無理…」
「そ、そんな!お願いだよ!」
「ごめん…」
「じゃあもういいよ!死ね!」
田中は走って帰った。
するとそこへ、友田がやってきた。
「酷い奴ね!死ねだって!」
「帰ろう…」
そして翌日、京香の机の上にはずぶ濡れの雑巾が置いてあった。黒板にも、京香への侮辱がたくさん書かれてた。
「な、何よこれ!誰が書いたのよ!」
友田は田中を見た。
「田中!アンタでしょ!京香にフラれたから仕返ししたのね!」
「ち、違うよ!俺じゃない!俺じゃなくて…」
田中の視線の先には彩乃や美由達がいた。
そう、彩乃は田中の事が好きだったの。アレは全部彩乃の仕返しだった。私は彩乃に止めろって言えなかった。彩乃は昔から、怒ると何をするかわからなかったから。
その日から、彩乃の京香に対する嫌がらせが始まったの。私は何もしてあげられなかった。そして、いつしか、京香は学校に来なくなった。
現在…
「京香が不登校になったのは私のせい。私が京香を助けられなかったから。」
下を向く友田。そんな友田に対して、ガイは言った。
「お前は悪くないよ。」
「え…」
「悪いのは彩乃達だろ。それに、有野もやり返せば良かったのに…」
そんなガイに対し、堺は意見した。
「でも、やり返したからって解決するとは限らないよ。」
「わかってるよ。でも、やられっ放しってのは良くないだろ。山口だってそういうと思うぞ。」
「絶対言うだろうね。」
2人の会話を友田はただじっと聞いていた。
「んじゃ、そろそろ有野探しに行くか。有野ん家には電話したのか?」
ガイは友田に尋ねた。
「えっ…ううん、まだだけど…」
「多分帰ってるだろ。電話してみて。」
「う、うん…」
友田はガイの言葉が嬉しかった。
〈お前は悪くないよ。〉
友田は小4の頃からずっと自分を責めて生きてきた。有野を助けられなかった事をずっと後悔してきた。だが、ガイのその言葉で少し、友田は救われた。
有野本人からこの言葉を言われた事はあったが、それは有野が優しいから、有野が自分に気を遣っているからだと思っていた。しかし、第三者からのこの言葉は、友田にとって何よりの救いであった。
友田はスマホで有野の家に電話した。
「(それにしても何だ…この違和感…)」
ガイは何か違和感を覚えていた。
「(有野は本当に家に帰ったのか…?)」
数分後、友田は電話を切った。
「京香まだ帰ってきてないって…」
「どこ行ったんだろうね。」
「…」
考え込むガイ。そんなガイに対して、堺は尋ねた。
「障坂くん、どうかしたの?」
「嫌な予感がする…」
「嫌な予感?」
堺は首を傾げた。
「いくら友田が寝てたからって、放って置いて何処か行くと思うか?」
「言われてみれば…」
「それに友田も、安心したからって突然眠てしまったなんて、有り得ないだろ。」
「でもホントなんだって!あの時、急に眠たくなって…」
するとその時、堺はとある事を呟いた。
「誘拐事件…」
「え?」
ガイは堺に聞き返した。
「いや、水曜日に山口くんが言ってたんだ。小学生の女子が次々と行方不明になってるって…」
「でも、それ3~4ヶ月前の話じゃん。それに、京香は中学生だし…」
「いや、その事件と関係あるかないかは分からないけど、誘拐されたって可能性はある。有野の身長は大体140㎝ぐらい。小学生と見間違えても仕方ないからな。」
すると、堺は慌て始めた。
「たたた、大変じゃないか!今すぐ警察に電話しないと!」
「まだ、可能性があるってだけだよ。とりあえず、そこの廃ビルまで行こう。」
この時、すでにガイは有野が拐われた事を確信していた。ただ、証拠がない限り断言できない。ガイは用心深い性格だった。
廃ビル内、例の部屋にて…
「おい、起きろ。」
ガイは地面に倒れていた彩乃を蹴り起こした。
「お前、有野が何処行ったか知らない?」
彩乃は起き上がった。
「テメェ…!」
彩乃は地面に落ちていたカッターナイフを拾い、ガイに襲いかかった。
「殺すッ!!!」
しかし、ガイはそれを軽くあしらい、左手で彩乃の顔面を殴った。
「ブハッ!」
彩乃は地面に倒れた。
「早く話せよ。もう一発殴るぞ。」
「しょ、障坂くん…女の子を殴るのはまずいよ…しかも顔…」
「いやいや、今のは正当防衛だろ。」
堺は容赦の無いガイに少し引いていた。
しかし、友田はガイのことをカッコイイと思っていた。自分や有野が数年間手を焼いた人間をたった一撃で黙らせてしまったからだ。
「あの子なら連れて行かれたわよ~。」
