障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第56障『責任を取りに行くか』

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ポヤウェスト王国はナツカ達の活躍により、魔物の支配から解放された。また、地下牢に囚われていた人々も解放され、皆、今宵はポヤウェスト城で一夜を明かす事となった。

深夜、ポヤウェスト城2F、とある部屋にて…

ナツカ達は治療されている。
そんな中、ポヤウェスト二大騎士長の1人、ナドゥーラが代表して礼を述べている。

「貴方達のおかげでこの国は救われたわ。ありがとう。」
「いえいえ、俺達の方こそ。あの時はドピュっと助けてくれてありがとうございます。」
「(ドピュっと?)」

数時間前、ポヤウェスト城、地下牢獄にて…

倒したボノボンのタレントにより、トラップへと変化したハルカ。それに触れてしまった雷尿に向けて、ハルカの爪が弾丸のように発射された。

「(PSIの持続…⁈まずい!ドピュっと…死ぬッ…⁈)」

雷尿の額にハルカの爪が命中しかけたその時、何者かの声が聞こえてきた。

「『PSI変容バリエ』!!!」

次の瞬間、雷尿の頭部が何者かのPSIに覆われ、ハルカの爪を弾いた。

「PSI…⁈」

雷尿は振り返った。するとそこには、ボロボロな姿のパエーザとナドゥーラがいた。

現在…

「いつでも抜け出す事はできた。しかし、捕まった国民全員を逃す事は、私達にもできない。お前達が来てくれて助かった。」

ナドゥーラに続いて、パエーザも礼を述べ、軽く頭を下げた。

「それにしても、貴方達は一体何者なの?」
「ドピュっと申し遅れました。私はデカマーラ王国、現国王の残・雷尿。障王の末裔です。」

「「国王⁈」」

ナドゥーラとパエーザは同時に驚きの声を上げた。

「我々は魔王を倒すべく、障王の末裔を探す旅をしているのです。この国にドピュっと立ち寄ったのも、元々はそれが目的で…」
「セッセン。」

その時、カメッセッセが雷尿の真横に現れた。

「ドピェ⁈か、カメッセッセさん⁈」
「お前ら全然戻って来ーへんと思ったら、こんな所で絶倫パーティーしてたんか!か⁈」
「す、すみません!カメッセッセさんの事、ドピュっと忘れてました…」
「許すぁへん。」

カメッセッセはご立腹のようだ。

「オレの事、忘れられへん体にすぃたる。」

カメッセッセは雷尿のケツに自身のイチモツを入れた。

「ドピャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!!!?!?!??!!!」

それを見て、ナドゥーラは目を輝かせた。

「良い…♡」

ナドゥーラの中でナニカが目覚めた。
一方、パエーザは嫌悪の目で雷尿とカメッセッセを見ている。

「BLなんかキモい!キモい!死ねぇぇぇぇえ!!!」

ナツカが逸れた話を戻すべく、少し大きな声を出した。

「と、ところでよぉ、ポヤウェストの障王、今どこに居んダ?死んダか?」
「縁起でもない事言わないでよ!」

声を荒げたナドゥーラとは裏腹に、パエーザは冷静にナツカに答え始めた。

「王族は皆、魔物に処刑されてしまった。しかし、ユート王子だけは影武者を作り、難を逃れた。一人の側近の兵士と、今も何処かで生きておられるはず…」
「えっちゃ、んで何処おんの?」
「さぁな。それは私らにもわからん。」

その時、犯され終えた雷尿が弱々しく呟いた。

「ドピュっと…二手に分かれるのは…どう…かな…」
「二手?」

ナツカ達は首を傾げた。

「ユート王子捜索組と…ドピュっと…ココに残る組だ…」
「えっちゃ、何でそんな事すんのさ?」
「この国には、いずれまた、魔王軍がやってくる…ドピュっと定期連絡が途絶えるからだ…そして、この国からデカマーラまでは距離がある…加えて、怪我人もドピュっと多い…移動は無理だ…」

雷尿はズボンを下ろされていたズボンを上げた。

「いずれ来る魔王軍に備えて、ココに戦力を残す必要がある。少なくとも、怪我が治るまで。」
「結局、どういう事ダ?」

理解しきれなかったナツカに対して、内容を大体理解したパエーザが雷尿に確認する。

「ココの国民全員をデカマーラに移動させたい。しかし、皆、捕虜にされていた影響で長旅には耐えられない。だから、しばらくはポヤウェストに待機して体の回復を待つ。だが、その間に魔物が攻めてきたらまずい。よって、戦える何人かはポヤウェストに残る。そういう事だろ?」
「うん。そして、もう一つの問題がユート王子だ。彼がもし、今の状況で魔王軍と接触してしまえば、かなり危険だ。一刻も早く彼を見つけ出し、ドピュっと仲間にする必要がある。」

その話を聞き、エッチャは腕を組んだ。

「えっちゃ、ココでもチーム分けか。」
「捜索チームの方は感知型のタレントを持つハルカは絶対。そして、ダメージが比較的少なく、移動に差し支えのない者がドピュっと同行すべきだ。」

