障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第50障『到着!ポヤウェスト王国!』

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昼間、ポヤウェスト砂漠にて…

ナツカ,エッチャ,カメッセッセ,雷尿,ジャック,ハルカは炎天下の中、ポヤウェスト王国を目指し、歩いていた。

「暑ぃ…しんどい…」
「えっちゃ、水飲みたいわ…」

水はもう無い。

「オレのすぇーえき飲むか?」
「死ね。」

カメッセッセのおふざけに、エッチャは悪口で返事した。いや、カメッセッセはマジで言ったのかもしれない。

太陽ヨウキャがッ…!太陽ヨウキャは無理ぃ~!!!」

ハルカはフードを被り、座り込んだ。

「アハ~!!!サウナ気持ちィィィィ~!!!熱波師呼んでこーい!!!」

ジャックは服を脱ぎ始めた。どうやら、暑さで頭が混乱し、ココをサウナだと思っているようだ。

「もう!みんな!ドピュっとしっかりしろよ!」

雷尿は皆に注意喚起した。

「(でも確かに、この暑さにはドピュっとこたえる…せめてポヤウェストまでの距離が、後どれくらいか分かれば………そうだ!)」

その時、雷尿はとある事を思いつき、ハルカに話しかけた。

「ハルカ!キミのタレントなら、ポヤウェストまでの距離がドピュっと分かるんじゃないか⁈」
「え、あ…確かに…」

それを聞くと、ナツカ達はハルカに近づいてきた。

「んなこと出来んならぁ早よ使えやぁボケカスおらテメェ…!」

ナツカはハルカの胸ぐらを掴んでいる。
その時、雷尿がナツカをハルカから離れさせた。

「ドピュっとやめろナツカ!この暑さでイライラするのはわかるけど!」

雷尿はハルカに話しかけた。

「頼むハルカ。ドピュっとやってくれ。」
「う、うん…」

ハルカは歌い始めた。

「笑えない日々を辿ったって~♪変わらない今を呪ったって~♪」

皆、この暑さに加え、ハルカの下手な歌を聴いたことにより、さらにイライラが増している。

「…わかったで…」
「本当か⁈」

ハルカはタレントを使い、ポヤウェストの位置を探り出したようだ。

「通り過ぎてた…」

次の瞬間、ナツカはハルカを殴った。

「おごふッ…!な、なんで殴んねん…!」
「悪ぃ。イライラした。すまん。」
「俺殴んのはちゃうやろ…!」
「あ"ぁ!ダから謝ってんダろが!」
「謝ったら何でも許されると思うなよ…!」

その時、雷尿は2人の喧嘩を止めた。

「だから喧嘩やめろって!ナツカ最近多いぞ!ドピュっと喧嘩ふっかける癖なおせよ!」

すると、会話の流れを聞いていたエッチャが怒りの声を上げた。

「えっちゃ、そもそも誰やねん地図係!そいつのせいやろ!」

その時、ジャックはバッカスからもらった地図を懐から取り出した。

「俺様だ…ア~ハ~ハ~ハ~ハ~!!!」

それを聞くと、エッチャは再び、声を荒げた。

「えっちゃ、誰やねん!ジャックこんな奴に地図任せたん!」
「す、すまん…ドピュっと俺だ…」

雷尿は申し訳なさそうに手を上げている。

「何してくれちゃってんダよオメェ!」
「えっちゃ、ふざけんなよ!」

ナツカとエッチャはジャックではなく、雷尿を責めている。

「(責める相手間違ってるくない…?)」

夕方、ポヤウェスト城下町、門前にて…

ナツカ達はようやく、ポヤウェスト王国に辿り着いた。しかし、辺りはもう暗くなり始めている。

「えっちゃ、やっと着いたな。」
「水飲みてぇ…」

ナツカ達がポヤウェスト城下町に足を踏み入れようとしたその時、ハルカは奇声を上げた。

「はぁうぅぁぐぁううぁあ!!!?!?!」

皆、足を止め、ハルカの方を向いた。

「急に奇声を上げるな…ア~ハ~ハ~ハ~ハ~!!!」
「えっちゃ、お前が言うな。」

雷尿はハルカに話しかけた。

「ドピュっと何かあったのか?」
「町…魔物だらけやで…」

ハルカのその言葉を聞いた瞬間、ナツカ達は動揺した。

「まさか、それって…」

その時、いつになく真面目な顔のカメッセッセが話に入ってきた。

「決まってるやろ。ポヤウェストはもう、魔王軍に落とされてんねん。」

すると、ナツカ達は落胆した。

「マジかよ…無駄骨じゃねぇか。せっかく、このクソ暑い中、何時間も歩いて来たってのによぉ…」
「えっちゃ、どうするん?城、落とされてんなら、障王の末裔も殺されてるやろ?別んトコ行くん?」

