障王

泉出康一

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第2章『ガイ-過去編-』

第6障『知ったこっちゃない』

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4月15日、放課後、8階建てのマンションの屋上にて…

ガイと覆面引ったくり犯が突如として現れた。

「え…あれ⁈ココ何処⁈」

ガイが突然の出来事に驚いていたその時、覆面はガイに襲いかかってきた。

「ッ⁈」

しかし、ガイは格闘技においても英才教育を受けていた。よって、覆面を地面に押さえつける事ができた。

「…お前、ハンディーキャッパーか?」

ガイのその発言を聞き、覆面の動きが止まった。

「やっぱりな。」

ガイはそいつの覆面を取った。

「(子供…)」

その覆面はガイと同い年ぐらいの少年だった。

「た、頼む!見逃してくれ!」

少年は声を荒げている。

「いやいや、引ったくりしたんだから、見逃すわけないだろ。」
「頼むよ!でないと…弟が殺されるんだ!」

ガイは首を傾げた。

「殺される?」

数分後、近くの公園にて…

ガイは堺たちに引ったくり犯を捕まえたことを連絡し、近場の公園へと集まった。

「おっしゃ!レッツ、拷問タイムだな!」
「そ、そんな事しませんよ!」

引ったくり犯がブランコに座っている。それをガイたちが囲っていた。

「弟が殺されるって、どういう事?」

ガイの質問に、少年は懇願した。

「弟が人質に取られてるんだ!助けてくれ!」

慌てる少年を堺はなだめ、質問した。

「落ち着いて。君、名前は?」
「…俺は山尾やまお瞬太郎しゅんたろう。中1。ハンディーキャッパーだ。」

堺は首を傾げた。

「ハンディーキャッパー?」

困惑する堺に、山口は実演した。

「コレだよ…『飛翼フライド』!!!」

次の瞬間、山口の背中から翼が生えた。

「ぐぇぇぇぇ!!!何それぇえ!!!」

堺は腰を抜かした。

「お前もハンディーキャッパーなのか。」

山尾は山口を見た。

「なるほど。PSIを感じる。」

すると、山口は山尾に質問した。

「オメェのタレントはどんなだ?」
山尾「俺のタレントは『我と彼方の代入法セルチョイス』。瞬間移動の能力だ。」

すると次の瞬間、山尾は隣のブランコへと瞬間移動した。

「こんな感じ。」
「便利な能力だな。」

ガイや山口は感心していた。一方の堺はびっくりが止まらない。

「ところで、弟が誘拐って?」

ガイは山尾に尋ねた。

「…ゴルデン四大財閥。知ってるよな。」

それを聞くと、ガイの表情が強張った。

「障坂、猪頭いがしら出口でぐち陣野じんの。大きさ順で言ったらこうだろ。そして、今や陣野財閥は消えかかっている。」

山尾はガイの発言を肯定した。

「よく知ってんな。」
「まぁ…」

山尾は話を続けた。

「弟はその陣野財閥に誘拐されたんだ。俺のタレントを利用し、もう一度、のし上がる為に。」

すると、山口が山尾に質問した。

「引ったくりで、のし上がり?ルパンでも目指そーってのか?」
「コレはテストみたいなもんだ。本番に備えてのな。」

その時、ガイは聞き返した。

「本番?」
「あぁ。俺もよくは知らないが、財閥の連中がヤクザとかと連んで何かしでかすらしい。その為に、ハンディーキャッパーを集めてるんだって陣野の家で聞いた。」

それを聞いたガイ達は事の重大さに気がついた。

「なぁ、ガイ…なんか、やばくないか?」
「あぁ。下手に首突っ込むべきじゃないな。」

その時、山尾は声を荒げた。

「そんな!助けてくれよ!」

すると、堺は山尾に言った。

「け、警察に相談する…とか…?」
「警察はダメだ!陣野に知られたら、弟が殺される!こうしてお前らと話してる事自体かなりヤバいんだ!」

