障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第16障『PSI』

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タレントとは、ハンディーキャッパーだけが使える超能力のことである。そして、タレントを使う為には、PSIサイというエネルギーを消費しなければならない。
PSIとは、ハンディーキャッパーのみが体内に保持できる超常的エネルギーの事である。体内の全PSIを使い果たした場合、タレントが使用できなるなる。しかし、休息をとる事で体内のPSIは自然と回復する。また、一時的な感情の高まりや心境の変化、精神的トレーニングでMSC最大PSI容量を高める事が可能。
そして、PSIには2パターンの使用法がある。一つ目は『精神的使用』。つまり、タレントとしてPSIを消費する事だ。一方、二つ目は『肉体的使用』。PSIは普段、肉体内に蓄積されているが、そのPSIを体外に放出し、自身の体に纏う事により、攻撃力や守備力などのあらゆる身体能力を強化する事ができる。また、纏うPSIの量が多ければ多いほど、強化の度合いはより向上する。しかし、肉体に纏えるPSIの容量、PSC肉体的PSI容量には限界があり、その限界値は人それぞれ違う。

インキャーン王国、宿屋にて…

ナツカ達が部屋でタレントやPSIについて教授されていた。

「おぉ。こうか。」
「えっちゃ、俺もできたぞ。」

ナツカとエッチャはPSIを体に纏った。

「ドピュっと上手いじゃないか。」
「結構簡単ダったな。」
「えっちゃ、教わればな。」

ナツカとエッチャはカメッセッセを睨んだ。
すると、カメッセッセは露骨に目を逸らせた。

「ナツカ、エッチャ。ドピュっと最大までPSIを纏ってくれないか?」

そう言われると、ナツカとエッチャは最大までPSIを纏った。
しかし、すぐにナツカ達はPSIを纏う事をやめた。

「えっちゃ、なにこれ…めっちゃ疲れる…」
「はぁ…しんどい…」

雷尿は少し考え込んだ後、ナツカ達に話した。

「ナツカは100、エッチャは60ってトコだな。」
「ひゃくぅ?」

雷尿は続けた。

「ドピュっとPSCの数値だよ。ナツカは100のPSIを、エッチャは60のPSIを纏ったって事。」

その時、ナツカは雷尿に問いた。

「PSIの量って測れんのか?」
「PSIは波動性で、共鳴現象を引き起こす。それを利用して測定するんだ。慣れれば感覚で分かるようになるぞ。」

ナツカは理解できずに黙り込んだ。

「えっちゃ、んじゃ俺の全PSIの量は60って事か。」
「いや、今のはPSC。肉体にドピュっと纏えるPSIの限界量だ。MSCはまた別。一般的に、MSCはPSCの約5倍って言うけど…これもドピュっと個人差が激しいからな…ナツカなんかは比較的ドピュっと多くのPSIを肉体に纏えるみたいだから、戦闘じゃ有利だね。」

黙り込んでいたナツカの表情は急に明るくなった。

「まじか。やっぱワシだわ。他とは違ぇわ。唯一無二ダわぁ。」

エッチャをチラチラ見ている。

「でもその分PSIの消費もドピュっと激しいから、持久戦に持ち込まれると厳しいだろうな。」

その時、カメッセッセがヤジを入れた。

「やーい。早漏~。」
「死ね。」

浮かれているナツカとはかわって、エッチャは気になることがあるようだ。

「えっちゃ、お前らのPSIってどんなもんなん?」
「俺はPSCが250。MSCは680だ。」

エッチャはその数値がすごいのか普通なのかわからないまま、とりあえず頷いた。

「えっちゃ、ジャックは?」
「180。720。」

ナツカはあからさまに面白くなさそうな顔をした。

「んダよ、オメェら。ワシらより上かよ。死ねや。」
「大丈夫だよ、ナツカ。PSIやタレントは遺伝の影響がドピュっと大きいからね。障王の末裔である君は、これからもっと期待できると思うよ。」

それを聞くと、ナツカはニッコリした。

「死ねって言ってごめんな、雷尿。」
「えっちゃ、手の平返しすごいな。」

その時、雷尿はエッチャの方を向いた。

「でもビックリしたのは君さ、エッチャ。」

突然名前を呼ばれ、驚き顔だ。

「俺?」
「さっきも言ったけど、PSIやタレントは遺伝の影響がドピュっと大きい。ハンディーキャッパーになって、たった1ヶ月足らずでこのPSIの上がり具合は驚異的だ。恐ろしい才能だよ。」

その時、エッチャはナツカに向かってドヤ顔した。

「腹立つ…褒められていい気になってんじゃねぇぞ、ハゲ。」
「えっちゃ、ハゲちゃうわ!坊主頭って言うねん!」

エッチャはナツカの顔に頭をスリスリさせた。

「うわっ!髪の毛チクチク地味に痛ぇ!」

ニキはその様子を横目で見ていた。

「(才能、か…)」

ニキは拳を握りしめた。

翌日、正午、インキャーン城、中庭にて…

大会参加者達が大勢、中庭に集まっていた。

「えっちゃ、めっちゃおるやん。」
「100人以上は居るな…アハ~ハ!!!密です!!!密でぇ~す!!!」

その時、バルコニーからインキャーン王、そして、王子のハルカが姿を現した。

「アレが、ドピュっとハルカ王子…」
「なんか根暗そうな奴でゲスね。」

その時、国王が参加者達に向けて話した。

「今から、本戦に出られる8チームを決める。なお、その内一枠は特別ゲストとして既に決まっている為、残り7チームの出場を決める。チームごとにかたまってくれ。」

国王がそう言うと、参加者達は5人1組のチームごとに集まった。

「…さぁ、ハルカ。」
「う…うん…」

その時、ハルカは参加者達を凝視した。
加えて、ハルカの口は小さく動き、何か喋り始めた。

「さよならはあなたから言ったそれなのに…♪」

いや、歌っていたのだ。

「もっと上手く歌えやヘタクソ。」

ナツカは王子に向かってヤジを飛ばした。

「えっちゃ、歌ってるトコにツッコめよ。」

ハルカは歌うのをやめ、国王にヒソヒソと何かを話している。
すると、国王は背後にいた兵士に話しかけ、何かを渡す。
その兵士は数十秒後、中庭へと下りてきた。
そして、その兵士はナツカ達を含めた8チームに手紙を渡した。

「今、紙をもらったチームが本戦に選ばれた8チームだ。」

その言葉を聞くと、ナツカ達含め、参加者は騒つき始めた。

「今ので何が分かったんダ?ワシらはともかく…」
「さぁ…俺にもドピュっとさっぱり…」

国王は参加者の困惑を無視して話した。

「選ばれたチームはその紙にチーム名とメンバーの名前。そして、キャプテンと副キャプテンは誰か、を書いて、今日の20時までに私の所まで持ってくる事。」

その時、参加者達が不満の声を上げ始めた。

「ちょ待てよ!」
「納得いかない!」
「ふざけんじゃねぇ!」
「そうだそうだ!さっきので何が分かったんだ!」
「ケモテイかどうか聞いてんねん!」

すると、国王が彼らの不満の声に応えた。

「エセバスケはファウルあり、タレントあり。つまり、チーム全員がハンディーキャッパーである事が最低条件だ。」

だからなんだ、と言わんばかりに誰も納得していない。

「でも俺のチームは全員ハンディーキャッパーだぞ!」
「何で選ばれなかったんですか!」

次の瞬間、国王は言い切った。

「ハッキリ言ってやる。お前達はカスだからだ。」
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