障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第17障『謎の出場拒否』

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正午、インキャーン城、中庭にて…

「カス?」

王の言葉にナツカの目は引きつっていた。

「ハンディーキャッパーである事。これはあくまで最低条件だ。それを踏まえた上での審査基準…それはチームメンバーの合計MSCだ。少なくとも、選ばれた8チームは1500を超えている。」
「MSCを…?(PSCならともかく…)」

PSCは肉体外に纏われたPSIの量。一方、MSCはその者の最大PSI容量値。MSCはPSCと違って、見て読み取れるものではない。
しかし、インキャーン国王は、選ばれたチームの合計MSCは1500以上である言いきった。PSIの測定器などを用いず、見ただけで。雷尿が疑問に思うのも無理はない。

「何故、俺達のMSCが分かるんですか?」

参加者の1人が疑問をぶつけた。

「私の息子、ハルカ王子のタレントだ。」

その時、ナツカはハルカが小声で歌ったいた事を思い出した。

「アレか…」

ハルカは照れている。

「コイツが⁈」
「こんなアホそうな奴が⁈」

参加者は各々、王子に向かって罵詈雑言ばりぞうごんを浴びせた。

「お前らヒドない?」

ハルカはその程度の悪口、言われ慣れたと言った反応だ。
その後、参加者達は帰らされ、ナツカ達も一旦宿に戻った。

宿屋にて…

「先ずはチーム名を決めよう。ドピュっと何がいい?」

その時、ジャックは中ニ病ポーズを決めた。

「漆黒のモンスーン…アハッ!!!」 
「ジャック以外の。」
「えっちゃ、俺も。」

ナツカもエッチャもただそれだけを雷尿に伝える。

「貴様ら…」

ジャックはすねた。
その時、カメッセッセは雷尿から大会出場届けを奪った。

「ドピェ⁈」

次の瞬間、カメッセッセが油性ペンでチーム名を書いた。

チーム名『カメッセッセ』

「ダ~~~⁈」
「えっちゃ、お前、何してんねん!」

カメッセッセは怒鳴りつけられているが、微動だにしない。

「えぇチーム名やんけ。」
「あーあ…ドピュっと消せないぞコレ…」

ジャックが出場届を手に取った。

「モンスーン付け足すぞ。」
「やめろ要らねぇ。」

ナツカはジャックから出場届を取り上げた。

「仕方ない。チーム名はドピュっとこれで行こう。次はキャプテンと副キャプテンだけど…やはりココは最年長のカメッセッセ様がキャプテンって事で。」

その時、エッチャとナツカが否定した。

「えっちゃ、コイツはアカンて。」
「そうダぞ。無駄に歳食ってるダけダからな。」

雷尿は困った顔をした。

「でもこのチームでドピュっと一番強いのはカメッセッセ様だし…」

その時、カメッセッセがボソッと呟いた。

「オレ、出ーへんで。」
「え…」

雷尿は、コイツ何言ってんの、って顔をした。

「いやいや、ドピュっとだって…」
「出たくない。」
「はぁ⁈」

今まで丁寧に接していた雷尿だが、思わず声が出た。

「オメェ、何言っちゃってくれちゃってんの?」
「えっちゃ、何で出たくないねん?」
「すぉんなんどーでもええねん!ケモテイかどうか聞いて…」

次の瞬間、ジャックがカメッセッセの胸ぐらを掴んだ。

「ふざけんなよ。マジで。殺すぞ。」

ジャックが珍しくキレた。

「ゔぁぁあん!!!出たくないもんは出たくないねん!!!」

カメッセッセは駄々をこねている。

「アハッ!!!殺ーす!!!」

その時、雷尿がジャックをなだめた。

「おいおい!ドピュっとやめろよ!」
「そダぞ。コイツに何言っても無駄ダ。ワシ、コイツにもう何の期待もしてねぇから。」

ジャックは無駄に大きな声で叫び始めた。

「じゃあコイツの代わりに誰が大会に出るんだ!俺たち5人以外にハンディーキャッパーは居ないんだぞ!アハ~!!!オワタ~!!!」

その時、ニキが立ち上がった。

「アッシが出やす。」

皆、驚いた表情でニキを見た。

「アニキ⁈」
「気持ちは嬉しいが、ニキ君。君も聞いただろ。本戦出場はメンバー全員がハンディーキャッパーである事がドピュっと最低条件。でも君は…」

