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第8珍 『市村の過去』
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26年前、市村が高校生の時、とある事件が市村の住む町で起こった。人々が何者かに洗脳され、虐殺を始めるというものだ。コレはかつて人間を滅ぼさんとしていたヒニン族の仕業。だが、市村にとってはそんな事、知る由もない。
俺はあの日、洗脳された人間共に家族を殺され、俺自身も殺されかけた。絶望した俺の前に現れたのが師匠や。師匠は次々と洗脳人間共を倒していった。
かっこよかった。初めて人を尊敬した。そんで決心した。この人について行くって。今思えば、何かに縋りたかっただけかも知れへん。家族を殺され、拠り所のなくなった当時の俺にとっては。
師匠は殺し屋やった。でも俺は頼み込んだ。弟子にしてくれって。何遍も何遍も。そんで、師匠は条件付きでそれを許してくれた。
「俺に一撃喰らわせてみろ。そうすれば、考えなくはない。」
師匠のコードネームはブレイド。ナイフの扱いと身のこなしは組織随一。到底、ただの高校生が一撃喰らわせるなんて無理な話や。けど、俺は諦めんかった。
何時間も粘りに粘った結果、師匠の方が折れた。
「もういい…弟子にしてやる。だが覚えておけ。これからお前が行こうとしている世界は、一度行ったら最後。もう二度と戻って来れんぞ。」
師匠は何遍も何遍も俺に確認を取った。当時はしつこいなぁって思ってた。けど、今ならその意味が分かる。
2045年8月5日、昼、とあるホテル避難階段にて…
「後悔はしてへん。そのおかげで、今、戦える…!」
市村は上に向けて長い舌を伸ばした。
「(師匠。アンタが今どこで何してるか、俺には分からへん。多分、もう二度と会われへんやろう。やから、心の中で感謝を伝える。)ありがとさん♡」
その時、市村は伸ばした舌を直角に曲げ、方向を変えた。
次の瞬間、市村の舌はバレットのライフル銃を破壊し、そのままバレットの右腕を貫いた。
「くッ…!」
「ニョヒヒ!ニョヒヒ!顔出したんが運の尽きやなぁ~。目もだいぶ慣れてきたし…トドメ行かせてもらうで。」
市村がバレットにトドメを刺そうとした。
すると次の瞬間、市村は何者かに背後から後頭部を殴られた。
「ぐがッ…!!!」
市村は床に倒れた。
「なん…で…ッ!」
なんと、市村を殴ったのは木本だった。
「お前…まさか、反矢里本派の…」
木本は懐から拳銃を取り出した。
「それ遺言ー?お前のファイナルあんさー?」
木本は銃口を市村に向けた。
ホテル、ロビーにて…
植松を背負った幸太郎がロビーにやってきた。
その時、幸太郎は出口付近にいたスーツの男達に銃口を向けられた。
床には多くの血痕が残っている。
「何なんだよコイツら…⁈」
「(何でも屋組織『カラス』…アイツら、こんな連中まで雇いやがって…)」
『カラス』とは、『Zoo』とは別の闇組織であり、その仕事内容は殺し以外も含まれる。所謂、何でも屋である。依頼主の命令ならどんな事でも引き受け、例え、死ねという命令ですら従事する猟奇的犯罪組織だ。
一人のリーダー格の男が幸太郎に話しかけた。
「我々の仕事は桑田幸太郎…貴方を連れてくる事。つまり、生死は問わないという事です。しかし、死なれると非常に運搬効率が悪い。保存も効きません。ですから、貴方が素直に我々についてくると仰るのであれば、殺しはしません。どうしますか?」
その時、植松は幸太郎に囁いた。
「時間稼げ。」
幸太郎は植松の言葉に少し戸惑ったが、すぐ様、了承の表情を浮かべた。
「先ず、ちょっと質問いい?」
「どうぞ。」
「(時間稼げって言われても、何言えばいいか…)生死は問わないって言ってたけど、保証あるの?」
「保証…」
「俺が素直についていっても大丈夫かどうかって事だ。油断させる罠じゃねーだろな?」
「そういう事ですか。なるほど、わかりました。保証ならこれです。」
その男は両手を広げた。
「今、この状況が保証です。貴方の生死は完全に我々に委ねられています。つまり、今すぐにでも我々は貴方を射殺できます。」
「それが何だってんだよ…?」