皆、雷尿の方を見た。

「…」

雷尿は腕を組んで考え事をしている。
しばらく悩んだ後、雷尿はハルカに話しかけた。

「ハルカ。この国に居るのは、ドピュっと魔物だけか?」
「えっ、いや…城の地下に100人ぐらい、人おるけど…」
「ドピュっとありがとう。ハルカ。」

その時、雷尿は皆の顔を見た。

「捕虜となっている人達がいる今、やる事はひとつだ。」

雷尿のその発言を聞くと、ナツカ達の顔つきが変わった。

「ドピュっと助ける…!」

皆、その表情から察するに、満場一致のようだ。

「作戦はどうする…アハァん???」
「こっちにはハルカがいる。ハルカのタレントなら、城の構造、捕虜の場所、敵の位置がドピュっと全てわかる。」

その時、エッチャが雷尿に問いかけた。

「えっちゃ、でも捕虜全員助けても、その後どうすんねん?100人連れてデカマーラまで行かれへんやろ?」

雷尿はそれに答える。

「そこでだ。ドピュっと3チームに分かれて、作戦を行おうと思う。」

雷尿は続けた。

「1つ目は陽動チーム。城下町で魔物達の気を引き、残り2チームの城内潜入のリスクを下げる。2つ目は捕虜救出チーム。敵との遭遇を極力避け、城の地下に幽閉されている人達の元までまっすぐ向かい、救出する。そして3つ目、ボス討伐チーム。」
「ボス?」

ナツカ達は首を傾げた。

「魔物がいるって事は、それらを従える隊長クラスの魔物が、何処かにいるって事だ。つまり、そいつさえ倒せば、この国にいる魔物全てを倒さなくても、ドピュっとケリがつく。」
「えっちゃ、なるほどな。国取り返せば、100人連れて歩く必要もないって事か。」

雷尿は頷いた。

「次に、誰がどのチームになるか、だ。」

その時、カメッセッセが両手を上げた。

「オレ陽動すぃたい~!!!」
「え…良いんですか?」
「もてぃろん。オレ1人でえーでー。強いすぃ。」
「…確かに、カメッセッセさんは強いです。しかし、ドピュっと良いのですか?かなり危険ですよ?」

すると次の瞬間、カメッセッセはパンツを脱いだ。

「…って事や。」

カメッセッセは自身の短小ペニスを雷尿に見せつけている。

「は、はぁ…(どういう事だ…?)」

雷尿は困惑している。

「じゃ、じゃあ、陽動チームはカメッセッセさん1人で…」

数分後、それぞれのチームのメンバーが決まった。

陽動チーム:カメッセッセ
捕虜救出チーム:雷尿,ハルカ
ボス討伐チーム:ナツカ,エッチャ,ジャック

「みんな。作戦を実行する前に、これだけはドピュっと聞いて欲しいんだ。」

雷尿は真剣な表情で皆に語りかけた。

「インキャーンでは、非常に悔しい思いをした。助けられなかったから…だからみんな、きっと今、こう思ってるはずだ。『あの時の失敗を取り戻そう』って。」

ナツカ達は真剣な眼差しで雷尿の話を聞いている。

「そんなみんなにだからこそ、言う。そんな事は思わないでくれ。」

皆、雷尿のその発言を聞き、キョトンとしている。
『あの時の失敗を取り戻そう』。雷尿はこの言葉で自分達を奮起させるつもりだ。皆、そう思っていたからだ。しかし、雷尿の口から出た言葉は、まさにその真逆だった。

「船での戦いで思い知っただろ。俺達は弱い。カメッセッセさんが居なかったら、とっくに死んでる。意地や気合いじゃなんとかならない…」

皆、黙って雷尿の話を聞いている。

「負けても良い。逃げ出しても良い。でも、死んだらダメだ。だから…」

雷尿は拳を突き出した。

「死なない程度に頑張ろう!」
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