次の瞬間、なんとニキは自身の腕に微量ながらPSIを纏った。
一同はそれを見て驚いている。

「ドピュっと…どうして…⁈」
「昨日やったら出来た。どうやら、アッシは右目を失ったおかげでハンディーキャッパーになれたようでさぁ。」

ニキは手を閉じたり開いたりしている。

「エッチャと同じパターンか。」

ナツカは呟いた。

「そんな…ただでさえ後天性のハンディーキャッパーは珍しいのに、ドピュっと2人も…」
「ま、いいじゃねぇか。頼りにしてるぞ、おっさん。」

ナツカはニキの肩をトントンと叩いた。

「おっさんって…まだ26ですぜ。」
「17のワシからしたら20超えてりゃ全員おっさんダよ。」

その時、エッチャはニキに話しかけた。

「えっちゃ、お前…怪我、大丈夫なんかよ…?」
「えぇ。もう痛みはねぇですよ。」
「そう、か…」

ニキ本人は気にしていないが、エッチャはまだ思い詰めていた。

「ところで、アニキのタレントはどんなのでゲスか?」
「お、それワシも気になる。」

皆がニキに注目する。

「…それが、まだわからねぇんでさぁ。」
「まじか。頑張れや26歳。」

再び、ニキの肩をトントンと叩いた。
盛り上がる中、雷尿は1人、ニキの状態について考えている。

「(ニキのPSCは大体1。まだタレントをドピュっと使える程のMSCじゃない。だから、タレントの『なんとなく』が分からないんだ。)」

ナツカは思い出したように出場届を手に取ってヒラヒラさせた。

「てか、キャプテンと副キャプテンどーすんの?」

その後、話し合いの結果、キャプテンは雷尿。副キャプテンはナツカに決まった。

インキャーン城、通路にて…

ナツカはジャンケンで負け、大会出場届けを王の元まで持って行った。その帰りである。

「はぁ…しんどい…」

その時、ナツカは背後から声をかけられた。

「そんなにしんどいなら帰れよ。」
「あ"ぁ~⁈ダから今帰ってんダよ!」

ナツカは振り返った。

「お、オメェは…!」

なんと、ナツカに声をかけたのは、以前カイムの村でナツカ達と戦ったガイであった。

「聞いたぞ。ゲスト枠なんだってな。なんかせこくないか?」
「オメェ、何でココに…」
「お前達が出場するって聞いたからな。面白そうだから来ちゃった。」

その時、ナツカはハッとした表情をした。

「まさかオメェ、大会出んのか⁈」
「うん。楽しみだな。」

ナツカはガイを睨んでいる。

「安心しなよ。ちゃんと決勝で当たるように仕組んどくからさ。ハンデもあげるつもりだし。」
「…オメェは魔王の仲間ダろ。何でワシを殺さねぇ?」

その時、ガイは微笑んだ。

「いつでも殺せるから。」
「なに…」
「それに、今殺しても面白くない。」

その時、ナツカはガイを凝視した。

「(PSIを使えるようになったから良くわかる。コイツの強さ…ワシとは比べもんにならねぇ…バケモンだ…)」

次の瞬間、ガイは歌い始めた。
歌のうまさにはハルカ王子とは雲泥の差がある。この場合、ガイが雲でハルカが泥だ。

「さよならはあなたから言ったそれなのに♪」
「…は?」

ナツカは呆気に取られている。

「347か。」
「な、何言ってやがる…」

347。それはおそらく、ナツカのMSCだ。ガイはどういう訳か、ハルカ王子のタレントを使い、ナツカのMSCを読み取ったのだ。
するとその時、ガイはナツカから離れた。

「俺と当たるまで負けるなよ。」

次の瞬間、ガイの姿が消えた。

「何なんダ、アイツ…」

インキャーン城、玉座の間にて…

国王とハルカが話をしていた。

「して、どうだ?今回の出場者は。面白くなりそうか?」
「一人、バケモンおった。」
「カメッセッセ殿の事か?噂では彼のMSCは8000はあると聞くからなぁ。お前が驚くのも無理は…」

しかし、ハルカ王子は首を横に振った。

「そいつじゃない。」
「なに…?」
「マフラーしてた奴。」

インキャーン国王は、審査会場に来ていたガイを思い出した。

「あの少年か…それ程なのか…?」
「うん…」

次の瞬間、ハルカ王子は衝撃的な言葉を放った。

「MSC…8万2000…」
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