それでも、精いっぱい恋をした。

花泳

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clock 5.空と海の境界線を翔べ

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日曜日は遊べなくなった、と言うと薄情者だと大批判を浴びた。これはたぶんだけど、あかねくんと会うってバレてるんだと思う。


先にしていた約束を放棄するなんて確かに最低行為だけどさあ…でも!こいつらは毎日会えるし!わたし、あかねくんのこと、好きになっちゃったし!しょうがなくね?わかっるなら目つぶれよって感じ。


でもまあ本気で怒ってない様子だから助かったけど。わたしがいてもいなくてもどっちにしろこいつらは楽しめるだろうし。

だけどユズだけは何も言ってこなくて、ちょっと、どうしてかな、切なかった。



日曜日、10時の時計塔の下。近所での待ち合わせなのに2時間前に起きて身支度しちゃった。はりきりすぎて笑える。

10分前にそこに行くとすでにあかねくんの姿があった。


……かっこいい。


制服じゃない、私服姿。ベージュのポロシャツにゆったりしたシルエットの黒いパンツ。シンプルなのにかっこいい。気取ってないのに品があって似合ってる。

あんなにかっこいい人種が待ってるのがわたしって…神様はおかしくなっちゃったのかもしれない。


きんちょう、する。

今日って何?ただの遊び?べんきょー会なんて言うなよ?……デート、の、つもりで、わたしはいる。あかねくんはどうか知らないけど。


いやでもデートなんておこがましいよなあ。

とりあえず深呼吸。だって、日曜日に会えるなんて。待ち合わせするようになるなんて。


しないように心がけたってどうしても期待してしまう。だってあかねくん、わたしに、優しくしてくれるし。


「はるき、どうしたの」

「わあっ」


ちょっと目を離して深呼吸していた隙に彼がわたしを見つけた。なんで見つけるんだよ!



仕方なく時計塔の下まで駆け寄る。


「や、やあ」

「やあ?」

「えっと、今日は、どこかに行くのでしょうか。レッドボーイ持ってきちゃったけど平気かな」

「あ、じゃあレッドボーイで行こ。恐竜博物館と水族館と映画、どれがいい?」

「えっ…」


なにその、デートみたいなメニュー…あかねくんもまんざらじゃねえんじゃ…。


携帯の画面にその3つを順番に映しだしてく。映画の候補は2つあるらしい。

ひとつはアクションが評判の洋画、もうひとつはゆったりしたアニメーション。映画は好きだしどっちも見たいと思っていたものだったからびっくりしたけど、でも、2時間あかねくんとしゃべらずスクリーンを見るのはもったいねえよな。


水族館も好きだけど、なんかちょっと本格的にデートっぽくてなんかやばい。

というわけで、恐竜博物館を選択。行ったことねーから楽しみ。


どこにあるのかだいたい把握して、あとはあかねくんにナビしてもらうことになった。レッドボーイに乗って、さあしゅっぱつ。

おなかの布をぎゅっとする手は変わらないのに、その袖口が私服なだけで、今日は今まででいちばん特別な気がした。


レッドボーイから降りてチケット売り場に行くまでの間であかねくんはジェラシックワールドが好きなことを知った。わたしも好きで、一番びっくりしたシーンまで合致したからびっくりだ。


