珍・桑田少年の品定め

泉出康一

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第15珍 『ラブライブファンに殺されそう。』

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2045年9月13日、夕方(幸太郎達が矢里本の屋敷へ向かっている最中)、太平洋沿岸にて…

おじさん達が釣りをしている。

「んんん…⁈」

その時、おじさんの釣竿が獲物にヒットしたようだ。

「おぉ!これはデカいぞぉ!!!」

頑張るおじさん。張る釣り糸。

「ぬぐぐぐぐぐぐぅ…んなぁあ⁈」

しかし、あまりの引きの強さに、おじさんの手から釣竿が離れ、釣竿は海に引き摺り込まれた。

「あぁ~!オラの4万7千円がぁぁぁぁあ!!!」

おじさんが海を覗き込もうとしたその時、釣竿が海から投げ帰ってきた。

「え…⁈」

次の瞬間、一人の男が海から這い上がってきた。

「ぬごぁぁぁあ!!!バケモンでぃぃぃぃい!!!」

おじさんは4万7千円する釣竿だけを持って、その場から逃げた。
そして、海から這い上がってきた男は地面に横になった。

「ハァ…!ハァ…!ハァ…!ハァ…!」

その男の正体は、なんと、幸太郎と一緒にクイーン満足号に乗り込んだモカである。
墜落した飛行船から脱出し、自力で陸地まで泳いできたのだ。

「…しんどー…」

そこへ、一人の黒髪の女がやって来た。

「…お前か…」

その女は、以前ホテルで幸太郎達を襲ってきたスナイパー、バレットであった。
バレットはモカに拳銃を向けた。

「…撃てよ。」

しかし、バレットは撃たない。
モカはバレットの表情を見た。

「(コイツ、面倒臭い事考えてるな…)」
「私を弟子にしなさい。」

モカは体を起こした。

「風呂・服・飯、用意できたら考えてやる。」

夜、とあるホテルにて…

バレットはベッドに座りながら、銃の手入れをしている。
その時、風呂場からバスローブ姿のモカが出てきた。

「そこに置いてある。」

バレットは机の上に置いてある牛丼を指差した。
モカはベッドに座り、それを食べ始めた。

「…自信はあった。誰であっても…例え、標的が『Zoo』の殺し屋であっても、殺す事ができる。けど違った。私は組織内でも遥か格下。」

バレットは手入れ中の銃をベッドに置いた。

「教えてくれ。どうしたら、私は強くなれるんだ。」

モカは無視して牛丼を食べている。

「頼む。答えてくれ。」
「…向いてない…」

牛丼を食べながらモゴモゴ答える。

「は?」

口に含んでいた牛肉と白米を飲み込んだ。

「お前は殺し屋に向いてない。」

バレットは銃を取り出し、モカに向けた。

「私を侮辱しているのか?」
「殺し屋は強くなりたいなんて言わない。お前は暗殺というものを理解できてないんだ。」

バレットは銃を下げた。

「どういう事だ…?」
「お前は暗殺をスポーツか何かだと思ってる。」

次の瞬間、モカはバレットの持っていた銃を奪い、バレットに銃口を向けた。

「他者の人生を終わらせる。その者が積み上げてきた全てを奪う行為だ。」

モカはバレットに銃を返した。

「殺しはどこまで行っても殺し。芸術じゃない。」

バレットは黙って聞いている。

「お前がどういった経緯で『Zoo』に入ったかは知らん。だが、コレだけは言える。お前は向いてない。真面目すぎる。良い子ちゃんじゃこの仕事は務まらない。」

バレットは銃を眺めた。

「…私には、コレしか無いんだ…」

モカはベッドから降り、牛丼の容器をゴミ箱に捨てた。

「先ずは自分だけの武器を持て。」
「え…」
「瞬間記憶や気配察知程度、俺でも使える。『Zoo』の殺し屋は実力重視じゃない。個性重視だ。実力は後からついてくる。」
「教えてくれるのか…?」
「コレしか無いんだろ。」

バレットはこの時、初めて尊敬というものを覚えた。かつての市村と同じ。この人に着いて行きたい。そう思えた。

「ま、ハローワーク行けば仕事なんていくらでもあるけどな。」

モカは自身のスマホを見た。するとそこには、植松からの通知が表示されていた。

「…行くぞ。仕事だ。」
「え⁈ちょっと!鍛えてくれるんじゃないの⁈」
「見て学べ。元No.2の背中をな。」

深夜、研究所前にて…

ココは『ちんちん満足の会』が所有する研究所、満足研究所である。研究内容は主に、媚薬やサプリメント、大人のオモチャなどの開発である。

「ココかぁ…」

圭人は植松のスマホに入っていたGPS追跡アプリを使い、ここへたどり着いたのだ。

「どうやって入ろう…」

圭人は研究所門前の木の陰にいた。
研究所門前には、二人の監視がいる。

「アイツらぶっ殺して中入ろかな…あ!イカンイカン、僕の悪いトコ出てもうたわぁ。」

その時、何者かが圭人の後頭部に拳銃を突きつけた。

「おっが⁈」
「動くな。」

それはモカである。
モカとバレットも、植松からの連絡により、この場所を探り当てたのだ。

「何者だ。ココで何してる。」

圭人は失禁した。

「(一般人か…?)」

モカは読心術で圭人の心を読んだ。

「(海佳…幸太郎…ごめん…父さん、漏らしてもうた…今年で45歳やのに…)」

モカは銃を下ろした。

「お前、桑田圭人か。」

それを聞き、圭人は振り返った。

「え、俺の事知ってんの?」

満足研究所内にて…

幸太郎は珍太郎のAIが搭載されたタブレット端末を持って、とある部屋の前にたどり着いた。

「ココだよな…?」

幸太郎はドアを開けようとした。

「あれ…ドアノブがない…」

その時、タブレット端末から珍太郎の声が聞こえてきた。

〈拙者の端末を、そこのカードリーダーにピッってするでござる。〉

幸太郎はタブレット端末をカードリーダーにピッってした。
すると、ドアは開いた。

部屋の先にて…

幸太郎が部屋に入ってきた。
その部屋の中には、一人の全裸の男が台の上に拘束されており、身体には何本ものチューブが差し込まれていた。

「コイツが、ゴールデンクラッカー…」
〈拘束を外すでござる。〉

幸太郎は男が拘束されている台に近づいた。

「外すったってどうやって…」

幸太郎は男に差し込まれたチューブを次々と無理くり抜いていった。

「痛い痛い痛い痛い!!!」

男は目覚めた。

「あ、ごめん。」
「何すんねん!そんなんしたら痛いってワンチャン分かるやろ!」
「アンタが、ゴールデンクラッカー…?」
「え、そやけど。」
〈久しぶりでござるな。長岡氏。〉

長岡は幸太郎の持っていたタブレット端末を見た。

「その声…矢里本か⁈」

幸太郎は珍太郎の指示通りに長岡の拘束を解いた。そして、長岡に事情を説明した。

「とうとう二次元の人間になったんか。良かったな。夢叶って。」
〈そりゃもう最高でござるよ!拙者、毎晩毎晩アニメキャラとヤりまくってるでござる!この間なんかAqoursのズラ丸たんと夕陽が見えるビーチの片隅でセッ…〉

その時、幸太郎は声を上げた。

「あのぉお!!!時間ねーんだよ!頼む!協力してくれ!」

しかし、長岡は静かに言った。

「…力になれそうにない…」
「頼むよ!俺にできる事ならなんでもするからさ!」
「そやないんや…」

長岡は手を前にかざした。

「使えへんねや…『高痴漢技術サワレヤ』が…」
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