珍・桑田少年の品定め

泉出康一

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第21珍 『就任式』

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2046年4月2日、満足公会堂内にて…

ココは『ちんちん満足の会』が所有するホール会場『満足公会堂』。用途は主に、会長による演説、そして、会長就任式。
そう。今は、次期会長ボルドビ・アッカールの就任式の真っ最中である。
ボルドビとガズム以外の候補者は死亡したと判断され、さらに、ガズムが次期会長試験を辞退した為、ボルドビの会長就任が決定したのだ。
その時、ボルドビが舞台の上に上がった。
舞台の上では神父のような格好をした男が、一枚の紙を持っていた。どうやら、その紙が『ちんちん満足の会』会長の証らしい。

「王・珍々よ。汝は、病める時も健やかなる時も、賢者モードで仕事に手がつかない時も、人々のちんちんを満足させる事を誓いますか?」
「はい、誓います。(コレで世界は俺のものだ…!)」

ボルドビは強く拳を握りしめている。

「では、本日をもって、王・珍々は『ちんちん満足の会』会長に…」

次の瞬間、会場の出入り口の扉が勢いよく開いた。

「ちょっと待った!!!」

そこへ、幸太郎と珍三郎とレインが入ってきた。

「結婚式…?」

幸太郎達は舞台の方へ歩いた。

「(何故だ…何故生きている…⁈確か、コイツらは全員始末したと報告が…)」

その時、ボルドビは気づいた。

「買収したのか…」

ボルドビの発言に、レインが返答した。

「貴方と同じですよ。」

会場にいた者達は困惑している。

「みんな聞いてくれ!ここにいる王・珍々の正体は、かつて『ちんちん満足の会』を追放された、ボルドビ・アッカールだ!」

一同、珍三郎の発言に驚嘆している。

「珍々殿がボルドビ…⁈」
「それはまことでござるか⁈」
「そもそも、彼らは死んだんじゃなかったでござるか⁈」

その時、ボルドビが珍三郎に話しかけた。

「証拠でもあるのか?」

ボルドビには確固たる自信がある。過去の素性は全て消し去った。絶対にバレるはずがない。
しかし、珍三郎が取り出したそれは、そんなボルドビの自信を一瞬にして打ち砕く事となる。

「何だそれは…?」

珍三郎は小瓶のような物を手に持っている。

「父から譲り受けた物です。」

レインが何かを伝える。
ボルドビは本当にそれが何か分かっていないようだ。

「イザベラという女を覚えているか?」

その名前を聞くや否や、ボルドビの顔が青ざめた。

「まさか、それは…!」
「お前の精液だ。」

ボルドビの顔から汗が出始めた。

「父が生前、貴方に強姦された女性の遺体から採取した物です。」

その時、レインはカバンから一枚の紙切れを取り出した。

「そして既に、DNA鑑定は終えています。」
「言い逃れはできんぞ。」

ボルドビは滝のように汗を流している。

「貴方を社会的に殺す方法はずっとあったんです。しかし、それをただ通告するだけでは、貴方の力なら揉み消す事も簡単でしょう。だから、今日。この時を待っていました。」

珍三郎は聴衆に向けて話し始めた。

「聞いたでしょう!この男は、かの悪名高いボルドビ・アッカール!当然、『ちんちん満足の会』会長に相応しくない!よって!次期会長試験の再試行を要請する!候補者はこの俺、矢里本珍三郎!そして、桑田幸太郎の二名!」

幸太郎も叫んだ。

「もっかいおねがーい!!!」

その時、最前線の席に座っていた重役達が話し始めた。

「どうします…?」
「どうするもなにも、こんな事態になってしまっては…」
「…一度、話し合うべきでござるな。」

すると、重役達が立ち上がった。

「今日の就任式は中止とする!」

そして、その重役はボルドビに話しかけた。

「王・珍々…いや、ボルドビ・アッカールよ。お主には話がある。こっちへ来い。」

珍三郎はボルドビの方を向いた。

「お前の悪事の証拠も全てある。逃げられると思うなよ。」
「ハァ…!ハァ…!ハァ…!」

ボルドビの呼吸は物凄く荒くなっている。

「ボルドビ…?」

明らかに様子がおかしい。いくら精神的に追い詰められているとはいえ、汗の量が尋常ではない。それに呼吸も荒い。
次の瞬間、ボルドビは倒れ、舞台から落ちた。

「お、おい!」

珍三郎はボルドビに近づこうとした。
しかし、それを幸太郎は止めた。

「待て、珍三郎。危険だ。」
「なに…⁈」
「俺の『ち○こセンサーザ・シックスス』が反応してる…」

説明しよう!
ち○こセンサーザ・シックスス』とは、幸太郎の特殊能力の一つである。本来、可愛い女の子が近くに居ると反応するものだが、モカとの特訓で強化され、身の回りの危険をも察知できるようになったのだ。

「ここから離れた方がいい…かも…」

次の瞬間、ボルドビの身体から、巨大な黒い腕のようなものが、いくつも伸びてきた。
その腕のようなものは聴衆の人々を次々と握り潰していった。

「ななな何じゃこりゃあ!!!」

人々は恐怖し、パニックに陥っている。
幸太郎達は会場の外へ出た。

満足公会堂前にて…

「一体、何が起こっているんだ…⁈」

その時、背後から何者かが幸太郎達に話しかけてきた。

「精神状態が不安定だからだよ。」

それはガズム・ナチオニナーであった。

「そこを付け入れられたんだ。」
「付け入れられたって、何がだよ…?」
「我々がヒニン族を復活させ、その力を利用する術を手に入れた事は、もう知っているだろ?」
「え、うん。」
「ボルドビの身体にも居るんだよ。そのヒニン族が。」
「え、どゆこと…?」

よくわかっていない幸太郎に珍三郎が説明する。

「前にも説明しただろ。ヒニン族を霊体化させて身体に取り込む事で、洗脳されずにその特別の力を使用できると。」
「そうだっけ…」

さらにガズムが説明を加える。

「しかし、彼の中のヒニン族は少し違う。何せ、女王パキナの血を引く者だからね。所謂、特別中の特別なのだよ。」
「どういう事だ。」
「私が生み出したのさ!女王の宿主である桑田舞香の肉体を元に、パキナの血を引くヒニン族を!つまり!ヒニン族の王を!」

黙って聞いていたレインも驚きのあまり声が漏れた。

「ヒニン族の王…⁈」
「…え、どゆこと?」

次の瞬間、満足公会堂の壁や天井が破壊され、巨大な黒い腕が突出した。

「アレはもう止められない。世界の繁栄は今日をもって終わりだ!ナハハハハハハハハハハハハハ!!!」

その時、満足公会堂から突出した黒い腕が消えた。

「消えた…?」

しばらくすると、入り口からボルドビが現れた。

「気をつけろ二人とも…!」

幸太郎は珍三郎とレインの前に出た。

「……ロセ…」
「は…?」
「全て…ヲ…殺セ……ソレガ…我ガ使命…」

次の瞬間、ボルドビは再び、巨大な黒い腕を伸ばした。

「創ラレ…シ…コノ…世界ニ…逸楽…ヲ…」
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