恐竜にも歴史にも詳しくないわたしと、嫌味なくうんちくを楽しそうに話すあかねくん。

恐竜の種類は案内に書いてあることより彼の言葉のほうがわかりやすくてすごかったよ。


「あかねくんって何の先生になりたいの?なんの教科が得意?」

「一番得意とかないから、全部教えられるようにして、小学校の先生がいいかなって思ってる。でも高校の授業も楽しいから悩む」

「ほう…」



そこでも悩んでるの?何もなくて悩んでるわたしと、何かとありすぎて悩んでるあかねくん。

一緒に歩いてて変じゃないかな。周りにバレないように必死。


「あかねくん、いろんなこと知ってて、教えてくれて、楽しいよ」


それを全部憶えられるかといったら別の話だけど。


「はるきが楽しいって思ってくれるならよかった」

「……あかねくんは、わたしといて楽しいのかよ」


もらってばかりで、何もあげられていない。

それなのに今日誘ってくれた。


「楽しい。だからこれからも、一緒にいてほしい」


そりゃ、こっちだって一緒にいたいよ。

だけど自信がなくて、それでも、それを悟られたくなくて、ただ首を縦に振ることしかできなかった。


地元以外のごはん屋さんはよく知らないから、あかねくんと歩きながら一緒に探した。めずらしく「おなかすいた」と口にしててびっくりした。

むかしながらの喫茶店のパンケーキや、パスタ、カルビ丼…いろんなものに誘惑されながら、にぎわう商店街を歩く。


「あかねくん、さすがにやきにくでいちばん好きな肉はあるだろ?何?」


カルビ丼を見ていたらふと沸いた疑問。


「ハラミかな」

「おお、わたしも。ハラミだけでもいいって思う」

「たしかに。おいしいよね。はるきが言うなら間違いなかったんだなって思う」


なんだそれ。

頭が良くて運動神経も良くて家柄も良く、顔もかっこいい。背も高く細身。性格だって人に優しくできて、悩んでるにしろ夢だってある。

それなのにあかねくんはあまり自分を信じてないみたいで、へんなの。わたしと正反対なのに、わたしと同じ。



わたしがあかねくんなら、きっと、自信満々になれるのに。

だけどそうじゃないのが、あかねくんの、かっこいいところだなって思う。


「あ、はるき、これ食べてみたい」


そう言って指さした看板にはたまごサンドと書いてあった。

ほう。いいじゃん。そんなわけで入った韓国ちっくなおしゃれカフェ。

メニューはちゃんと写真がついててわかりやすかった。


あかねくんに文字だけで食べてみたいと思わせたたまごサンドは、ふわふわそうなのに薄手の食パンにはさまれた分厚いとろっとろのたまご焼きが、写真だけでも食欲をそそってきた。だからふたりとも同じそれを頼んだ。


たまごいくつ使ってるんだろう。飽きないかな。

甘いたまごなのか、しょっぱいたまごなのか。気になることはいっぱいあって食べるのが楽しみ。


「そういえば満希が猛勉強はじめたよ。まだ3日だけどね」

「すぐに実行できる人ならちゃんとやりきれると思う。入ってくるの来年だよね?後輩になるのうれしい」


…あ、満希が受かったら、あかねくんの学校の様子聞けちゃうんじゃね?それは命懸けで受かってもらわなくちゃ。



「あかねくんは、どうして学校の先生になりたいって思ったの?」


夢って、やりたいことって、どうやって見つけるんだろう。

あかねくんのこと、もっと、たくさん知りたい。


「学校でも勉強教えることがあって。漠然とだったけど、小学生ぐらいのときからなりたいって思ってた気がする」

「え、小学生…!?」

「うん。それが、中学の時の数学の先生のやり方があまりよくなくて「自分だったらこうするのに」って思いはじめたことがきっかけで強まったかな」

「なるほど…反面教師ってやつだ」

「まあ、そうだね」


小学生。中学生。わたしなんて何も考えずに、楽しいことやラクなことだけをしてた。3才の頃から親に月謝を払ってもらってたピアノだって上達しないまま中2で行くのをやめた。



きみは、すごい。



「…工業高校に入ってはじめて作ったのが、懐中時計だったんだけど」

「懐中時計?いいね」

「うん。わたしも張り切ってデザインとかして作ったんだけど…なんか間違えて1分遅れて。直したいんだけど、また元通りにできるか不安で手つけられないままなんだ」

「そうなんだ。…1分遅れてても、はるきが気に入ってるなら、そのままでもいいと思う」


うん。

先生にもクラスメイトにも揶揄われたけど、あかねくんなら、そう言ってくれる気がした。


「あと、わたし、小学5年くらいから身長伸びてないんだ」

「え、身長?」

「うん。ずっと158センチ。でも中学に上がるころまでは髙いほうで、みんなに言われるがままにバレーボール部に入ったんだけど…だんだんわたしより高い背丈の人が増えて、ポジションが変わって、ぜんぜんうまくできなくて、こわくなって退部した」

「…そうだったんだ」

「ばかだよなー。背にこだわってないで新しいポジションでどうがんばれるか、がんばればよかったのに、がんばりたくなくて、認めたくなくて、逃げたんだよ」


途中でやめたのにチームメイトたちはいつまでも優しくて、それを素直に受け止められない自分がみじめだった。

あんな思いしたくなくて、高校では部活に入らなかった。


どうせ何もできない。


「逃げたんじゃなくて、単純に、やりたくなくなっただけなんじゃないの」

「…それ、同じことじゃね?」

「違うと思う。おれだって3歳からピアノやってたけどお姉ちゃんが巧すぎて嫌になって中学で辞めたし」

「おねえちゃん…」


呼びかたかわいい……いやそうじゃなくって。3歳でピアノって、同じじゃねえかよ。



「確かに周りや自分でお姉ちゃんと比べられたりするのが嫌って気持ちもあったけど、それ以上に、ただ練習するのがめんどくさくなってやりたくなくなっただけだよなって思ってる」