「わかりませんか?貴方程度の小物相手に、狡猾な罠を貼る必要なんて無いという事です。」
幸太郎は少しムカっとした。しかし、言い返す事など出来るはずもない。
「ですが、そうですね…連れ去った後は我々の仕事の範疇外なので、そこからは貴方の努力次第という事にはなりますね。」
その時、その男は幸太郎に向けて銃口を向けた。
「さて、時間には限りがあります。ここで決めて下さい。我々と共に来るか。それとも死ぬか。」
植松は焦りの表情を見せた。
「(あと少し…あと少しのはずやねん…)」
植松は幸太郎を見た。
「(これ以上、コイツに時間稼ぎは無理や。腹痛いけど、俺がやるしか…)」
その時、幸太郎は静かに言葉を発した。
「最後の質問…いいか…?」
ダメだ。そういうつもりだった。しかし、幸太郎の決意した顔を見て、スーツ男はそれを了承した。
「…手短にどうぞ。」
「お前らの狙いは俺だろ。だから、植松には…俺が今背負ってる女の子には、手は出さないって事でいいな…?」
「ええ。その通りです。ご安心下さい。貴方さえ来ていただければ、他に何も致しません。」
幸太郎は植松を床に座らせた。
「お前…」
幸太郎は撃たれた左耳を再び押さえた。
「庇ってくれてありがとな。短い間だったけど…楽しかったぜ。」
幸太郎は男に話しかけた。
「お前らについていく。だから殺すな。てか銃下ろせ、怖い。」
男は他の仲間に合図を送り、銃を降ろさせた。
「いいでしょう。では、我々と共に…」
その時、植松が幸太郎の腕を掴んだ。
「はは。お前…意外と僧侶枠やんけ…」
「植松…?」
男は植松に話しかけた。
「邪魔するつもりですか?それならば話は別です。アナタを…いえ、アナタ方を殺さねばなりません。」
植松は男の話を無視して、幸太郎に話しかけた。
「怪我してるらしいからな…銃下ろさせたんはファインプレーやで…故意かどうかは知らんけど。」
次の瞬間、『カラス』共の足元に二つの手榴弾が投げ込まれた。
15人程いた『カラス』の男共は皆、爆発によって吹き飛ばされた。
しかし、寸前でそれに気づいたリーダー格の男は、手傷は負ったものの致命傷を回避していた。
「(爆弾⁈一体誰が…⁈)」
「ようやく来たで…最強の助っ人が…!」
その時、とある男が砂埃に紛れて、生き残った男の背後を取った。
男はそれに気づいた。しかし、気づいた頃には既に首を切断されていた。
「元『Zoo』のNo.2…コードネーム、モカ…!」
俺はあの日、洗脳された人間共に家族を殺され、俺自身も殺されかけた。絶望した俺の前に現れたのが師匠や。師匠は次々と洗脳人間共を倒していった。
かっこよかった。初めて人を尊敬した。そんで決心した。この人について行くって。今思えば、何かに縋りたかっただけかも知れへん。家族を殺され、拠り所のなくなった当時の俺にとっては。
師匠は殺し屋やった。でも俺は頼み込んだ。弟子にしてくれって。何遍も何遍も。そんで、師匠は条件付きでそれを許してくれた。
「俺に一撃喰らわせてみろ。そうすれば、考えなくはない。」
師匠のコードネームはブレイド。ナイフの扱いと身のこなしは組織随一。到底、ただの高校生が一撃喰らわせるなんて無理な話や。けど、俺は諦めんかった。
何時間も粘りに粘った結果、師匠の方が折れた。
「もういい…弟子にしてやる。だが覚えておけ。これからお前が行こうとしている世界は、一度行ったら最後。もう二度と戻って来れんぞ。」
師匠は何遍も何遍も俺に確認を取った。当時はしつこいなぁって思ってた。けど、今ならその意味が分かる。
2045年8月5日、昼、とあるホテル避難階段にて…
「後悔はしてへん。そのおかげで、今、戦える…!」
市村は上に向けて長い舌を伸ばした。
「(師匠。アンタが今どこで何してるか、俺には分からへん。多分、もう二度と会われへんやろう。やから、心の中で感謝を伝える。)ありがとさん♡」
その時、市村は伸ばした舌を直角に曲げ、方向を変えた。
次の瞬間、市村の舌はバレットのライフル銃を破壊し、そのままバレットの右腕を貫いた。
「くッ…!」
「ニョヒヒ!ニョヒヒ!顔出したんが運の尽きやなぁ~。目もだいぶ慣れてきたし…トドメ行かせてもらうで。」
市村がバレットにトドメを刺そうとした。
すると次の瞬間、市村は何者かに背後から後頭部を殴られた。
「ぐがッ…!!!」
