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第2章『ガイ-過去編-』
第1障『悪魔が生まれた日』
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今から約18年前、4月9日。ゴルデンの首都、戸楽市でガイは産まれた。
ガイの家は、ゴルデン四大財閥の1つに数えられる程、裕福であった。ガイは障坂財閥の跡取りとして、超一流の教育の下、育てられてきた。
それから13年後、障坂邸、ガイの部屋にて…
若い黒髪のメイドが部屋に入ってきた。
「ガイ様。朝食のご用意ができました。」
ガイは布団の中で寝ている。いや、起きてはいるようだ。
「ガイ様ー!起きて下さーい!今日は中学校の入学式ですよー!」
「…ダルい…」
メイドはガイに近づいてきた。
「午後までに終わりますよ。」
「どうせ昼までなら行かなくていいだろ。授業もないし。」
ガイは布団の中でモゾモゾしている。
「それじゃ、夕方まであった方が良かったんですか?」
「…それはそれで行きたくない。」
次の瞬間、メイドはガイが被っていた布団を引っ剥がした。
「さむッ!何すんだよ!」
メイドはガイにマフラーを巻いた。
「お誕生日おめでとうございます。」
ガイは今日が自分の誕生日である事を思い出した。
「あー、そうか。うっかりすっかり忘れてた。これは?」
「私からのプレゼントです。」
ガイはマフラーをきちんと巻き直した。
「ありがとう、村上。でも、今4月だから、もうすぐ使わなくなるかも。」
「冬になったらまた使って下さい。」
ガイはベッドから降りた。
「さぁ、早く着替えてください。朝食のご用意ができてますよ。」
食卓にて…
ガイは席に着き、朝食を食べている。
「十谷。親父は?」
すると、ガイの側にいた、顔に傷のある中年の男執事、十谷が答えた。
「もう出勤されました。」
「そう。」
ガイはパンを頬張った。
「(相変わらず仕事熱心な奴だ。社長なら社長らしく、社長出勤すればいいのに。)」
障坂邸、門前にて…
屋敷からガイが出てきた。
「お待ちしておりました。さぁ、お乗りください。学校までは約2分です。」
門の前では、十谷が車を用意していた。
「いや、いい。中学からは歩いて行く。」
「しかし、ガイ様にもしもの事があったら…」
「マジでいい。中学生になってまで送り迎えは流石に恥ずい。」
ガイは歩いて学校へ向かった。
「大人になられましたな…!十谷感激ッ!!!」
戸楽市第一中学校、門前にて…
ガイは学校前へとやってきた。そこには、体育教師らしきジャージを着た男が立っていた。
「お前、新入生だな。」
体育教師はガイに話しかけてきた。
「はい。」
「入学式早々遅刻とはいい度胸だな。」
「え、嘘…」
どうやら、ガイは自覚なく遅刻したらしい。
「お前、名前は?」
「障坂ガイです。」
それを聞いた体育教師は驚いた表情をした。
「障坂って…あの障坂財閥の⁈」
ガイは体育教師の驚嘆を無視し、門を指差した。
「入っていいですか?」
「あ、あぁ…」
ガイが門から学校に入ろうとしたその時、寝癖のすごい男子生徒が走ってきた。
「待った~!俺も入れてくれ~!」
その生徒はガイよりも先に学校に入っていった。
「あ!こら待て!」
体育教師は慌てて後を追った。
「(ん?なんだアレ…)」
ガイはとある物に目が行った。
「(トイレットペーパー…?)」
あの生徒のズボンからは、何故か2~3mほどのトイレットペーパーが出ていた。
「変な奴。」
体育館前にて…
ガイは体育館前へとやってきた。
「すいません。僕、遅刻して来たんですけど…」
ガイは体育館の入り口にいた先生に話しかけた。
「キミ、名前は?」
「障坂ガイです。」
すると、その先生は少し驚いた表情をした。
「あー、君があの障坂財閥の。」
「…」
ガイは眉を顰めた。
「ついて来て。」
ガイは先生の後についていった。
体育館の中にて…
体育館の中では入学式が行われていた。
「ここに座って。」
「ありがとうございます。」
ガイは先生に連れられ、席に座った。
「ふー。」