するとその時、部屋の入り口から美由が入ってきた。
「メガネをかけた小太りの男に。」
「美由…」
彩乃は美由を見た。
「逃げてごめんね、彩乃♡でも私、痛いの嫌いなの~。殴られぬのとかマジないからww」
彩乃は美由を睨んでいる。
「やーん♡彩乃こわーいww」
その時、ガイは美由に尋ねた。
「そいつがココから出てった後、車とかのエンジン音はしたか?」
「ううん、何も聞こえなかったと思うよ?」
「なるほど。わかった。ありがとう。」
「どういたしまして!」
次の瞬間、彩乃はまたしてもガイに切りかかった。
しかし、ガイはそれを避けて、彩乃に腹パンした。
「ぐふッ!!!」
そして、前かがみになった彩乃の顔面を思いっきり蹴り上げた。
「がはッ!!!」
彩乃は地面に倒れた。
「そんなに俺を殺したいか?いいぞ、いつでも殺しに来いよ。その度に返り討ちにしてやる。」
「クソがッ…!」
彩乃はガイを睨みつけている。
「くぅ~!障坂くん鬼畜ぅ~!」
一方、美由は楽しそうだ。
「堺、友田、今からあそこのマンションに行こう。」
ガイは部屋の窓から見える正面のマンションを指差した。
「え、どうして?」
「エンジン音が聞こえない。つまり、徒歩だ。自転車の訳ないしな。だから、その男はこの近くに住んでいる可能性が高い。」
すると、友田はガイに尋ねた。
「でも、それがどうしてあのマンションなのよ?」
「この廃ビルのこの部屋に偶然通りすがるって事はない。って事はこの部屋の窓から見えるあのマンション、あそこから偶然有野が見えたんだ。」
「なるほど。あのマンションのベランダからならこの部屋は見えるもんね。」
「でも、京香の後をコッソリつけてきたって事も。」
「その場合、有野を運ぶためには車か、もしくは徒歩なら大きなカバンが必要だ。車で来てなかったって事は徒歩で間違いない。でも、たまたま人が入れるぐらいの鞄を持ち歩いてるって事はまずない。そうなれば、有野を担いで運ばなければならない。そんな事したら目立つに決まってる。誘拐ならそんな事は絶対にしない。だから、それはありえないんだ。」
「な、納得。」
友田は納得した。
「でも、犯罪者なんて基本頭がおかしいんだ。有野の後をつけてきた突発的犯行でないとも言い切れない。だから、今からあのマンションを調べるんだ。それでもし、有野が見つからなかったら警察に連絡。というか、もう連絡しておいた方がいい。」
皆、ガイの考察力と推理力に圧倒されている。
「さすがだよ、障坂くん。どこにいるか推理するだけでなく、もしもの事も考えておくなんて…」
「ほんと、あんた何なのよ。この前だって…まるで全部お見通しみたい。」
堺と友田はガイを称賛した。しかし、ガイはあまり喜んではいない。
「…逆だよ。何にも見えてないんだ。だから、少しでも何かを見たいがために背伸びしてるだけ。俺のは全部想定でしかないんだ。」
ガイは出口へ向かった。
「行こう、堺、友田。俺の想定の答え合わせに。」
ガイは靴を洗い終えた。
「そうだ。有野は?」
ガイは堺に尋ねた。
「もう30分ぐらい帰ってきてないよ。」
「長過ぎだろ。」
「キミの靴洗いもね。」
その時、友田がウサギ小屋へとやってきた。
「京香いる⁈」
ガイと堺は友田に気づいた。
「あ、俺の手の原因。」
「君は確か1–1の友田梨子さん。」
「お前、よく知ってるな。」
「クラス委員長だからね!」
その時、友田はガイ達に尋ねた。
「それで、京香戻ってきた?」
ガイは首を傾げた。
「キョーカって誰。」
「障坂くん、本気で言ってるの?」
「うん。アルテマウェポンの奴?」
「それは セバスジョバンヌ・ヨシミさんだよ。」
「あー、そうか…なんでお前、アルテマウェポンの件知ってんだよ。」
「クラス委員長だからね!」
友田はガイと堺の会話を止め、話を続けた。
「有野京香よ!」
「へー。有野って京香っていうんだ。」
「ちなみに、名付け親は有野さんの母方の祖母なんだよ。」
「だから、なんで知ってんだよ。」
「クラス委員長だからね!」
すると、友田は再び声を荒げた。
「ちょっといい加減にしてよ!話が進まないじゃない!」
「話って?」
ガイは友田に尋ねた。
「実は…」
友田はエツピの件を話した。
「それで、服はだけてたのか。」
友田の服は不良達に強引に脱がされた際に、所々破けてしまっていたのだ。
「よくここまでツッコまずにいたわね…」
「お前が話するまで気づかなかった。」
「嘘つけ!どうせ私のエツピな姿見たかっただけでしょ!」