「え……あかねくんもやりたくないとか、めんどくさいって思うこと、あるんだ」


そうつぶやくと整った顔が眉を寄せた。


「あるに決まってんだろ。はるき、おれのことなんだと思ってんの?」


おまけにちょっと不機嫌そうな声。


「え、や、あかねくんはあかねくんだけど……すごいひと、だから…」


わたしにできないことができるひと。
わたしが知らないことを知ってるひと。

わたしとはぜんぜんちがう。


「おれは何もすごくないよ。はるきのほうがずっとすごい」

「さすがにそれはねえだろ」


思わず全力否定しちゃった。お世辞っぽい言いかたでもないから余計びびる。


「すごいよ。さっく博物館で恐竜にびっくりして泣いてる子どもに話しかけたり、バイク運転できたり、たくさん食べれたり、友達が多かったり、家族と仲が良かったり、姿勢と字がきれいなところも、すごい。いつも明るくて、楽しそうで、前向きな言葉をかけてくれる。おれにはあまり思いつかないから、すごいよ」


なんてことない、わたしにとってのふつう。

それをあかねくんはすごいって言ってくれる。もしかしたらあかねくんにとってのふつうを、わたしも、すごいと思っているのかもしれない。


ちがうことばかりなはずなのに、同じところを知ると、数にしておきたくなる。

きっとたくさんあるような、そんな気がして。


「お待たせしました、たまごサンドおふたつです」

「「ありがとうございます」」


店員さんへのお礼が重なる。

すると店員さんは「仲良しですね」と笑った。


テーブルを挟んで、あかねくんと目が合う。

照れくさくて、わたしたちも笑ってしまった。店員さんにお礼言うあかねくん、好きだなあ。



つまりわたしが好きなわたしの、ひとつでもあるのかもしれない。

こんなの、きみに出会わなかったら知らなかったよ。


「あかねくん…ありがとう」


さっき言ってくれたこと、わすれないでいたい。

大事にできる人になりたい。


「たまごサンド、食べよ」

「…あかねくん、照れてる?」

「照れてないから」


照れてるじゃん。

耳を赤く染める姿が、かわいかった。


あかねくんはお姉ちゃんとお兄ちゃんがいるんだって。お姉ちゃんはピアノの先生で、お兄ちゃんは政治家。

仲はわりと良さそうだけどふたりとも実家を出られてるみたい。わたしの弟があかねくんだったら絶対実家出ない。ちなみにお父さんもお母さんもおじいちゃんもおばあちゃんも親戚も政治家。愛犬が一匹。キャバリアのごくう。


たまごサンドはふわふわで、甘くもしょっぱくもあって絶妙だった。チーズがアクセントになっていて、おいしくてぺろり。ボリュームがあったから満腹になったけど。

あかねくんはわたしより遅くに食べ終わった。

途中きつそうだったけど、おいしかったみたいで無事に間食。ウーロン茶は2杯。たしかに喉が渇くごはんだったかも。



「朝はパン?ごはん?」

「パンのほうが多いかな。あまり憶えてない」

「へえ、でもちゃんと食べるんだな」


なんかヨーグルトとかフルーツで済ませちゃいそうなのに。そうじゃなくてよかったよ。


「食べたほうが脳が動くから」


なるほど。ちゃんと食べてるのにわたしの脳はあまり動いてる気がしないけど。



ごくうには今度会わせてくれるらしい。いつも家の前まで送らせてくれないくせにな。

写真を見せてもらったけど、何枚かあったあかねくんとのツーショットはちょっとあかねくんのことしか見れなかった。ほしい…けどさすがにきもいから今度ごくうと会ったときに撮ってやる。


夕方になって、あかねくんは塾へ向かった。送ってあげた。


「送ってくれてありがとう。気をつけてね。今日はありがとう」

「何回ありがとう言うんだよしつけーよ」

「はるき、照れてる?」


あ、さっきの仕返しだ、これ。
そう思ってそっぽを向く。

ねえ、あかねくん。


「…がんばれよ、塾」

「うん、ありがとう」


ちゃんと、こころからそう思ってるよ。

ほんとうだよ。


有名な進学塾の中に入ってく背中を、見えなくなっても見送った。



「デートはどうだったんだよ」


レッドボーイをお饅頭屋の駐車場に停めてると歩いて登校中のサガミが話しかけてきた。


「デ、…デートじゃねえっつの」

「否定するほどアヤシく思える」

「…恐竜博物館いった」

「え、デートじゃん」


ああもう月曜日の朝からうるさいっ。


「みんなはどこ行ったの?」

「映画。春希が見たがってたあのアクションのやつ」


げ。危ね~。鉢合わせたかもしれないと胸をなでおろしたい気持ちになる。そうなってたら最悪だったから回避できてよかった。


「つーかあの大人数で映画みたの?すげー迷惑」

「うっせーよ。まあそのあとボーリングも行ったけどな」

「え!いいなー!誰勝った?」

「トータルはユズ」


でたな。ユズはマイシューズとマイボールを買おうとしてるくらいボーリングガチ勢。

中途半端でその気持ちだと笑えるんだけど、正直めちゃくちゃうまい。カーブとか投げられちゃう。だいたいストライク。できなくてもスペア。プロ?