それを聞いた堺は困った顔をした。

「でも、ただの中学生の僕らじゃ…何も…」
「弟を助け出してくれるだけで良いんだ!後は自分でなんとかするから!」

次の瞬間、山尾は涙を流し始めた。

「母さんも父さんも殺された…俺にはもう…交次郎こうじろうしか…弟しか居ないんだ…!」

堺と山口は山尾に同情した。いや、同情する事しか出来なかったのだ。
その時、ガイは山尾に話しかけた。

「そっちの事情なんか知ったこっちゃない。」
「「なッ⁈」」

堺と山口はガイの非情とも言えるその発言聞き、驚嘆した。

「なんだと…!」

山尾はブランコから降り、ガイの胸ぐらを掴んだ。

「そう思ったから、引ったくりなんかしたんだろ?」
「ッ…」

山尾は顔を顰めた。

「弟を助ける為なら、引ったくりぐらいって。その結果、被害者がどうなろうと知ったこっちゃない。そう思ったんだろ。違うか?」

その時、山口と堺がガイの発言を止めようとした。

「ちょっと!ダメだよ障坂くん!」
「そうだぜ!コイツだっていっぱいいっぱいなんだよ!」

すると、ガイは山口と堺の方を向いた。

「2人は腹が立たないのか?」
「え…?」

2人は首を傾げた。

「コイツは、俺達を危険に巻き込むと知っていながら、助けを求めてるんだ。出会ったばかりの俺達に。」

ガイは山尾の目を見た。

「それも『知ったこっちゃない』か?出会ったばかりの俺達が死んでも。」

山尾はガイから手を離した。

「結局、お前は自分の事しか考えてないんだよ。」

ガイは山尾を指差した。

「断言する。お前に弟は守れない。」

すると、山尾はたじろいだ。

「そんな…俺は…だって……」

山尾は地面に跪き、泣きじゃくった。

「じゃあ俺は…どうすれば良いんだよ…!」

その時、ガイはスマホの画面を見た。

「もう5時過ぎか…」

ガイはブランコの前の鉄の柵から降りた。

「陣野の家だよな?弟がいるのって。」
「えっ…?」

山尾含め、一同はガイの発言に困惑した。

「早く言えよ。こっちは習い事サボってまで付き合ってんだぞ。」
「協力してくれるのか…?」

ガイは頷いた。

「でも、だってさっき…」
「手伝わないとは一言も言ってないだろ。」

するとその時、山口は笑顔でガイに近づいてきた。

「なんだよガイ~!ツンデレさんかよ~!バチクソ酷い事言うから一瞬引いちまったぜ~!」

ガイは山口に肩を組まれた。

「俺も行くぜ山尾!」

それを聞いた山尾は再び、涙を流した。

「ありがとう…ありがとう…!2人とも…!」

山尾は何度も何度もガイ達に感謝の言葉を伝えた。

「いいって事よ!2人より3人!3人より4人だろ!」

それを聞いた堺はビクッとした。

「4人って…ぼぼぼぼ僕も⁈」
「あったり前だろ。お前が引ったくり捕まえよーとか言ったんじゃねーか。最後まで責任持てよ。」

堺は嫌すぎてゲロを吐いた。

「頑張れ。クラス委員長。」

何故、ガイは山尾に協力しようと思ったのか。山口は、ガイのコレが正義感故の行動だと思っていたがそれは違う。ガイは山尾の事など、助けようなどとは微塵も思っていない。理由は、山尾が言っていたあの発言。

〈財閥の連中がヤクザとかと連んで何かしでかすらしい。その為に、ハンディーキャッパーを集めてるんだって…〉

ガイは確信していた。それが自分の父親に関係する事を。ガイは父親の秘密を知る為、山尾に協力したのだ。

「うッぅうッ…ブゲェェェェェェェェェェェェェエ!!!!!!!!」

堺はまたゲロを吐いた。山口はその吐瀉物を見た。

「あ、今日の給食のレンコン発見。」
「言うな。気持ち悪い。」

4人は陣野の家へと向かった。
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