堺はギクッとした。
「そそそそそそ、そんなわけ無いじゃないか!僕はクラス委員長だ!性欲のコントロールぐらいお手の物さ!」
「クラス委員長って凄いな。」
ガイは友田に自分の学ランを渡した。
「着ろよ。別に見たくないから。」
「あ、うん。ありがと…」
友田はこの前ガイに言われた事を思い出していた。
「(この前のアレも私のために言ってくれたのかな…コイツ、意外と良いやつなのかも…)」
するとその時、なかなか学ランを着ない友田にガイは言った。
「早く着ろよ。はだけたままのが良かったのか?痴女か?」
友田はガイをビンタした後、学ランを着た。
「一つ聞いて良いかな?」
「何?」
堺は友田に尋ねた。
「有野さんって、その…どうして不登校になったの…?」
すると、友田は少し俯いた。
「ご、ごめん!そうだよね!首突っ込まれちゃ嫌だよね!ごめん!」
「いや、いいの。アンタ達、京香の事良くしてくれてるから…全部、話すわ。」
その時、ガイは小屋を出ようとした。
「ちょっと!何処行くのよ!」
「エサ取ってくる。」
「んなもん後にしなさいよ!空気読め!」
ガイは渋々その場に留まった。
「…私と京香は、幼稚園からの幼馴染なの。幼稚園の時も小学校の時もずっと一緒にいた。でも、小4の時…」
3年前、小学4年生の頃…
ある日の放課後、京香は同じクラスの田中に告白されたの。よくある事だった。京香可愛いから。
「有野、俺と付き合ってくれ!」
「ごめん…無理…」
「そ、そんな!お願いだよ!」
「ごめん…」
「じゃあもういいよ!死ね!」
田中は走って帰った。
するとそこへ、友田がやってきた。
「酷い奴ね!死ねだって!」
「帰ろう…」
そして翌日、京香の机の上にはずぶ濡れの雑巾が置いてあった。黒板にも、京香への侮辱がたくさん書かれてた。
「な、何よこれ!誰が書いたのよ!」
友田は田中を見た。
「田中!アンタでしょ!京香にフラれたから仕返ししたのね!」
「ち、違うよ!俺じゃない!俺じゃなくて…」
田中の視線の先には彩乃や美由達がいた。
そう、彩乃は田中の事が好きだったの。アレは全部彩乃の仕返しだった。私は彩乃に止めろって言えなかった。彩乃は昔から、怒ると何をするかわからなかったから。
その日から、彩乃の京香に対する嫌がらせが始まったの。私は何もしてあげられなかった。そして、いつしか、京香は学校に来なくなった。
現在…
「京香が不登校になったのは私のせい。私が京香を助けられなかったから。」
下を向く友田。そんな友田に対して、ガイは言った。
「お前は悪くないよ。」
「え…」
「悪いのは彩乃達だろ。それに、有野もやり返せば良かったのに…」
そんなガイに対し、堺は意見した。
「でも、やり返したからって解決するとは限らないよ。」
「わかってるよ。でも、やられっ放しってのは良くないだろ。山口だってそういうと思うぞ。」
「絶対言うだろうね。」
2人の会話を友田はただじっと聞いていた。
「んじゃ、そろそろ有野探しに行くか。有野ん家には電話したのか?」
ガイは友田に尋ねた。
「えっ…ううん、まだだけど…」
「多分帰ってるだろ。電話してみて。」
「う、うん…」
友田はガイの言葉が嬉しかった。
〈お前は悪くないよ。〉
友田は小4の頃からずっと自分を責めて生きてきた。有野を助けられなかった事をずっと後悔してきた。だが、ガイのその言葉で少し、友田は救われた。
有野本人からこの言葉を言われた事はあったが、それは有野が優しいから、有野が自分に気を遣っているからだと思っていた。しかし、第三者からのこの言葉は、友田にとって何よりの救いであった。
友田はスマホで有野の家に電話した。
「(それにしても何だ…この違和感…)」
ガイは何か違和感を覚えていた。
「(有野は本当に家に帰ったのか…?)」
数分後、友田は電話を切った。
「京香まだ帰ってきてないって…」
「どこ行ったんだろうね。」
「…」
考え込むガイ。そんなガイに対して、堺は尋ねた。
「障坂くん、どうかしたの?」
「嫌な予感がする…」
「嫌な予感?」
堺は首を傾げた。
「いくら友田が寝てたからって、放って置いて何処か行くと思うか?」
「言われてみれば…」
「それに友田も、安心したからって突然眠てしまったなんて、有り得ないだろ。」
「でもホントなんだって!あの時、急に眠たくなって…」
するとその時、堺はとある事を呟いた。
「誘拐事件…」
「え?」
ガイは堺に聞き返した。