みんなユズに勝とうって秘かに特訓してるけど今回も勝てなかったらしい。だいたいガーターなわたしはボーリングだけは勝負したくなかったりする。楽しいから好きだけど。


「…春希はさ」

「ん?」

「……ユズのことはもういいのかよ」


いつもの揶揄うような口調じゃない。

真剣に聞かれてるのがわかった。


「え、なんで…」


調子くるうじゃん。そういう話してくるならいつもみたく揶揄えよ。


「すげー好きだったじゃん。フラれた時、ちょっと泣いたろ。みんな気づいてる」

「や、泣いてなんか……」


うそ。ちょっとだけ、本当にちょっとだけ泣いてしまった。

くやしいとかつらいとか、そういうのより、ああ、好きだったのになあって残念な気持ちになって。


次の日も学校だったから、今日、今だけで清算しようって。


「…泣くくらい好きだったくせにこんなにはやくって、思ってる?」

「いや、そういうわけじゃないけど、よかったのかなって」


良い悪いの話じゃない気がする。
だけどどう言ったらいいかわからない。


「ユズのことわすれるために新しい恋を無理やりしはじめたのかなって…」

「——— それは、ちがう」


ちがうの。


学校に向かう足が止まる。

あかねくんの笑った顔が浮かんでくる。



きみといると楽しい。

これからも一緒にいたい。そんな願うような気持ちで、いつも会ってる。


「いつの間にか、べつのところで、あかねくんのこと好きになってた」


ユズとはちがうところ。

ユズへの気持ちはしぼんでいった。だけどたぶん、これからもずっと、あのとき好きだったひとだってわすれない。


「そっか。それならいいんだ」

「おう…サガミ、ありがとうな」

「本当だよ。代わりの恋にしてはやべーところいったなって心配しただろ」

「フツリアイだって言いたいんだろ!てめえこなくそっ」


ゆるしてやるよ仕方ないから。でもちょっと楽しくなって学校まで追いかけっこをした。


サガミだけじゃなくて、たぶんみんな、同じように想ってくれてるんだと思う。

もしかしたら昨日、わたしの知らないところでそういう話になったのかも、だから今の話もわたしの知らないところでみんなに伝わるんじゃないかな。


流れるままに入った工業高校。

難しいし、スカートは長くなきゃならねえし、レッドボーイは隠さなきゃならない。


だけどクラスの友達と出会えたことだけは、この学校に入ってよかったなって思う。

できればみんなもそう思ってたらいいな、なんて。


はずかしいから言わねえけど。




昨日の今日だけど、会える気がする。


と何の確証もないのに時計塔へ向かおうとホームルームが終わり次第すぐに教室を出ようとしたらイワちゃんに首ねっこを掴まれた。なんなんだよ。


「今日バイトないんだったら遊ぶべ」

「いったん無理!でももしかしたら行くかもしれないからマックとかにいてよ」


あかねくんに会えなかったら行ってやるよ、とこころの中で上から目線をキメてるとそれが伝わったのか今度はグーで頭を両側から挟まれてぐりぐりされた。なんなんだよ。


「離せ―!」

「やだねー!」


どんだけわたしのこと好きなんだよ!