市村は床に倒れた。
「なん…で…ッ!」
なんと、市村を殴ったのは木本だった。
「お前…まさか、反矢里本派の…」
木本は懐から拳銃を取り出した。
「それ遺言ー?お前のファイナルあんさー?」
木本は銃口を市村に向けた。
ホテル、ロビーにて…
植松を背負った幸太郎がロビーにやってきた。
その時、幸太郎は出口付近にいたスーツの男達に銃口を向けられた。
床には多くの血痕が残っている。
「何なんだよコイツら…⁈」
「(何でも屋組織『カラス』…アイツら、こんな連中まで雇いやがって…)」
『カラス』とは、『Zoo』とは別の闇組織であり、その仕事内容は殺し以外も含まれる。所謂、何でも屋である。依頼主の命令ならどんな事でも引き受け、例え、死ねという命令ですら従事する猟奇的犯罪組織だ。
一人のリーダー格の男が幸太郎に話しかけた。
「我々の仕事は桑田幸太郎…貴方を連れてくる事。つまり、生死は問わないという事です。しかし、死なれると非常に運搬効率が悪い。保存も効きません。ですから、貴方が素直に我々についてくると仰るのであれば、殺しはしません。どうしますか?」
その時、植松は幸太郎に囁いた。
「時間稼げ。」
幸太郎は植松の言葉に少し戸惑ったが、すぐ様、了承の表情を浮かべた。
「先ず、ちょっと質問いい?」
「どうぞ。」
「(時間稼げって言われても、何言えばいいか…)生死は問わないって言ってたけど、保証あるの?」
「保証…」
「俺が素直についていっても大丈夫かどうかって事だ。油断させる罠じゃねーだろな?」
「そういう事ですか。なるほど、わかりました。保証ならこれです。」
その男は両手を広げた。
「今、この状況が保証です。貴方の生死は完全に我々に委ねられています。つまり、今すぐにでも我々は貴方を射殺できます。」
「それが何だってんだよ…?」
「わかりませんか?貴方程度の小物相手に、狡猾な罠を貼る必要なんて無いという事です。」
幸太郎は少しムカっとした。しかし、言い返す事など出来るはずもない。
「ですが、そうですね…連れ去った後は我々の仕事の範疇外なので、そこからは貴方の努力次第という事にはなりますね。」
その時、その男は幸太郎に向けて銃口を向けた。
「さて、時間には限りがあります。ここで決めて下さい。我々と共に来るか。それとも死ぬか。」
植松は焦りの表情を見せた。
「(あと少し…あと少しのはずやねん…)」
植松は幸太郎を見た。
「(これ以上、コイツに時間稼ぎは無理や。腹痛いけど、俺がやるしか…)」
その時、幸太郎は静かに言葉を発した。
「最後の質問…いいか…?」
ダメだ。そういうつもりだった。しかし、幸太郎の決意した顔を見て、スーツ男はそれを了承した。
「…手短にどうぞ。」
「お前らの狙いは俺だろ。だから、植松には…俺が今背負ってる女の子には、手は出さないって事でいいな…?」
「ええ。その通りです。ご安心下さい。貴方さえ来ていただければ、他に何も致しません。」
幸太郎は植松を床に座らせた。
「お前…」
幸太郎は撃たれた左耳を再び押さえた。
「庇ってくれてありがとな。短い間だったけど…楽しかったぜ。」
幸太郎は男に話しかけた。
「お前らについていく。だから殺すな。てか銃下ろせ、怖い。」
男は他の仲間に合図を送り、銃を降ろさせた。
「いいでしょう。では、我々と共に…」
その時、植松が幸太郎の腕を掴んだ。
「はは。お前…意外と僧侶枠やんけ…」
「植松…?」
男は植松に話しかけた。
「邪魔するつもりですか?それならば話は別です。アナタを…いえ、アナタ方を殺さねばなりません。」
植松は男の話を無視して、幸太郎に話しかけた。
「怪我してるらしいからな…銃下ろさせたんはファインプレーやで…故意かどうかは知らんけど。」
次の瞬間、『カラス』共の足元に二つの手榴弾が投げ込まれた。
15人程いた『カラス』の男共は皆、爆発によって吹き飛ばされた。
しかし、寸前でそれに気づいたリーダー格の男は、手傷は負ったものの致命傷を回避していた。
「(爆弾⁈一体誰が…⁈)」
「ようやく来たで…最強の助っ人が…!」
その時、とある男が砂埃に紛れて、生き残った男の背後を取った。
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