ガイは人心地ついた後、左の席を見た。左隣の席には、金髪ロングの小柄な女子生徒が座っており、タブレットで音ゲーをしていた。
「(コイツ、やば…)」
その時、右隣の席の生徒がガイに話しかけてきた。
「あ!お前!さっき門のトコで会った奴!」
右隣の席は、さっき遅刻してきたトイレットペーパーの生徒だった。
「ども。」
ガイは軽く会釈した。
「俺、山口裕也。よろしくな。」
「よろしく。」
山口は唐突にガイに顔を近づけた。
「なあ!俺の必殺技見たくないか!」
「は?」
ガイは山口の同等な発言に一瞬戸惑った。しかし、それよりも何よりも、ガイは山口のズボンからはみ出ているトイレットペーパーが気になって仕方なかった。
「そんなことよりお尻からトイレットペーパーが…」
「見たいか?見たいよな!見せてやるよ!」
山口はガイの話を全く聞かずに、立ち上がった。すると、保護者や先生、生徒たちが山口に注目した。そりゃそうだ。今は校長先生のお話をしている最中なのだから。
「ちょっと⁈何してんの⁈」
山口はしゃがみ込み、後ろに片手をついて、そのままバク転のように体を一回転させた。
「マカコ♡」
マカコとは、しゃがみ込んで正面を向いた状態から、自身の後方の地面に片手をつき、体を縦に一回転させる技の事である。
「コラァァァア!!!何してるッ!!!」
そこへ、門前に居た体育教師がガイ達の元へやってきた。
「マカコ♡」
一回転した事により、ズボンからはみ出たトイレットペーパーは山口の顔にかかっている。
「ん…?」
その時、体育教師はガイの左隣に座っていた女子生徒を見た。
「お、お前!学校に何持ってきてるんだ!」
すると、それに気づいた山口がその女子生徒に話しかけた。
「あ!ゲームしてる!」
次の瞬間、山口はポケットからスマホを取り出した。
「一緒にマイクラしよーぜ!」
すると、女子生徒は無言で山口にグッドサインを送った。
「貴様らァァァァア!!!!!」
その後、ガイを含め3人は外へ追い出された。
「何で俺まで…」
その日から、この3人は教職員たちに問題児として目をつけられる事となった。
生徒指導室にて…
入学式が終わった後、3人は生徒指導室に呼び出されていた。
「お前ら、1人ずつ名前を言え。」
体育教師はご立腹だ。
そんな中、山口はガイに話しかけた。
「なぁ、どうだった?俺のマカコ、上手かっただろ!」
「そんな事より、お尻からトイレットペーパー出てるぞ。」
ガイと山口は体育教師は無視して話し続けている。
「お前、尻フェチなのか?」
「は?」
その時、体育教師は声を荒げた。
「いいから早く名前を言え!」
すると次の瞬間、山口は自身の胸に強く手を置いた。
「よくぞ聞いてくれゴホッ!!!ゴホッ!!!」
強く叩きすぎて咽せた。
「俺は戸楽市第ニ小学校出身、山口裕也だ。特技はマカコで、趣味は…」
その時、体育教師は金髪の女子生徒を指差した。
「戸楽市第三小学校出身、有野京香京香。」
すると、体育教師はその女子生徒、有野にとある事を尋ねた。
「その髪の色、地毛か?」
「地毛です。」
次に、体育教師はガイを指差した。
「戸楽市第一小学校出身、障坂ガイです。」
すると、体育教師は腕を組み、話を始めた。
「本題に入るが、お前ら…自分たちが入学早々何をしでかしたか分かってるな。言ってみろ。」
数秒の沈黙の後、山口が叫んだ。
「あ!そうだ!俺、遅刻したんだ!」
「それ以外にもあるだろ。」
体育教師は追求した。
しかし、山口は首を傾げる。
「わかんね。」
「バク転してただろ!校長先生が話してる時に!」
それを聞いた山口は鼻で笑った。
「せんせぇ~wwアレ、バク転じゃなくてマカコって言うんですよ~ww」
「くッ…!腹立つコイツ…!」
その時、ガイは手を上げた。
「すいません、帰っていいですか?」
「は⁈」
体育教師はガイの態度に驚嘆した。
「用事あるんで。」
すると、それに同調して有野も手を上げた。
「私も帰りたい。」
次の瞬間、体育教師は完全にキレた。
「キェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!?!?!??!!!」