かわいいけど早くしないとあかねくんがあきらめて帰っちゃうかもしれない。どうにか振り払い「ごめんっ」と言葉を投げ捨てて教室を飛び出した。


わたしは、あかねくんと同じ学校の子みたいに毎日は会えないから。

だから会えるような気がしたときは、それを頼りにしたいんだ。



「美島、急いでるみたいだけどどっか行くの?」


わたしがイワちゃんに足止めされてる間、にしては早い。やる気が漲るグラウンドからユニフォーム姿のタケちゃんが話しかけてくる。


「あ、うん!」

「なんか最近の美島楽しそうだよね。けどたまにはクラスのみんなのことも構ってあげて」

「なにそれ。みんなわたしがいなくたって楽しんでるよ」


そう肩をすくめる。

どちらかといえば普段はわたしがみんなに構ってもらってるって感じだし。


「そんなことないよ。みんな学園のマドンナのことが心配だし、笑っててほしいからいつも遊びに誘うんだよ」

「学園のマドンナってマナのこと?そりゃあの子は超美少女だけど、その言い方は古くさくね?」


つーかマナって男子たちにそう呼ばれてたの?おもしろすぎ。今度バラしてやろっと。


「まあいいや。また明日」

「うん、タケちゃん、がんばれよ」


そう言って手を振り、走ってレッドボーイを迎えに行く。



会えたらいいな。

きっと会える。


今日はずっと、あかねくんのことを考えてた。


そんな気持ちで時計塔に行くと、やっぱりあかねくんはそこにいた。


文庫本を読んでいる。タイトル聞いてもわからなそうだけど、何を読んでるのか知りたい。


「あかねく――――」

「あっかねー!こんなところで何してるの?」

「……」


びっくり、した。

あかねくんのところへ行こうとしたら、わたしの前に、付属高校の制服を着た男女数人が彼に話しかけた。思わず足が止まる。


「人待ってる」


短く言葉を返し、また文庫本に視線を落とす。

するとひとりの女の子がその本を取り上げ、パラパラとページをめくり出した。


「相変わらずマイナーな本好きねー」

「本当だ。茜音って活字中毒だよね」


もうひとりの女の子が腕を通す。それを避けるあかねくんと、さらにそれを追う女の子。ボブカットが可愛くて、制服が、よく似合ってる。

ベストセラーだったらまだしも、マイナーな本なら、なおさら、聞いたってわからないね。


「茜音、人待ってるって、まさか最近会ってる女の子?」

「その子何者?そろそろ教えてよー。てか何時に待ち合わせしてるの?」

「待ち合わせはしてない」

「え、じゃあ来ないかもしれないじゃん。だったらうちらと遊ぼうよー。今日の英語わからないところあったから茜音に教えてほしいー」


早く話しかけなくちゃあかねくんが行っちゃう。

だけど、でも、……。


「明日昼休みに教えるから今日は帰って。桂かつら、みんなのこと連れてって」

「ほーい。みんな行こ。茜音困ってるから」


桂、と呼ばれた男の子だけが茜音くんの言うことを聞く。でもみんな帰ろうとしない。


足が根を張ったように、動いてくれない。
はやくあの子たちがいなくなってほしい。



──── 気づかないでほしい。


そう願ってしまった瞬間、あかねくんと目が合った。





「はるき!」


彼が駆け寄ってきてくれる。

うれしいはずなのに、この身を隠したくてたまらなくなった。


「あかねくん…」

「待っててよかった。会えた」


そんなうれしそうな顔しないで。

わたしだってうれしいのに、今、彼のことを直視できない。


向こうからの、付属高校の制服を着た人たちの視線が、痛く突き刺さる。


「え、誰?」

「茜音が最近会ってる女の子じゃね」


158センチの身長でさえ嫌になるほど、消えたい衝動にかられる。

だって、あの子たちは、あかねくんと同じように、がんばってきたひとたち。


「てかあの作業着、工業高校のじゃん」

「工業高校って“あの”?」


せめて耳を塞がないように精いっぱいになる。

みじめだ。


「え、うそでしょ?なんであの学校の子と茜音が一緒にいるの?」

「まさか付き合ってる?」

「は……雛芽ひなめと別れた次があの子?ありえないでしょ。だって工業高校だよ?」


地獄耳なのかな。
それとも、あかねくんにも聞こえてる?

