障王

泉出康一

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第1章『チハーヤ編〜ポヤウェスト編』

第13障『上手な縛り方』

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旧エツピ城、バルコニーにて…

魔障王タケシとカメッセッセが対峙していた。

「久しぶりやな、カメやん。」

タケシの表情は温厚であった。

「…タケシぃ…」

カメッセッセは少し、悲しそうな顔をしていた。

「なぁ、カメやん。戻って来いよ。」
「…戻ったところで、殺すぁれるだけやん。」
「俺が何とかするがな!」

カメッセッセは首を横に振った。

「あっこはアカン。アカンねん。ケモテ良くないねん…」
「嫌やで…俺は…!」

タケシは構えた。

「絶対に、連れて帰る…!」
「…」

旧エツピ城内、とある部屋にて…

雷尿とジャックは縄で縛られ、三角木馬に座らされていた。

「ギャハハハハハハハハ‼︎良いザマやなぁ‼︎」

サブリミはムチで雷尿とジャックを叩いている。

「コイツ…ドピュっと強いぜ…!」
「くっ!せめて、奴のタレントさえ分かれば…アハッ!!!」

その時、サブリミはムチを振る手を止めた。

「冥土の土産に教えてやんよ‼︎」
「ヤッタァ!!!お土産!!!お土産ぇえ!!!」

サブリミは2人の前に立ち、さも何かの新商品の説明会の如く、自身のタレントについて話し始めた。

「アタシのタレントは『S付加バイオレンス』‼︎物体にSサドを加える能力‼︎」
Sサド…?」

雷尿はSサドを加えるの意味がわからなかった。
そんな雷尿の表情を見たサブリミはポケットから絆創膏を取り出した。

「例えば、この絆創膏‼︎コレに『S付加バイオレンス』!!!」

サブリミはゆっくりとジャックに近づいた。

「ア~~~!!!イヤ~アアア!!!」

ジャックが馬鹿でかい声で叫び出したが、別にまだ何もされていない。
サブリミはジャックの額にSサドが付加された絆創膏を貼った。

「絆創膏は傷を塞ぐ物‼︎しかーし‼︎アタシのタレントにかかれば‼︎痛めつける道具に早変わり‼︎」

その時、ジャックの額に亀裂が入った。

「イダァァァァァァァァァァァァァァァァア!!!?!?!」
「ジャック!!!」

ジャックの額の亀裂がどんどん広がっていく。

「要するに‼︎アタシのタレントは‼︎物体を拷問器具に変える力‼︎」

ジャックの意識が遠のいていく。

「今助けるぞ!『勃起ビルド』!!!」

雷尿は自身の身体を巨大・硬質化させ、縄を引きちぎろうとした。
しかし、縄はきれなかった。それどころか、縄は巨大化した雷尿に、より一層苦しみを与えた。

「な、なぜ切れない…⁈」
「その縄は既にS付加してある‼︎拷問の基礎その1‼︎敵は絶対逃さへん‼︎」

縄はサブリミのタレントによって強化されていたのだ。

「さぁ‼︎アタシの手の平の上で踊り狂って死ねぇぇぇぇえ‼︎」
「お前がすぃね。」

その時、サブリミの背後にカメッセッセが現れた。

「ぬぁッ⁈」
「はいドーン。」

カメッセッセはサブリミを殴り飛ばした。

「ア"ァ~‼︎」

殴り飛ばされたサブリミは扉を突き破り、廊下まで吹き飛ばされた。

「カメッセッセさん!」
「よ。」

その時、カメッセッセは雷尿とジャックが三角木馬に座らされていることに気付いた。

「お前ら!何に座ってんねん!オレもまぜろ!」

カメッセッセはジャックの縄を解き、三角木馬から突き落とした。

「なぁはッ!!!」

カメッセッセは自ら三角木馬に乗った。

「きじょーい♡」

雷尿達のいる部屋の前の通路にて…

「(何でや‼︎何でカメッセッセがここにおんねん‼︎コイツは今、タケシ様と戦ってるはず…)」

その時、サブリミは通路に何かが転がっている事に気づいた。

「ぬがぁ⁈」

なんと、それはボコボコにやられ、亀甲縛りにされたタケシだった。