3人はその後、2時間こっぴどく怒られ、ペナルティとして新1年生のすべての教室を掃除させられていた。
教室にて…
「なぁ、ガイ。なんで尻なんだ?おっぱいの方が良いだろ?」
「黙って掃除してくれ。」
ガイ達は掃除をしている。
「(昼ごはん食べてないからお腹すいたなぁ…)」
ガイが窓拭きをしていたその時、1匹の虫がガイの耳元に飛んできた。
「うわっ!」
虫の羽音は、黒板を爪で引っ掻いた時と同じように、人間が嫌う音の一つ。人間の本能として驚いてしまうのは無理もない。しかし、この時ばかりは決して、驚いてはいけなかった。
「しまっ…!!!」
そう、ガイは驚いた拍子に窓から落ちてしまったのだ。
「ガイ!!!」
山口は叫んだ。
此処は4階。当たりどころが悪ければ死ぬかもしれない。
「(俺が…死ぬ…?)」
その時、ガイは死を実感できなかった。たかが虫1匹に殺された、など考えられなかったのだ。しかし、ガイは同時に、虫1匹でも条件さえ揃えば人間を殺せる、という事を学んだ。
そう、条件さえ揃えば。
「『飛翼』!!!」
山口は窓から飛び降りた。
すると次の瞬間、山口の背中から翼が生えた。
「んなッ⁈」
ガイは落下の最中、それに気づき驚愕した。
山口はガイに向かって急降下している。
「(くそ!間にあわねぇ!)」
その時、有野は窓枠の金具に触れた。
「『磁力』!!!」
すると次の瞬間、ガイは何かの力で上方向に引っ張られた。
「おわッ…!」
山口はガイを受け止めた。
そして、山口はガイを抱えたまま、窓から4階の教室に入った。
「ふぅ、良かった良かった。」
山口はガイを教室の床に下ろした。
「あ、ありがとう…」
ガイは驚きを隠せなかったが、とりあえず山口にお礼を言った。
「いいって事よ!」
すると、山口は有野の方を向いた。
「やっぱ、お前もハンディーキャッパーだったんだな。」
有野は頷いている。
「ハンディーキャッパー…?」
ガイが入学式をサボっていれば。遅刻をしていなければ。2人と知り合わなければ。窓から落ちなければ。もし、ガイがこの時死んでいれば、これから始まる悲劇を起こさずに済んだのだろうか…
コレはガイが魔王リアムを復活させるまでの物語である。
ガイの家は、ゴルデン四大財閥の1つに数えられる程、裕福であった。ガイは障坂財閥の跡取りとして、超一流の教育の下、育てられてきた。
それから13年後、障坂邸、ガイの部屋にて…
若い黒髪のメイドが部屋に入ってきた。
「ガイ様。朝食のご用意ができました。」
ガイは布団の中で寝ている。いや、起きてはいるようだ。
「ガイ様ー!起きて下さーい!今日は中学校の入学式ですよー!」
「…ダルい…」
メイドはガイに近づいてきた。
「午後までに終わりますよ。」
「どうせ昼までなら行かなくていいだろ。授業もないし。」
ガイは布団の中でモゾモゾしている。
「それじゃ、夕方まであった方が良かったんですか?」
「…それはそれで行きたくない。」
次の瞬間、メイドはガイが被っていた布団を引っ剥がした。
「さむッ!何すんだよ!」
メイドはガイにマフラーを巻いた。
「お誕生日おめでとうございます。」
ガイは今日が自分の誕生日である事を思い出した。
「あー、そうか。うっかりすっかり忘れてた。これは?」
「私からのプレゼントです。」
ガイはマフラーをきちんと巻き直した。
「ありがとう、村上。でも、今4月だから、もうすぐ使わなくなるかも。」
「冬になったらまた使って下さい。」
ガイはベッドから降りた。
「さぁ、早く着替えてください。朝食のご用意ができてますよ。」
食卓にて…
ガイは席に着き、朝食を食べている。
「十谷。親父は?」
すると、ガイの側にいた、顔に傷のある中年の男執事、十谷が答えた。
「もう出勤されました。」
「そう。」
ガイはパンを頬張った。
「(相変わらず仕事熱心な奴だ。社長なら社長らしく、社長出勤すればいいのに。)」
障坂邸、門前にて…
屋敷からガイが出てきた。
「お待ちしておりました。さぁ、お乗りください。学校までは約2分です。」
門の前では、十谷が車を用意していた。
「いや、いい。中学からは歩いて行く。」
「しかし、ガイ様にもしもの事があったら…」