それは尚更嫌だな。


聞かないで。
知られたくない。


…恥ずかしい。



「茜音、なんでその子と知り合いなの…?」


雛芽、と呼ばれていたボブの女の子がこっちを見た。

やっぱり、可愛い。マドンナだって思われてそう。


あかねくんの元カノ。幼なじみ。同じ学校の女の子。

わたしと、ちがう。


彼が頷くとどういう関係なのか詰め寄っていた。


「言う意味ある?」

「気になるもん!学年首位の茜音が、なんで工業高校の女の子と?どこで知り合うの?まさか好きなの?ぜんぜんちがうのに!?」

「勝手に気になられても困る」

「~~~ッだっておかしいでしょ!」





フツリアイだ。アリエナイ。そう思われてる。


家柄も、成績も、てっぺんと底。

向こう側とこっち側。どうにかあべこべになってくれないか、混ざってくれないか、そう、祈るような気持ちだったけど、そうはならない。


「雛芽、怒るよ」


あかねくんはそう思っていなくても。

まわりはそう思ってる。…わたしも、そう思ってる。


「おかしいとかわけわかんないから。誰に何言われてもどうでもいいから。気分悪いから帰って」

「ちょ、茜音、言いすぎ……」

「桂。雛芽は今桂の彼女でしょ。責任もって連れてって」


低い声。

初めて聴いた、怒ってる声。


それは彼らも同じだったのか、バツの悪そうな表情を浮かべていなくなった。

短くしたスカートから覗く足が、作業着のわたしは、とてもうらやましかった。



何も言い返せなかった。

あかねくんに、友達と、けんかさせてしまった。

嫌な気持ちにさせたと思う。


「はるき、ごめん。嫌な気持ちにさせた」


それなのにあかねくんに謝らせて。
気にさせて。

力が入らないまま、首を横に振る。


「もうこういうふうにならないように明日学校で言っておくから…」

「…なにを言うんだよ」


申し訳なさそうにすんなよ。

そうさせてるのはわたしなのに、八つ当たり、したくなる。


「あの子たちの言う通りだろ。だから言い返せなかった。何も否定できなかった。それなのにわたしのこと庇ってんなよっ」

「庇ったわけじゃない。おれが言われて嫌だっただけだよ」

「なんだよその頭悪そうな返事」


どっちがだよ。
いい加減にしろよ、わたし。

ぐっとこぶしを握る。


「あの子の言う通り、ぜんぜん、ちがうだろ、わたしたち……」


別々の場所に引かれいた2本の線。

ぶつかったのは、何かのまちがえ。


交わるわけがない。



ずっとそうわかっていたのに。


顔見てメシ食った。
バイクの後ろ乗せた。
まんが立ち読みした。
夜景を見に行った。
べんきょー教わった。
デート、した。

きみが、ぜんぜんちがうわたしに、とびきり優しくしてくれた。


だから、わからなくなってしまってたんだ。



「おれは、家柄も、成績も、関係ないって思う。違うなんて、人と人なんだから、当たり前だって思う。それが悪いことだとは思わない。違うところも、似てるところも、おれは――――」

「わたし、は、思えない」


だってそれはあかねくんに、自信があるからだ。
わたしにはない。

そんなもの、ひとかけらもないんだ。


「……帰る」


これ以上一緒にいられない。

いやになったわけじゃない。つまりそれは、ただ逃げてるだけってこと。


あかねくんに背を向ける。


庇ってくれたの、うれしかった。

会えてよかったって言ってくれたの、うれしかった。


その気持ちだけで生きていけたらいいのに、どうして、こんなにも引け目を感じてしまうんだろう。



「はるき、待って、」

「あかねくんも帰れよ。先生になるべんきょーしろよ。…わたしとちがって、ちゃんと夢があるんだから、それ、大事にしろよ」


はげましてくれたのに。

わたしのことすごいって言ってくれたのに。


あかねくん、ごめん。

あかねくんと出会って、楽しかった。
好きになった。

だけど、そのぶん、自分の弱いところを知った。


情けなくて、つらいよ。くるしい。



あかねくんは頭が良いから、家柄が良いから、成績が良いから、あの付属高校に通ってるっていう信頼もあるから、幅広いなかからなんでも見つけられる。


だけどわたしは。

わたしは、今まで、本当に何もしてこなかった。


べんきょーは嫌いだってしてこなかった。

いまさら新しいことなんてできるわけないって、部活も習い事もしてこなかった。

何もないなかから、どうやって見つけたらいいの。


あかねくんが必死に悩んでることにすら、うらやましいと思う、わたしは。



あかねくんが遥かに遠い。

それは、自分のせい。


わかっているのに、他人から改めて突き付けられると、くるしいよ。


どうしてがんばってこなかったんだろう。

あかねくんと出会うって知っていたなら、準備してきたのに。


わたしには、何もない。
何もできない。

そのことに、ずっと目をつぶって生きていたかった。


レッドボーイを引いてとぼとぼ歩く。

振り向きたかったけど、振り向けなかった。


きっと傷つけた。
ひどいことを言った。

人と人なんだから、ちがって当たり前なのに、まるであかねくんのせいにするみたいなことばかり言ってしまった。


消えてなくなりたい。

好きなのに、どうして、それだけを考えられないの。

もっと言うべきことがあったはずなのに。



「おーい」

「……」

「なあ」

「……」

「春希!」

「わあっ」


びっくりした…びっくりした!

急に目の前に現れたイワちゃんの顔面に思わずのけ反る。するとキドっちが「持つよ」とレッドボーイのハンドルを握って歩き出した。


え、え…なんでこいつらいるの?