「ヤダァ~!!!見~な~い~で~!!!」
「上手な縛り方‼︎」

その時、カメッセッセは部屋から顔を出した。

「ありがとう。」

ジャックは泣いている。

「早く…助けて……」

旧エツピ城前にて…

ニキは濃硫酸からエッチャをかばった。

「えっちゃ、なんで…」
「…知っちまったから…」
「え…」

ニキはしゃがみ込み、爛れた顔面を抑えた。

「だんな方と知り合っちまったから…知っちまったんでさぁ。だんな方は、死んでいい人間じゃねぇ。良い人は、何があっても、生き続けるべきなんでさぁ。」
「お前…」

次の瞬間、砂謝茸がニキに向けてモーニングスターを振り下ろした。

「さっきからゴチャゴチャうるさいんだよね~!僕、そういうの嫌いなんだよね~!ごめんね~!!!」

鉄球がニキに直撃するその時、ナツカは叫んだ。

「微分魔法『y=0ホライゾン』!!!」

すると、モーニングスターの方向が変わり、鉄球はニキから逸れた。

「『液放ビュレト』!!!」

鉄球内部から濃硫酸が噴出された。
濃硫酸がさらにニキを襲う。
しかし、ニキはその濃硫酸に臆する事なく、瞬時に立ち上がりナイフで砂謝茸の首に斬りかかった。

「(コイツ、死ぬ気か…⁈)」

砂謝茸は間一髪のところで回避し、致命傷を避けた。

「そんなに死にたいなら、殺してやるね~!!!」

砂謝茸はニキの肩に触れた。

「『液放ビュレト』!!!」

すると、ニキの肩から血が噴水のように溢れ出した。

「くッ…何だ、コレは…⁈」

その時、エッチャが砂謝茸に斬りかかった。

「ちゃぁぁあ!!!」

砂謝茸は背後に大きく飛んでかわした。

「くそ…!」

ニキは血が噴出する肩を押さえた。
しかし、血は抑えることができずに、絶え間なく流れ出てくる。

「血が止まらねぇ…!」

溢れ出る血に、ニキはどんどん焦りを覚えていく。

「僕のタレント『液放ビュレト』は、水分を含む物体からその水分を外へ放出させる能力。君はあと数分足らずで、出血多量で死んじゃうね~ごめんね~!」
「そんな…アニキ…!」

ヤスは何もできずにただその様子を見守っていた。

「ごめんねごめんね~!」
「オメェ謝るならやんなよ!」

ナツカが叫んだその時、何者の囁き声が聞こえてきた。

「はいドーン。」

カメッセッセが現れた。
一同、その光景に目を丸くした。
カメッセッセは縄で亀甲縛りにされたタケシとサブリミを抱えていたのだ。

「タケシ様…⁈それにサブリミも…⁈」

少し遅れて、雷尿とジャックもやって来た。
砂謝茸が呆気に取られていると、その隙を見たナツカ達はを一斉に囲んだ。

「…ごめんなさい。僕が間違ってました。」

砂謝茸はモーニングスターを手放し、膝をついた。

「その通りダ。オメェずっと間違ってんダよ。」

ナツカは砂謝茸を指差す手を上下させながら言った。

「えっちゃ、タレント解除しろ。」
「…命だけは…」

急な命乞いに少し戸惑いの表情が浮かんだ。

「えっちゃ、どうする?ナツカ。」
「…」

ナツカは傷ついたニキを見た。

「それでいい。本当はココで全員ぶっ殺してやりてぇところダがな。」

砂謝茸はニキにかけたタレントを解除した。

「…さて。殺すか。アハッ!!!」

ジャックは砂謝茸の顔を覗き込むようにしながらゆっくりと近寄った。

「そ、そんな!約束が違うんじゃないかな~⁈」
「やめろ、ジャック。」

ナツカはジャックに待ったをかけ、砂謝茸の元へ歩いた。

「何故だ。」

ジャックは不満そうだ。
砂謝茸はナツカを見上げ、ナツカは砂謝茸を見下し、互いに見合った。

「ワシらは人間ダ。約束は守る。」

数分後…

砂謝茸はカメッセッセに縄で亀甲縛りにされた。

「上手な縛り方‼︎」

サブリミの甲高い声が響いた。

「ありがとう。」

カメッセッセはお礼を言った。
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