「マジでいい。中学生になってまで送り迎えは流石に恥ずい。」
ガイは歩いて学校へ向かった。
「大人になられましたな…!十谷感激ッ!!!」
戸楽市第一中学校、門前にて…
ガイは学校前へとやってきた。そこには、体育教師らしきジャージを着た男が立っていた。
「お前、新入生だな。」
体育教師はガイに話しかけてきた。
「はい。」
「入学式早々遅刻とはいい度胸だな。」
「え、嘘…」
どうやら、ガイは自覚なく遅刻したらしい。
「お前、名前は?」
「障坂ガイです。」
それを聞いた体育教師は驚いた表情をした。
「障坂って…あの障坂財閥の⁈」
ガイは体育教師の驚嘆を無視し、門を指差した。
「入っていいですか?」
「あ、あぁ…」
ガイが門から学校に入ろうとしたその時、寝癖のすごい男子生徒が走ってきた。
「待った~!俺も入れてくれ~!」
その生徒はガイよりも先に学校に入っていった。
「あ!こら待て!」
体育教師は慌てて後を追った。
「(ん?なんだアレ…)」
ガイはとある物に目が行った。
「(トイレットペーパー…?)」
あの生徒のズボンからは、何故か2~3mほどのトイレットペーパーが出ていた。
「変な奴。」
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ガイは体育館前へとやってきた。
「すいません。僕、遅刻して来たんですけど…」
ガイは体育館の入り口にいた先生に話しかけた。
「キミ、名前は?」
「障坂ガイです。」
すると、その先生は少し驚いた表情をした。
「あー、君があの障坂財閥の。」
「…」
ガイは眉を顰めた。
「ついて来て。」
ガイは先生の後についていった。
体育館の中にて…
体育館の中では入学式が行われていた。
「ここに座って。」
「ありがとうございます。」
ガイは先生に連れられ、席に座った。
「ふー。」
ガイは人心地ついた後、左の席を見た。左隣の席には、金髪ロングの小柄な女子生徒が座っており、タブレットで音ゲーをしていた。
「(コイツ、やば…)」
その時、右隣の席の生徒がガイに話しかけてきた。
「あ!お前!さっき門のトコで会った奴!」
右隣の席は、さっき遅刻してきたトイレットペーパーの生徒だった。
「ども。」
ガイは軽く会釈した。
「俺、山口裕也。よろしくな。」
「よろしく。」
山口は唐突にガイに顔を近づけた。
「なあ!俺の必殺技見たくないか!」
「は?」
ガイは山口の同等な発言に一瞬戸惑った。しかし、それよりも何よりも、ガイは山口のズボンからはみ出ているトイレットペーパーが気になって仕方なかった。
「そんなことよりお尻からトイレットペーパーが…」
「見たいか?見たいよな!見せてやるよ!」
山口はガイの話を全く聞かずに、立ち上がった。すると、保護者や先生、生徒たちが山口に注目した。そりゃそうだ。今は校長先生のお話をしている最中なのだから。
「ちょっと⁈何してんの⁈」
山口はしゃがみ込み、後ろに片手をついて、そのままバク転のように体を一回転させた。
「マカコ♡」
マカコとは、しゃがみ込んで正面を向いた状態から、自身の後方の地面に片手をつき、体を縦に一回転させる技の事である。
「コラァァァア!!!何してるッ!!!」
そこへ、門前に居た体育教師がガイ達の元へやってきた。
「マカコ♡」
一回転した事により、ズボンからはみ出たトイレットペーパーは山口の顔にかかっている。
「ん…?」
その時、体育教師はガイの左隣に座っていた女子生徒を見た。
「お、お前!学校に何持ってきてるんだ!」
すると、それに気づいた山口がその女子生徒に話しかけた。
「あ!ゲームしてる!」
次の瞬間、山口はポケットからスマホを取り出した。
「一緒にマイクラしよーぜ!」
すると、女子生徒は無言で山口にグッドサインを送った。
「貴様らァァァァア!!!!!」
その後、ガイを含め3人は外へ追い出された。
「何で俺まで…」
その日から、この3人は教職員たちに問題児として目をつけられる事となった。
生徒指導室にて…
入学式が終わった後、3人は生徒指導室に呼び出されていた。
「お前ら、1人ずつ名前を言え。」
体育教師はご立腹だ。