「おまえさ、アカネクン、優しくしてくれたのにあの態度はないだろ」


いつの間にか隣にいたユズにそう言われ、そんなことわかってんだよ、と思うと涙がじわりと浮かんでくる。


「え、ちょ、春希、泣くな」

「だ、だってユズが、ユズが、わかってること言うから…!」



だけどたしかにこいつらの前で泣いてたまるか、と雫になる前にアーガイル柄のハンカチで拭く。


「…どうしよう、あかねくんにきらわれたら、どうしよう」


傷つけた。ひどいこと言った。

嫌われたって文句言えないんだけど、でも。



ユズが背中をぽんぽんと、あやすようにさすってくる。

よけいに泣きそうになるからやめてほしい。


「春希、走りにいこうぜ」


道路の端でバイクを引いてたホッシーとサガミが笑う。

みんなで後ついてきてたのかよ。聞いてたのかよ。趣味わりーな。

そう思いながらも、はげまそうとしてくれているのがうれしくて、頷いた。


「レッドボーイ乗っていい?」


ユズにそう聞かれたから頷いた。今の状況でさすがに断れないし、もう、気にすることねーよな。

キドっちはサガミ、イワちゃんはほっしーのバイクに乗っかってドライブ。長々走って、真っ赤に染まる夕焼けを見送った。



「なあ春希」


ずっと黙って後ろに乗っていたユズがついに声をかけてくる。


「なんだよ」

「あのさ、今日ので懲りたんなら、おれと付き合わない?」

「…………は!?」


ちょうど赤信号になったからよかったけど、事故るかと思った。

心臓がばくばくしてる。聞き間違い…?


「聞こえなかった?おれと付き合っ―――」

「聞こえてるから2回も言わなくていい!」


間違いじゃなかった。

付き合うって…わたし、ユズに「友達としか見れない」ってフラれてんだけど、なんで?



何考えてんだこいつ…。


「なんで…おまえ、わたしのこと好きじゃねえだろ」

「好きだよ。けど、こんな仲良い女友達はじめてだったから、思わずふった」


やばい、意味わかんねー。わたしの尺でユズは計れないんだろうな。

こいつのなかでどうなって、どういう変化があって、そういうことになったのかはわからないけど、…うれしい、よ。

だけど。


「わたしは…ユズにフラれてなくても、けっきょくいつか、あかねくんのことを好きになってたと思う」

「はは、ひでえ」


どっちがだよ、いつも振り回しやがって。


「さすが学校のマドンナ。いろんなやつをふってきただけあるわ」

「え、マナって彼氏持ちなのにそんな告白されてたの?」

「はあ?なんでこの話の流れでマナが出てくんだよ」


それって、つまり、わたしのことってこと?

はあ?はこっちのセリフなんだけど!!?マドンナってなんだよ…わたしが?マドンナってタッチの南ちゃんみたいな子のこと言うんじゃねえの!?