雷尿は皆のダメージ度合いを見た。

ナツカ:右前腕骨骨折,鼻骨骨折,左脛骨骨折(ヒビ),左腓骨骨折(ヒビ),助骨3本骨折(うち2本ヒビ)
エッチャ:頭頂骨骨折(ヒビ),助骨5本骨折(うち2本ヒビ)
カメッセッセ:無傷
雷尿:右拳刺創,左腕銃創,右足銃創,ケツ処女喪失
ジャック:喉頭刺創,助骨2本骨折(うち2本ヒビ)意識不明
ハルカ:腹部銃創
パエーザ:栄養失調,全身打撲創
ナドゥーラ:栄養失調,全身打撲創

「これじゃあ、カメッセッセさん以外、ドピュっとココに残る事になりそうですね。」

その時、ハルカは小さな声で叫んだ。

「俺、カメッセッセこんな奴と2人旅なんか嫌やで!」

それに対して、ナツカは言い放った。

「ワガママ言ってんじゃねぇぞ。2人で仲良く手ぇ繋いで行けや。」
「他人事やと思って…ナツカ出来んのかよ?カメッセッセコイツと2人旅。」
「あ?できる訳ねぇダろ。死んダ方がましダ。」
「ケモテイ♡」

カメッセッセは何故か気持ちよさそうだ。
その時、パエーザが雷尿に話しかけた。

「私もユート様探索チームに入れてくれ。」

続けて、ナドゥーラも言った。

「パエちゃんが行くなら私も!」

しかし、雷尿は首を振った。

「ドピュっとダメです。貴方達はついさっきまで捕虜だったんですよ。捜索組は遅くとも明日の昼には出発します。」

それを聞き、ハルカは驚いた。

「えっ…俺…全然休憩できへんやん…腹撃たれてんのに…」

そんなハルカに、またナツカは言った。

「カメッセッセに背負ってもらえや。」
「えっちゃ、ちょっと加齢臭臭いけどな。」
「最悪や…」

雷尿はパエーザとナドゥーラを見た。

「長旅になります。そんな痩せ細った体で、すぐに旅に出るのは危険すぎますよ。そんな痩せ細った体で…体……カラダ………ハァ…♡ハァ…♡ハァ…♡」

雷尿はパエーザ達の体を見て興奮している。

「えっちゃ、雷尿。落ち着け。」

エッチャの言葉により、雷尿は正気を取り戻した。

「ドピュっという訳です。お2人はポヤウェストに残ってください。国民を守るのも、兵士の役目ですよ。」

パエーザとナドゥーラは渋々納得した。

「ハルカ、ごめん。カメッセッセさんと2人旅だ。ドピュっと我慢してくれ。」

ハルカは絶望した。

「カメッセッセさん、ドピュっとお願いできますか?」
「無理。」
「は?」
「俺行かん。」

ハルカはガッツポーズした。

「おっしゃッ!!!」

雷尿は怒った。

「いい加減にして下さい!カメッセッセさん!エセバスケの時もそうでしたよね!何でドピュっと無理なんですか⁈」
「勘や。」

するとその時、カメッセッセはいつになく真剣な表情になった。

「胸騒ぎがすぅんねん…」

魔王城、魔障王Mr.クボタの部屋にて…

Mr.クボタの部屋の壁には、人間の骨が無数に飾り付けられていた。
部屋の中央、Mr.クボタは人間の肉で作られた巨大な椅子に座っている。右手には人間の血が入ったワイングラスを持っていた。

「Tィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!」

ドアのノックと同時にレイパーTの叫び声が鳴り響いた。

「入っていいよ。」

Mr.クボタの応答を聞き、レイパーTは部屋へと入ってきた。
そんなレイパーTの右脇には、イワモミの側近、大魔障アグニが抱えられていた。そう、アグニは生きていたのだ。

「障王共の居場所がわかりました!!!」

Mr.クボタはアグニを見ている。

「(この方が…魔障王Mr.クボタ様…)」

アグニはMr.クボタの貫禄に怯えている。

「キミは?」

Mr.クボタはアグニを指差した。

「わ!私は海魔隊!大魔障アグニ!ナツカ・チハーヤ含め、障王一行の行き先を報告に参りました!」
「大魔障?キミの上司、魔障将はどうしたの?」

Mr.クボタはアグニを抱えるレイパーTに近づいてきた。

「ま・さ・か……られたの…?ん~⁈」

レイパーTとアグニは怯え、思うように声が出ない。

「何の成果も出さず、られて…その上、逃げ帰ってきたのか。そうかそうか!それは残念だ!」

その時、Mr.クボタはレイパーTからアグニを取り上げた。

「ク、クボタ様…何を…⁈」

次の瞬間、Mr.クボタはアグニの頭部を喰い千切った。

「僕はクボタじゃない。Mr.クボタだよ。そうだよね?レイパーT。ん~⁈」
「は、はい…!!!その通りです…!!!」

レイパーTは冷や汗を大量に流し、怯えている。

「部下の失敗は上司の責任。さて!責任を取りに行くか。ん~?」
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