そんな中、山口はガイに話しかけた。
「なぁ、どうだった?俺のマカコ、上手かっただろ!」
「そんな事より、お尻からトイレットペーパー出てるぞ。」
ガイと山口は体育教師は無視して話し続けている。
「お前、尻フェチなのか?」
「は?」
その時、体育教師は声を荒げた。
「いいから早く名前を言え!」
すると次の瞬間、山口は自身の胸に強く手を置いた。
「よくぞ聞いてくれゴホッ!!!ゴホッ!!!」
強く叩きすぎて咽せた。
「俺は戸楽市第ニ小学校出身、山口裕也だ。特技はマカコで、趣味は…」
その時、体育教師は金髪の女子生徒を指差した。
「戸楽市第三小学校出身、有野京香京香。」
すると、体育教師はその女子生徒、有野にとある事を尋ねた。
「その髪の色、地毛か?」
「地毛です。」
次に、体育教師はガイを指差した。
「戸楽市第一小学校出身、障坂ガイです。」
すると、体育教師は腕を組み、話を始めた。
「本題に入るが、お前ら…自分たちが入学早々何をしでかしたか分かってるな。言ってみろ。」
数秒の沈黙の後、山口が叫んだ。
「あ!そうだ!俺、遅刻したんだ!」
「それ以外にもあるだろ。」
体育教師は追求した。
しかし、山口は首を傾げる。
「わかんね。」
「バク転してただろ!校長先生が話してる時に!」
それを聞いた山口は鼻で笑った。
「せんせぇ~wwアレ、バク転じゃなくてマカコって言うんですよ~ww」
「くッ…!腹立つコイツ…!」
その時、ガイは手を上げた。
「すいません、帰っていいですか?」
「は⁈」
体育教師はガイの態度に驚嘆した。
「用事あるんで。」
すると、それに同調して有野も手を上げた。
「私も帰りたい。」
次の瞬間、体育教師は完全にキレた。
「キェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!?!?!??!!!」
3人はその後、2時間こっぴどく怒られ、ペナルティとして新1年生のすべての教室を掃除させられていた。
教室にて…
「なぁ、ガイ。なんで尻なんだ?おっぱいの方が良いだろ?」
「黙って掃除してくれ。」
ガイ達は掃除をしている。
「(昼ごはん食べてないからお腹すいたなぁ…)」
ガイが窓拭きをしていたその時、1匹の虫がガイの耳元に飛んできた。
「うわっ!」
虫の羽音は、黒板を爪で引っ掻いた時と同じように、人間が嫌う音の一つ。人間の本能として驚いてしまうのは無理もない。しかし、この時ばかりは決して、驚いてはいけなかった。
「しまっ…!!!」
そう、ガイは驚いた拍子に窓から落ちてしまったのだ。
「ガイ!!!」
山口は叫んだ。
此処は4階。当たりどころが悪ければ死ぬかもしれない。
「(俺が…死ぬ…?)」
その時、ガイは死を実感できなかった。たかが虫1匹に殺された、など考えられなかったのだ。しかし、ガイは同時に、虫1匹でも条件さえ揃えば人間を殺せる、という事を学んだ。
そう、条件さえ揃えば。
「『飛翼』!!!」
山口は窓から飛び降りた。
すると次の瞬間、山口の背中から翼が生えた。
「んなッ⁈」
ガイは落下の最中、それに気づき驚愕した。
山口はガイに向かって急降下している。
「(くそ!間にあわねぇ!)」
その時、有野は窓枠の金具に触れた。
「『磁力』!!!」
すると次の瞬間、ガイは何かの力で上方向に引っ張られた。
「おわッ…!」
山口はガイを受け止めた。
そして、山口はガイを抱えたまま、窓から4階の教室に入った。
「ふぅ、良かった良かった。」
山口はガイを教室の床に下ろした。
「あ、ありがとう…」
ガイは驚きを隠せなかったが、とりあえず山口にお礼を言った。
「いいって事よ!」
すると、山口は有野の方を向いた。
「やっぱ、お前もハンディーキャッパーだったんだな。」
有野は頷いている。
「ハンディーキャッパー…?」
ガイが入学式をサボっていれば。遅刻をしていなければ。2人と知り合わなければ。窓から落ちなければ。もし、ガイがこの時死んでいれば、これから始まる悲劇を起こさずに済んだのだろうか…
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