「春希って本当に鈍感だよな。わざと?」

「わざとじゃねーけど…」

「ほかのやつらはもういいけど、サガミとホッシーにも謝っとけよ」

「う、えええ…‥」


1年の頃同じクラスだったホッシーとサガミに、告白まがいなことをされたことがある。

でもはっきり好きだって言われたわけじゃなかったし、揶揄ってるのかと思って受け流しちゃった…けど、本当だったってこと、だよな。


「おれも、悪かったよ。うれしかった」



ユズのこと、好きだった。

ほっとけないところとか、必ずレッドボーイに乗るところとか、うれしかった。


「うん、…ありがとう」


はげまそうとしてくれたんだろ?ありがとう。


おかげでちょっとラクになった気がする。

けれど─── やっぱりあかねくんとの距離は、遥か遠いって、思った。



2時間以上走っていたらしい。

まだ2ケツで高速道路に乗れないから下道で来た、普段住んでる内陸から一番近い海。


すっかり陽は暮れて夜のそれは、真っ暗で、何もかも吸い込んでくれそうだと思った。


「よっしゃー!暴れるぞー!」

「うるせえよイワちゃん」

「なんだよおまえらも来いよ!」


わちゃわちゃと海へ駆けて行く背中を、バイクを停めてた残りの3人で眺める。あいつらなんだよ、すげー元気でうぜー。

笑ってると「あ、笑った」とサガミとホッシーがつぶやく。

なんだか気恥ずかしくなるからやめてほしい。



「……なあ、いまさらだけど、1年のころ、ごめん」

「「えっ、」」


まるくなった4つの目にバツが悪くなる。

ユズに言われた、とは言わないでおこう。


何がとは言えなかったのに、2人ともわかったらしい。首や頭のうしろを掻きながら視線が反れる。


「べつに、オレも、変なふうになるの嫌で春希が鈍感なのをいいことに誤魔化したし」


鈍感、否定できねえ。


「俺も。だからまあ、気にせず、これからもよろしくってことで」

「うん、ありがとう」

「オレたちも行こうぜ」

「ほら春希、転ぶなよ」


どんくさいんだから、と言われたから背中をぶっ叩く。その数秒後には砂浜に足を取られてすっ転んで笑われた。

おまけにイワちゃんが海水をかけてきて、うざいから突き飛ばしてびしょ濡れにしてやった。すげー寒そう。


星がきれい。

だけど、このまえあかねくんと見た星空のほうが、良い。


はしゃぎまくって、帰るのが嫌になって、そのまま朝までいることにした。

肌寒いからとあたたかい飲み物とカイロをキドっちとサガミが買ってきてくれて、あとは気合いで、砂浜に並んで寝転がって夜を明かした。



気づいたら眠っていたらしい。

まぶしさに目を開けると、夕焼けとはちがう、オレンジの光が強く顔を出していた。


「起きた?」


遊び疲れたのか、いつもより落ち着いた様子でイワちゃんが聞いてきたから頷きながら起き上がる。

身体痛えし、顔や髪がパリパリする……海で寝るもんじゃねえな。


「春希、寝顔かわいーよ。ずっと寝てたほうがいい」

「おい、それ褒めてんのかけなしてんのかわかんねーよ」

「どっちも」


なんだそれ。


「あれ、春希やっと起きたんだ」

「おはよ」


なんだよ、みんな起きてたのかよ。起こせよバカ。

ちょっとはずかしい気持ちで、キドっちがくれたコーンスープのプルタブを開ける。


太陽が動いて、空が、青くなっていく。

きれいな光景だった。


「……同じ青でも、ぜんぜんちがうな」


海と空。

境界線から太陽が出てくる。


同じ青になれることはない。



「わたしのことはみんながなぐさめてくれたけど、あかねくんはきっと、ひとりでいたんだろうなあ……」


どんな夜を過ごしたんだろう。


あかねくんをなぐさめたり、励ましたり、きみに優しくするのは、傍にいるのは、わたしの役目にしたかったのに。

自分からその役目を降りたんだ。




「つまんねー劣等感とかさ、焦りとか、そんな自分勝手な気持ちで人のこと傷つけて八つ当たりして……かっこわる」


同じ青になれない空と海を見てるのがつらくなって、三角に立てた膝に顔を埋める。

こんなこと言うのもかっこわるい。


だけど、でも、聞いてほしい。ひとりで抱えたくない。こわい。


変わりたいのに、どう変わったらいいかわからない。

本当に変われるかな。どんな自分になったら、あかねくんと一緒にいても、おかしくなくなるかな。


ぐるぐると頭をめぐる、情けない感情たち。

抱きしめて活かせるほど強くない。

押しつぶされそう。


がんばってこなかった自分に、今も、これからも、飲み込まれそうで。


「…ウユニ塩湖とか、和歌山県の天神崎とか、海と空が繋がって見えるらしいよ。いつか芽衣と行きたいなって話してる」


肩に体重がかかる。

少しだけ顔を上げるとキドっちが肩を組んで、その手で頭をぐりぐりと撫でてきた。



「春希、誰にも不安はあるよ。後悔もある。俺たちってそういうの、けっこー似てるもん持ってると思う。だから俺らも、ゴウスケとかも、おまえがアカネクンと仲良くなるの、ちょっと心配してた」

「……」

「春希のことだからへんな男は選んでないってわかってたけど、周りは、…春希自身は、いろんなこと気にして、つらい思いするだろうから。おまえもそれわかってくれてただろ?ただしつこく揶揄ってたわけじゃないって」


うん。みんながちゃんと心配してくれてたの、わかってた。

それなのに意地みたいなものを張って、きっと大丈夫だと思い込んでた。

だってあかねくんといると、前向きになれたから。



あかねくんのことがんばれって思うたび、わたしもがんばろうって思えたから。


そういうひと。

きみと出会ったことは、そういう自分に、なれたきっかけだった。


「だけどそれでも春希は、アカネクンに会いに行った」

「……」

「今も、ひどいこと言ったあの瞬間も、会いたいって思ってる。そうだろ?」



――― あかねくん、会いたい。

これからもずっと一緒にいたい。



「同じになれないとか、なりたいけどどうしたらいいかわかんないとか、そういうの、もうやめろよ。なれよ。そのためにがんばれよ。そういうつもりで、いつものかっこよくて明るい春希に戻ってアカネクンに謝れよ」

「キドっち…」

「みんなもそう思うだろ?」

「うん。ださい春希、なんかしおらしくて見てられないしな」


どういう意味だよ。


「がんばれよ、春希」

「な。アカネクン、いいやつだったしな。大丈夫だろ」


そうなんだよ。あかねくん、いいやつなの。



「つーか学校サボらね?」

「いーね。じゃ、…もういっちょ入りますか」


すっかりサボることに決めたらしいみんなが、イワちゃんを担いで海まで駆けて行く。

がんばるって決めといてサボるのかよ。


そう思ったけど、こういう日も大事な気がして、甘えることにした。


工業高校も悪くない。

なのに、庇えなくて、ごめんな。ありがとう。


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