「いや、水曜日に山口くんが言ってたんだ。小学生の女子が次々と行方不明になってるって…」
「でも、それ3~4ヶ月前の話じゃん。それに、京香は中学生だし…」
「いや、その事件と関係あるかないかは分からないけど、誘拐されたって可能性はある。有野の身長は大体140㎝ぐらい。小学生と見間違えても仕方ないからな。」
すると、堺は慌て始めた。
「たたた、大変じゃないか!今すぐ警察に電話しないと!」
「まだ、可能性があるってだけだよ。とりあえず、そこの廃ビルまで行こう。」
この時、すでにガイは有野が拐われた事を確信していた。ただ、証拠がない限り断言できない。ガイは用心深い性格だった。
廃ビル内、例の部屋にて…
「おい、起きろ。」
ガイは地面に倒れていた彩乃を蹴り起こした。
「お前、有野が何処行ったか知らない?」
彩乃は起き上がった。
「テメェ…!」
彩乃は地面に落ちていたカッターナイフを拾い、ガイに襲いかかった。
「殺すッ!!!」
しかし、ガイはそれを軽くあしらい、左手で彩乃の顔面を殴った。
「ブハッ!」
彩乃は地面に倒れた。
「早く話せよ。もう一発殴るぞ。」
「しょ、障坂くん…女の子を殴るのはまずいよ…しかも顔…」
「いやいや、今のは正当防衛だろ。」
堺は容赦の無いガイに少し引いていた。
しかし、友田はガイのことをカッコイイと思っていた。自分や有野が数年間手を焼いた人間をたった一撃で黙らせてしまったからだ。
「あの子なら連れて行かれたわよ~。」
するとその時、部屋の入り口から美由が入ってきた。
「メガネをかけた小太りの男に。」
「美由…」
彩乃は美由を見た。
「逃げてごめんね、彩乃♡でも私、痛いの嫌いなの~。殴られぬのとかマジないからww」
彩乃は美由を睨んでいる。
「やーん♡彩乃こわーいww」
その時、ガイは美由に尋ねた。
「そいつがココから出てった後、車とかのエンジン音はしたか?」
「ううん、何も聞こえなかったと思うよ?」
「なるほど。わかった。ありがとう。」
「どういたしまして!」
次の瞬間、彩乃はまたしてもガイに切りかかった。
しかし、ガイはそれを避けて、彩乃に腹パンした。
「ぐふッ!!!」
そして、前かがみになった彩乃の顔面を思いっきり蹴り上げた。
「がはッ!!!」
彩乃は地面に倒れた。
「そんなに俺を殺したいか?いいぞ、いつでも殺しに来いよ。その度に返り討ちにしてやる。」
「クソがッ…!」
彩乃はガイを睨みつけている。
「くぅ~!障坂くん鬼畜ぅ~!」
一方、美由は楽しそうだ。
「堺、友田、今からあそこのマンションに行こう。」
ガイは部屋の窓から見える正面のマンションを指差した。
「え、どうして?」
「エンジン音が聞こえない。つまり、徒歩だ。自転車の訳ないしな。だから、その男はこの近くに住んでいる可能性が高い。」
すると、友田はガイに尋ねた。
「でも、それがどうしてあのマンションなのよ?」
「この廃ビルのこの部屋に偶然通りすがるって事はない。って事はこの部屋の窓から見えるあのマンション、あそこから偶然有野が見えたんだ。」
「なるほど。あのマンションのベランダからならこの部屋は見えるもんね。」
「でも、京香の後をコッソリつけてきたって事も。」
「その場合、有野を運ぶためには車か、もしくは徒歩なら大きなカバンが必要だ。車で来てなかったって事は徒歩で間違いない。でも、たまたま人が入れるぐらいの鞄を持ち歩いてるって事はまずない。そうなれば、有野を担いで運ばなければならない。そんな事したら目立つに決まってる。誘拐ならそんな事は絶対にしない。だから、それはありえないんだ。」
「な、納得。」
友田は納得した。
「でも、犯罪者なんて基本頭がおかしいんだ。有野の後をつけてきた突発的犯行でないとも言い切れない。だから、今からあのマンションを調べるんだ。それでもし、有野が見つからなかったら警察に連絡。というか、もう連絡しておいた方がいい。」
皆、ガイの考察力と推理力に圧倒されている。
「さすがだよ、障坂くん。どこにいるか推理するだけでなく、もしもの事も考えておくなんて…」
「ほんと、あんた何なのよ。この前だって…まるで全部お見通しみたい。」
堺と友田はガイを称賛した。しかし、ガイはあまり喜んではいない。
「…逆だよ。何にも見えてないんだ。だから、少しでも何かを見たいがために背伸びしてるだけ。俺のは全部想定でしかないんだ。」
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